175 【ペアソロRP】爽秋の候 【R18G】
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視点:人 狼 墓 恋 少 霊 九 全 管
| ─王城の客間─ そ、そうか? そう言われると照れるな。 兄さんだってばっちり男前じゃないか。役者みたいだ。 [正装を纏う機会などほぼ無い田舎出身の冒険者。 明らかに衣装に“着せられている”側ではあるのだが、 すぐに馴染んでくれると信じよう。 髪が触れた感触がして、兄さんの方を見た >>0:13。 子供じゃあるまいし、と思ったのは嘘では無いが 嬉しくない訳が無い。 緊張していた口元も自然と緩んでいた。 俺にとって兄さんは、いつまでも手間のかかる弟で 面倒を見る対象だったから。 それは、多少なれど今もあると思う。 生まれてからずっと一緒だった、二人だけの兄弟。 俺は一番兄さんのことを知っている自信がある。] (0) 2022/09/18(Sun) 1:17:29 |
| あ、ありがとうセシリー……。 そう言って貰えると気が楽になる、って でも、もうそのことは忘れて欲しいんだけどな?? [ セシリーの緊張解し >>1:26は、十分過ぎる程に効果があった。 途端に語気が強まってしまう。 同時に、緊張に震えていた俺と違い、 セシリーの堂々とした立居振る舞いには 改めて彼女が王女だと実感し、尊敬の度合いが高まる。] (1) 2022/09/18(Sun) 1:19:02 |
| ─閑話:適材適所─ [この四人で旅をするようになり、今まで一年弱程度の期間しか経過していないが、危険な場所や、寿命が縮まる思いをする経験も何度も遭遇した。 中には昔からの伝統、若く美しい娘を生贄に差し出す村の問題に直面したこともあった >>28。 「私なら大丈夫」身代わり作戦を提案したのはヘンリ >>1:29。 確かに俺よりも強いと思うし、綺麗な方だとは思うし、任せるには最適の人材だった。 実際、セシリーが立候補したとしても、俺は大反対しただろう。] そうか、なら危険だが任せ……。 [ と言おうとした時、を遮ったのは兄さんだった。 >>1:30兄さんの言葉に、皆がはっと兄さんを、ヘンリを見て下を向いた。] ……確かに。危険だよ……な……。 兄さんの言う通りだ。ごめんヘンリ。 [ ヘンリと言えば、大丈夫よと普段と変わらぬ様子に見えたが、兄さんの反対に結局押し切られてしまっていた。] (2) 2022/09/18(Sun) 1:23:41 |
[ 同時に、兄さんの優しさを改めて思い知る。
兄さんは昔からずっと優しい。
あまり感情を出す方では無いから
誤解されることもあったかもしれないけど
実際は内に豊かな感情、とりわけ優しい心を持っている。
それは、生まれてからずっと一緒にいた俺が
一番よく知っている。]
| うん……… …ふぁっ?!?!?! [ 兄さんが無茶な頼みをしてくることは基本無いので 反射で頷いてしまったけど、頷いて一秒後 言葉の意味が脳に追いついて、変な声が漏れた。] なんで俺が!? いや、それなら ……うっ……。 [ 兄さんが、と言おうとしたけれど 狙撃役が必要だと言われた上、メンバーのバランス、 配置等を考えるとこうするしか無く。 ヘンリは「ならやっぱり私がやるわよ」と 言ってくれたけど、ここまで来て 「女装が嫌」な理由だけで引き下がれない。 俺は勇者だから。苦境や困難に立ち向かうのは基本。] (3) 2022/09/18(Sun) 1:32:57 |
| [ 結局、ふわふわロングウェーブのかつらを被り 素朴な街娘に扮し、なるべく声を出さないようにして 囮役は成功した──のだけれど。 今思い出しても恥ずかしい。 人助けの為とは言え、結果村長村民に神の如く崇拝され 多額の謝礼も貰えたとはいえ。 次から似たようなことがあれば「人形を作ろう」と 大真面目に提案もしたのだった。*] (4) 2022/09/18(Sun) 1:33:11 |
[ あの時、ヘンリの腕を疑っている訳でも無いのに
「危険に遭わせたく無い」と、兄さんの真剣な態度で
