124 【身内P村】二十四節気の灯守り【R15RP村】
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[ 朝陽に見守られながら始めた稲刈り。
77分後 見上げた空は青すぎた ]
( ぱたり )
[ 常、夜に引きこもる幼女が
朝、田に出て急に鎌を振るなど
始まりの街を出て大魔王に挑むが如き蛮勇 ]
[ 灯守りは 英雄でも 最強でも 無敵でもないというのに ]
…、
……処暑。
助っ人を 呼び
呼び、たいの ですが
処暑、どうか
ひ 光が 眩しいのです 処暑
陽の ひひ…光は
――…っくく
闇に生きる 私とは 相容れ
うっ
[ 其の日冬至は 死にかけた ]
[ 何はともあれ お米作りは進んでいく。
その内に もし
処暑が"助っ人"を許していたなら
おつるやいづるが(冬至比)強力な助っ人として
領域に現れる事があったかもしれない。
それはそれとして
お米の完成を間近に控えた日
顔を合わせた立秋に米作りのことを話し
「よければごはんを食べにきませんか」
「そろそろお米ができるのです」
などと 助っ人兼お米のお披露目に招いたのだったか ]
[ ほかほかごはん
なすのおみそ汁
野菜炒め、目玉焼き、
焼き鮭、漬物、デザートに葡萄 ]
[ 処暑や立秋、使い魔と
朝ごはんをもりもり食べたのは
死にかけの冬至が見た夢か―――それとも ] *
[物心がついた時から、わたしはお人形だった
真っ赤なベロアのカーテンがひかれたお部屋
大小様々な椅子が用意されている
お部屋その
お部屋の、
ハート
のソファの上
そこがわたしの
おうちだった]
[お部屋にはわたしの他にも、たくさんのお人形がいた
輝く様な金髪の子、透き通ったガラス玉みたいな瞳の子、ちいちゃなお口の子、可愛い赤毛の子
みんな可愛いお洋服を着せられて、可愛らしく微笑んで、私たちは御行儀良く椅子に座っていた
どうして?
わたしたちがお人形だからよ
当然でしょう?
たくさんの女の子がいたのに、お喋りの一つも溢れなかった
だって、あそこはお部屋なんだもの
お人形は喋らないでしょう?
あら、
どうしてそんな顔をするの?]
[あの人は、きっとわたしたちを愛してなんていなかった
いっそ狂気とも呼べるほどのあれは、執着心かそれとも…
わたしたちの知ることではなかったようだ
可愛いお洋服を着て、微笑んでいたけれど
わたしたちはいつも”捨てられる”恐怖と隣り合わせだった
“捨てられる”のはあの人の気まぐれで、その方法だってその時の気分次第
わたしは運が良くて、お出かけ先から帰る途中に”捨てられた”けれど
ゴミ箱に捨てられた子もいれば、寒いからと暖炉に放られた子だっていた
捨てたと思ったら、また拾い上げてきたことだってあったのだ
ほら、わたしたちはお人形でしょう
あの人にとっては、その程度だったのだと思う
癇癪をぶつけるのも、醜い欲をぶつけるのも、抱きしめて眠るのだって間違っていない
人にしなければ良いのだから]
[——最近、夢を見てしまう
わたしを捨てたわたしが、色んな人と笑い合うことを
先代大雪が籠る直前。
妙な騒ぎが領域内で起きている、と
そんな事を明かしていたことも有ったろう。
「 急に子供の泣き声がして、そんでサ、
みいんな可笑しくなっちまうんだって ……
ったく、ウチで何が起きているんだか。 」
「 元凶は、探りを入れている処だが、さて。
何とかしてくれって言われてもね、
こっちもどうすりゃいいんだか。 」
「 まあ暫くはごたごたしてるだろうよ。
あんたも気を付けな、小満の坊や。 」
すこし骨ばった手で、そんな事を先代は言って。
姿をすっかり見せなくなるのは、数日後の話。
