人狼物語 三日月国


246 幾星霜のメモワール

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こちらに飛んできた紙の鳥の手紙を手にする。
そこに記された内容を把握した途端、手元からさらさらと消えていく。

ひとけのない夜の街を背に書物を開くと、遠く離れたあなたに向けて風魔法が知らせを届ける。
ノイズのような風切り音に交じる形で、あなたに向けて『声をかける』

『そういうこと――なるほど――。
 分かっ――た。ありがとう――。引き続き情報提供の継続を――す。
 できそうならプリシラ――調べて――。
 お願い――』

「……あー。なんだ。
 それもそっか。知ってるよね、聖女なんだから」

あんまりにあっさりと告げられた言葉は、冷気のように肺を縮こませる。
驚きと納得と、それから惜しみが女の顔の上でくるくると入れ替わっていた。

迷っているうちに結局切り出すのもあなたからだった。
それほどまでにこの聖女祭りというものは、あなたにとっては重要な節目なのだろう。
元の世界に帰る。それは望みはすれどまだどこか現実感を伴えない。
あなたに別れを告げなければ終わらないのではないかと、そんな風にすら心の奥底では思っていた。

「どうして私なの?
 私は、だって。帰れるなら帰りたいって思ってるんだよ」

己を覗き込む幽けき存在はどこまでも真っ直ぐに在り続ける。
たとえ女が寵愛を受けようと拒もうと、永く。
とうの昔に失ってしまった大切な何かを見せつけられているようで、女はただ準透明の空気を見るばかり。

「全部知っていて、全部を仕組んだくせに。
 その上で、最後かもしれないから一緒にお祭りを見たいって……私はどうしたらいいのか分からないよ……
 いっそ帰したくないって無理やりにでも私を呪って祝福してくれた方が自然なのに」

確かめていない事が多いのは、あなたを心から嫌いになりたくないから。
赤の他人のように、この世界の貴き聖女様としてあなたを型に嵌めることができないから。
手を繋ぐこともできない存在にどうやって触れられれば分かるのかも、正直分からないけれど。

「ねえリッカ。私は帰ってもいいの?」

聖女はそういうルールだと告げた。
世界が知らないこの祭りの本当の意味を。
無邪気にあなた。子供のあなた。隣に居てくれたあなた。
この瞳に映る透明でないあなたに問う。

【人】 白昼夢 ファリエ

「聖女の寵愛……」

知らしめられた名は確かにあの時教会に呼び出された者と相違なく。
こうやって例年通りに祭りが進むのだろう。
兎にも角にも女の名前が載らないということはまだうなじの痣は沈黙している筈。

「……痛かったりしたんでしょうか?」
(0) 2024/02/03(Sat) 1:05:08
ファリエは、両名とも深く知らない。これから出会うのも少し気が引けた。
(a0) 2024/02/03(Sat) 1:06:07

【人】 遊蕩 ディルク

いつも通りの振る舞いを続けながら流れてきた噂。
それを耳にしても表情は変わらない。

そもそも、2人のことは深く知らないから。
あの場にいたその人なんだろうと想像して、
近くにいた名前も知らない誰かに声をかける。

…結果、勿論振られた。
(1) 2024/02/03(Sat) 8:35:07

静かに聖女は笑んでいる。
細めた瞳にはやっぱりあなたをまっすぐと映して。

「 ――― 知ってるわ 、ファリエ 」

りん、と。澄んだ声。
祭りを回りたいと口にしたあの時と同じように、
口許には含むようないろ。

「 ファリエだけじゃない。 みんな 、みんな、そう。
  帰りたいって 、そう言うの 」

聖女はぜんぶ、知っている。
だからこそ、笑っていることができる。
澄み切った冬の空の下。同じ色の、瞳で。




「 ねえ ファリエ 」

「 なのに、どうして そんなことを聞くの?  」


だけど。
知っていることと、
わかる
ことは別の話。


「 帰らないでって
  そう言ったら 帰らないでいてくれるの? 」


訊ねているようで、その実何一つ訊ねていない。
"そんなはずない"って、聖女は思っているのだから。






「 ほんとうは           

       かえりたいんでしょう ? 」







「 ――― なら ね 、いいんだよ 」
そう笑う口許に浮かんだ"含み"は
"あきらめ"によく似ている。



「 でも 最後におまつりだけ
       一緒に まわりましょう? 」
――― 聖女はそう、無邪気に笑った。
それが自然で、当たり前のことだから。
いままでだって、みんなそうだったんだから。

