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【人】 靖国 冬莉ちょい待ち、…… 幸春。 [彼との邂逅から一夜明け、部屋を出る目の前の背へと声を掛けては 自身のバックへと手を伸ばす。ちゃら、と金属の擦れる音を鳴らしながら取り出したのは、番号の書かれた札がついた鍵と、もう一つ。] 此処の鍵と、オートロックの番号。 ……ほら。下の入り口入る時、番号押して 入ったの。覚えてるかい? [其処の番号、それだから。と、差し出そうとするも、彼はどんな反応だっただろうか。昨日会ったばかりで、———思いを通わせた目の前の相手。急なプレゼントに 驚くのか、それとも。すいと目を細めつつ、彼のその薄い表情筋を眺めながら。 ] (1) 2024/04/26(Fri) 21:56:37 |
【人】 靖国 冬莉それとも敷居が高いなら、……こっちがいいかねぇ。 [なんて、取り出したもの———自身の携帯をもう片方の手でひらりと彼の前で見せる。] 番号とline、交換して無かっただろ? [自身の領域であれ、繋がりであれ。何方を選んだとしても構わなかった。この相交わしたひと時が過去のような徒情のものにならなければ、と。*] (2) 2024/04/26(Fri) 21:56:53 |
【人】 靖国 冬莉そうか? お前さんの方が身持ちが固いと思うんだがねぇ。 [一度は伸ばされた指先が引き戻されるのを横目に、何事も無いように手元の鍵を仕舞いこむ。>>1注視するその眼差しに、何を乗せていたのか。人事の如く資料やエントリーシートなどなく、況しては共にしたのは一夜。推し量るには、ピースが足りなかった。] 結局、お前さんを剥がすことは叶わなかったしな。 [携帯の液晶を打ちながら、ぽつりと零す。自身のことばかり明け透けになった心地だが、彼の言葉で心が軽くなったのも事実だ。然し、彼を巣食うものを、その応えを未だ彼の口から聞けていない。否、正確には少しだけ。] (5) 2024/04/27(Sat) 1:07:09 |
【人】 靖国 冬莉「……俺が期待にこたえられたら、————」 ……ん、こちらこそ 宜しくな。 [彼の携帯に映し出された、見馴染んだ眼鏡のアイコンに小さく頷いて 携帯を仕舞っては 正面に向かい直す。律儀に言葉を紡ぐ彼に自ずと口元が綻んで、後頭部を掻きながら応えてしまうのは、清い交際には程遠い人生を歩んできたからこその、羞恥ゆえに。>>2 彼と共に下へと降りようと、———送迎しようと靴を履こうとすればそれを制止する彼の声に重ねて、遠慮すんなっての、お前さんはもっと、……っ=B 続く言葉は、近付く彼の均整取れた顔に、その口付けに、奪われてしまう。] (6) 2024/04/27(Sat) 1:07:28 |
【人】 靖国 冬莉………ほんと。惚れた弱み、よなぁ。 [一瞬の弛緩を突いて、颯爽と去っていく後ろ姿に 思わず小さく零れてしまった。背を向ける間際の、その笑みにまた心を奪われてしまった、だなんて。口付けの余韻を親指の指腹でなぞりつつ、扉が閉まるその時まで、彼を見送った。] (7) 2024/04/27(Sat) 1:07:45 |
【人】 靖国 冬莉— A few days later — [華金とは裏腹に慌ただしく過ぎ去っていく社員の中で、デスクに腰掛けては視線を持ち上げて壁に掛かった時計を見遣る。針の差す定時僅かに過ぎた時刻に、 手元の書類を傍らに置いて 携帯を取り出す。液晶には、先日繋がりを得た彼のアイコンが表示されていた。 『迎えに行くわ、場所を教えてくれ。』 ——— 送信ボタンを、押す。 あの一夜から、初めての逢瀬の約束を交わしたのが今日だった。] ………そんなに緩んでいたか?顔。 [声を掛けてきたのは、人事課に配属になって共に仕事の荒波を越えてきた部下達だった。