私が灯守りとしてはたらくようになったのと、
彼が灯守りとなった時期は、そう離れていない。
どこか同期のような心地で居る部分はある。
先代の処暑とも、顔を合わせる機会は有ったろう。
その頃は、人間の姿で人前に出るなど、と
怯えて、どこに行くにもぬいぐるみを動かして
どうにか会合や業務をこなしていた頃だが。
もっと周囲を見る目が自分にあればとは、
これは……もう過ぎた話。
あの頃は自分のことで精いっぱいだった。
自信がどう評されていたとまでは 終ぞ知らず。*
―― とある風が知る記憶 ――
「 おや、冬至さん
こんにちは。こちらに来られるなんて珍しい……おや
お久しぶりです、おつるさんまで。
そして、そちらは…… 」
[ 冬至の彼女が蛍を連れて処暑の領域を訪ねると、田園風景にひとり立つ彼を見つけられただろう。
先代処暑の頃の領域は、夕景の時間が大変長かった。
空色が薄くなり、徐々に紅み掛かり、橙に焼け、紫へと変わる。
それをゆっくりと繰り返していた。
それから今と違うのは、田畑の割合。
先代の頃は、一面の金色ではなく、畑の割合もそれなりで、様々な作物が実っていた。
更に先々代から見ると、田の割合が増えているのが分かるだろうけれど、それはさておき。
その焼ける空を眺めていたところ、端末ではない本体の彼女の一行と顔を合わせたのだった。 ]
[ 先代処暑と冬至の彼女の関わりは深い。
ブドウの甘い、瑞々しい香りから始まった関係は、
回数を重ねること、留まることを知らず。
雪兎の入り口の大きさに合わせて小さいものを。大きいものも、偶に直接彼女に送っていた。
彼女からも色々な物が返ってきた。送られてくる可愛らしいものが、先代は好きだった。
中でも金平糖が多いことに気付いたならば、ある時「金平糖がお好きなんですか?」と、臆面もなく尋ねたこともあっただろう。
しかし、こうして彼女が態々訪ねてくるのは珍しい。
不思議そうに彼女を見ると、足元には“蛍”であるゆきうさぎ。
小さい身体に合わせるようにしゃがみこんで挨拶を。
それから、腕の中に見覚えのない、“新しい”蛍。 ]
「 わあ……
いずるさん。初めまして。灯守り・処暑です……うん? 」
[ 元気よく跳ねる、ひとまわり小さい雪兎に、笑みが零れる。
可愛さに温かい気持ちになりながらも自己紹介をすると、寄ってくる雪兎。
その姿をよく見てみると……見覚えがある気がした。 ]
「 ……いずるさん。前に何処かでお会いしましたか? 」
[ 先代は考えるように首を傾げた。
……先代は、少々天然気質な人であった。
とっくのとうにすっかり溶けた雪と、目の前の雪兎が繋がらなかったというのもある。 ]
[ 冬至の彼女には正体を教えてもらえたか。
聞けたならば、納得しながらも、あの雪兎が動いていることに、そして彼女の蛍となったことに、感動した顔をしただろう。 ]
「 はい……兄弟みたいで可愛らしいですね、ふふ
いえ、私の方こそありがとうございます 」
[ 夕景の中で、雪兎の“兄弟”が遊ぶのを眺め、目を細める。
その温かい光景にとてつもない幸福感を感じた。
むしろ、自分の方こそ感謝しても足りない。
自分の雪兎をこれから冬至の彼女の側に置いてくれることに。
此方を見上げる彼女ににっこりと笑い掛ける。
こんな姿であっても、自身の倍どころではない長くを生きている。
可愛らしいと思う反面、大先輩としてとても慕っているから。 ]
「 欲しい物……うーん……
本当に、お礼なんて要らないんですが…… 」
[ 申し出には首を傾げて迷う彼がいただろう。
本当に、雪兎を“蛍”にしてくれた、とそれだけで充分すぎるのだから。 ]
「 ……それじゃあ、冬至さんのお話を聞かせてくれませんか?
