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【人】 因幡 フウタ[その後、朝の内なら人がいないかも、と、 露天風呂に誘ってみた。 貸切露天風呂の案内>>1:32は読めないまま。 露天風呂から初日の出を見た猛者がいた様だが、 その連中が上がったおかげで、貸切状態になっていた。 岩で縁取られた風呂のかたちや、それがいくつも並んでいる光景が新鮮だった。 湯に入らないと寒くて死にそうだったが、 その分湯の温かさが身体の芯に染みる] うぅ…… きもちいー…… [しまりのない顔で、理恵の後ろにまわって腕を伸ばす。 膝に理恵を乗せてやんわり抱き締めるかたちは、昨日の情事を彷彿とさせる。 濡れて色っぽいうなじに思わず口を寄せてしまった。 水滴をちゅ、と吸うだけのつもりが、 べろりと髪の生え際まで舐め上げてしまった。 そのまま人間の耳に唇を寄せて、この孔にも舌を差し込む。 ここは流石に孔が拡がったりしないから、入り口をぺろぺろと舐めたり、入る訳のない孔を突いてざわざわと音を立たせるに留まる] 理恵は、どっちの耳の方がいいんじゃったか…… [白いうさぎの耳の先をひょいと優しく摘まんで、同じ様に耳孔を嬲る。理恵が答えずとも、反応が教えてくれるか] (7) 2021/01/07(Thu) 17:15:19 |
【人】 因幡 フウタ[反応を楽しみ切らない内に、脱衣所の方から物音と人の声が聞こえる。 まずい、誰か入って来るんだ。(お決まりの展開ですね) 中途半端な事もあるし、理恵の裸(タオル巻いてても以下略)を他人に見せたくない。 都合よく高い岩が湯に浮かんでいたから、 手を引いてその影に理恵と隠れた。 乱入者はきゃっきゃと楽しそうな若い男女グループだったから、 余計に理恵を晒したくないと思った] あいつらが出て行くまで待つか…… [それまでのぼせない様に大人しくしているつもりが、 結局、火照った理恵の頬や肩を見ていたら我慢ができなくて、 少なくとも耳いじりの続きをしてしまっただろう。**] (8) 2021/01/07(Thu) 17:15:35 |
【人】 因幡 フウタ[人が入って来ている間に理恵が起きなくて良かった。 部屋を整えてもらっている間に登場されたら、 黙っていないあいつの事だ、ややこしくなったかもしれない。 まぁ、時々か弱い少女の様におとなしくなったりもするから、そっちのパターンもあり得たかもしれなかったが…… ともあれ。 従業員が入って来た時も気付かずバーンと見やすいところに置いてしまっていたティッシュもりもりのゴミ箱を背に、 目覚めた理恵に水を飲ませようとした。 と、みのむしうさぎが不可解な注文を投げて来た。>>9 その毛布から手を出せばいいじゃないか、と目をぱちくりさせて、何故?と頭にハテナを浮かべる事数秒。 のろのろな思考は、諦めるという答えを出すまでも 少し時間がかかる。 そうか、仕方ないな。と、 理恵の顎をくいと上げて固定する。 理恵の唇にコップの口をくっつけて、零してしまわない様にゆっくり傾けた。 世話をしている様な感覚は、ちょっと悪くないと思った] (15) 2021/01/09(Sat) 0:11:57 |
【人】 因幡 フウタ[指輪を揃えて、拙い誓いを交わした。 理恵の方が深い笑みになって、「知っとる」と返される。>>11 彼女の「知ってる」はぶっきらぼうでも、己の心を満たすには十分な言葉。左手を空に翳した彼女の続けた言葉に、] せんす? [何の事かわからず首を傾げたが、 意味を理解するとふっと笑った。 理恵が顎を頭に乗せて来て、マウンティングの様だけれど、すりすりと頭を擦られる感触に、マーキングかと表情が和らぐ。 可愛い事をする。 ……あの、でも。 顎を頭に乗せて、目の前で胸を揺らさないでほしい。 いや、嬉しいけど、今はそういう場面ではないと思うから。 寄られ過ぎず、胸の頂が顔を掠める事もなかったかもしれないが、目の前に広がった視界だけで今は甘い毒だった] (17) 2021/01/09(Sat) 0:12:05 |
