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【墓】 雷鳴 バット普段もたもたと食事を選んでいる青年は、今日も小等部を誘導する。 遠巻きに。青年を避ける子は日に日に増えたり、減ったり。 だからいなくなった人々のようにはうまくはできない。 それでも、姿を現さない子どもたちに目を向けて、誰がいないかを確認したりはした。 出来ることは少ないものだ。彼らのようには、できない。 >>5:1 クロノ 「……大丈夫?」「配膳、手伝おうか」 やっぱりそうした仕草をするまでには時間が掛かったから、 最初に貴方に掛けられた声、というわけではなかっただろう。 それでも、通りすがりにちらと声を掛けたりはした。 大きく返事はなかったとしても、気づけになるくらいでいいのだ。 (+2) 2022/05/06(Fri) 21:31:10 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピスまずは、拒絶されなかったことへの安堵が勝っただろう。 それから目に見えたものをうまく認識できず、反応が返らなかった。 指で、美しい色彩を拾い上げて。微かな木漏れ日に照らして、首を傾げた。 青色は張り付いているのではなく、人体と一体化しているのだ。 「……きれい……」 呟いた言葉に嘘はないものの、少しだけ眉はひそめられた。 手袋に包まれた指先でつついて、ひっかいて。 合間合間から見える真白い肌色を引っ張って、関節のあたりを曲げてみる。 手付きは無遠慮だ。そうした配慮は、あまりできるほうではない。 「痛くない?」 (-14) 2022/05/06(Fri) 21:55:04 |
【墓】 雷鳴 バット「……」 青年は今日もゆっくりと食事の列に並ぶ。 選ぶ品目はごく少なく、決まったものなのに、やけに長く食べるものを選ぶ。 それからやはりいつも通り、短い時間食卓に着く。 喋る口数も少ない。青年に話しかける人間は少ないから。 けれど、その日は違って。 「……何か」 「顔を出せるようになった時に」 「ちょっと、安心できること」「してあげられないかな」 重く立ち込める空気に耐えかねたか、ようやくそれを察知したのか。 ぽつ、とその場に残った人間に投げかけるように、短く声を発した。 (+5) 2022/05/06(Fri) 22:14:33 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ「ツキは」「たくさん苦しんできたんだね」 「ここで、もしくは、病気で」「辛い思いをしたから」 「誰か、助けてくれた人みたいに」「なりたいのかなって」 想像で思い出をなぞるだけ、そこに確証はないのだとしても。 聞こえのいい言葉を口にすることに抵抗がないのは、 それを受け取った人間がどこに降り立つのか、責任をもたないから。 「僕、ツキを安心させられるように」「がんばるね」 「大人も、どうにかするって」「言ってた」 「きっと僕も」「ツキも、よくなるよ」 代替品は誰でも構わないのだから、気軽に手を差し伸べたって構わないだろう。 ただ、無責任で甘やかな言葉だけが向けられる。 唇を掠めたそれの意味を、どれだけ稚気の内の子供が理解しただろう。 あやすように背中を撫でる手は、蕩けるような熱を持つわけではない。 けれども、それはよいことなのだろうと受け止めて。 やさしいもののように、笑うのだ。 やがて朝が来たならば、共に食卓に向かう。 朝は短く、夢想の中に腰を落ち着ける時間は少なく。 それでも貴方がそれで構わないというのであれば。 (-37) 2022/05/06(Fri) 23:53:43 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス見た目には美しいそれは、けれども美しいばかりではないのだろう。 触れた石は暖かくはなかったから。青年の頭でも、確かにわかることだった。 つるつるとした手触りを、なにか確かめるように触れて。 「……戻らない?」 美しい瑠璃色は進行性のものだと今聞いた、では。 退行して元の身体を取り戻すのは、難しいのだろう。 少なくとも抑制するだけが精一杯の今は。 それがなんとも寂しくて、小さな手を自分の膝の上に乗せて。 体温を移すように、ぎゅうと頬で挟んだ。固い感触が、時折あたる。 (-40) 2022/05/07(Sat) 0:11:56 |
