【人】 軍医 ルーク[ 言葉にするうちに、自分がどれだけ彼のことを見ていたのかを 改めて理解してしまう。 最初は当たり前のように、 自分が此処にいない方が良いと思っているに違いないと、 そんな風に考えていたけれど。>>1:236 そう言われたことは、今思えば一度だってなかったのだ。 いや、苦い薬から逃げようとはしていたけれど。 義手を使って倒れて担ぎ込まれて、目が醒めた途端、 窓から逃げようとしていたことなんかはあったけれど。 それでも、“姿が見たい”と、 そんな風に探してくれていたとは、 ほんとうに、思っていなかったものだから。] ……、 それは、物好きだと思う。 [ この期に及んでそんなひねくれたことを、 言ってしまいもする。 口ではそう言いながら、微かに綻んだ口元は、 どう見ても“嬉しそう”に見えただろうし、 背の後ろで白い尻尾がぱたり、と揺れたりも しているのだけれど。 自身の目で見てくれていたから、 噂に偏見を持つこともなく接してくれていたのだろう。] (169) 2020/05/25(Mon) 21:00:28 |
【人】 軍医 ルーク君に個人的に関わろうとするなって、 念を押されたこともあるんだ。>>0:305 仕事に徹しろと。 いまにして思えば、 わたしには知らされていなかったけれど、 上の方もある程度は、 君に対しての予測や警戒があるのかもしれない。 [ “天”の向こうには何者かがいるということは、 知る者は知っている事実だ。 第二研究所には、彼女がいた――カイキリア。 最初の襲撃の際に現れた、 身元が分からず極めて戦闘能力が高い、だれか。 可能性としては、当然考えることだろう。 彼もまた、天の向こうから来たのではないか――と。 そうであるならば、治療の体面すらかなぐり捨てつつある、 実験めいた検査の理由もわかる。 到底、納得できるものではないけれど。] (170) 2020/05/25(Mon) 21:01:58 |
【人】 軍医 ルーク“葬儀屋”が関わったところで、 迷惑だろうってね。 そのシロップ、ずっと作ってはいたけれど、 きっと渡せないだろうと思ってた。 でも、結局、ダメだった。 関わらないようにするなんて、出来なかった。 [ 通信機を探しに行くときに、 研究班に声をかけるやり方だってあったはずなのだ。 あの研究馬鹿たちなら、捜索に加わる者もいたかもしれない。 そのことに、思い至らなかった理由。 真っ先に思い出したのが彼だった理由。 司令直々に念を押されながら、従うことが出来なかった。 自身の感情を理解するよりも先に、 きっと、心が歩き出していた。] (171) 2020/05/25(Mon) 21:03:11 |
【人】 軍医 ルーク[ 通信機を探しに行ったときのこと。 それを口に出すのは、やはり恐怖もあった。 今はもう、何が引き金になるか分からない状態だ。 それでも、状況も分からず手探りで立ち向かうことと、 自身の状態について何らかの知識を持って臨むこと―― どちらがより安定していられるだろうかと考えた。 何より、他ならない彼自身のことなのだから、と、 そう思って伝えることにしたのだ。 ――重なるような鼓動の音が、 先ほどまでよりも落ち着いて聞こえたことも、 その理由であったかもしれない。 それでも、痛む素振りで頭に当てた手に、 咄嗟に息を呑み、手を伸ばす。 頭に触れた手の上から、そっと添えるように。] (172) 2020/05/25(Mon) 21:04:41 |
【人】 軍医 ルーク そうか、総司令に―― あの通達は、それでか。 あのひとは、多分、目的のために 自分が必要で最適と判断したことは、 きっと、何でもする。 情がないとか感情で動くとか、 そういうことはなくて、 私利私欲で動くということもなくて。 目的はきっと、“前線の死守”。 先の先を考えていることも あるかもしれないけれど、 そうだね、わたしにも、本音は見えない。 [ 総司令と関わる頻度は彼と似たり寄ったりだろうけれど、 ここに来る前から多少の面識はあった。 学問所にいたころの父の後輩だったと聞く。 判断は下していない、というのなら、 きっとその通りなのだろう。 いつかその『判断』が下されたとき、 それが承服できない内容であったなら―― もう、目を閉じて耳を塞ぐようなことはしない。] (173) 2020/05/25(Mon) 21:06:22 |