【人】 掃除屋 ダーレン

屋台でエールを購入し、適当な場所で祭りを眺めている。
今日はこのままのんびり、屋台を回っているだけの予定だ。

「……加護、ねえ」

通りすがりに掲示された名前を見て、目を細めた後。
カップを呷り、意識を逸らしていた。
(2) 2024/02/04(Sun) 2:38:25
「────────」

はくり。開いた口から白い息が何度か漏れて朝日に溶ける。
女にだけ見えている白昼夢にすら届かない音はどんな形を成そうとしたのか。
寄った眉根は、困っているようにも怒っているようにも見えた。

「ごめん」


結局そんな逃げしか吐けない。
全部あなたの言う通りで目を伏せた。
口にしてからそもそもの元凶にどうして謝る必要があるのだろうかと内心苦笑しながら、歩み寄った。
今日はただ傍にいるだけではない。一緒にお祭りを見に行く。
実体のないあなたと過ごすまるでデートのような時間。
ファリエとして過ごしたことのない初めての時間。

「リッカは優しいんだね」

切り替えるように次に顔をあげたのは、祭り前の子供のような笑み。
ファリエとしての人生傍に居るあなた転生前の人生自分勝手な聖女を天秤にかければ、後者に傾くのは違いなく。
子供の世話を長くしているからか、言葉にできない訴えを読み取ることには長けている女は、浮かび上がった僅かな含みに気づいて。
それから。

「行こっか。最後ならめいっぱい楽しまないと。
 知ってる?今年は面白い出し物もあるんだって……」

──見ない振りをした。

みんながそうしたように。
特別な事なんてこれっぽっちもない人間だから。
きっとこれが自然で、当たり前のことなのだろう。
「優しくなんてされなきゃ良かった」

掠れるような言葉を踏み潰すように祭りの喧騒へと足を踏み出した。



…… どうして ファリエが謝るの?

そのことだって
わからない
から、聖女は首をことりと傾いで。
けれど結局口にはせずに、いつものようにまた微笑んだ。

だって、それは普通のことなんでしょう?
この世界が嫌いだからとかじゃ、ないかもしれないけど。

転生者あなたたちのほんとうの居場所はここじゃないから。
そして、ほんとうの居場所から連れ出したのは、他でもない聖女じぶんなのだから。


―――全部、胸に伏せた。

口にしない方がいいことが、往々にしてこの世にはあるはずだから。




「 わたし 優しいかしら?
     ふふっ 、そうかしら! 」

すとんと地面に足をつけ。
上機嫌にステップ踏んで、くるくる回る。
その足元に矢張り影はないけれど、はしゃぐ姿は子どものそれで。

「 面白い出し物? 知らないわ!
  どんなものかしら 気になるわ わたし! 」

けれどその姿すら、見えるのはあなたにだけ。
――― ううん。今この時に限っては、他の人達には、あなたと同じ色の髪をした小さな子どもに見えている。
そんな話を、街中へ向かうさなかあなたに告げた。
「 姉妹みたいに みえるかしら 」なんて無邪気に笑っているけれど、あなたの目に映る姿はいつもと変わらぬ聖女のリッカのままだ。


不思議そうにしているあなたは、なんだか本当にただの幼子のようで。
同時に時折見せるその姿はなんとなく見覚えがある気がした。

たぶんそれは。
──そうだ。鏡に映った孤児になったばかりの自分だ。
純真無垢なその心を、奔放にさせてしまないところ。
女はそのやり方しか知らないから、その気配を察しても何もできない。

あなたは会おうと思えば私に会いに来られるけれど。
私はあなたに会いたくても会いに行けないのと同じだ。

「そうなんだよ。私にとってはね」

徐々に賑やかさを増していく通りを歩きながら、あなたの説明通り周囲の視線を感じていた。
確かに姉妹に見えなくも、ない。
あなたに抱く感情も元々はそうだったから、すとんと腑に落ちた。

「『聖女様のたからもの』みたいな名前の演劇だったかな。
 大方聖女様にあやかった創作かな。
 他には一般参加型の催しもあるんだって。
 ミニゲームみたいなもので、勝ったら景品が出たり……あ、聖女様の祝福を受けた冠飾りだって」

右も左も聖女だらけ。それもそのはず、聖女祭りの名に恥じない。
その主役を連れていると言ったら大変なことになりそうだ。
あるいは案外笑い話で済ませられるかもしれない。
実在の祝福とも言える痣持ちという存在の方が、今は信ぴょう性がある。

「私が──
こほん
お姉ちゃん
がどこでも連れて行ってあげる」

どちらにせよ明かす気は無い。
あなたの計らいで中空に向かって話しかける必要がなくなった女はその役に準ずることにしたようだ。

【人】 番犬 グノウ

老夫婦の屋台の前に背嚢を下ろすと砂煙が上がる。中から食材の果物が零れ、一つ二つと拾い上げて戻した。その音で呼びかけるまでもなく屋台の裏から雇い主である老婦人が顔を出す。