兄さんは、ヘンリに仲間、幼馴染、妹分以上の感情を
抱いているんじゃないか、と薄ら感付いた。
兄さんとヘンリが恋人同士になったら似合うだろう。
絵になる美男美女同士で、腕も立つ。
むしろ、是非結ばれて欲しいとまで思っていた。
その場合、俺にとってヘンリは
兄嫁だから義姉さんになるのか。
俺の方が誕生日が早いから、義妹になるのか。
ぼんやりと来るかもしれない未来を考えていたのだ。
兄さんにも、ヘンリにも、幸せになって欲しい。
きっと幸せになれるだろう、と信じていた。]
[ 俺は既に、ある人に心を奪われていた。
絵に描いたように美しく清らかで、淑やかな女性。
見た目は勿論、心も同等、もしくはそれ以上に美しい。
かといって芯は強く、王族としての強さも持ち合わせている。
俺のような田舎者が、彼女に釣り合うとは思っていない。
でも俺が勇者として魔王を倒し、世界を平和に導けたなら
彼女の横に並ぶ資格を得るだろう。
いつか来る、その時の為。
──否、その時を自ら掴む為に。
俺は今までより、もっともっと強くなる。*]
| じゃあ行ってくる。 晴れ舞台……楽しみに、してくれ。 転んだとしても、笑わないでくれよな。 [ >>0:39栄誉を受け取る時間が近付いてきた。 あまり緊張しない性質だが、流石に今回ばかりは度合いが違う。 国王直々に面するだけではない。 兄さんとヘンリには内緒にしているサプライズもあるから。 表情の変化で悟られないようにしないといけないんだ。
──……もうすぐ、夢が現実となる。**] (5) 2022/09/18(Sun) 1:45:48 |
[ ずっと前から決めていた。
今伝えると、私の、彼の心を乱してしまうから
全てが終わった後に。
私の想いを、伝える────と。]
[ でも、私は色恋沙汰の機敏なんて何も分からなかった。
エドゥが、アスが。それぞれ淡い想いを秘めていることも。
セシリーとは、恋バナをすることも少なくなかったけど
誰かを想っているらしい様子は、察することが出来た。
相手までは分からなかったけど。
何も知らない間が一番幸せとは言うけど。
その理論なら、私の幸せは明日以降訪れることになる。
その後どうなるかは、私達全員が誰も知らない。]
[ ────でも、もしかしたら。
聡く、仲間をよく見ている彼なら
なんとなく予想出来ていたのかもしれない。**]
| [ 宴もたけなわの頃、遂に国王より 直々に栄誉が贈られる時が来た。 目の前には国王、すぐ近くには 豪華絢爛なドレスを纏ったセシリー。 見慣れた僧服では無く、今の姿こそ本来の姿だと 改めて実感すると同時に、美しさに言葉を失う。
自分がこの場にいる現実と 先に在る未来を見据えて──。]
私ごときの身に、有り余る程の栄誉。 畏れ多いことながら、有難く頂戴致します。
[ 緊張はヘンリにも伝わっていただろう。 言葉も所々たどたどしくなっていたが 何とか言い終えた後、 国王の、セシリーの方を見て、こくりと頷いて] (15) 2022/09/19(Mon) 2:42:41 |
| ──そして。 この宴の場を拝借し、皆様にご報告がございます。 (16) 2022/09/19(Mon) 2:44:00 |
| (17) 2022/09/19(Mon) 2:44:55 |
| まだ出会って数年ですが、王女を愛する心は 誰にも、国民の皆さまにも負けない自信があります。 [ 徐々に頬が紅潮してきた。 眼前のセシリーも同じようになっているだろうか。 それでも、どのような表情でも 愛らしいことには違いないだろうが。 ──兄と仲間、二人の席を見る心の余裕は、無かった。* ] (18) 2022/09/19(Mon) 2:46:13 |
[弟は近くにいるのに遠い存在だった。
才能に恵まれてて
人を惹きつける不思議な力がある。
その上とんでもなく良いやつ。
俺と全然違うタイプの人間だ。
おしめを変えたこともあって
理解者ヅラで誰より長くそばにいる癖に
俺の方は弟のこと全然解っちゃなかった。]
[旅の中でアスベルは益々成長して
血の繋がった家族とはまた別に
大切な人ができたことは
雰囲気や会話の中で気づけたかも……?