会社の中では、腫物扱いに近い自身へと声を掛ける、稀有な存在で。笑みを零しながら、上司と部下の垣根を超えた言葉が飛び交うのは、築いていた信頼の証なのだと、そう思いたい。] おいおい。上司を揶揄うのは程々にな、と。 ……すまん、今日は先に帰るわ。 [決裁、必要な書類は此処に置いててくれ、と声を掛け 外套を羽織っては その場を後にする。 他部署らのすれ違いざまの皮肉に、揺らすような情感はとうの昔に吐き捨ててしまった。] (9) 2024/04/27(Sat) 1:21:58 |
【人】 靖国 冬莉[愛車へと乗り込み、携帯へと目を落とす。来ていた彼の返事に軽く返しては車を発進させた。指し示られた場所へと向かう道中、通りは辺り一帯人混みばかり。既に出来上がっているのか肩を組んで歩く人等に、店を指差しては甲高い声を挙げて中に入っていく人等。一週間の終わりを彷彿とさせる光景が、窓越しに過ぎ去っていく。 その中で、ふと 一人佇む姿はまさに先日の——— 端正にスーツを着こなしている彼が其処に居た。 ウィンカーを鳴らして、直ぐ傍で車を止める。窓硝子を下ろせば、未だ蔓延る冷気が一気に押し寄せてきた。] 待たせたか、……寒かったろ。 [お疲れさん、と薄く笑みを向けて、隣に座るように促す。近くのコンビニで買っておいたホットカフェオレを手渡して、今日は仕事、どうだったのよ。≠ニ世間話を挟みながら発進させる。ルームミラーにアンバランスに掛かっていた、犬のキーホルダーは姿を消していた。*] (10) 2024/04/27(Sat) 1:23:19 |
【人】 靖国 冬莉なら良かったわ。 本当に寒いよな、……昔はこの時期、もう少し暖かかったとは思うんだがねぇ。 [車を動かしながら、隣から聞こえる声音に自ずと口元が緩んでしまう。>>15数日なんて、会社に身を窶していればそれほどの空白は茶飯事だろう。携帯を通して間接的に繋がっていたのだから、尚のこと。だが、こうして会ってみて改めて分かる。生身に代わるものなど、ないのだと。 ちらり、とルームミラーへと視線を配らせれば 此方を見詰める彼の横顔が映っており、———彼も、同じ思いだろうか。らしくない自惚れに心を浸しながら、ハンドルを切る。] 犬、……嗚呼。あのキーホルダーか。 [何を指しているのか気付くのに、数舜。>>15ルームミラーに掛かっていた昔の女の貰い物について聞かれたのも、丁度彼と出会ったあの日だった。] (17) 2024/04/27(Sat) 21:28:25 |
【人】 靖国 冬莉特に意識せずに、付けっぱなしだったかんなぁ。 それに、…… 他の奴のもの 付ける気にならねぇしな。 [目先の信号が、黄色へと転じていく。そっとブレーキを踏めば、窓越しに歩道特有の音楽が薄く流れているのが分かる。歩行者等が渡っていくのを尻目に 隣へと目を向けた。荷物を腕の中に閉じ込めて、ちょこんと座る彼。視線が重なれば、愛し気に表情を傾けて すいと目を細め 恋人の顔を眺める。自然とハンドルから手が離れていく。] (18) 2024/04/27(Sat) 21:28:42 |
【人】 靖国 冬莉[音楽が、止む。ふ、と息を散らして ハンドルの傍に留まっていた手を戻し 青信号に促されるままにペダルを踏んだ。] 俺の方も同じよ、何ら変わりなく。 大丈夫だ……ありがとな。 [彼の心配りは温かく、緩やかに心に沁みていくのが分かる。>>16この数日は何時もよりも心が軽いままに、 仕事のみに目を向けられたのはきっと彼の存在があってのことだろう。そういえば、とふと。] 一応、お前さんの好きそうなもんを幾つか買ってはいるんだが途中寄りたいところはあるかい。 [丁度近くに、先日も寄ったスーパーがある。目的地である高層の建物が 周囲の家屋や商業施設から遠目に顔を覗いていた。*] (19) 2024/04/27(Sat) 21:29:32 |