「……………こちらで。
 …………いいだろうか」

『ええ、ええ、ありがとうねえ、ほんに助かったわ……』と元より曲がった腰で何度も礼を言う老婦人は、思いついたように再び裏へと引っ込んでしまう。受領印を待つ巨躯を外に残したまましばしの間。老婦人はにこにことしながら再び表に出てくるが、その両手には飴細工が握られている。
そうか。果物はこれに使う用だったか。

嫌な予感はしたが、受領印の捺印後、老婦人は『これは、一つ、おまけしておくねぇ』とその飴を差し出してくる。自分には食事の機能はない。固辞したが老人特有の退くかなさで金一封と共に押し付けられる。何度も礼を言われる後押しも追撃された。

後に残されたのは、体躯に見合わぬ、食えぬ飴を持たされた巨躯。

「………」

渡す当てを探して周囲を見渡すが、子どもが寄って来ようはずもなく、途方に暮れた。
(3) 2024/02/04(Sun) 23:00:22

【人】 掃除屋 ダーレン

>>3 グノウ
「あんた、意外とそういうの食うんだな」

通りすがりの男が、飴細工を手に立ち尽くすあなたに声を掛けた。
既知の仲でもない者だから、気まぐれにそうしたのだろう。特にもらってやるわけでもなくその姿を見ながら、エールの入ったカップを呷っている。
(4) 2024/02/04(Sun) 23:09:35

【人】 番犬 グノウ

>>4 ダーレン
「…………」
「…………好むように見えるだろうか」

通りすがった男の声に、困り果てたという声色で返す。生ものを使用した飴だ、明日までは保つまい。捨ててしまえばいいだけの話だが……どうにも、溶かした糖以外のもの――善意だろうか、が纏わりついていて捨てづらい。

「……空気が、祭りに浮ついている」
「………貴殿は馴染んでいるな、ダーレン」

ダメ元で、要るだろうか、と飴を差し出す。
(5) 2024/02/04(Sun) 23:31:26

【人】 掃除屋 ダーレン

>>5 グノウ
「いや?」

だから意外だって言ったんだよ、と。
本気で困っている様子であると分かれば、空になったカップを屋台のゴミ入れに投げ入れて。

「まさか」
「たまには顔出してやろうと思って歩いてただけだ。……名前、シヴァから聞いたのか?」

祭りに興味があったわけじゃないとそんなことを言いながら。
煙草を咥えてから、差し出された飴を見て。
食いそうな相手に心当たりがあったので、受け取ってやった。押し付けるつもりだ。
(6) 2024/02/05(Mon) 1:19:45

【人】 番犬 グノウ

>>6 ダーレン
体格のいいダーレンより一つ頭上にあるアイサインが明滅する。よりよい場所に引き取られ、飴も本望だろうと思う。誰にも受け取ってもらえなければ、この祭りで知り合った少女の土産にでもしてやろうかと思っていたが。この男、案外甘いものが好きなのかもしれない。

「………そんなところだ」
「………酒精の席にて――」
「………名前が出たものでな」
「…………貴殿といい……あの男といい」
「………この木偶は、酒の肴にならぬだろう……」

黒眼鏡の男と"酒席"を嗜んでから時間が経っている。流石のあの男、広く、この祝祭の参加者に目星をつけているらしい。
エール片手に管を巻くダーレンに小さく電子音を零す。

「………神託の掲示」
「………既に見られたか、御仁」

名を連ねていた二人は、あの教会にも居た顔だ。顔を出したというが、或いはそれを身に来たのかと思い、尋ねた。
(7) 2024/02/05(Mon) 1:37:26
シヴァは、「改めて乾杯でもしとく?」 祭りの始まる前夜、おどけた調子で笑っていたのだった。
(a1) 2024/02/05(Mon) 6:40:04


「 たからもの …… 」

反芻ののち、またくすりと笑う。
聖女本人も知らない、聖女の宝物。
ううん、それだけじゃなくって。

「 ――― まあ。
  わたし 王冠に祝福したことなんて ないわ、
  にせもの にせものよ これ !」

……正確には、聖女を祀る神殿が祝福を施した可能性はあるのだけれど。
そんなことまで思い至らないものだから、だまされちゃだめよ、なんてお姉さんきどり。

それでも。

「 
…… お姉ちゃん …。
 …… ふふっ、ええ !
  今日は たくさん遊びましょうね!
  
ファリエお姉ちゃん!