でもそんな人がもし居るならその相手は
ヘンリエッタだろうと思い込んでた。
こんなに魅力的な子を
好きにならない訳がねぇだろう!!
……と、強火で視野が狭まってたんだ。
恋は盲目ってやつ。]
―――回想:飛鳥井村にて1―――
[ 小さな頃のことは、実をいうとあまり思い出したくない。 ]
[ わたしの故郷は、『飛鳥井村』という
この街から遠く、それこそ県を幾つも跨いだ先の、
とある山奥に嘗て存在した小さな村。
今はもうないその村に、わたしたち渡守の一族は
ひっそりと隠れるようにして暮らしていた。
厳密に言えば、渡守の一族のなかでも特に結界術と
戦う術に長けていた一部の者たちが、だけど。
『本家』と呼ばれる人たちがいることは
わたしも知っているけれど、彼等に会ったことは
これまで一度もない。
…たぶん、だけど。
これからも、彼らと会う機会はないんじゃないかな。
本家の人たちは、彼を…あの子のことを忌み嫌ってると
そう、先生から聞いているから。 ]
[ ―――あの村で、わたしたちの一族が何をしていたのか
まだ小さかったわたしには、よくわからなかった。
わたしの記憶の中の飛鳥井村の景色は、
それこそ他の人が思い浮かべるような、
穏やかな田園風景そのもの。
―――四方を、山に囲まれていた。
夏には深く緑を茂らせる山に囲まれていた。
―――田んぼや畑があった。
春には道端に蓮華の花、夏には向日葵や蒼い緑の田圃の景色。
秋は黄金色の野原のよう、冬は薄墨の空から降る牡丹雪。
―――家々は、古い家ばかりではなかったと思う。
紺や朱色の屋根をした古くて大きな母屋や、
庭に建てられた蔵の白い壁。
庭に植えられた樹々や草花の彩。
思い出そうと思えば、今も鮮やかに浮かぶその記憶は
―――今はもう、この世界の何処にも存在しない景色。 ]
[ 小さい頃、父や母や祖父母、周りの大人たちが
わたしを見る目は、決して善いモノではなかった。
わたしには兄が三人いたけれど、皆それぞれに優秀で
退魔の術に長けていた。
よく、父や母が周りの大人たちに、
「本家の連中に引けを取らない」「自慢の息子たち」と
話していたのを覚えてる。
…同時に、わたしのことは「絞りカス」だと話していた。
どれだけしごいてもまともに退魔の術を身につけられない、
優秀な兄たちの後に生まれてきた出涸らしで搾りカスだって。
…傷つかないわけじゃないけど、でも
術師としてのわたしが出来の悪い子だっていうのは
それはどうしようもない事実だったから。
―――仕方ないって、諦めていたんだ。あの頃は。 ]
[ せめて、それ以外のことはできるようになろうって
勉強も、運動もがんばった。…そのつもり。
でも、それでも兄さんたちには敵わなくて。
父母やあの村の大人たちにとっても、
同じように術師の家系に生まれた同年代の子供たちにとっても。
――どこまでいっても、どれだけがんばったとしても。
わたしは皆の中でどうしようもなく落ちこぼれだった。 ]
[ あれは、ちょうど夏の終わり。
日に日に涼しくなり、秋の色合いへと移り変わってきた頃。
…切欠は、なんてことのないちょっとした喧嘩だった。
わたしが鈍臭いと怒りだした兄の一人が、
近くにあった湯呑を手に
わたしの顔へ投げつけてきた。
幸い、中身は入っていなかったし、
直接湯呑が顔にあたることはなかったけれど。
ガチャン!と、近くにあった棚に当たって砕けて。
その破片が、額を掠めた。
最初に感じたのは、痛みより熱さだった。
それが急に冷えたと思った途端。
つぅ、と
赤色
が額から鼻先へと伝った。]
[ その赤を見た途端急に痛みを感じて、
泣き出しそうになったわたしに、
物音を聞いて駆け付けた母は言った。]
「何をやってるの!
