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【人】 軍医 ルークそうか、合わせる顔がないのかあ。 なら尚更、顔を見せてもらわないと? ああ、そうだね、それじゃあ、 その耳、触らせてもらおうかな? それでお相子。 [ もし彼が振り返ったなら、 寝台に横向きに横たわり、両手を差し出し、 擽るように指を動かしている様子が見えるだろう。 いつぞやの結ぶ結ばないの話を覚えているかは、 さあ、どうだろう? なお、声に出すときに“きみ”と呼び続けていた自分が、 内心では、うさぎ、と思っていたのは、 その赤い髪から覗く、感情豊かな耳を、 つい目で追いかけてしまっていたから。 もし動かずにいるなら、 此方から這い寄ってやるくらいの心算だった。] (227) 2020/05/23(Sat) 21:05:03 |
【人】 軍医 ルーク[ 彼のいる場所のすぐ近くにあのタブレットがあるのに、 気付く余裕もないようだった。 こんなやり取りは、 向こうはそれどころではないかもしれないけれど―― 暫く前までの自分たちを、思い出させるものでもあった。 それは懐かしいようで、 けれど、沢山のことを知ってしまった自分は、 もう何も知らずにいたあの頃には戻れない。 戻りたいとも、思わない。 少しずつ、正解も分からずに、 暗闇で組み立ててきた硝子の破片のパズル。 出鱈目につながりながら、音を奏で始めたピアノ。 告げたいと思うことが、たくさんある。 渡したいと思うものも。] (228) 2020/05/23(Sat) 21:06:15 |
【人】 軍医 ルークああ、そうだ、 どうせならもう一つ頼んでもいいかな? そこの戸棚に鍵がかかってるんだ、 開けて、中を見て。 耳を触らせるのと、鍵を開けるの、 二つ合わせて、さっきのとお相子だ。 [ ぺんぎんが、ぱあっと表情を明るくする。 机の引き出しを開けて鍵をとってきて、どうぞ、と渡した。 その顔だけで、何があるか分かってしまいそうなものだが、 棚を空ければそこには、 瓶に入った薄桃色の苺シロップと、 砂糖漬けの苺で作った小さなジャムの瓶があるだろう。 ぺんぎんが調達してきたとうもろこしの茶の袋も。 確認したいことがあったという、 その話も気になっている。>>1:362 そして、自分も。 まだ気付かれずにいる棚のタブレットを、 それとなく視線で確かめた。 この先にあるものが、何であったとしても、 踏み出したいと、強く、願っている。]* (230) 2020/05/23(Sat) 21:11:21 |
軍医 ルークは、メモを貼った。 (a25) 2020/05/23(Sat) 21:15:34 |
【人】 軍医 ルークふうん、そうか、 見た目では分からない… 君は目は良さそうなのに、 見た目では分からない。 [ わざとらしく念押ししてやって、 耳に触れたいという要求に、項垂れるのを見る。 結ばれるのを想像しているのか、 手でふにふにしている長い兎耳は、 やはりふわふわで表情豊かだった。 そして当人も、思い出せば、やはり表情豊かだった。 苦い薬を飲まされそうになってぷるぷるしていた様子だとか、 怪我をした自分をひどく心配してくれた顔とか、 先ほどの動揺して赤くなっていた様子だとか―― (余程びっくりしたのだろうか) ――… 最初は、感情がない機械のようだったと、 『命令を聞くだけの機械のようだと 夢を見ている僕が感じた、夢の中の僕が。』 そう、日記には確かに書いてあったのだ。 また、言い表すことが出来ない感覚が、 胸の内にぎり、と広がる。 自分が、そんな表情たちを、 こんなにも覚えていることに気付いた。] (299) 2020/05/24(Sun) 4:05:08 |
【人】 軍医 ルーク[ ぺんぎんに案内されて戸棚を開くころには、 その中にあるのがなんであるのかを、 彼も凡そ察していたようだ。 表情は後ろ向きでよく分からなかったけれど、 嬉しそうな声は聞こえていたし、 何より、尻尾が実に機嫌良さそうに揺れていたりする。 シロップの瓶と、ジャムとお茶。 眺めたり香りを確かめたりしている様子を、 寝そべったままに見ている。 その顔がぱっと明るく綻ぶのを見て、 自然と、口元がゆるやかに動く感覚があった。 ――やっぱり捨てたりしなくて、良かった。] 味見はしてないから、 味の保証は出来ないよ。 なんてね、 実は味見についてはいい助手がいた。 [ そう言って、うさぎの足元のぺんぎんを見遣れば、 まかせて! と胸を張っていた。] (300) 2020/05/24(Sun) 4:07:08 |
【人】 軍医 ルーク あげようと…? [ スープなんてどこにあるのだろうと思っていたら、 机の上にパンとスープがあった。 僅かな違和感に、目を細める。 気付けば、思考は早かった。 医務室を訪れるだけなら、夕食を持ってくる理由はない。 今にして思えば、医務室に助けに来てくれたのは、 ぺんぎんが呼びに行ったからではないだろうか。 だとしたら、持っているのは自分の夕食。 それ、君のだろう。 わたしはいいから。 そう言いかけて、その量が彼の物としては あまりに少ないことに気付く。 食堂で部下たちと一緒に食事をとっている姿を、 幾度となく見てきた。>>0:69>>0:179 トレイで運んでいたということは、一人で自室で? まるで何日も眠っていないような、ひどく消耗した顔色。 医者の自分と、“わたし”としての自分が 同時に口を開きかけ――… 噤んだ、いまは。] (302) 2020/05/24(Sun) 4:10:44 |