【人】 因幡 フウタ[何はともあれ、 初日の出を見る事に誘って、さっさと就寝する事に成功する。 理恵は話を途中で切られてご立腹だったが>>12、 夢の中の亀には届かず。 そして朝、理恵を起こしたら最初は寝ぼけていたものの、 勝手に勝負事にした理恵はすっかり元気になった。 早く起きたつもりだったが、 時はまもなく陽が昇ろうとしていたのか。 後ろにやかましい理恵の声を聞きながらベランダを覗き、 理恵が飛びついてくるのに構わずカーテンを引く。 夏空の真上の太陽と比べるまでもない弱い光なのに、 眩し気に目を細めた。 じわじわと色と表情を変える空と山の影をつぶさに見つめる。 言葉もなく同じものを目に映す二人が、 新しい太陽の光に照らされた。 きれいだ、と初日の出に思い、 隣で光を浴びる理恵の方を見て、同じ様に思った。 二秒で飽きる理恵がじっと見ていたから、きっと彼女にとってもよい光景だっただろうと思う。 初日の出がこれだと理解していなかったとわかれば小さく笑って、悪あがきをする彼女にも「そうじゃな」と苦笑した。 一緒に見る事に意味があったんじゃとは、 照れくさいから言わない。 まぁ初日の出の性質上、 来年からは言わずともわかってくれる気がする] (18) 2021/01/09(Sat) 0:12:08 |
【人】 因幡 フウタ[まだ朝も早い時間に露天風呂に誘って、 部屋の風呂とは違う気持ちよさに理恵と二人、寛いだ。>>13 膝の上に抱えた理恵に後ろからいたずらすると、くすぐったそうに笑い、それでも続けていれば顔に湯をかけられる。 ぶう、とうさぎみたいに鳴いて、でも懲りなかった。 くすぐったそうに笑う姿も可愛かったが、耳は性感帯らしいので、反応はこんなもんじゃないだろう。うさぎの耳も同じ様に愛でれば、さっきとは違った色の声が上がる。 うさぎの耳は毛に覆われていても、孔の近くはすべすべしているから舐めやすかった。 湯をかけられないのをいい事に、孔の味と反応を愉しんでいたが、腕を上げた理恵が耳を抑えた。その姿も可愛い…… と、乱入者の気配を察知して亀ならぬスピードで岩陰へ退避する。 都合よくそびえ立つ岩陰は、ぴったりとくっついてようやく二人分の姿を隠す。 理恵のひそひそ声には頷いただけだったが…… もう少し理恵の耳を弄りたかったのに、なかなか出て行かない連中に痺れを切らして、この場で強行した。 一緒に隠れようとしてくれていた理恵が、声を上げる。 見付かるかもしれない戦慄に、微かにどこかが疼く。 理恵に怒られても、瞳を熱っぽく溶かした] 隠れたい……理恵を見せたくはない。が、 見せびらかせたくないと言えば、 嘘にもなるかもしれん…… だって、理恵かわいいもん…… こんなに可愛いって、 見せびらかしたい……… [低く小さな声でぽつぽつ、熱を帯びたままの瞳で答える。 「……いや、やっぱり見せたくない」と首を振って訂正して、きゅうと理恵の身体を抱き締めた。タオル越しの理恵の肌に硬いものを押し付ける感覚に自分でも気付き、] (19) 2021/01/09(Sat) 0:12:17 |
