人狼物語 三日月国


105 身内村

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【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[でね、それでね、と外出から帰った母親に
 矢継ぎ早に今日の出来事を報告する子どもみたいに
 面白おかしくさっきまでの話を聞かせたら
 清華はどんな反応をしてくれたろう。

 なんとなく子どもじみた甘え方をしてしまうのは
 再度の離別への恐怖ゆえか、
 それとも未だに「僕」と“僕”と彼女の関係の
 しっくりくる置きどころが分からないせいか。]


  お店は、どうだった? 
  新しいメニューの反応とか。


[もう桃や葡萄の盛る時期は過ぎた。
 カフェでも暖かなメニューが愛される時期だろうか。
 そんなことを考えながら、尋ねよう。

 自分の店を持って、たくさんの人を笑顔に。
 そんな大事な夢が「叶った」と思えるまで。]
(12) 2021/10/28(Thu) 4:07:28

【人】 ろぼ先生 夏越 清正



  それでね、あの…………。


[男は不意に言葉を区切って、
 握ったままのマグカップに視線を落とす。
 誰のものでもない「お客さん」のやつじゃなくて
 “僕”のマグカップが欲しい。
 前に買ったのはひどい騒動のせいで
 割れてしまったから。

 そう言おうとするのだけれど、
 誘うことで要らぬ傷を開きやしないか。
 少し心配で、頭の中で言葉を探す。
 
なるほど、言葉に出すのって照れくさいし難しい。



  あの、一緒に、お買い物行きたい。
  清華が、嫌じゃなければ。


[何度かつかえながらも、言った。
 ちゃんと目を見て。頑張った。
 ……“僕”は、「僕」とは違うのだから。]*
(13) 2021/10/28(Thu) 4:17:54
村の設定が変更されました。

【人】 春野 清華


 振り返って笑う、そのふにゃりとした表情を。
わたしはかつて、暮らしていたその人の
そんな表情を、うまく思い出せなかった。

思い出せないのならば、見ていないのと同じだろうか。
……それとも、思い出せないのではなくて、
本当はそんな表情、見せてくれたことは
なかったのかもしれない、とさえ。

 
(14) 2021/10/29(Fri) 1:04:13

【人】 春野 清華



嬉しそうに、楽しそうに話してくれる彼に
こちらも微笑みを浮かべて頷き返す。
 
その内容は確かにW彼Wの見つけて手にした、
大切な大切な日々のかけらだった。

W彼Wと「彼」が別のひとなのだと実感するたび
重ねてしまう罪悪感がつきんと痛む。
わかっているのに、うまく処理できない。


 「うん、そっか、いいね、」


 一生懸命話してくれる彼に微笑みを浮かべて、こくこくと頷きを返しながらエピソードを聞く。
その間も、つきん、つきん、刺すような痛みが。


 「あ……うん、順調。
  おいしかったって、好評だったよ」


 そう微笑みかけてから、彼の話を促した。
(15) 2021/10/29(Fri) 1:04:32

【人】 春野 清華


 ふと、彼の言葉が不自然に途切れる。


 「うん?」


 首を傾げてそちらを見れば、落とされた視線に
釣られるようにして、そちらをみる。
そこには他人用のマグカップがひとつ。
言葉を待って、それから微笑み返した。


 「……もちろん。…大丈夫、明後日お休みなの。
  マグカップ、買いに行こう。」


*
(16) 2021/10/29(Fri) 1:04:59

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[まるで、苦い粉薬を包みこんで飲み込ませる
 オブラートみたいに、薄い膜が間にあるよう。
 時々、清華と話す時に男はそう感じることがあった。
 近くにいることを許されては、いる。
 だけれどあと一歩のところで近付けない。

 だけれどそれに気付かないふりをして
 男は自分の大事な人達の話をする。

 いつか、お互いのベストな心の距離が見つかるまで
 いつまでもいつまでも待とう。
 ……そう、心に決めて。]
(17) 2021/10/29(Fri) 13:36:21

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[そして、獲得したデートの確約には
 素直にぴょい、と小躍りして。]


  わーい!ずっと欲しいのがあってね!
  一緒に来てくれたら、嬉しいな。


[いつか、黒い海がうねる街で選んだものは、
 男が使う間もなく割れてしまった。
 今度行きたいのは車で十数分ほどのところにある
 小さくて可愛いお店。
 男一人で入るには、ちょっと気恥しいのもあるし
 単に一緒に出かける理由が
 欲しかっただけかもしれない。]
(18) 2021/10/29(Fri) 13:47:15

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[「僕」とは違って、“僕”は感情を表にする。
 どうする「べき」か、じゃなくて
 どうし「たい」かを優先する。
 それが、清華が男に授けてくれた“意思”という宝物。

 だからデートの約束にけらけらと小躍りしながら
 ふと、清華の頬に手を伸ばして]


  …………ね、いい?