本当にどうしようもない子ね、お前が間抜けなせいで
兄さんが怪我をしたらどうするのよ!」
「……ああもう!
お前を見てると本当にいらいらするわ。
さっさと片付けなさい。
怪我を増やしたり、床を汚したら承知しませんからね」
[ 違うと、そう言いかけたわたしの言葉をぴしゃりと弾いて
母は兄を連れてその場を離れてしまった。 ]
[ ―――悲しかった。
もう、腹を立てる気もしなかった。
湯呑を投げた兄に対しても、此方の言い分も聞かず
一方的に悪者扱いした母も。
ただただ悲しくて、どうしようもなく胸が苦しくて。
……そうして気がついたとき、
わたしは割れた湯呑を片付けることもせず、
額から流れる血を拭うことも忘れて、
泣きながら家を飛び出していた。 ]
[ すでに陽は西に深く傾いていた。
頭上に広がる空は半分以上、濃藍色の闇に染まっている。
反対側、西の向こうに陽の光が薄らと、
茜の残照を残して消えかかっているのが見える、
そんな時間帯。
そんな黄昏時の田舎道を、ただひたすらに駆けていた。
それなりに長く道を走っていたはずだけど、
不思議と村の誰ともすれ違うことはなかった。
どこへ向かおうか、
あてなんてどこにもありはしなかった。
ただ、あの家にいることに小さなわたしは耐えられなかった。
つい数時間前まで通っていた小学校の前を駆け抜けて、
なにかあったとき村の人たちが集まる集会所を通り過ぎて
そうして、気がつけばわたしは山のほうへと向かっていた。]
[ 初詣や夏祭りでいったことのある山の上の神社ではなく、
その裏側の、殆ど人も通らないはずの森の中へ。
どうしてそこへ向かおうと思ったのか、
今でもよくわからない。
いつだったか、
「森の中に小屋があったからそこを秘密基地にした」と
同級生の男子たちが話していたのを
なんとなく、思い出していたからかもしれない。
知ったところでどうということはないし、
何より、今となっては確かめようもないことではあるけれど]
[ やがて道の舗装も街灯も途切れて、
森の中に入ったときは、ほぼほぼ真っ暗だったはずなのに。
不思議と、怖いとか恐ろしいと
そういう気持ちにならなかったのは
季節外れの蛍がゆらりゆらりと周囲を舞って
あたりを照らしていたからかもしれない。
あるいは、息を整えようと立ち止まったところで
先程切った額の痛みが急に戻って来たからか。
痛みが戻ってくるのと同時に、
先程の悲しみもまた戻ってきて。
堪らず、その場に蹲ると大きな声を上げて泣いた。
誰もいないと思ったから、
いつもより大きな声で思い切り泣いた。 ]
[ ―――リィン、と。
小さく、鈴の音がしたのはそのとき。 ]
……っ、……だぁれ?
[ しゃくりあげながら、涙にぬれた目元と頬を拭って
聞こえてきた鈴の音へと首を巡らす。
妖や獣の類だとは思わなかった。
だって、この村と山々は村の長老や偉い大人たちが
厳重に結界を張って守っているのだから。
人間にとって危険な獣は勿論、並みの妖だって
そうやすやすと、村の領域に入り込むことはできないと
大人たちは村の子供たちにそう何度も話していたのだから。
それになにより――今考えれば不思議なほどに――このとき、
わたしはその鈴の音を怖いとは思わなかった。
遠く森の奥から聞こえてくる鈴の音も、
わたしの優しく照らす蛍たちのことも。 ]
…。
[ ポケットに入れていたハンカチで涙と、
それから額の血を拭ってから、
意を決して森の奥へと歩を進めた。
そうして辿り着いた先にあったのは洞窟だった。
只の洞窟ではなくて、
ものすごく大きな岩を削り出して作ったような其処に
重そうな黒鉄の扉と何重もの注連縄で封された
如何にもな様子の洞窟だった。 ]
―――……。
[ 怖い気持ちが、ないわけじゃなかった。
それでも、意を決して其処へ向かおうと思ったのは。
鈴の音のように聞こえていた其れが、
…どこか、嗚咽に似ていると気づいてしまったから。]
……だれか、いるの?