【人】 軍医 ルーク じゃあ、起こすときは念のために、 とびきり苦い薬も準備しておく? びっくりして飛び起きるくらいの。 シロップかあ。 それで目が覚めるなら、 どれだけ君は甘党だということになるな。 ――考えとく。 [ そのとき何が起こるかということも、 どうすればよいかも分からない。 それでも、“手を握ってくれていれば”と、 そう伝えてくれた言葉が。>>55 今もこの足元に深く広がる、底のない不安と恐怖に、 立ち竦みそうになる足を励ましてくれる。 ひとよりはひどく遅い足だけれど、何処にでも行く。 この手で出来ることは、何だってする。] (174) 2020/05/25(Mon) 21:07:01 |
【人】 軍医 ルーク[ 名前をタブレットで告げたのは、 言葉で話そうとして、少しだけ躊躇ったから。 いざ口に出すのが、どうしてか―― そうだ、これは気恥ずかしいというやつだ。 “大きな秘密”、“宝物”なんて言われて、 実際にその名を口に出してもらったなら、 泣きすぎて赤くなっていた顔が、またすこし、 かっと赤くなってしまう。 咄嗟に俯いたから、 向こうも微かに顔を赤くしていたとは気づかない。 それでも、やっぱり顔を上げて、] うん……、 わたしも、普段通り呼ばれる方が慣れてるな。 ありがとう、シュゼット。 [ 名前一つ呼んだり呼ばれたりするのに、 どうしてこんなに心臓がうるさい。 すこしだけ緊張したように、 けれども嬉しそうに笑い返した。] (175) 2020/05/25(Mon) 21:08:07 |
【人】 軍医 ルーク[ ――記憶のこと。 彼が考えていた内容は、自分も心の何処かで あるいはと思っていたことだった。>>120 一番新しい日記に記されていた内容。 零れた写真へと手を伸ばす、その姿は、 他ならない“彼”のものであるように、見えたのだ。 旅の中、朽ち果てた亡骸が握りしめていた一枚の写真。 それを“大事な宝物”として持ち続けていたのは。] 最初の機獣を君が倒したというのは、 確かに、事実だと思う。 公的な記録がそうなっているというだけじゃない、 わたしの参照した残骸の記録とも、 矛盾なく一致するから。 君は、機獣とともに降りてきたのに、 下にいたひとたちを殺そうとすることはなかったと、 わたしも、そう信じたい――… ううん、信じている。 [ “信じたい” それは、“下にいたひとたち”を―― 父を殺したのが彼だったと、思いたくないから? もし万が一そうだったとしたら、 自分はきっと、ひどく葛藤もするし、苦しみを感じる。 それは否定が出来ないことだ。 けれど、信じていると言った理由はそうじゃない。] (176) 2020/05/25(Mon) 21:10:13 |
【人】 軍医 ルーク[ あの日記に綴られていた言葉たちが、 いまも強く語りかけてくる。 感情がなかった彼が、はじめて強く感情を感じた、 その瞬間の記憶。 その記述を読んだ時に、貫くように胸を打った何かを、 言葉で言い表すことなんて、できやしない。 だから――信じている。] そうだね、きっと―― 君は、君だ。 [ 自分を信じてみる、と彼は言う。 怖れを知らない勇敢さではないだろう。 それどころか、怖がりなところもあって、 苦手な薬にぷるぷると怯えてしまうこともあるくらい。 自分が自分ではなくなるかもしれない恐怖だって、 想像してもしきれないものだろう。 怖さを知っていて、感じていて、 それでも立ち向かう。 ―― それは、本当の意味で勇敢ということだと思う。 その真っ直ぐな眼差しに、目を細めた。 だから、自分ももう、逃げない。 この先へと、歩みを進めてゆく。] (177) 2020/05/25(Mon) 21:13:17 |
