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人狼物語 三日月国


145 【R18G】星仰ぎのギムナジウム2【身内】

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視点:


【独】 雷鳴 バット

/*
あっなるほどねえ〜〜〜〜〜!!!
(-0) 2022/05/04(Wed) 21:00:55

【墓】 雷鳴 バット

青年はその日の朝、いつかのように食堂に現れた。
未だジャステシア、彼女の姿がないのなら小等部の整列には貢献したが、
それでもやはりあまり多くは、小さな子どもたちには触れ合わなかっただろう。

その日は食事を選ぶ列にはあまり長く並ばず、少しの食事だけを取り。
誰のものでもない一人部屋へと、誰にも告げずにそっと身を隠した。
(+0) 2022/05/04(Wed) 21:06:25

【独】 雷鳴 バット

/*
恋窓賑やかになったね よかったね 急に四人になったのかなこれ?
(-3) 2022/05/04(Wed) 21:13:09

【墓】 雷鳴 バット

>>4:+1 イシュカ
食堂からの去り際、普段と様子の違う貴方を見かけて。
青年は少しだけその傍で立ち止まったかもしれない。
けれども結局掛ける言葉は見つからず、固い靴が歩き去る音だけが残った。
(+2) 2022/05/04(Wed) 21:17:13
バットは、誰かに教えられた誰のものでもない部屋で、一人で食事をする。
(c0) 2022/05/04(Wed) 21:19:23

【独】 雷鳴 バット

貸し与えられた、と彼が言っていた一室の中へと紛れる。
静かな空気はものの通らない喉をすっきりとさせるようで、
不思議と気持ちだけはほっとしてしまった。

机に食事を置く。並ぶのはハムにベーコン、塩漬けの肉。
焼いたタンパク質の羅列に、小さなパンと更に乗せられたトマトが半身。
慣れたように毟り食う肉がきちんと喉を通ることに安堵した。
治療の効果は劇的に自身を良化、或いは悪化させるものではないらしい。

いつもと変わらない食事を食べ進めながら、その最中で両手を膝に置いた。
最後に食べてみようと試みたのはいつだったか、思い出せない。
パンを一口。小さなかけらを口に入れる。
前歯で噛みちぎって、奥歯で小さくまとめて、たったそれだけのことがうまく出来ない。
全く違う食感がほろほろと口の中で崩れるのを、舌はざらつく違和感で受け止めた。
異物を飲んでしまったような落ち着かなさを、えづきそうになりながらこらえて。
たまらず、オレンジジュースで流し込んで息を吐く。
繊維感の無い液体状のそれであれば、胃腸が拒むことはない。

親指の爪ほどのパンを食べるだけで、グラスは半分ほど飲み下してしまった。
とてもではないが完食できそうにはない。
外の小鳥にあげるか、誰かに差し入れれば良いのだろうか、と。
手に余るそれを、困り果てたように見下ろした。
(-8) 2022/05/04(Wed) 21:30:37

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

眠る青年に不必要な虐待が行われた形跡はなかった。
庇い傷も躊躇い傷もなく、少し土の匂いがするのは森へ行ったならいつもと変わらないこと。
暴れていつも以上に汚れた様子もなければ、痛めつけられた様子もなく。
普段他に見られることの少ないベッドに横たわる姿は、
むしろいつもよりも剣呑な装いである、そのはずなのに。

朝になるまで、青年は起きることはなかった。
当然自分の力で枷を外すこともなく、寝ながら暴れるわけでもなく。
朝日ののぼる頃には、ゆっくりと目を開けるのだろう。
(-18) 2022/05/04(Wed) 22:26:05

【秘】 雷鳴 バット → 半分の仮面 リアン

貴方の手紙に気がついたのは、きっと朝食を終えてから。
既に授業の始まっている頃にようやくその手紙を確認したから、
同室者の目にはなんとか留まらずに済んだのだろう。
中身を見て、考えて。
どれだけ、手紙の指す意味を理解したかは定かではなく。

『何も』

と書かれただけの手紙が、返ることとなった。
(-52) 2022/05/05(Thu) 3:01:54

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

ゆっくりと開いた目はまだ薬の効果が残っているのか、
焦点の合わさる先もぼんやりとして曖昧なままだ。
薬を打たれ意識を失ったのはここに連れてこられる前だ。
状況の把握には至っていないのか、まだぼやけた視界のまま。

