【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[チア部には顔を出せないまま、数日が過ぎた。 あの本には相変わらず便箋が挟まったままで、私とゆう君をつなぐ奇妙な力も宿ったまま。 この本は、というか、大抵の本は初めてで、>>0:L6 絵がたくさん無いときつい、っていうのは、もはや漫画以外読めませんって意味。 だけどそんなことは黙っておこう。 ちょっと背伸びをしたいのは、あなたと話したいからで。] (26) 2020/09/30(Wed) 6:15:12 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[ユウ君は読書家なだけあって、言葉をよく知っていた。私がノリと勢いで押し切る表現に、丁寧に名前がつけられていく。 ……写実的、なんて言葉>>0:L6授業以外で使えるんだ。 電子辞書で「写実的」を調べてみても、結局よくわからない。 別にネットでも調べられるけど、 スマートフォンを見たくないのは、 現実に呼ばれてしまうから。 ] (27) 2020/09/30(Wed) 6:17:16 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[見えないものを本から感じ取るのは、私にはできやしなくて。 せめてもの訓練に、便箋のすみっこに、ゆるいイラストを描いて遊んだ。 例えば、野ばらから尻を突き出したミツバチ。 ちょうど、国境のところには、 誰かが植えたということもなく、 一株の野ばらがしげっていました。 その花には、朝早くからみつばちが 飛んできて集まっていました。 ──「野ばら」 たとえば、目を細めて針の穴をみつめるおばあさん。 おばあさんは、もういい年でありましたから、 目がかすんで、針のめどによく意図が通らないので、 ランプの灯に、いくたびも、すかしてながめたり、 また、しわのよった指先で、 細い糸をよったりしていました。 ──「月夜と眼鏡」 目の玉を一つ貸し出すことはできなくても、読書音痴な私に見えているものを、少しでも伝えたかった。 ついでに、自分では気づかない読み間違えを指摘してもらえるメリットもあった。 香具師にお線香を持たせてみたら、全然お香は持っていないらしい。 そしてこうぐしじゃなくてやしだった、日本語難しい。 「月とあざらし」を書いた時は、あざらしのつもりでラッコを描いていたことに、指摘されるまで気づかなかった。ほんと、なんで間違えたんだろう。] (28) 2020/09/30(Wed) 6:19:15 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[ユウ君に言葉を教わるうちに、少しずつ生活に言葉が滲んでいく。 例えば、夜明け、生卵を飲みながら、ぼうっと窓の外を眺めているとき。 星の光は、だんだんと減ってゆきました。 そして、太陽が顔を出すには、 まだ少し早かったのです。 ──「ある夜の星たちの話」 例えば、林の中をランニングしているとき。 おたけは、ふるさとの林の景色を目に描いて、 雪の降る時分になると、 山から、うさぎが落ちているしいの実や、 いろいろな木の実を拾いに来ることなどを話しました。 ──「しいの実」 紅葉もまだの林の中に、雪景色と、それから突き出した長い耳を見た気がして、 ああ、確かに綺麗だ、と、思う。 日常に流されて取りこぼしてしまう風景を、ユウ君はあの本から受け取っていたんだろうか。 風景だけじゃなくて、「もんにょり」で流して、無かったことにしまう感情も。] (29) 2020/09/30(Wed) 6:20:15 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[バスケ部にユウって人いるのかなって友達に聞いてみたら、たくさんいた。ゆうたろう、ゆうき、ゆうと、ゆうや、ゆうすけ、あたりまで来たところで、調べるのをやめた。 別に、バスケ部のユウ君と話したいわけじゃないし。 手紙のやり取りが楽しいから、それだけでも十分。 ……だけど、テーブルと飲み物をはさんで、向かい合っておしゃべりをするのには、ちょっとだけ憧れるかな。 ……ソーシャルディスタンスで斜め向かいになっちゃうけど。]