[ 黒鉄の扉の前に近づけば、
鈴のような嗚咽はよりいっそう近くなる。
そうして一言声をかけたところで
―――ぴたりと、それまであたりに聞こえていた音が止む。
同時に、周囲の空気が変わったのも伝わって。 ]
だれか、いるんだよね?
[ 問いかけに返答はなかった。
それでも、きっとここには誰かがいると
そんな確信めいた想いと共に、そっと扉に手をかける。
ギィィ、と。重く、頑丈そうなそれは
此方が拍子抜けするほどあっさりと開かれた。 ]
……。
[ おそるおそる扉の向こう、洞窟の奥を覗きこむ。
―――そこにはただ、真っ暗な闇があった。 ]
…ねえ、だれも
[ ―――いないの、と。
そう、言いかけたとき。
覗き込む体勢を崩しかけて、咄嗟に一歩
洞窟の中に足を踏み出した。
それと同時に、固い岩場だったはずのそこは
砂のように脆く崩れて。
悲鳴をあげる間もなく、わたしは洞窟の中へと
転がり落ちていった。]
……あいたた……。
[ 尻餅をついたまま、小さく呻く。
洞窟の中はひんやりとして、ただひたすらに真っ暗で。
まるで月のない夜みたいだ、なんて
そんなことを思っていれば ]
『……子ども……?
どうして、こんなところに……』
[ ぼそ、と暗闇に声が聞こえるのと同時。
周囲の闇に、
赤
い眼が浮かび上がる。
それもひとつふたつではなくて。
―――…
十
、
二十
、
五十
、と
わたしの四方を取り囲むようにして
無数の
赤
い眼が、爛々と輝いて此方を見つめていた。
―――それが、わたしと彼…辰沙との出会いだった。 ]
| 私はセシリー王女に 多くの幸せと、幸福と、愛を頂きました。 王女がいらっしゃらなければ 今、私がこの場にいることも無く 世界も不安に怯えたままだったでしょう。 世界を守った次は、愛する人を守りたいと思います。 人生を、生涯を──この命を賭して、永遠に。 もう一度……いいえ、何度でも申し上げます。 セシリー姫、俺は貴女を 愛しています 。 [ しゃがみ込み膝を立て、セシリーの手を取り 軽く口付けを落としてから、頭を上げる。 瞳に映る愛しき人の姿は、一層美しさが際立っているが、 見慣れた澄んだ眼差しは、俺の良く知る 普段旅をしていた頃と、何ら変わらない。] (37) 2022/09/20(Tue) 22:09:08 |
| 俺の言うことを、何でも覚えてくれて 俺が転ぶなら、君も転ぶと告げてくれた。 どんな小さな冗談でも、軽口でも。 君が云う言葉、全てが愛おしくて仕方がないんだ。 [ 少し前の事を思い出し >>24>>25、優しく笑みを向ける。 緊張していない訳では無い。 ただ、瞬きをすることすら惜しかった。 この美しい人を、姿を、目に焼き付けたかった。] (38) 2022/09/20(Tue) 22:09:18 |
| [ 間も無く、ぱちぱちぱち、と拍手が背後から起こった。 国王──セシリーの父だった。] 「皆の者、勇者の心はこの通りである! 勇者殿の人柄、我が娘への愛情は、余が保証する。 セシリーも勇者殿を愛しているならば、何ら問題は無い。
ゆくゆくは娘のセシリーと 世界を平和に導いた勇者アスベル・レイフェルスが 契りを交わすことを認めようと思っておる。 余も王として、父として、一人の人間として 心より祝福するつもりである!」 (39) 2022/09/20(Tue) 22:09:37 |
| 「おめでとうございます!」 「姫様と勇者様に幸あれ!」 「新たな記念日が誕生した!」 [ 再び会場が歓声で沸き上がり 祝福の声が四方八方から響き続けていた。*] (40) 2022/09/20(Tue) 22:09:40 |
[ 兄さんとヘンリ、どんな顔しているだろうか。
このことは内緒にしてきたけど、
事前に王やセシリーには話を通していた。
もう式の日程も決まっている。
兄さんや母さんに苦労を掛けさせることもない。
むしろ、良い暮らしも出来るようになる。
ヘンリは、セシリーの護衛件専属の騎士に
なれば良いだろう。
腕の立つ女性、かつセシリーとも友人同士。
ヘンリの為にある役職と言っても過言では無い。
そしたら、俺も、セシリーも安心安全で手放しで喜べる。
と思っていたのだが。]
……?