[肌に触れて、キスをする許可をもらうのも
 男がそう「したい」から。
 ……でもそれはお互いの意思確認が
 なきゃいけないことだから、小さな声で尋ねよう。]*
(19) 2021/10/29(Fri) 14:05:55

【人】 春野 清華




 名前のない関係を、私たちがどうしていくのか
それは、きっと互いにしかわからないこと。
それでいて、今はきっと、どちらにもわからないこと。

計りかねた距離が、この奇妙な関係を曖昧にする。
夫婦でも、友人でもない。名前をつけるなら、
W恋人Wが近いのかもしれないけれど、
そう呼ぶにはずいぶんとぎこちなかった。

「彼」との関係を進めた時、わたしは、
一目散にそちらに向かって走ることができたのに
今は、それがうまくできそうになくて。
それがどうしてかと尋ねられれば、
あの日々のことが……
───いいえ、それに繋げてしまった、
きっと、自分の中の何かがまた、W彼Wを
苦しませてしまうのではないか、と
思ってしまうからかもしれない。


(20) 2021/10/30(Sat) 7:07:19

【人】 春野 清華




あの日々の中、わたしも苦しかった。
彼もきっと、苦しんでいた。
何一つ、生み出さないあの時間を、
ただ互いに削り、疲弊し、枯渇したあの時を
また、繰り返すのだけは恐ろしくて。

彼のことを解放して、
私も自らを解放したかった、のかもしれない。
それがただの自己愛で、彼にとっては
苦しめるだけになるとわかっていたのに。


(21) 2021/10/30(Sat) 7:07:38

【人】 春野 清華



 微笑みを返すと、彼が子供のようにはしゃぐ。
「ずっと欲しいの」という言葉に、唇を結ぶ。 

また、気づけなかった。W彼Wの求めるもの。
あの頃のように、W彼Wは手を挙げることはない。
同じ顔。おなじ、声。同じ背丈だけれど、
彼はその人じゃない。
W彼Wは怒鳴らないし、手を上げない。
それでも、私が気づかないことばかりが続けば
いつか、その手が振り下ろされるんじゃないかと
フラッシュバックして身構えることもある。
頭では理解しているのに、この人は、
きっとそんなことしないって、わかってるのに。
どうしたって求めてしまう。
「彼」に望まれた自分になれないかと、いまだ。
囚われて、ばかりだ。

 
(22) 2021/10/30(Sat) 7:07:59

【人】 春野 清華



 伸ばされた手が、頬に触れる。
滑らかで、柔らかなその熱に、眉を上げた。
問われた事柄に、ぱちぱちと瞬きをして、
それから結んだ唇を解き、返事の代わりに目を閉じた。

優しく触れた唇に、少しだけ肩が上がる。
離れれば、薄く目を開いて、まつ毛の隙間から
彼の顔をじっと見つめる。
いまだ、計りかねる距離を縮めたいとは
ずっと、ずっと思っていて、だから。

包み込む。手の甲に自分の手を重ねて
軽く頬を寄せ,目を閉じる。

いつだってそう、優しく問いかけてから触れるのは
彼もきっと、計りかねているから。


彼は、『ヒトではない』はずなのに。
どうしてこんなにも優しく、あたたかいのか。


 
(23) 2021/10/30(Sat) 7:08:28

【人】 春野 清華




ゆるく、口許は弧を描く。
ゆっくりと瞼を開いた。


 「ねえ、清正くん」


やり直すわけじゃない。
ただ、もう一度。
ただ、───何度でも。


 「明明後日も、お休みにするから、
  どこかに泊まって、小旅行、しない?