** (30) 2020/09/30(Wed) 6:22:27 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[ユウ君と話すことで、少しずつ言葉を覚えていく。 一度間違えた言葉は、かえってよく記憶に残った。特に香具師。 お香売らないなら「香具」なんて漢字使わないでほしい。 ……まぁ確かに、なんでアロマ屋さんが人魚を欲しがるんだろ、生臭そうなのに、って、ちょっと不思議には思ったけどさ。] (44) 2020/10/01(Thu) 6:07:51 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[あざらしとラッコを間違えた理由は分かっている。 「SEA OTTERS」。 クマとか水牛とか、他のチームはもっと勇ましい動物の名前を借りてるのに、うちはラッコ。 海にぷかぷか浮かぶ、のんびり癒し系動物、ラッコ。 せめてスイミングだったら分かるけど、陸の競技で、ラッコ。 名づけについて、部員たちの間で囁かれている逸話がある。 「チア部を立ち上げた部員が、雲を泳ぐラッコを見たんだってさ」 いくらなんでも無理があると思う。 せいぜい、雲みたいなラッコ、だろうに。 と、言いながらも、私はちょっとだけラッコの絵が上手くなってしまった。 あざらしだったはずなのに、おもわずラッコを描いてしまったのも、きっと癖みたいなもの。 だいいち、私だって初代のことを笑えない。 雲を泳ぐラッコなんて、よく思いついたよねって笑ったけど。 ユウ君との不思議なやりとりだって、きっと「よく思いついたよね」って笑われるような妄想話。 それとも、「頭大丈夫?」って、心配されるかな。 楽しいから、何でもいいけど。] (45) 2020/10/01(Thu) 6:09:01 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[『乳より先に肩を褒めろ』って言ったらフラれた、とは言えなくて隠す。 元カレたちと長持ちしてたら、手をつないだり、キスをしたり、その続きもしたのかもしれないけれど、そのまえに別れてばかり。 だって、「喧嘩したら負ける」とか「ワンパンで人殺せそう」とか「足太くね?」とか。 もっとか弱い方が女の子らしいのは分かってる。 だけど、私の強さに目をつぶって、女の部分だけを求められるのが気持ち悪かった。 私のこの大きな体は、メンバーを支えたくて、チアでみんなを笑顔にしたくて、死に物狂いで手に入れたもので。 喧嘩のためとか、誰かを傷つけるためのものじゃない。 だから、この体じゃモテないのが分かっていたって、卑屈になるのだけは、絶対に嫌だった。] (46) 2020/10/01(Thu) 6:10:12 |
HNアキナ 本名は 早乙女 菜月は、メモを貼った。 (a10) 2020/10/01(Thu) 6:13:40 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[うんと甘いコーヒーを片手に、本を取り出す。 便箋を開くのは、ミルクを注ぐのに似ている。 スマートフォンに見向きもしないで、マドラーを回す時間が好きだ。] (58) 2020/10/02(Fri) 6:32:58 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月[本を返しに行かなくても返事が返ってくるのは、正直言って驚かない。 もちろん変だけど。 それよりも、端々から滲む、人と人との距離の近さ。 それは失われてしまった一年前の日常で。 ── カラオケ行ったの? まあ、禁止まではされてないけど。 失恋を励ますにしては、勇気のある場所チョイスだね。 ── おじいさんに、来いって言われる? 周りのお年寄りは、電車も怖がってたのに。 ユウ君との会話が、少しずつ、ずれていく。] (59) 2020/10/02(Fri) 6:34:29 |
【人】 HNアキナ 本名は 早乙女 菜月──── あ、 [ぴ、と紙の隅が破けた。 何度もやりとりして、消しゴムをかけるうちに、少しずつ痛んだ紙は、とっても書きにくい。 ところどころ毛羽だった紙面をそっと撫でて、裏側からセロハンテープを貼る。 あとどれぐらい、ユウ君とこうやって話ができるんだろう。] (61) 2020/10/02(Fri) 6:37:20 |
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