[ 兄さんとヘンリの姿が見えなかった。
何せこの人数だ、別の場所に移動したか、
単純に人の少ない場所に居るのかもしれない。
気にはなったが、二人はいつでも会える上
大勢に質問攻めに遭ったのもあり
しばらくの間動けずににいた。
二人のリアルタイムの反応も見てみたかったが、
時間ならいくらでもある。
後で兄弟仲間水入らずで
のんびり未来を語り合うのも良いだろう、と。
何も知らず、呑気に考えていた。*
]
――寮から街へ――
[ 朝食の片づけを済ませて、
部屋の外で彼女の着替えが終わるのを待って。
諸々を済ませた頃には十一時前になっていたか。
寮の門を出ようとしたところで、
ちょうどすれ違うようにして顔見知りに会う。 ]
『あ、先生だ!』
[ 彼女のいうほうへ視線を向けると
此方とは反対に寮のほうへと入っていく人物。
彼にも姿が見えるよう――といっても彼のことだから
隠形していても僕の気配は察知しているだろう――実体化して
人前に姿を現す。
たまたま通りかかった学生たちの何人かが
中空から突然現れた僕の姿に驚いたような声を上げる。
それに構わず、目の前の教師に小さく目礼してみせた。 ]
…先生、今日は。
[ 真浄寺 陽仁。
この学園の教師であり、この国でも有数の現役退魔師であり、
―――そして、幼少期に故郷を失った彼女を引き取り、
この学園に入学させた保護者でもある。
…そして、僕にとってはどうにも苦手な人だ。 ]
『やぁ辰沙。
相変わらずシャイボーイだね君は。
もう少し顔の筋肉を柔らかくしないと
女の子にモテないよ?』
…。
[ もにもにと頬を不躾に摘ままれて揉まれる。
どうしてこの師弟はやることがそっくりというか、
似てほしくないところばかり似てしまうんだろう? ]
『お?
辰沙も成長してるんだなぁ。
ちゃんと考えてることが顔に出るようになったね』
『あ、先生もわかりますか!?
辰沙だって、ちゃんと成長してるんです』
[ ……やめよう?
そこで僕を弄る方向で一致団結するの、本当にやめよう?
必死でぺちぺち、頬を揉む手を払ってから。 ]
…それより、ここに貴方がいるのは少し珍しいのでは?
『あ、そういえばそうだね』
[ 彼は寮監ではないし、職員寮に入っているわけでもない。
郊外の住宅街に今は奥さんと一緒に暮らしている。
見たところ、彼女の様子を見に来たとか
用事があるというわけでもなさそうだ。 ]
『あー、わかっちゃった?
実はねー、ここ数日天文科のほうでちょっと色々あってね。
ゆうべは徹夜で詰めてたのさ。
で、ついさっき一段落ついたんで
これから仮眠室で惰眠を貪りにいくところだよ』
…。本当に?
『ほんとだよ!?なに疑っちゃってんの?