外された口枷からはだらりと溜まった唾液が落ちた。
その先に見える肌色を視線が追って、
ざり、と。指の先に、赤い舌を這わせた。
(-94) 2022/05/05(Thu) 16:52:58

【秘】 雷鳴 バット → ライアー イシュカ

声を掛けられなかった理由は相手の様子が途方もなく落ち込みきっていること、
自身の事情なども含めて様々にあった。
ただ、それっていうのはそこで諦めきったわけではなく、
その後も頭の端には、知己の人間の異変を記憶しておいてはあったのだろう。

以前よりもぎこちなく飼育小屋の辺りに足を運ぶ。
はじめは遠巻きな様子であったが、その中に貴方を見つけて。

「……大丈夫?」「元気、ないように見える」
「昨日、食堂にいなかったって」「噂されてるの、聞いた」

居なくなったのは同じ。おそらくは互いの様子というのは聞かされていないだろうし。
改めてそうした状況にあったと聞いたのは遅れてから。
声が届くくらいの距離まで、おそるおそるといった様子で近づいてくる。
(-95) 2022/05/05(Thu) 17:18:51

【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクス

まだ食堂では互いの心配をするものがあり、
消えたものの安否を確認しあって相談している頃。
朝の授業が始まるまでには、また時間がありそうだ。

青年の姿は貴方が探した内、貴方が彼に教えた一室の中にあった。
食べ物の匂いがする、というには香ばしい香りは薄く。
ある程度食べきった様子ではあるものの、ほとんど無傷のパンやトマトが残っている。
扉の開いた先に顔を向けて、やっぱり隠すように食事の前にさりげなく腕を伸ばした。
入ってきたのが貴方だとわかれば、少しは安堵が混じるけれども。

「……ごめん」「長く、使い過ぎていた?」
「なるべく早く」「片付けるから」
(-99) 2022/05/05(Thu) 17:56:45

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

声を聞いて、次第に光に目が慣れて。
ここがどこで、目の前にいるのが誰であるかを理解した。
ぱちぱちと目を瞬いて、枷が外れていくのを目で追っている。
まだぼんやりしたままの意識で身を起こし、記憶をたぐるように天井を見た。

「おは」「よう」

大人との対話を終えてから、おそらく部屋へ連れてこられたのだろう。
それ以外にとびきり変わったことというのはないように見える。
腹の音が鳴って思わず手で押さえて、朝なんだなとか考えて。

「……」
「そう」「でも」「みんながバットって呼ぶから」
「それでいいやって」「いうことにしてる」
(-123) 2022/05/05(Thu) 21:45:14

【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクス

しばらくは、まるで怒られる前のこどものように顔色を伺っていた。
よくよく腕の後ろに隠されたものを見てみれば、
塊のハムやベーコン、焼いた肉や保存食がほとんど。
おまけのように、一口ちぎっただけのパンと、プレパラートほどの切片を除かれたトマトがあるだけ。
偏食の生まれやすい子供時代と言ったって、程度の問題はあるだろう。
それら、或いは部屋の使い方に関することではないとわかると、
そろそろと腕を下ろして貴方のほうへ身体を向けた。

「……」「フィウクスも誰かに」「ああして、貸してもらった?」
「僕もこの部屋は」「助かってる」「数日だけど」

それから問われたことについて暫し考えた。
相手が何について問い、慮っているのか。
自身のどこに、他者に気を持たせてしまうことがあるのか。
ちら、と食事のほうに目を向けて、相手の求める答えを頭の中で組み立てる。

「人に」「……」「バレたら」
「いやな目で見られるから」「隠したほうがいいって」
「怒られること」「しなくて済むものは」「そのうち、もらえるらしい」

治療の効果は目覚ましいものではないというのは、
大人に連れられていく前と行動が大きく変わったわけではないことからわかること。
それでも、何もされずに放逐されたというわけではないのだろう。
根本的な解決にはなっていない、一時しのぎのものでしかないようだが。
心配いらない、というふうに言いたいような節はあるようだった。
(-126) 2022/05/05(Thu) 21:55:59