【秘】 雷鳴 バット → ライアー イシュカ「そう、か……」「確かに」 「ちゃんとした理由があるなら」「説明も、する」 全く疑わしく思っていない、というわけではない。 それでも敵愾心めいて恨めしく思うほどの理由は、青年にはなかった。 或いは、そう思えるほど"足りていない"かだ。 貴方の言う通り青年の頭の中というのはお子様で、あれこれと頭の回るほうではなく。 他人にこれとごまかされてしまったら、追及できるほどのものも持っていなかった。 続いて。不意に向けられた問いには明らかな動揺があった。 瞳孔は忙しく動き、言いよどむ間と呼吸があって。 どんなふうに答えれば良いのかが脳の内側で錯綜するように回っている。 「僕が」「兎を」 「……」 「……逃した、から」 「怒られた、大人に」 言葉は曖昧に。事実とは異なる事を言うのは慣れていない。 喉の奥で揺れる空気の流れは、それが嘘であることを明らかにしていた。 その質問があったからか、或いは単純に話題に途切れがあったか。 なんとなくもどかしい間があって、提案を。 「……一人のほうが、」「いい?」 (-43) 2022/05/07(Sat) 0:22:52 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス他人のことは、他人が説明してくれるから。 自分のことよりもなんだか深刻なもののように感じられたのだ。 人それぞれの状況に、程度問題の差などないのだろうけれど。 ぱち、ぱちと目を瞬かせる様子は眠りにつく畜獣のよう。 甘やかな膚の香りと、つややかな指の触れる感触が。 どうしても、ひどく、――に思えたから。 ざら、と舌が指先を這って。 かりと、尖った歯が白い指に立てられた。 (-62) 2022/05/07(Sat) 2:36:15 |
【秘】 雷鳴 バット → ライアー イシュカ「……」 その先に続く言葉を紡ぐのを、躊躇した。 躊躇するような理由があるのだ、そして。 それを貴方に伝えて良いものか、それだけの判断が青年にはできない。 たとえば敏い子供であればもう少し言葉を選ぶなり、 ごまかしようもあったろうに。ただ、じりと惑った足が半歩あとずさった。 「き」「くなら、聞いたら、いい」 「そのほうが正確に」「帰ってくるから」 答えはあやふやなまま、肯定でもなく否定でもなく。 自分の口から言うのだけは、その場しのぎにしかならないとしても固辞した。 貴方がどれだけの権限を持つか、なんてのは青年にははかれないこと。 出来るのは、事態から逃げる準備をすることだけだ。 (-83) 2022/05/07(Sat) 18:36:13 |
【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクス青年は他とのかかわり合いの中で口籠ったり言葉に詰まったり、 自分の中の考えを口にできないこともよくあった。それは、性格よりも頭の作りのせい。 そうした通い合いがスムーズに出来るということは、 共同体の中の知己としては十分足りうるところなのだろう。 互いに何かを齎すばかりが絆ではないのだし。 「……少しわかる」「僕も、帰っても……」 「僕は、"病気のこども"だから」「追い遣られて」 「たぶん大人になったら」「帰る場所はないんだ」 「子供は育てなきゃ」「よそに悪く言われるけれど」 「子供じゃなくなったら……」 黙り込む。いつか、自分がどうなるかなんてことは想像もつかない。 けれども人に言われたことを真似ることは出来る。 そこに込められた悪意も、噛み砕いて自分のものにすることなくそのままに。 果たして貴方とどれだけ同じ境遇か、まったく違うものかもしれない。 互い違いにもならず、全く違うものがそこにあるだけなのだとしても。 最終的に下した判断は、貴方の言葉に沿うものだった。 「おかしな」「考えでは、ないと思う」 もしもどこにも落ちる場所がないなら、疲れ果てるまで飛んだとしても。 自分は、それで構わない。貴方はどうだろう? 己の病も他人の病も知らないのなら、目の前に見えるものはない。 けれども暗闇の中でも、鏡の像は同じ形をしている。 (-84) 2022/05/07(Sat) 19:06:12 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス愛されて、艷やかで。白色のりんごみたいにほころんだ頬。 果実に挟まれた花びらみたいな唇が言葉を発さず、表情だけを作るのを見ている。 檸檬の枝のように細い指は青く艶めいて、それだけが冷たい。 「ラピスの指は、きれいだ。 でも、僕は。生身のままのキミが好き。 青い石には、なってしまわないでほしい」 さみしいと思うのは、変化が目に見えてあるからだろうか。 