よりによって君が!!』
『んー…でも先生だものね……』
『ちょっとちょっと!!
なに理音ちゃんまで先生のこと疑っちゃってるのさ?』
…。
『んーなになに?
日頃の行いが悪いからだ、って?』
[ 心外だーと言わんばかりに
僕の顔から胸元までずずず、と、舐めるように
先生が視線を走らせる。
いや、まぁ、うん。
当たらずとも遠からずですね先生。 ]
『……はー。
とりあえず、先生に信用がないことはよくわかりました。
それはそれとして、二人はデートかい?
なら、楽しんでおいで。
たまには人並みに羽を伸ばすことも重要だからね』
[ 言いながら、彼の大きな手が僕の頭の上へ。
一瞬身構えるものの、その手は優しく僕の頭へ載せられて
わしゃわしゃと軽く頭を撫でられた。
隣にいた彼女にも同じように――彼女に対しては、
髪型が乱れないように軽く触れる程度に――頭を撫でて。
にかっと、如何にも人の悪そうな笑みを浮かべてから
ひらり手を振って建物のほうへと歩いていった。 ]*
…なんか、ものすごくはぐらかされちゃった気がするね?
[ 上手く、言葉にできないけれど。
同じように頭を撫でられた辰沙も
なんだかとても、複雑そうな顔をしてる ]
…ほら。難しい顔しない。
今日はこれから楽しい一日にしないと。ね?
[ 彼の頬に再度、今度は包み込むように柔らかく触れる。 ]
よーし。それじゃあ最初は映画に行こう。
[ 今からバス停までダッシュすれば、
ちょうど駅前行きのバスに乗れるはずだから。
そこから駅前のシアターに行って、映画をみよう。 ]
ほら、辰沙もダッシュ!
せっかくだから一緒に競争ね!
[ 言い終わるより前に、
勢いよく飛び出してバス停まで駆けていく。
人間のわたしと__の辰沙では
勝負にならないなんてわかりきっているけど、
そんなことはどうでもよくて。
ただ、小さくても色んな思い出を、彼と一緒に作りたいんだ。
]*
[ 気付いていなかった。
愛する人の想い人の存在に。
セシリーが好きな人が居る素振りを
何度か見せていたのは知っていた。
でも、それが
同じ人とは思わなかった。
──何故、気付けなかったの。
勇者と姫、お似合いに決まってるじゃない。
私なんかが入る余地なんて、最初から無かったのに。
無意識の間に、真相を知ることを
避けていたのかもしれない。
アスが、セシリーに。
セシリーが、アスに思いを寄せていることを。]
[ 私はアスベルのことが
本当に大好きだったんだ、と改めて思う。
痛い。苦しい。辛い。
心が、肩が、身が。
ぶるぶると震えていく。
眩しすぎる光に覆われて
先が、未来が。何も見えない。
[ わたしと辰沙の競争の行方はまぁさておき。
駅前行きのバスにはどうにか滑り込みで乗り込むことに成功した。
ついでにこれまた運が良いことに座席に座ることもできたので
二人で座って、これから見る予定の映画について簡単に話す。
それから、お昼ご飯に何を食べようかとか、
その後駅前の大きな書店に行ってみようかとか、
書店併設のカフェの人気メニューがどうだとか、
それとも駅からちょっと歩くけれど、
最近リニューアルしたという水族館にいこうかとか。
そんなことを話していれば、あっという間に
バスは駅前のロータリーに。 ]
こっちだよ、辰沙。
[ 彼の手を引いて駅前のシアターへ。
わたしより頭一つかそれ以上に背の高い彼が
おとなしく手を引かれる様子はなんだか微笑ましい。
うん、わかる。
この街に来て半年だけれど、わたしだって
実質学校と寮を往復するだけの毎日で、
なんなら夏休みだって返上しないといけなかったのだから。
いやまぁそれはそれで楽しかったけれど。
生まれて初めての海とか。]
[ 閑話休題。
何が言いたいって、わたしも辰沙も
この街の見るもの全てが初めて尽くしで。
とても、楽しい。
その証拠に、わたしに手を引かれながら、
きょろきょろと落ち着きなく視線を彷徨わせている。