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

どことなく、自分の話であるのに、そうでないように。
遠いもののように名前について聞きながら。少し、首を傾げさえした。
青年にとっては、他人が選んで呼んでいた名前だ。
身体を起こして窓の日をまぶしいように見る目は、細く月の色をして。

「……だいじょうぶ」「悪い目にあった、わけじゃない」
「色々検査し直して」「わかったことがあるのだって」

枷を嵌められて身体を窮屈にしていたのだから、少しは身体も固まっている。
撫でる手から離れすぎないようにはしつつ関節を軽く動かして、
どこも痛くないな、なんていうのを確かめた。
優しい声を聞きながら、自分の意識との差異に気づく。
どうしてこんなにも、貴方は痛ましそうな顔をしているのだろう。

「……ツキは」「大人が生徒を連れていくの」
「あまりよいことと、おもってない?」
(-142) 2022/05/05(Thu) 23:25:54

【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス

時間は夕に差し掛かり、授業を終えた子どもたちが寮へ散開する頃。
人によっては己の趣味に没頭したり、最近の変化に対して動きのある頃。
貴方もまた、自身の"やるべきこと"に備えている頃かもしれない。

こんこんと、ノックをしてから部屋の扉に手紙を挟む。
手紙の内容は『大丈夫?』という簡素なもので、宛名も名乗りも無かった。
ただ、世辞にも綺麗と言えない字の綴り方だけで、貴方には誰のものだかわかるかもしれない。

ひょっとしたらすぐに返事は帰ってくるかもしれないし、
或いは貴方がその日の"仕事"を終えたあとになるのかもしれない。
扉の向こうに貴方がいないのだとしても、青年は少し待ったら扉の傍から離れて、
再度貴方からの応答があるまで、どこかしらで待つことだろう。
(-143) 2022/05/05(Thu) 23:41:37

【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス

扉の前で暫し腕を組んで立ち尽くしている様子は、
けれども変わった人間として捉えられているのだろういつもどおりの青年からすれば、
特別変わったこととは見られなかったはずで。
つまり、目撃するものがあったとしてもそれを別の事項と紐付けられることはなかっただろう。

閉じていた目を開けて、貴方の方を向く。
変わった様子はないようだから、少しほっとしたように体の力が抜けた。
口を開きかけて、しばし。あちこちに目をやって。

「歩こうか?」

行き先は寮の建物よりかは外、特にどこと定めているわけではないけれど。
誰にでも聞かれていい話では、ないだろうから。
(-156) 2022/05/06(Fri) 0:59:43

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

朝、姿を見せない子どもたちのことは神隠しであると聞いている。
それだけ口止めは厳重なものであるから、団結した反発もないのだろう。
ただ、そう。青年が口止めをどれだけ受けたのか、
そもそもそれまでの事象と自分のことがどれだけ結びついているかは、疑問だった。
少し困ったような、動揺したような。
わずかに丸くなった目が、貴方を見下ろしている。

「僕は」「……」
「ツキには」「僕が、不幸に見えている?」

きっとかれが自分のことを慮ってくれているのだということは、
十二分に伝わっているのだ。ただ、それがどうしてなのかがわからない。
ぼんやりとした頭の中で、その輪郭がつかめない。

「僕は、困ってる?」「人と違うから?」
「ツキには、僕にはなにか」「足りてないように、見えるのかな」

手を伸ばす。すぐそこにある頭を腕の中に収めてしまった。
どうすれば貴方の抱いている不安を軽減できるのか、わからない。
だから、小等部の子どもたちにそうするように、同じことをなぞった。

「ツキが僕を見て苦しいなら」「それは僕だけのせいじゃないと思う」
「ツキは、何が苦しい?」
(-158) 2022/05/06(Fri) 1:15:41

【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス

廊下から外へと出でて外を歩く。夜気はほんのりと冷えている。
向かう先は森の方――……ではなく、寮の後ろ側に回ったところの草木の茂み。
森には繋がらず、建物間を仕切るようにある人工林。
少なくとも話し声は緑に吸われて、外へは通らない。

「大丈夫?」「ええと」

じゅうぶんに人の耳からは離れただろうところまで行って改めて問い直す。
けれども少し考えてから、その内容が伝わらないことに気づいた。
どう説明すべきか。それを頭の中でなぞっている内に、
あまり良くない姿を見せた――青年はそう思っている――ことを思い出す。
先導する足が遅れて、少しばかりうつむきがちになった。