【人】 靖国 冬莉………恋人を家に迎えるんだから、ちょっとぐらい恰好付けたいじゃねぇの。 [何時もよりも穏やかに、そして注意深くハンドルを切るのも。ペダルを踏む力を丁寧に入れ込むことも。] 申し訳ない、なんて思わなくていい。 全部、俺からの愛だって受け止めてくれな。 [全て気遣いでなしに、彼への思いからだと伝われば良い。少々むず痒くなるような直情的な言葉も、彼の為と思うなら放つのに躊躇はない。堅さを解して、座席に緩りと身を預ける彼の姿が 自身の前では続くように。その先に、殻を脱ぎ捨てて 素面の彼が見ることができるのなら、そして。 その光栄が他の誰でも無い、自分だけに与えられるものであったら、どんなに良いか。 ] (24) 2024/04/28(Sun) 0:16:04 |
【人】 靖国 冬莉[やがて、見慣れたマンションへと車を走らせて、駐車場へと止める。先日、此処に来たときの彼の挙動を思い起こし、 すいと視線を配りながら 自室へと戻る道を彼と共に辿る。慣れた指先でオートロックを解除し、エレベーターに乗り込んで。彼へとそっと手を伸ばし、頬に触れては————] (25) 2024/04/28(Sun) 0:16:13 |
【人】 靖国 冬莉だろ? [納得気に応える彼に口元を綻ばせるも、その先の沈黙が 未だ彼の持つ堅さを緩ませるのに至っていないことを雄弁に語っていた。>>27彼の要した余白に、口を挟むことも、遮ることもしない。自身と同様に、これまで積み上げてきた価値観が、経験があるのだろう。] ……嗚呼。余すことなく受け止めるさ。 頑張らずとも、お前さんからのものならば愛も、何もかも¢Sて。 [掛け合いの軽さとは裏腹に言葉には含みを込めて、———この意味が相手も、そして自身も理解する日が来るといい。そう、出会ったあの日に自身が彼に貰った言葉の数々のように。 名前を、なぞるように囁く。この手にハンドルを握っていることが惜しく覚えるのはこれで何度目だっただろうか。] (31) 2024/04/28(Sun) 19:30:04 |
【人】 靖国 冬莉[背後からの眼差しを覚えながらエレベーターを出て、自室へと入り、適当に置いてくれ。≠ニ外套を脱ぎながら声を掛ける。>>29ハンガーに掛けながら、彼の言葉とともに差し出された紙袋へと目を向けた。 ] おいおい、手土産は要らないって言っただろうに……。 [なんて吐き出しつつも、車内で彼の姿を認めたその時から理解っていた。互いに気遣いを、手土産を遠慮しては、互いに相手のその遠慮を超えて準備をしてしまう。こういう点は似た者同士なのかもしれない。] 俺が好きそうなもんを買ってきてくれた、ってか。 ……ありがとな。 [彼の心配りに感謝を述べつつ、旨いと評判の店のもの、さて中身は何だろうか。紙の擦れる音を響かせながら 、彼と一緒に食べることができるものだといいのだが、と思案を浮かばせていた最中。] (32) 2024/04/28(Sun) 19:30:50 |
【人】 靖国 冬莉もし、欲しいとするならば……そうだな。 少し青みのかかった黒犬、———真面目で律儀そうな面構えの奴がいいねぇ。 大層可愛がってしまいそうだ、家から一歩も出たくないほどに。 [吊り上がるその口角を愛おし気に撫でながら、薄く笑みを零し。*] (33) 2024/04/28(Sun) 20:10:54 |
【人】 靖国 冬莉[指先を解き、頬へと指腹を伝わせ 薄く笑みを浮かべる。窓越しには僅かに滲んでいた陽光は消え失せて 夜の帳が下りていた。*] (40) 2024/04/29(Mon) 14:12:33 |
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