そんな辰沙がなんだか新鮮で、
ああ、学校を抜け出して正解だったなと思う。
そうして辿り着いたシアターで、チケット二枚と
ポップコーンとドリンクをそれぞれ二つずつ購入する。
パンフレットやグッズも気になったけれど、
まずは映画を観てからにしようと意見が一致した。 ]
[ そうして、鑑賞後。 ]
……ぐすっ。
[ さっき辰沙と話した駅前の書店の併設カフェ。
地図アプリで確認したら意外と近かったので
映画が終わったらそこで遅めのランチにしようと、
バス移動の時点で二人で決めていたのだけど。
正直、映画が終わってからも
涙が止まらないというのは予想外だった。
いや、正確にはシアターを出る前に一度止まったけれど
そのあとふとしたタイミングで思い出し涙が出てしまう。 ]
…そんなに泣かないでよ。
[ どんな顔をすればいいのかわからなくて。
ひとまず案内された席に彼女を座らせれば、
ハンカチと水の入ったコップを差し出す。
他の人たちにこの状態を見られたらなんて思われるか。
此方を気遣ってボックス席に案内してくれた店員さんには
素直に感謝しかない。 ]
……うん。ごめんね。
[ 彼が差し出してくれた水を飲んで
それから深呼吸してどうにか気持ちを落ち着かせる。
そんなに悲しい映画だったのかと言われれば
それは少し違っていて。
この国が誇る有名な監督が製作した、
半世紀もの歴史を持つ大人気特撮ヒーロー映画。
結末自体は、ハッピーエンド…なのかしら?
少なくとも、彼は自分が守りたいものを命を賭して守って
そして、彼の仲間たちの許へ帰ってこれたのだから。
それでも、涙が止まらないのは。 ]
あのひとが……映画のなかの主人公が、
辰沙に重なってみえたんだ。
[ 感情表現が下手で、少しどころじゃなく人間離れしていて
でも、とても優しくて純粋な、人ではない主人公。
そんな主人公が、物語の終盤。
地球を救うためにその身を賭してラスボスを倒しにいって
そして発生したブラックホールに吸い込まれて――… ]
……僕に?
[ 正直彼女の言葉がピンと来なくて戸惑ってしまう。
どう考えても、僕が彼と似ているとは思わない。
強いて言えば色合いがほんの少し似ているかもしれないけど。
でも、似ているというのなら。 ]
僕は寧ろ、君のほうが彼に似ていると思うよ。
[変なところで人間離れした献身を発揮するところとか、特に。]
…。
[ 正直、はじめての事態に
どう声をかけたらいいのかわからなかったから、
よしよしと、先程先生がしていたように彼女の頭を撫でる]
……僕は、きっとヒーローにはなれない。
[ どちらかといえば、
僕はラスボス側の存在ではないだろうか?
何より、僕は命を賭してまで誰かを守ろうと思ったり
あの映画の主人公のように誰かを『好き』になったり、
大切になんてできないと思うから。
―――…たった一人、目の前のを除いて。
もしも明日、世界が滅ぶとして。
自分の命と引き換えに、その世界が救われるとして。
僕はそのとき自分の命を差し出せるとは
どうしても思えない。
ずっと、人間たちから『 』と呼ばれてきた。
彼等のことを思い出すたび、胸の奥を深く抉られるような
この身を焼かれるような、どうしようもない、
やり場のない感情が心を苛む。 ]
……理音。
[ いつもことあるごとに彼女が僕にそうするように、
いつか幼い彼女にそうしたように
彼女の頬に自分の手を添える。
僕は、きっとあんな献身的な行動はとれない。
ヒーローなんてものにはきっとなれない。
なりたいとも、思わない。
―――それでも。
もしも君が望むことがあったなら。
或いは彼女が危機に陥って、僕の命一つで
それらを贖うことができたなら。
―――…そのときは、きっと。
僕は命を投げ出すことを選んでしまうだろう。 ]
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