「森へ連れてってしまった」「だから、なにか」
「疑いを持たれたりしたんじゃないかなって」
(-161) 2022/05/06(Fri) 1:50:53

【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス

「そうか」

貴方があの場所、あの時の立会人だと知らない青年は、
ただただ貴方になんらかの疑いが及ばなかったことに安堵した。
教員棟から出ることの叶わなかった一日、
それからもう一日を経て周りの変化を目にして、やっと安心したのかもしれない。

「バット、であってる。ただ、そうじゃない呼び方をする人もいる。
 人によって違う、のかな。わからない。家族は、バットって呼んだ」

日の落ちるごとに青年の動きはしっかりとしてきて、言葉も明瞭になる。
まるで陽光に押さえつけられていたかのように、背筋は真っ直ぐに伸びる。
鬱蒼と茂る木々は森ほどではないが、周りの光を遮って。
下生えの長いところまで足を進めると、木の根元に腰掛けた。

「先生の中には、そう呼ぶのを咎める人もいる、みたい」
(-225) 2022/05/06(Fri) 19:27:13

【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクス

しんと静まりかえった伽藍堂の部屋の中を見回す。
一人で過ごすのがどうにも寂しく、一人のうちにも何度か見渡した景色。
そこにあるものは決して賑賑しいものではなく、……ただ、そこにある優しさに、
与えたものの名前を聞いて合点がいったようにうなずきもした。

「ここは、落ち着く」「フィウクスの時間を奪ってたら」
「申し訳ない……けど」「僕はひとりでもそうでなくても」
「フィウクスは、僕が黙ってても」「怪訝に思わないから、いい」

文節のつながりのふんわりとした言葉は要するに、
自分がこうして使うことを肯定されるのと同じく、
貴方のまだ見ぬ部屋の使い方がなんであれ、肯定するつもりだという意思表示。
逆はどんな気持ちが抱かれているのだとしても、
青年の方はこうして優しさを橋渡しされることについて悪い気はしていなかった。

「大人は」「ゆっくりこれから」
「おまえに合った解決法を探そう、と」

果たしてここにいる子どもたちがどんな病を抱えているのかはわからない。
大人たちだってその善性の程度は様々で、悪意を隠しきれないものもいる。
ただ、青年は誰かのように、帰ってきてすぐに怯えを抱くこともなく。
自分が子どもたちにどう思われるようになったかを気にする素振りが増えた以外は、
以前と様子が変わったようでは、なかった。

「僕は……」
「フィウクスやみなと一緒に」「ご飯が食べられるような」
「ちゃんとした身体がほしい」

(-228) 2022/05/06(Fri) 19:42:42

【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクス

青年は自分がどんな瑕疵を抱えているのか、適切に他者に伝えたことがない。
理由は彼の学力の低さもある。周りに比べると、追いつけていないフシがあった。
周りの助けや努力もあって深刻な落ち込みを見せているわけではないが、
それでも同年代の子供に比べると、"しようのないもの"なのは確かだった。
だからそれというのはいつでも的外れで、貴方の状態をしっかり捉えてないこともあるだろう。

「フィウクスは?」
「フィウクスは、どうなりたい?」

それでもまっすぐ、青年の目は貴方へと向けられる。
貴方がこうして他者に向けた気の回しがきまぐれであったとしても、
与えられたものは、あったのだ。
それを受け止め見上げる人間が、こうして己から返るものを少し意識しただけの。
ほんのささいな、幼い善意や厚意であるのかもしれない、小さな問いかけだ。
(-229) 2022/05/06(Fri) 19:42:55

【秘】 雷鳴 バット → ライアー イシュカ

「……」
「なにか、よくないこと」「されたの?」

青年の目は少しの驚きを湛えていた。光の薄い目が小さく丸められる。
その実、貴方やこの飼育小屋に対して遠巻きにしていたのは別の理由だったから。
おそるおそる、もう一歩、二歩。腕を伸ばせば届く距離。
それに合わせてがたがたと、飼育小屋の中の動物たちがざわめいた。
一匹欠けた兎小屋の獣たちは、手の届かない方へと壁を作るように追いやられた。