【人】 軍医 ルーク[ トレーの上のスープとお茶が湯気を立て、 パンとジャムの小瓶とスプーンが添えられて。 少しでも自分で食べてもらいたかったものだから、 ジャムとパンを食べてみたい、という言葉には ほっと息を吐いた。] 全部半分ずつじゃ駄目かな? せめてパンと一緒に、 そこの茶も飲んでやるといいよ。 ぺんぎんが君のために見つけてきたやつだから。 [ 足元で、期待に満ちた眼差しで見上げている一羽を指さす。 いつものような、緊張のない緩い笑顔は、 以前よりは近く感じられもする。 そんな表情の一つ一つに、 呼吸が楽になるのを感じている自分がいる。 視線が合う。 何かまた赤くなっておかしな表情をしているけれど、 わたし、何かしただろうか、 そう思って首を傾げるけれど、 そんな此方の表情は、常になく穏やかなものだっただろう。] (306) 2020/05/24(Sun) 4:12:20 |
【人】 軍医 ルーク[ 耳を差し出されれば、くすりと笑う。] ん、じゃあ遠慮なく? [ わあ、これ本当に結ばれると思ってる。 本人にしてみれば、笑いごとではないに違いない、 耳を乱暴にされる痛みは、自分にも分かる。 痛みに強いと言っても、こればかりは別だろう。 言葉通りに遠慮なく手を伸ばし、赤く長い耳に触れる。 予想通り――というか、 予想よりもずっと柔らかくてふわふわなその耳に、 そっと触れて、撫でた。 壊れやすい大切なものに、そうするように。 きっと、自分の指は以前のように冷たいだろうけれど、 以前よりはほんの少し、温かみが灯っているような、 そんな気もしている。 暫くの間、黙ってそうして手で触れて、離した。] (307) 2020/05/24(Sun) 4:14:16 |
【人】 軍医 ルーク じゃあ、これでさっきのはもういいよ。 [ そう言って、パンを半分にして差し出した。 自分の分から少し分けて、ぺんぎんにもご相伴だ。 基本的に燃料補給で動いているが、 飴を食べるくらいだから、驚くほど此奴らは雑食である。 スープの方も、半分にさせてくれるなら良いのだけれど、 そうでなかったとしても、 水よりも味がしないそれをひと匙ずつ大事に貰う。 幸せそうにジャムを付けたパンを頬張る表情が 見えていたものだから、 それを見ていた自分も、 きっと美味しそうに食べているように、 出来ていたに違いない。] (308) 2020/05/24(Sun) 4:16:24 |
【人】 軍医 ルーク[ 食事が終わり、寝台の上に身体を起こしたまま、 ごちそうさまでした、と挨拶一つ。 そうして、先ほどスープを温めてもらっているときに、 こっそりぺんぎんに持ってきてもらっていたものを、 毛布の下から取り出した。 赤い袋に入った、タブレット。] 今日は最後まで書けなかった。 いつもと違う時間だったから、 書いてる途中で見張りに見つかって、 怪しまれそうだったから、 一度そのまま持って来たんだ。 だから、途中なのだけれど――… ここで、読んでほしい。 [ 顔を上げ、真っ直ぐに彼を見る。 “感情”のままに書き散らした、ひどく乱雑な記述は、 もしかしたら、見るに堪えないものかもしれないけれど、 紛れもない自分の本心だった。 途切れて最後まで書けなかった続きを、伝えに来た。 袋からタブレットを取り出し、手渡す。] (310) 2020/05/24(Sun) 4:17:29 |
【人】 軍医 ルーク[ 自分が気付いているのだということを、 知ったことを、 言葉にして話しはしなかった。 先が見えないほどの困難が、 行く先にはきっと待ち構えている。 けれど、それをどうしようもないものだとは、 もう、思いたくない。 そうして、手渡したそれを、 彼が読んでくれたとするなら、 わたしは、書くことが出来なかった“続き”を、 彼の目の前で、この指先で綴るのだ。 ひとに比べれば書くのは早い方だけれど、 もしかしたら、まどろっこしい形かもしれなくて。 足取りのように、遅いものだけれど。 急ぐ性格じゃあないと、言っていたから、>>1:233 最後まで見ていてくれるに違いないと、そう信じて。] (311) 2020/05/24(Sun) 4:18:40 |
【人】 軍医 ルーク[ そう綴ったなら、再び顔を上げ、向き直る。 この全身を突き動かすような、 押し流し、溢れるような、何か。 いつしかそれは、硝子のようだった紫の目から溢れて、 ぼろぼろと頬を伝う。 床に足をつき、タブレットを枕元に置いて立ち上がる。 少しだけ、時間はかかったけれど。 自分の足で立っている。歩み寄る。 涙を拭うこともせず、その赤い目を見上げた。 真っ直ぐに伸べた両の手は、 もう、届かないことを確かめるように 空へ翳すためのものじゃない。 ] (312) 2020/05/24(Sun) 4:22:21 |
【人】 軍医 ルーク[ その両手で、 強く、抱きしめた。 離さないと、繋ぎ止めようと。 ことばだけでは伝えられない心を、 伝えるように。]* (313) 2020/05/24(Sun) 4:23:44 |
【人】 軍医 ルーク[ 夜の静寂を、ばたばたと破る足音があった。 追って来たらしい警備兵との廊下の問答を、 自分から扉を開けて遮る。] 『やあ、今日も夜更かしだねえ、ジルベール。 ああ、彼女はいいんだ、 技術班長でね、何か変わったことがあったら、 いつでも此処に来てくれるように頼んでいる』 [ 警備兵にそう告げながら、 駆け込んできた彼女の顔を見て、 その表情からすっと笑みが消える。 彼女は、回収された通信機を手に、 勢い込んで口を開いた。] (315) 2020/05/24(Sun) 4:26:07 |
(a27) 2020/05/24(Sun) 4:32:18 |
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