  場所は、清正くんの行きたいところがいい。」


 あなたとの思い出を重ねたくて。*

 
(24) 2021/10/30(Sat) 7:09:57

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[言葉にしなくても、そっと閉じられた瞳に
 意図を察して、まるで教会でするみたいなキスを
 いちばん愛する人に注ぐ。

 重ねた手は温かい。
 男にはない鼓動が分け与えられるよう。
 角度を変えてもう一度、手を頬から滑らせ
 背中をそっと抱き寄せる。

 震えてない?もう、怯えてない?
 “僕”は、君のそばにいてもいい?
 言葉に出来ない意思確認を掌に乗せる。]
(25) 2021/10/30(Sat) 12:00:59

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[閉じた瞼を開いて唇を離せば視線が通い合って、
 男は照れくさそうに、ひひ…と笑う。
 自分からキスを強請ったのに、
 このつかの間満たされた空気が
 流れるのは慣れていないのだ。

 緩く弧を描く清華の唇に倣って
 微笑んでみせようとするのだけれど、
 どうしても恥じらいが邪魔をする。

 だけどそのもにゃりと不格好な唇の笑みは、
 清華の言葉で弾けて、より深い喜色に変わる。]


  いく……!え、いいの?


[一緒に泊まりの旅行なんて、あの時以来。
 数ヶ月悩んでたセレクトショップのカップが
 頭の中からぽーいとすっ飛んでいって
 男は早速、お土産にカップを買うことを考えている。]
(26) 2021/10/30(Sat) 12:17:42

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[行きたいところ、というのがパッと思いつかなくて
 んー、うーん、と清華の肩に手を置いたまま
 悩んで唸ってしばし。]


  …………今度は、ビジホじゃないとこにしよ。


[インパクト大な女社長の顔が
 至る所にあるあそこじゃなくて。
 冗談半分、半分は本気。]
(27) 2021/10/30(Sat) 12:22:05

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[結局、今すぐ「ココ!」となる場所が思いつかなくて
 少し時間をもらうことにした。

 写真の撮影しがいある、映え、なところがいいかな。
 今なら渓谷の紅葉が綺麗かな。
 あーでもない、こーでもない。
 PCとにらめっこしたり、
 本屋で旅行雑誌を立ち読みしたり。

 しかしいまいちピンと来ない。

 その日の夜も、ノートPCを膝に載っけて真剣な顔をして。
 不安定だと、椅子に座った手で太腿をぴちぴち叩くのは
 オリジナルにはない、桃農家の息子さんから移った癖。
(28) 2021/10/30(Sat) 12:30:54

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[けれど翌朝、清華と朝食を取っている時に
 たまたまつけていたテレビの旅番組を見ていたら
 画面にものすごいものが写った。

 温泉の地熱ですくすく育った、
 ものすごーーーく大きな、
もやし。


 農家のおじさんの膝より大きく育ったそれは
 正しくは「そばもやし」という、
 スーパーで見かける「まめもやし」とは違うもの。
 それにしても、でかい。
 レポーターがそのでっかいもやしを使った料理を
 がつがつと頬張っている。

 温泉があるとはいっても、それ以外何も無い。
 だからもやしを栽培してみたのだという。
 恐ろしく映えない光景だけれど、
 なぜだか男は画面に釘付けになってしまった。]
(29) 2021/10/30(Sat) 12:38:42

【人】 ろぼ先生 夏越 清正



  清華…………あれ、


[食べに行かない?と続ける。
 場所は青森だから、朝早くに出なくちゃだけど
 行って帰ってこれる距離だ。

 清華はもっと華やかなところがいいだろうか。
 でも、紅葉の山に囲まれて人も少ない場所で
 ゆっくり体と心を休めるのもいいかな、と。

 もしそれでOKがもらえたならば
 いざ、もやしといやしを求めて
 何もしない旅に出よう。]*
(30) 2021/10/30(Sat) 12:43:33

【人】 春野 清華



 彼の喜色を帯びた表情に安堵する。
ほ、と胸を撫で下ろして、それから笑んだ口許。


 「もちろん」


とつぶやいてひとつ、頷いた。
彼が唸る。考え込む様子をみていたら、
出た結論に、また唇は少し弧を描いた。

 
(31) 2021/10/30(Sat) 18:39:05

【人】 春野 清華




 「そうね、温泉あるとこに、しよっか」


別にビジネスホテルが悪いわけではないけれど、
せっかくの旅行なのだから、少しいいところに
泊まったってきっとばちはあたらない。

わたしがリクエストしたのはただそれだけ。
あとは、彼にお願いしておいた。
───無責任かもしれないけれど、
わたしは、彼の行きたいところに行きたくて。
彼の、みたい景色が見たかった。

ろくに遠出もできなかった『彼』への
せめてもの、償いだなんて思ってない。
ただ、わたしはW彼Wの目から見た世界を
「彼」じゃないその世界を、知りたい。

 ささいな仕草を見ていると、あの頃よりも
ずっと、「彼」とはちがっていて。
W彼W自身がちがうひとになっていっている
そんな気もしてくる。
それにどんな感情を抱いているのか、
わたしには自分でもよくわからなかった。