辛いこととか、悩んでいることとか、言えないこととか、
僕を頼ってもらえれば嬉しいです
冬至さんから見れば頼りないかもしれないですが……
僕も“灯守り”ですから 」
[ 「ね、ゆきさん」と、名前を知っていたらそう呼んで。
ゆっくりと彼女の正面へと回り、彼は穏やかに笑い掛けた。
あれ?これはお礼になってないですか?と彼が気づくのかは……冬至の彼女の返答に依るだろうけれど。
きっとその時も、僕の我儘な“お願い”です、と主張するのだろう。 ]
[ 彼女が彼を頼ったかはともかくとして、
その苦言は、その“お願い事”にも掛かっていたのかもしれない。
]
「 ……分かっては、いるつもりなんですけど 」
[ 言われた彼は、痛いところを突かれた、とばかりに苦笑するだろう。
分かっているつもりで本当に分かっていないということまで、彼には自覚がある。 ]
「 ごめんなさい、ご心配をお掛けしてますね
……気を付けます 」
[ 小柄な身体の頭に手を置いて撫でようとする。
自戒を伴った言葉。自分の姿を見て、彼女は余計に思うこともあるのだろう、と。
しかし彼は、民を目の前にすればそれに寄り添おうとしたし――そうして、悲劇は繰り返す。
彼女に、幸せを願われていることも、知らぬまま。
* ]
─龍池紫明という男・1─
[ 七年前に退位した、龍池紫明の灯守り在位期間は
約百六十年。
現役の灯守りで、彼と同時期に灯守りであった者は
多々居れど、就任した当初を知る者となれば限られるだろう。
就任当時、彼の年齢は十にも満たない
酷く手のかかる子供だったことを。
紫明の先代は、在位数か月で突然失踪し
(暗殺説、自殺説、駆け落ち等、様々な説がある)
後継者の目星どころか蛍すらいなかった状況、
霜降域は空前絶後の混乱に見舞われる。
では、新たな後継者候補は、と云えば。
前灯守りの血縁は論外。
栄光も一転、既に面汚しと石を投げられる状態であり、
既に一族郎党他の領域に亡命したとされる。
数週間後、中央域の出向職員が、前灯守りの関係者を
探し出してきたものの、
その間、空位に滑り込んだように継承したのは
小暑域出身の無名の少年・龍池紫明だった。]
[ 霜降域の灯守りは、ほぼ霜降域出身者からの選出であり、
髪色は銀、赤、黄系が多いのだが
霜降域の出身でも無く、鴉のような黒髪である彼の継承は
誰もが予測していないものだった。
対立候補が現れながらも、紫明が就任出来たのは、
外様の幼子を御輿に乗せ、傀儡として操るべく
野望を企てた者達。
一族の子が着任することで、財産や権力を得るべく
浮足立った親族達の手柄と言える。
世間一般では、この少年灯守りは
正統なる次期霜降への「つなぎ」の役割でしか無かった。
誰しもが、そう思っていた。 ]
『頂点に立ったからには、ずっと立ち続けてやるからな!』
[ 少年紫明は、大人顔負けの聡明さ、知性の高さから
周囲の企てには気付いていた。
その上で自らの姿を二十年近く成長させ
二十代中〜後半位の容姿に留め
霜降域の混乱を自らの手で平定させ、新灯守りの座に就く。
会合でも年齢を感じさせない発言や所作、立派な態度で
中央域の職員や他の灯守りから一目置かれるようになる。
とはいえ、これはあくまで
「作り上げられた立派な灯守り様」の姿でしか無かった。
自らの才を鼻にかけた傲慢我儘少年時代は
数十年続いていた為、当時の彼を知る者は
表と裏を使い分けるその様子を見て
避ける者や対立する者も少なく無かったとか。
歳月を重ね、我儘少年も精神的に年相応の大人となり
子供時代の黒歴史を語られば、顔を覆う程に精神も成長した。
これが、大半が知っている「龍池紫明」である。]
[ 尚、葵は紫明の過去──我儘で面倒だった少年時代の話は
聞いてはいたのだが]
紫明様、我儘な子だったのですか? 意外ですね。
でも、男の子なんて皆ヤンチャなものですよ〜
ふふふっ。
[ どうせ尾びれをつけて盛っているのだろうと、
本来の問題児っぷりを砂糖
(2)(1)2d10個分は甘く見ている。
紫明も、夢を見ている方が幸せだろう、と