今日の妹は、こちらの方。
ぱたぱたとはしゃいで、それでもあなたの傍を離れないまま。
ふたりで祭りの喧騒をあちら、こちら。




…… たからもの。
そんなものがもしあるのだとしたら。

聖女にはひとつだけ、浮かんだものがあったけれど。
やっぱり口にしないまま、ただただ無邪気に笑いかけていた。
だってそのたからものは、この手を離れてゆくかもしれない。
その方がしあわせなのかもしれない。
―――そう思えばこそ、口になんてできるはずもなかった。


【人】 掃除屋 ダーレン

>>7 グノウ
誰かの口へ入ることになりそうで、飴もきっと喜んでいることでしょう。今は男の手に握られるばかりだが。

咥えた煙草に火を点けて、煙を一度吐き出したのち。
近くの屋台で新たにエールを買い直した。まだまだ飲むつもりでいるらしい。

「そんなことだろうと思った」
「俺はあんたのこと、全然知らねえけど。
 見た目といい生き方といい、酒の肴になりそうな話は掘れそうだけどな」

木偶、なんて自虐する程でもないだろう。最も、この男が一見して得た印象に過ぎない。
実際のところ、シヴァからも自己紹介時点での情報しか聞いてはいないのだ。

「加護がどうとかってやつだろ」
「見た。……実際のとこ、どうなんだろうな。祝福なんて眉唾物だろ」

信心深いとはお世辞にも言い難い男。煙を吐き出しながら、そんなことを言ってみせるのだ。
(8) 2024/02/05(Mon) 18:29:53

「呪われてあれ」

最後の部屋の扉を開いた時に聞こえた声。
理解をするのに数秒を要した。
多分、これが呪いの品になった。
実際スキルを使って見てみれば、死の呪いが見えた。

遺跡の作者は嫉妬心やプライドの塊であったから、
死だなんて重い罰をくだすのならそれは、
本気で殺そうとしてのそれだと理解できた。

が、呪いは効果を持たなかった。どうしてか。

呪いの種類には覚えがあった。
魂の萎縮──ここでの魂はゲーム的に言えば、MPやMAGのこと。
それらの上限が減少していき、それに伴い精神的にも弱っていく。
最終的には恐怖に苛まれて死ぬ呪いだ。

そうであるはずだから、何も起こらないことには疑問しかなかった。
気付かない内に魔法が使いづらくなっていたり、
だなんてこともない。それくらいは感覚でわかる。


彩雲の夢


古い物だから効果を為さなかったということも考えづらい。
呪いは確かにそこにあると判断できるし、
この遺跡を作った彼の聡明さと周到さを見るに、
時が理由で効果をなくすようなものには思えなかった。

即死や封印ではないから、装備による無効でもないだろう。
ミューツバイに呪い無効のギフトでもあっただろうか?
神聖国家の一貴族だ、あってもおかしくはないが。


その場で答えが出ることはなく。
遺された研究物を一通り頂戴し、遺跡を後にする。
そうして数日は、持ち帰った記録に目を通して過ごした。

薄々そうでないかとは思っていたが、
あの遺跡を作ったのは隠し棚にあったあの本の著者で間違いなさそうだ。
ミューツバイではないが、あの地方の出身だったのかもしれない。
そうなると、あの国出身の人間には効かないとか、
そういうことがあってもおかしくはないのだろうか。

──なんて考えは、楽観視が過ぎた 


彩雲の夢


満月の夜、腕輪の藍海晶の手入れで光を浴びせる。
何度もやってきた、いつものこと。
腕輪を窓辺に置くのに外した時、背筋が凍る思いがした。

理由は全くわからないが、漠然とした恐怖感に襲われて。
パニックの内に腕輪を握り締めると、その感覚はスッと引いた。

つまりそういうことだった 
死ぬんだ、俺。
腕輪はすぐにつけ直して 
手入れをしないわけにもいかないから、窓辺に右手を置いて一晩を過ごした。
眠るだなんて、とてもできなかった。
死ぬんだ、俺。
即死か封印かならきっと封印だ。
そう言えばこの呪いが出てくるイベントの
おすすめパーティーメンバーは素で封印耐性持ちだった気がする。
レベルでゴリ押してのクリア後に
適当に流し見ただけだったものだからすっかり忘れていた。
死ぬんだ、俺。

彩雲の夢

死ぬんだ俺 
死ぬんだ、
死ぬんだ、
死ぬんだ、
死ぬ、死ぬんだ、
死ぬんだ、
死ぬんだ死ぬんだ
死ぬんだ
死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ
死ぬんだ
死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ
死ぬ
死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬんだ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死んじゃう、

彩雲の 

 


 

彩雲の夢

 




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