さて。あなたの秘密が公開された日。真夜中。

夜川 鷗助は旅館の屋根に腰を下ろしてぼんやりとしていた。背には翼、今日は頭上に光輪まで浮かんでいる。

あなたの姿を見つければ、ばさりと飛んで向かうだろう。

「山の空は悪くない。都市部は窮屈だよ、電線が多いから」
最後にひとつ羽ばたいて着地。

「あれ、狐姿やめちゃうんだ。暖かそうなのに」

「へぇ、そうなの？　都会にあって田舎にないもの、いくらでもありそうだけど……面白そうなものは思いつかないな」
本当は狐を撫でたかったが、仕方ないので人姿を撫でた。

「でも、一葉くんにとっては全部面白いかもね。それに人が集まるところでもあるわけで」
探し人も見つかるかもよ、と付け足して。

「いや羨ましいな。結局おれたちは上の立場が作るルールに縛られてる存在だからさあ。はーあ」
心底羨ましそうにあなたを眺めて。

「あの子ならいっそもう狼相談室で聞いたらうっかり言っちゃうんじゃないか、って気もしてきたよ、おれは」

「ん……良くない研究や実験……かあ。バレない方がいいのはその通りだけど」
撫でたまんまで数秒思考。

「おれたち政府にはもうバレてるし、その上で野放しされてるから今のとこ大丈夫じゃない？　それでも不安なら、この旅館で会った誰かを誘ってルームシェアするとか。
きみの事情はもうおれたちみんな知ってるからね」

「日本の端から端までいけるのを強さの基準にしたらおれも強いな」
飛べると強い。のだ。

「本腰入れて人として暮らす、となると色々やりようもあるけれど。……きみが人に化けれるなら、ルームシェアしてる人と交代で学校に通うとかもできそうなんだよね。いいなぁ、生活楽になりそう」

「やあ義妹。お風呂いかない？」
何かのタイミングの唐突なお誘い。

「ン、可愛がられてるもんねきみは。人が優しくあるのは良いことだ。……人以外もいるけど。おれたちとか」
少しだけ優しい手つきをで頭を撫でた。

「集合写真とか、みんなノリノリで撮ってくれると思うよ。その時はカメラ役になろうかな。得意なんだ、実は」