他人の病気は見えないものだから、こうして明らかなものがあるから? 離れていく船を見ていくような寂寥を湛えた目はじっと貴方を見上げて、 もしくはぼんやりと、指先からつながる根本を見て。 獣のような牙が、白い肌を突き破るほどに突き立てられた。 (-85) 2022/05/07(Sat) 19:14:40 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス血の塩気を求めるように舌が動く。 日常から剥離した味を吸い上げる内に次第に、頭ははっきりとして。 ある時やっとはっとしたように目を上げた、けど。 「……」 貴方の手が優しかったから。これでいいのかな、なんて。 受け入れられたのかと状況を違えたまま、貴方の手を掴んで話さない。 退けられなかった口先はちると、自分でつけた傷に口づける。 どれだけ時間がたったのか。ごく短いものだったかもしれない。 肉食獣のそれのようにざらついた舌が、肉を削るかすかないやな感触。 この場所であれば些細なことかもしれないけれど、それでも。 手首を引き寄せる力をどうするかを決めるのは、貴方の自由だ。 (-169) 2022/05/08(Sun) 18:17:59 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキまだ、昼の頃か。 眠たい目をしぱしぱとさせる様子はいつもどおり。 そればっかりは治療が行われたのだろう前後で変わることもなく、 成果が出たとは思えないような話。 午後の授業を控えてうとうとと準備をすすめるうちに、 投げかけれれた問いを受けてしばし考えた。 「……」「食べ」「……る」 粗熱のとれたそれを手に、ふかふかとつまむ。 手に余るもののようにつまみ上げたようすは、ちょっと不思議なものだ。 午後の授業までのおやつに、といった感じで持ち出せる形に包む。 まだほんのりあたたかな麺麭は香ばしい匂いを漂わせている。 「……」 投げかけられた問い。口を開いてから、また閉じた。 貴方の目を見て、自分が口にすべきことを考える。 教員としての貴方の、求める答えは。 「たぶん」「家に帰るよ」 もたもたとした授業の準備の中に、あたたかい麺麭は紛れていく。 午後の眠たい時間は、それぞれにすごすのだろう、そして。 (-170) 2022/05/08(Sun) 18:28:32 |
【独】 雷鳴 バット気づけば、心の底からの言葉というのはあまり彼には差し出せなくなっていた。 昨今のやり取りから、模範的でない言葉は彼を傷つけるのだろうとわかってしまったから。 家に自分の居場所はない。だからここに連れられたのだ。 高い金を払ってでも、体裁を保って家から遠ざけさせたかったのだ。 実際、青年は"病気"を持っているのだから、間違った対応でもないのだけど。 食べられない麺麭を手に抱えて、目を細める。 鳥にでもあげればいいのだろうか、けれど。 それが誠実でないことは知っている。 けれども青年の身体は、植物の繊維をうまく受け付け消化することもできない。 不実を避けるのならば、受け取らなければよかったのだろうか。 とても、彼の行いを否定する気にはなれない。 彼は、かわいそうだから。 (-171) 2022/05/08(Sun) 18:32:57 |
【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクス貴方は、あと一年。自分は、あと三年。 それにも足らない期間を過ごして、この外へと羽ばたいていく。 ひょっとすればもっと長い時間を掛けてもらうことも出来るのかもしれないけれど、 ほとんどのケースにおいてそれは保証されるものでもない。 "実習生"になったなら、別の話かもしれないが。 「フィウクスは」「……」 「自分のことを決められて」「えらい、な」 声に混じったのは羨望だった。 青年には、貴方と同じことが出来るだけの頭もなければ、手立てもない。 そしてそれが無かったとしても踏み出せるだけの、精神もない。 実際に見上げるに値するかどうかなんてのは、他人がはかること。 青年にとっては少なくとも、貴方は眩しく感じる雄姿の者だ。 手渡すべき返答なんてものは、青年は持ってはいない。 少なくとも今、対等な答えを出せるほどには、未来なんてものは見えてもいなかった。 「もう」「僕も、食べ終えるから」 「あとはもう食べられない」「もの、ばかりだから」 「……また」「教室で」 残されたほとんど丸のままの麺麭、果実。 誰かに見られたりしたら、好き嫌いしないと怒られそうな残り物。 今日は勇気を出して、隠して持ち出したありふれた食料品。 仕方がないからそれらは破棄してしまう、或いは飼育小屋のものたちにでもあげよう。 幸い彼らが口にしても構わないもの、構わない量しかもちだしてはいない。 出て行きかけの貴方を止めるわけでもなく、これが今生の別れでもない。 また、すぐにでも顔を合わせることができる、……はずだ。 (-176) 2022/05/08(Sun) 18:46:49 |