【人】 因幡 フウタ ぁ……いや、 流石にこの場でしようとかは 思っとらん…… [と弁解したが、 岩の向こうから聞こえて来たメスの声にびくっと反応する。 楽しそうな声が艶を帯びてきて、ぱちゃぱちゃと動きがある様な水音も想像を煽る。 他のメスになんて興味はないが、 そういう気持ちが煽られてしまって…… 俺がそういう気持ちを向ける相手は一人しかいなくて……] ……… [触れたい。けれど触れられない。 抱き締めているけどこれ以上は駄目だ。 理恵を見下ろす瞳は、ふたつの感情を行き来して、逆に熱く色付いていた] …………… [理恵の火照って赤い顔にも誘われる様に、 ちゅう、と唇に口付けて、] (20) 2021/01/09(Sat) 0:12:32 |
【人】 因幡 フウタ うさぎに戻れ、理恵…… [導き出した答えは、自分たちにしかできない解決法。 岩陰から出て来て連中から注目を浴びる事、それも避けたいけど二人で出て行くのに比べたらどれだけマシか。 うさぎに戻った理恵を抱えて シュバっと岩陰からあらわれ、 男女グループが「うわ!」「きゃー誰!?」「なんだなんだ」とか騒いでいるのに目もくれず脱衣所に転がり込んで、入り口からうさぎの理恵を逃がすだろう] ゆっくり髪も乾かしてから出て来い。 外で待ってる。 こーひーぎゅうにゅうってやつを一緒に飲もう。 [無茶な事をして心臓がちょっとどくどくしているが、 すっかりいつもの表情と声でうさぎの頭を撫で、理恵を見送っただろう。**] (21) 2021/01/09(Sat) 0:12:35 |
【人】 因幡 フウタ[部屋に人を入れても眠っていた様だったみのむしうさぎの愉快な要求。水を飲ませろというそのミッションに応え、目を細めて水をゆっくり飲み下す理恵>>28を、色んな気持ちで見降ろしていた。 かわいいとか、子供みたいじゃなとか、でもどこか色っぽいとか、看病とかする時もこんな感じになるんじゃろかとか…… ほどほどのところでコップの傾きを戻すと、 理恵の満足そうな笑みが返る。 そうかよかったなと頷きもそこそこに立ち上がろうとすれば、 亀みたいにニュニュと腕を生やして、コップを持って行かれる。 何する気だと疑問が浮かぶ前に理恵がコップの水をぐいっと…… そして俺の口にちゅっと…… こぷ、と理恵の口から水が送られるが、 驚いて少し押し戻してしまう。 零れる──と咄嗟に思った手は 反射的に理恵の背を支え、口を吸った。 背を支えたおかげで距離が開かず、 水はうまくこちらに吸い込めた。 ごくり、と飲み込む音を聴かせるでもなく響かせて、 普段なら情事に雪崩込みそうだが、今は二人共へとへとだ。 ぽんぽん、とわざと子供にする様に頭を撫でて立ち上がれば、 変な空気は散っていっただろう] (37) 2021/01/10(Sun) 4:55:17 |
【人】 因幡 フウタ[そして初日の出を浴びた後。 理恵を露天風呂に誘って、ちょっとした戯れに誘って、それから、岩陰に誘う事になった。 こそこそしながら怒られて、 つい、変な事を口走った。いや本心だけど…… 理恵も何も言わず黙ってしまったじゃないか、とか冷静になる事もできずに小さな身体を抱き締めた。それがまた、勃起をわかり易く伝えてしまって、理恵に己の気持ちを伝える片棒を担ぐ。 墓穴をほりほりしているが、 弁解を聞いた理恵が、長い沈黙の後に頷く。>>30 こっちは湯の事を考えていた訳ではないが、 とりあえず追及がなくて助かった…… けれど事態が悪化へ向かう音が聞こえた。 悪化……否、寧ろ己が欲にとっては好機なんだろう。 理恵もしっかり向こうのメスの声を聴いている様だし、 まんまと瞳が燃え燻ぶり、映した理恵にも熱を分け与えるかのごとく、色を濃くする。 我慢がききそうになかったから、 これだけでも欲しい、と秘かに欲張る心で奪ったのは、唇。 拒まれない事に幸福を覚えるのは、何度目か。 離れ難くなる前に退いたが、理恵の吐息を唇に浴びてしまう。 震え出してしまいそうになる唇を引き結んで、解決法を提示した。 嫌だと一蹴された。>>31] (39) 2021/01/10(Sun) 4:56:06 |