 
(32) 2021/10/30(Sat) 18:39:24

【人】 春野 清華


 そんな、翌朝。
つけっぱなしのテレビをとくに真剣にみるわけでもなく
スマホで天気を確認して、コーヒーを啜っていたら
彼が声をあげたから、わたしも小さな画面から
顔を上げて、そちらを見た。

ぱちぱちと目を瞬かせ、指されたテレビの画面には
それはそれは立派なもやしの料理がうつっていて。
首を傾げて、まるで麺のようなそのもやしを見る。


 「これが、食べたいの?」


 たしかに、珍しそうではある。
正直、もやしにそこまで心惹かれるかといわれると
それは残念ながら否、ではあるけれど。
それでもそれが、彼のしたいこと、ならば
断る理由などひとつもなかった。

 
(33) 2021/10/30(Sat) 18:39:37

【人】 春野 清華



 「……うん、いいよ。
  じゃあ、青森、行こうか。」


と微笑みかけて、コーヒーをまた一口。


 「普通のもやしなのかなあ……」


リポーターの頬張る料理を見つめながら
ぼそりとこぼす。
おばけもやし、とでも称されそうなその大きさ。
そばもやし,と呼ばれているのを知って、
麺類というのはあながち間違ってなかったな、
なんて考えながら。
み青森って他に何があるんだろう。
青函トンネルとか、りんご?」と、それはそれは
薄い青森知識を頭の中で巡らせた。*

 
(34) 2021/10/30(Sat) 18:39:49

【人】 ろぼ先生 夏越 清正



  食べたい、とは少し違うかな。
  見た事ないじゃない、あんな大きいの。


[男も、オリジナルも、そこまで
 もやし好きではない、はず。
 不思議そうに小首を傾げた清華に
 こてん、とこちらも首を傾げながら、男は言葉を探す。]


  見た事ないから見に行きたい、が近いかも。
  もちろん食べるのも楽しみだけどさ。


[知らないものを見に行って、触れたい。
 普通はどうするべきかはともかく
 自分の気持ちと向き合ってみたい。
 そういう、気持ち。]
(35) 2021/10/31(Sun) 9:21:17

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[レポーターが美味しそうにパリパリ音を立てながら
 もやし炒めを平らげているが、その味は未知数。
 テレビではもやし炒めのほか
 もやしをたくさんのせたラーメンを紹介していたがさて。

 日が暮れると氷点下を下回るらしいから
 しっかり暖かいものを用意して
 男は清華とともに北の大地に旅立とう。
 新幹線とはいえ数時間はかかる道のり、
 ガイドブックを捲りながら旅程を組もう。]


  もやしのある温泉地には
  ほぼ観光できるところないね……
  弘前駅のまわりを少し観光してからいこうよ。


[弘前城や、りんご公園、ねぶたを展示した資料館。
 もう少し海が近ければホタテやイカなどの
 海鮮にありつけたかもしれないが。]
(36) 2021/10/31(Sun) 12:11:41

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[都心から離れるにつれて、車窓から眺める風景は
 ビルの林が次第になだらかになって、
 やがて畑の中に家が点在するようになり、
 最終的には完全に森の中へと変わっていく。

 その次々変わる景色は、カメラには収められない。
 代わりに男はつぶさに記憶にとどめようとするように
 じっと景色を眺めている。
 心做しか、北上するにつれて肌寒さを感じ
 男は首元に巻いたマフラーに頬を埋める。]


  青森っていったら、やっぱりりんごかな。


[また巡り会えた場所が桃農家だったのもあって、
 男は何の気なしに、青森でも
 おいしいリンゴを探すのか尋ねようとするだろう。]
(37) 2021/10/31(Sun) 13:36:29

【人】 ろぼ先生 夏越 清正

[しばらく続いたトンネルの真っ暗闇が晴れると、
 朱や黄に色付く木立が広がっていた。
 花の盛りのような光景に魂を奪われしばし
 黙って目を向けていたが、やがてまたその林がひらけ
 赤く色付く果実を実らせた畑がちらほら見えてくる。]


  ね、りんごなってる!


[山梨や、普段の景色と違う風景に歓喜する男は、
 数十分後、目的地に着いた途端に
 肌を切るような寒風の歓迎を受けることを
 まだ知らないでいる。]*
(38) 2021/10/31(Sun) 14:02:09
到着: VI

 




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