これ以上は修正せず、彼女の理想を崩さずにいたのだった。]**
[ 彼、あるいは彼女。
処暑様はおそらくわたしとそう変わらない、
灯守り様です。
処暑様に対するわたしが持っている印象は
人を恐れている。
人を寄せ付けようとしない。
通り過ぎるはずの大嵐の中から抜けられないような
それに近いものでした。
少なくとも悠然としてお餅を頂くような方では
なかったように思いました。
決して長くも、短くもなかった時の流れ。
わたしはきっとあなたの苦悩も、
とまどいのなにひとつも知らないままに
雪に閉ざされた世界を眺めていたのでしょう。 ]
[ 話は少し変わります。
それはわたしがはじめて、手紙を出したとき。
何通も出したって返ってくるものは
その半分すらもありませんでした。
面白半分でしたことです。
返ってこないことには何ら思うことはなくとも
ローザのように丁寧なお返事が返ってくることは
わたしはほんとうに嬉しかった。
「大寒」とつけてしまえば
また違ったものが帰る気がして。
『わたし』ははじめて、
『わたし』になまえをつけました。
エアリス、雪の雫。
大寒域では聞きなれない名前の並びです。
領域に残されていた本からいただいて。
便宜上、先代様が存命のころは
わたしは寒月と呼ばれていました。
エアリスはたびたび、誰かへと文を届けます。
何度めかの手紙を送ったあと。
その一通は届きました。
]
今日は雪をとどけにいってきました。
届けなくとも雪は降りつづくのですが
季節によって少し降る雪がかわるのです。
あなたは今何をしていますか?
この空の続くはずの下にいるあなた。
花は咲いていますか?
どんな風が吹いていますか?
[ ある日は風景を、
ある日はお食事の内容だったり。
だからわたし、
あなたがどの手紙にお返事をくれたのか
正直きちんと理解していませんでした。
だってあなたのお返事は観察日記の延長で
返信と呼べるものであったかはちょっぴりあやしい。 ]
[ でも嬉しかった。
こちらからは宛先もなくて、
あなたからの差し出し人の名前もない。
ななしさんから届く風景の文は
風が踊っているかのようなのに
それが自分にはわからないと言ってるようでした。
でも、わたしはあなたの風景が好きでした。
わたしにはあなたのように、見渡せる風はないけれど。
写実的で、絵ではないからこそ、心が溢れるみたいな。
だからわたし、わたしは
あなたのことがすきでした。 ]
ななしさん。
あなたは、世界が好きですか?
[ ある日わたしはななしさんにだけ、
そんな事を書いた事があります。
お返事はあったかもしれませんし、
なかったかもしれません。
ぼんやりと浮かぶ街明かり。
季節の殆どは雪で覆われています。
薄暗い空は陽の光を忘れたようです。
短い春の期間に、人々は備えをして、
日々を生き抜くような世界です。
彩の花はありません。
豊かな緑は、雪の下。
わたしは、他の灯守り様をお出迎えすることはあれど
わたしが行くことはありませんでした。 ]
[ お誘い下さった灯守り様には
そうしていつも断っていました。
わたしが大寒域を嫌いになったら
この場所は壊れてしまうのでしょうか?
多少は、灯守りらしく
そんなことを考えてみたりして、
時には立春様からいただたいた葉書を、
清明様が持ってくるお花を飾りながら
わたし、ななしさんに出した問いの
自分の問いを、考えていました。
ずっと。 ]
ななしさんへ
今日は久方ぶりに外へ来ました。
お外で感じる風はあたたかくて、
これでもまだ寒い方なのだそうですけれど。
わたし、外の風はこわいと思っていました。
今でもすこしこわいです。
けれど、はだしでひとり歩くよりきっと、ずっと
心地よいのでしょうね。
ななしさんは今日はどんな一日でしたか?
わたし、あなたのお友達になりたいです。
いつか、わたしとお話してくださいますか?
ゆきだるまとしずく
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