【人】 因幡 フウタ[けれど他に方法が無さそうだと観念すれば、 めちゃめちゃ念押ししてくる。>>32 よく引用してくんな、そのセリフ。 悪いが俺だってよく覚えてる] 離さん! [今までのひそひそ声とは一線を画す小声で大きく頷いて、 目を瞑って首にひっついて来る理恵の背中を支える。 縮んだ理恵の、頭と後ろ足をしっかりと抱える。 というか理恵はすげー念押ししてきたが、昨日人間サイズの理恵を抱えて風呂からベッドまで移動したんだがな。 しっかり掴めるところが少ないという意味ではうさぎの方が難易度が高いと言えるかもしれないが、理恵に怪我なんてさせない。 速さと安全を両立した安心運搬を心掛け、そして遂行した。 男用の脱衣所の入り口から理恵を放った時、 震えていた様だったから心配したが、 服とか脱衣所に置いてるから一度分かれざるを得ない。 まぁ……もう少し撫でて落ち着かせてやったらよかったかもしれないが、乱入グループがこっちに来てうさぎの理恵が見付かったら面倒だもんな…… うさぎ捕獲隊がやって来るとびくびくしたが、 理恵ならうまくやってくれる筈……そもそもうさぎに戻らなければ何の問題もないのだし、と。 大丈夫大丈夫、と自分に言い聞かせる様に頷きながらも、 早々と着替えて外で理恵を待った。 詫びになるかわからなかったが理恵にこーひーぎゅうにゅうを奢って、腰に手を当てて二人で並んで飲んだ。通りすがりの宿泊客の微笑まし気な視線を感じたが、意味がわからなかった] (40) 2021/01/10(Sun) 4:56:35 |
【人】 因幡 フウタ[理恵の腹の音には気付けないまま、 竜宮城の朝の馳走が運ばれてきて、また二人で摘まんでいく。 理恵が珍しく、こちらにしか用意されていない食べ物に興味を持った。温泉卵だった。>>22 言われた通り小鉢を差し出して好きなだけ取らせたが、 反応はあまり期待していなかった。 わりといけるとの評価に少し驚いたが、それだけ。 小さな差異を、へぇ、と頷いて流してしまって、 そのあとのかりっとまんじゅうとやらに二人で舌鼓を打った。 土産屋にないのかな、探してみよう、と提案したりして、 元旦の朝飯もいい時間となった。 食後に御簾の中で二人で寛いでいると、 ふと、理恵が窓の方へ視線をやる。 そうかと思えばこちらに乗っかって来て、その突拍子もない襲撃に「ぐェ」と鳴いてしまうのは割とよくある光景。 だが目の前に差し出された問い>>23に、 沈黙──そして、こく、と喉が鳴る音] 理恵が、 いやじゃないんなら。 [そりゃ露天風呂のは落ち着いたが、 散らせなかった劣情の記憶はまだ新しいもので。 気が乗る様にしてみるけど、 気が乗らないんなら途中まででもいいだろうとは考えながら、 朝餉が運ばれる前に着替えていた理恵の服の裾に手を添わせる。 指先で縁をなぞるだけから、摘まんでぴら、と裾を持ち上げる] (41) 2021/01/10(Sun) 5:17:04 |
【人】 因幡 フウタ[くるんと理恵の身体を優しくひっくり返して、畳の上に敷く。 身体に指を添わせながら、するすると裾を引っ張り上げていく。 足の付け根や、腹や、胸を通る時は酷くゆっくりした動きになりながら、鎖骨あたりまで捲り上げる。 ワンピースを脱がせる時の独特の光景もまた、理恵だから、俺を昂らせる。 服を剥ぎ取らず中途半端に乱したまま、 下着に手を伸ばし………] (42) 2021/01/10(Sun) 5:17:15 |