【人】 軍医 ルーク 連絡手段か。 うん、わたしも一応自室はあるけれど、 あまり戻らないしな。 どうしようか。 [ 首を傾げていると、ぺんぎんがくいくい、と 彼の服の裾を引っ張る。 まかせて、と胸を張った。 胸を張る――というか、 どこまで胸でどこからおなかなのか微妙な丸さであるから、 おなかをぺんっと突き出したような体勢ではあるけれど。] ああ、どうか。 基地の中ならぺんぎんに頼むといいんだ。 こいつら、何かこう、 独自のネットワークがあるから。 手近なぺんぎんに聞けば、 どこにこのぺんぎんがいるか、 そう待たないうちに分かるはず。 [ 本当は、次にいつ会えるか分からないのは、 ひどく不安でもあった。 次に眠ればどうなるか分からないと、 そう聞いてしまえば猶更だ。 けれど、此処が前線基地で、 互いにしなければならないことがある以上、 ずっとこうしていることは出来ない。] (178) 2020/05/25(Mon) 21:15:00 |
【人】 軍医 ルーク[ 何かあったならすぐに駆け付けると、 そう心に決めて。 医務室を去る後姿が、角を曲がって見えなくなるまで、 扉を閉めずにそこに立っていた。] [ 敵の総攻撃の情報が、 *前線基地の総員に伝えられたのは、翌朝の事。 攻撃の日は、 ] (179) 2020/05/25(Mon) 21:16:14 |
軍医 ルークは、メモを貼った。 (a12) 2020/05/25(Mon) 21:18:11 |
【人】 軍医 ルーク『ああ、探した探した! そこの兎君、えーと、ゼット!』 [ 皆がせわしなく動きまわる前線基地を、 ぱたぱたと走る人影がある。 一斉攻撃の情報が齎されて後、基地内の空気は一変した。 当初は絶望に近いものでもあっただろう。 一度の降下で一体の機獣を倒すにあたり、 犠牲を出さずに済むこともあったけれど、 これまでどれ程の死傷者、損害を重ねてきたことか。 けれど、此処は最前線にして最後の砦であるという認識は、 否応なしに、基地にいる者皆が感じていることでもある。 廊下で第一攻撃部隊隊長に声をかけてきたのは、 技術班長、ジルベール。 賑やかに両手をぶんぶん振って、駆け寄って来る。] (181) 2020/05/25(Mon) 21:48:46 |
【人】 軍医 ルーク 『君に渡したいものがある、 暇かい? あはは、愚問だったね、 いまこの基地は、年中行事を袋詰めして振り回して ごちゃまぜにしたような有様だ、 窓を開けたら年始の祭りの飾りが仮装して 菓子を強請り始めたっておかしくない。 けれど、いくら暇じゃなくたって、 これは来てもらわなきゃいけない』 [ そう言った彼女は、彼をぐいぐいと 武器倉庫に引っ張ってゆくだろう。 天井が高い堅牢な倉庫には、 整備された通常の装備に加え、 新たに運び込まれているものがある。] 『実戦への投入はまだ先の予定だったのだけれどね、 “いま使わずにいつ使う!”っていうやつさ。 技術班総出で、徹夜突貫で整備した。 機獣から回収された装備を元に開発したものだ。 各部隊長に支給して回っているところだったんだが、 実際、今この基地の最大戦力は君と言っていい。 最大の戦力に出来るだけ火力を集中するのは、 理にかなったことだよ、うん』 [ 一画にある金属製の筒を、ずるずると引きずって来る。 彼女の腕力でぎりぎり動かせるくらいの重みのようだ。] (189) 2020/05/25(Mon) 21:58:54 |
【人】 軍医 ルーク 『それに、こういうのを軽々持ち運べるのは、 馬鹿力の連中のなかでも そう多くはないだろうからね。 携帯式対機銃弾発射器といったところか、 反動はかなりのものだが、君のそれと違って、 物理的な反動だけだ。 つまり一言で言うと、筋肉でなんとかなる!』 [ 義手の解析に携わったこともある彼女は、 彼の義手の性質もある程度は心得ているようだった。>>2:65] 『それからこっちは、対機獣の手榴弾。 爆発の威力は前方にだけ収束するわけじゃなくて、 周囲にも爆風が来るから、 離れたところから投げるんだ。 機体に吸着して爆発する。 立ち回りによっては中々の効力を発揮するだろう。 それから――』 [ 部隊長のみならず、 部隊全体への一通りの追加装備について説明をした後、 彼女は顔を上げる。] (190) 2020/05/25(Mon) 21:59:38 |
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