【秘】 雷鳴 バット → ライアー イシュカ貴方が正しい立場でそうした言葉を向けているのだということは、 鈍い頭をした青年にもよくわかっていることのようだった。 痛む心臓を抑えるみたいに、思わず胸に手を当てる。 「……わかった」 「そう、しなくてもいい方法」 「大人が見つけるって」「言ってくれたから」 「もう、起こることはない、よ」 少なくとも貴方の憂慮すべき自体は、今後は起こることもない。 だから、大丈夫だ。だから、安心だ。 それを境に、飼育小屋からも足は遠のき、近づくことはないだろう。 逃げるように後ずさる足は、そのまま貴方の視界からも離れていった。 ひょっとしたなら、明日にでも。 貴方の願う通りに、鍵の行方は渡ってくるかもしれない。 (-178) 2022/05/08(Sun) 19:06:01 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス鈍く動きの悪い頭は、ただ。 ひた隠しに抱えていたものが他に受け入れられたことが嬉しくて。 それが良くないことだと理解したのは、貴方の小さな手で押しのけられてから。 ぱっと顔をあげて口を離す。しばらく、様子を伺うように薄い色の目が貴方を見た。 「……」 「……ご」 「め、ん」 唇の皺には血が濃く滲み、啜った血と唾液が混ざったものが顎まで垂れていた。 自分がしたことに対してどんな言い訳を吐けばいいのか。 頭の回らないまま視線は消極的に下がっていって、うつむいた。 「戻って、いい……よ。 まだ僕は戻らないから、……森にはいかない、大丈夫」 共に歩いて帰るのは、こんなことをしてしまった後では厳しいだろうと。 指を押さえつける手はなく、貴方に縋りつくだけの指もなく。 いつでもあなたは、自分の好きな時に逃げられる状態だ。 (-180) 2022/05/08(Sun) 19:14:30 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス「……」 いいのか、と見上げる目。 貴方は声は出ないのだから、青年が黙ってしまうと何の音も交わせないまま。 ぱちぱちと、目を瞬くまま見上げる時間があった。 「いいの?」 何に関しての問いかというのは、なんともあやふやなままだ。 日のない内は十分に言葉も話せるだろうに、声に成ったのはそれだけ。 言葉を尽くさねばわからないことさえ、足りないままの小さな言葉。 惑うような沈黙が流れたのは、そう長い時間ではなかっただろう。 それでも焦れて、勿体ぶっているように感じられるには十分なもの。 立ち上がった貴方よりも視線の低い、しゃがんだ身体はようやっと、 ちらちらと辺りに振れる目をひとつに留めて、立ち上がった。 きゅ、と握った手は頼りなく、無事なほうの手を握りつぶしてしまうことのないように。 指の先をちょっとひっかけただけの、とてもささやかなもの。 「……」 「ラピスが、いい」 何が。なんてのはやっぱり、言葉足らずの飾り気のないもの、 貴方が手を引いてくれるなら、貴方の足に合わせて寮への道を歩く。 (-191) 2022/05/08(Sun) 19:51:07 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス貴方の顔を見下ろせば逆光になってしまうのだろう。 たとえどんな恐ろしい表情をしていたとしても、 貴方には何も見えはしないのだろう。 だから、そう。そこにある表情が確かな慈しみだと、伝わっていたならいい。 指先がとても熱く感じるのは、血が流れるせいばかりではない。 「……うん」 移り変わった月光が照らす貴方の表情は、とても尊いものなのだろう。 少なくとも青年にとっては、そうだ。 言葉少なな懐いが何であるかというのは、今はわからなくとも。 どうか己が貴方を傷つけてしまわないように。 どうか貴方が己を見守っていてくれるように。 どうか同じ気持ちでありますように。 ふたつの足音は、また明日へと進んでいく。 (-205) 2022/05/08(Sun) 20:41:14 |
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