【人】 因幡 フウタ[朝から熱いひと時があっただろうか。 何はともあれ、出掛けたのは昼過ぎ。>>24 初詣をやっているらしい。 己もそのチラシは読めなかったが、なるほど初詣は知っている。 箱に金を入れて何か鐘を振り回して願い事を言ったりアリガトウゴザイマスと感謝をするんだ。 神社が近くにあるとは思わなかった。 元旦に行けるなんて幸運だと思っていそいそ準備をしたが…… 流石は元日。 視界の奥の方まで人ばっかりだ。 住んでいる町でこんな行列は見た事がないと思う。 理恵の悪役の様なセリフに、あちらこちらでフッと笑う声が聞こえる。まぁゴミって例えるせんすが面白いもんな、と、〇ピュタ未視聴の俺は思うのだった。 夏祭りの様に食べ物をゲットしたり(今回は千円以上ある) 亀を撫でる理恵に「冬眠しとるに決まっとるじゃろ、おいそんなに触るな」と大真面目に 嫉妬 答えたり、理恵の手にポケットを占拠されたり、絵馬を書いたりした。文字は未だに苦手だが、「理恵」の字だけやたら上手い。 ばあちゃんが教えてくれて、それを真似て練習したからだ。 絵馬を覗き見ようとするうさぎを回避して、一番高いところに引っ掛けた。 「お前だって見せたくないんじゃろ?お互い様じゃ」と、ふんす、息を吐いて、他人様の絵馬を覗き見る理恵を「やめろ」と慌てて止める。 「せっくすとは交尾じゃ。せっくすれすが何かは知らんが、人には見られたくないもんじゃろきっと」と理恵を注意する声はそれなりにデカかったので、またまわりから視線を集めた。 何かもうようわからんから、静かに列に並ぼうかと 最後尾の方へ足を向ける。 まぁ理恵と一緒で静かに、なんて無理なんだが] (43) 2021/01/10(Sun) 6:48:26 |
【人】 因幡 フウタ[また他愛もない話で時間を潰すが、 今度は大晦日の夜より長い時間そうしていたか。 取り替えたマフラーは、理恵はいいんだが、俺がオレンジって似合わんじゃろと少し照れくさそうに俯いた。 理恵が俺のマフラーの匂いを嗅いでいたから同じ様にしてみた。 「うん、理恵の匂いがする」と目元を緩めるその姿は、まさしくバカップルの片割れに映るだろう。 割り込みは早々に諦めてくれてよかった。 ようやく辿り着いた賽銭箱に、同じく見よう見まねで小銭を投入。 上を見ると鐘じゃなくて浮いているのは鈴の様だったか。 そのあたりも見よう見まねで、 けれど挨拶と、心の中で願いを声にする時は真剣に。 願いは考えてきた筈なのにうまく言葉にできないでいる間に、 理恵は目を開いていて>>25、手も祈りのかたちから解いて、 隣の俺にすら聴こえない声で何かを話し掛けていた] (44) 2021/01/10(Sun) 6:48:35 |
【人】 因幡 フウタ[目を開いた時、理恵はもう願い事を終えていた様だったが、 ちょっと様子がおかしかった。 とりあえずここから退かないと、と思って理恵を促そうとしたら、名を呼んで、左手を握って来る] どうしたんじゃ……? [指輪の触れる感覚にも気をやらず理恵を見降ろすが、 理恵は口を開いたまま動かない。 視線が理恵の顔から下へ落ちる。 腹に当てている右手が気になる…… 否、右手が当てている腹が気になるのか…… こちらも口をきけないまま、 しばし時が過ぎる。 ようやく言葉を紡ぎ出した理恵は、 腹の中が動いとると言う。 その意味が理解できないのに、聞き返す事もできず、理恵の顔と腹を交互に見遣る。 左手を導かれるままに理恵の腹の上に乗せても>>27、 言葉も、触感も、まだ何も理解できない] (45) 2021/01/10(Sun) 6:48:38 |