「わからない」「ただ、これからは」
「僕にあった解決法を探す、って」
「今までは、そうじゃなかった」「みたいだった」

たとえその扱いは理不尽に見えるものだったとしても、
例えばかつての子どもたちのように苦しめられたりということは、
青年から見ればなかったのかもしれない、ただ。

実習生へは、青年は学力の遅れや社会行動性の未発達、
いわゆる精神遅滞のきらいがあることを伝えられていた。
実際に青年に行われたことが客観的に見て妥当性のあるものかどうかは、
一面的な意見だけでははかれないものだろう。

「……」
「イシュカは?」

口籠る。貴方が自分と同じように感じていないのは、明らかだったから。
(-231) 2022/05/06(Fri) 19:49:11

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

「……ツキは……」

頭を撫でる手に手を添え、指を絡めて膝の上へ下ろす。
心の中を吐き出すように訴える貴方に、頷きながら目線を返す。
ぱち、ぱちと呼吸にあわせるように降りる瞼は、耳を傾けていると示すよう。

少しだけ、沈黙だけが挟まる時間があった。
そのうちに腕の中に掛かる重さを受け止めて、髪の硬い感触に頬を寄せた。
ぐったりと弱ったような貴方の背中を見下ろして、青年は考える。

「ツキは」
「可哀想だ」

「誰かがなぞった人間の形をしていないと」
「耐えられないんだ」
「ツキは、普通じゃなかったんだね」
「普通じゃないから、誰かの普通に憧れて」
「自分じゃないものになったんだね」

とつとつと語る。耳に聞こえた言葉への、純朴な感想だ。
それを理性的な形で表すのならば、同情なのだろう。
ひどく脆弱な精神を曝け出す貴方を、悲哀の目で眺め下ろす。

「ツキは幸せに"された"んだ」
「自分が思うものじゃない」
「他人の思う幸せに」
「ツキは本当は」
「僕じゃなくて、誰かを幸せにしたいんだ」
「その代わりを誰かに、やってほしいんだね」
(-236) 2022/05/06(Fri) 20:03:27

【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ

とん、とんと背中に回した手が子供をあやすように叩く。
落ち着かせ、心の安寧を取り戻すことを望むように。
純粋に、無雑に。青年はそこに一変の屈折もなく、貴方の言葉を受け入れた。
貴方が誰かに言われた言葉の正誤を断ずることは青年には出来ない。
そこまでの知性を持ち備えるほど、青年の精神は習熟していないのだ。
大きな成人の身体に、まだ彼よりも年下の子供にも劣り兼ねない柔らかい心だ。
貴方を真に救う方法は、未熟な心は持ち得ていない。

「僕が幸せになって」
「僕が普通になったら」
「ツキは、嬉しい?」
「僕、アオの代わり、やってあげる」
「だからもう、苦しくないよ」

それはまるで、片割れを亡くした母親に、子供が父親の代わりを申し出るように。
家族をなくした生き物に、誰でもないものが無邪気に寄り添うように。
耳元で流し込まれる声は大人のそれであるのに、抱く気持ちはひどく幼い。
だからこそ、そんなことも簡単に言ってしまえるのだ。

「これからは、僕がアオの代わりだよ」
(-237) 2022/05/06(Fri) 20:03:38

【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス

「わからない。でも、理由はあるんだと思う。
 ……ミゲルって呼ばれたのは、久々だったかも。
 先生たちもたまに、そう呼ぶ人はいるけど」

曖昧に混在している理由は、少なくとも青年はきちんと認知できていないようだった。
どうして自分がそう呼ばれているのか、意味や実情も理解していないのだろう。
だから含みもなく、貴方と同じように首を傾げるだけ。

傍に座った貴方の横に身体を寄せて、じっと見下ろす。
視線の向いた先は自分と同じように、手袋をした手先。
しばらく黙ったまま視線だけが刺すように落ちた。
考えていることを隠すように他愛のないことで間をつなぐ、なんて、
器用なことは青年には出来ないらしかった。
不自然な間があってから、ようやくといったふうに声を出す。

「……ラピスは……
 どうして、手袋をしているの。」
(-244) 2022/05/06(Fri) 20:35:11