【人】 因幡 フウタ[理恵がぶぅと鳴いた後、和らいだ唇で話し掛けた言葉を聞いても、まだ呑み込めない。ぽか、と口を開いて、 のろのろとその意味を紐解こうとして、 そうしてようやくその意味に心が当たれば、] ─────、 [ぼろっと、大粒の涙が零れた。 彼女の前でこんなにはっきり涙を見せたのは初めてだっただろう。 しかし言葉を探している内に時は過ぎていて、 既に何組か入れ替わった後の隣の、人の良さそうな中年女性が「痴話喧嘩はここじゃないところでやった方がいいわよ」とやんわり注意してくれた。 謝ろうかと思ったけどその言葉すら出てこなくて、こくっと頭を深く下げて、理恵の手を引いた。 列からも見えない落ち着ける場所まで来て足を止めて、理恵を振り返る。涙こそ出ていないが、少し情けない顔をしていただろう。 それは、恐れや哀しみからではない。 またしばらく言葉を探して押し黙ってしまったが、理恵をじっと見下ろしていた。 やがて、「あの、」と、カサカサに乾燥した唇を開いた] (46) 2021/01/10(Sun) 6:48:41 |
【人】 因幡 フウタあのな……… 俺……… ずっと、理恵との子が欲しかった…… [「本当に妊娠したのか?」なんて野暮な言葉は出て来なかった。 彼女がそうだと言うなら、きっと本当なんだと。 今までの俺ならぬか喜びを恐れそうなもんだが、彼女の顔を見て、何故か強く確信させられた。 おそろしくて哀しい夢をずっと見ていた。 理恵がいなくなるのが不安だった。 そんな事を過去の話として話す日が、いつか来るかもしれない。 けれど今は喜び合いたい。 彼女は俺との間に、 新しい命を授かってくれたんだ……] だから、 (47) 2021/01/10(Sun) 6:48:44 |
【人】 因幡 フウタ[冷たい左手で、理恵の小さくて白い頬をさする。 幸福で泣いてしまいそうだが、今は笑っていたいから堪えた。 これからもっと彼女を大切にしたい。 労わりたい、力になりたい、支えたい、一緒に幸せになりたい。 新しい気持ちがふつふつとたくさん湧いてきて、 今、俺は新しい自分になった気分だった。 言葉も交わしながら、 長い間、愛おしい人の顔をじっと見つめていただろう。 抱き締めるのもキスをするのも勿体ない様な…… 今までにない気持ちだった。*] (48) 2021/01/10(Sun) 6:48:53 |
【人】 因幡 フウタ[宿に戻った後、じゃあ酒は没収な、と亀齢は俺の鞄に移動させた。妊婦に何が駄目か詳しくは記憶していないが、酒が駄目な事は知っていたので早々に取り上げた。帰ったらばあちゃんとちびちび呑むのだろう。 元旦に竜宮城で眠った時、夢を見た。 目の前にかわいいうさぎがいる、あ、理恵か、と思ったら理恵が毛繕いをしてくれる。ぶぅぶぅと気持ちよさそうに鳴く声が聞こえて……あれ?と思ったら、俺の目の前、床にもふもふの両手が置かれていた。なんと俺もうさぎになって理恵に頭をぺろぺろ舐められていた──という、よくわからない初夢を見たのだった。 まぁ他に切ない要素もなかったので良しとしよう…… 閑話休題。 旅行から帰ったらばあちゃんに新年の挨拶をして、 それから、理恵が妊娠したと思うと伝えた。 ばあちゃんの紹介で婦人科を受診して、改めて妊娠していると告げられる。 そうだと思ったから取り乱しませんとも。 嬉しそうな顔を隠せてはいなかった様で、医者がよかったね!おめでとう!とめちゃめちゃ祝ってくれたが。 仕事仲間に報告……というより、 顔がふにゃふにゃだぞって指摘されて話す事になった。 「お前指輪なんて買ってる場合じゃねーじゃん」と言われて「……本当じゃな」と真顔で返したら仲間たちは笑って祝ってくれた。 稼がなければいけないのは本当で、 でも理恵との時間が削れるのは不本意だったので、 短時間でキツイ仕事なんかを主に請け負った。 毎日二人共必死で大変だっただろうけれど、 きっと時は、 あっという間に過ぎ去って、] (49) 2021/01/10(Sun) 8:00:11 |
【人】 因幡 フウタ[そこから、出産のその時までの時間は壮絶だった。>>33 理恵が悶え苦しんでいる姿は、 これまで見たどの姿よりも痛々しくて、弱々しい。 自分は痛みを味わっている訳でもないのにばくばくと心臓が騒いで、毛が逆立って、背筋が震える。 こんなの普通じゃないじゃろと医者や付き添ってくれたばあちゃんに喚いたが、どうやら一般的な分娩なんだという。 痛みに助けを求める理恵に顔を歪ませた。 「理恵、理恵」と何度も名前を呼んで手を握って勇気づけたつもりだが、気休めにもならない事は、理恵の様子を見ていてわかる。 己の無力さに打ちひしがれながらも、 何かできる事はないかと思い巡らせる。 そしてまた無力な自分を思い知り、心が確かに削れる。 それを繰り返しながら、理恵の要望にも応える。怒られるのは平気だ。何を言われても受け止めた。けれど、腰を揉む強さが全然弱いと文句を言われて驚く。かなり力を込めているのに、これ以上の痛みなのか、と想像するしかできない痛みを、呪う。 こんなに大事に守ってきた理恵を、己の子にとはいえ傷つけられている光景に、何故なんだとか、理不尽だとか、やめてほしいとか、俺がこんなにしたんだとか、俺が理恵にこんな痛い思いをさせているんだとか、様々な負の感情が俺を襲って、目を逸らしたくなる。 理恵が苦しんでるのに泣いていられないと、涙こそ流さなかったが、酷い顔をしていたんだろう。 途中でばあちゃんに「フウタちゃんも少し休んでらっしゃい」と言われたけれど、水を少し飲んだだけで、ずっと理恵の傍に居た。 理恵は……本当に綺麗な顔をしているのに、 今は美しい髪をぼさぼさに乱して、涙と汗で肌を汚している。 痛みに暴れている時は腰を揉んだりくらいしかできなかったが、ふと、眠ったのか、目を閉じた理恵の頬を濡れたタオルで拭う。 しかしそれもほんの短い間の事。 またここを涙が通るんだろうと思うと、胸が苦しい。 でも、本当にこんな事しかできなかった] (51) 2021/01/10(Sun) 8:00:23 |
【人】 因幡 フウタとき…… 理恵…… [胎動を俺にも伝えてくれた彼女の事を想う。 彼女と彼女の名前を決めた時の事を想う。 時間そのものが、 理恵の中で育ってる…… そうならば、 二人と逢える時間を、どうかこの世にもたらしてくれ。 理恵の小さな手を両手で握り込んで 二人の無事を祈った後、少しだけ眠ってしまった様だった。 理恵が遠くにいってしまう夢ではなくて、 小さな子を間に、三人で手を繋いでいる夢を見た気がした。**] (52) 2021/01/10(Sun) 8:00:26 |
【人】 因幡 フウタ[理恵の腹に命が宿っていると知った時から今までの月日より、 病院に着いてからの時間の方がずっと長かった様に感じる。 我が子の顔を見たいという気持ちより、 理恵の苦痛をはやく終わりにしてほしいという気持ちが正直大きかっただろう。 けれどどんな気持ちであったって、 理恵の為にできる事は増えはしない。 分娩台に上がってからも理恵に寄り添って、 もう俺の名を呼ぶ事もなくなってしまった理恵の手を握り、名前を呼び、弱い言葉で励ますだけ。 助産師が「大丈夫ですよ」と俺にも声を掛けてくれるが、理恵がいなくなってしまう想像は常につきまとった。 理恵の身体に次々と起こっている変化は、俺にはわからない。 医師たちが連携を取ったり理恵に教える為に状況を説明して、 俺はそれを聞いて理解をするだけ。 これまで何度も気持ちが通じ合う感覚を経験したのに。 幸せを分かち合ってきたのに、痛みを分けてもらえない事が酷くもどかしい。 理恵の涙が溢れては流れ、溢れては流れ…… このままじゃ干からびてしまう、と間抜けな心配をした時、 ふと、 水が沢山あった、あの竜宮城が脳裏によぎった。 こんな時に何を、と思う間もなく色んな景色を瞼の裏に見て…… あの日の、あの光と見紛う光が差し込む部屋の中で、 聴いた事のない声を耳にした。>>53] (57) 2021/01/11(Mon) 3:09:44 |
【人】 因幡 フウタ[ぼうっとしている間に、 医師たちによって様々な処置が施されたか。 じんわりと泣き声が耳でこだましていて、 「おめでとう」とか言われている声が届かない。 理恵に乗せられた物体を見て…… 理解していくと共に、徐々にこの目が見開かれた] 理恵ッ…… [あぁ、産まれたんだ、本当に。 本当に腹の中にいた、という理恵>>54の気持ちに共感しながら「ありがとう」と涙声で伝えたり、「平気か?平気じゃないよな」とかおろおろ挙動不審になったりした。 理恵の方が痛くて苦しくて大変だったろうに落ち着いて……否、疲れ切っているんだろうけれど、赤ん坊を見つめ、支え、早速乳をやる姿に驚き、感服した。 支える手は白く変色してなお、優しく赤ん坊に添えられている。 理恵が神々しい存在に思えてならなくて、薄らと目を細めた。 自分では気持ちは少し落ち着いたと思っていたが、今鏡に自分の顔を映したら自分で驚くくらい、まともな顔ではなかった様だ。 理恵も突っ込むほど余裕がなかったろうから、 教えてくれる人はいなかっただろうが] (58) 2021/01/11(Mon) 3:10:43 |
【人】 因幡 フウタ[伸ばした手は、理恵の頭に触れる] ありがとう、理恵。 本当に……ありがとう。 [そうしてもう片方の手を、ときの頭に。 手の感覚はなかなか戻って来ない。 けれどお構いなしに、長い間二人の頭を撫でていた。 両の指先に、両掌に彼女たちの体温が戻ってくれば、 両手にいっぱい幸せをもらった気になって、小さく俯いた。 どんな言葉をもってしてもこの気持ちは言い表せられないんじゃないかとも思うが、もし何事かと聞かれれば、「……嬉しいんじゃ」と、小さく震えただろう] (60) 2021/01/11(Mon) 3:12:37 |
【人】 因幡 フウタやれやれ…… [本当に置いていかれて肩をすくめる。 と、駄菓子屋の入り口からひょい、と覗く顔が見えた。 やり取りを聞いてはいたものの、ばあちゃんの手伝いをして接客中だったんだろうか。そんな顔をしている] 一緒に行くか? ふもとまでかけっこでもするか? [手招きすれば、目を輝かせてこちらに向かって来た。 よしよし、と頭を撫でれば、頬を染めて嬉しそうだ] 男は男同士で、ってやつじゃな。 [ふっと笑って少年の背を押してから、共に山を駆ける。 ふわりと、深緑色の年季の入ったマフラーが舞った。 山道の途中で、ときの人力車の背中を見付ける。 遠くて、遠ざかっていく理恵の背中を追い掛け走って…… ガシッと車の後方にしがみついたら、「わっ」とときが声を上げて足を止める。ぶーぶーと子供達二人から文句を言われながらも、横から身を乗り出し、理恵を抱き締めた] (65) 2021/01/11(Mon) 3:27:58 |
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