……アベルの部屋に忍び込んだ、夜のこと。


僕にも誰にも見えない、透明な手足をつつく感触でしかわからないネズミの友達。とても賢いチィ。と、その友達みんなが協力者だった。
ネズミたちがアベルに集って、体を押さえて、口に入り込む。予定。うまく説明が伝わってれば。

できるなら眠ったままで、終わらせたい。


頭を瓶で殴っても、死ぬまですごく時間がかかるんだね。
重いものを選んだけど、僕の力がなかったせいかもしれない。
チィたちへの心配は、問題なかった。動けないようにすることはできていた。けど、アベルには誰がこんなことしてるのか見えていたし、逃げようとしていた。



何回も振り下ろしたから、走った時みたいに心臓がうるさくてがする。

そっと瓶を床に置いたつもりだったけど倒れて、音がする。でもさっきまでの音よりは大きくないからいっか。

じっとアベルを見下ろして……1回、呼んでみる。
アベルが起きてる間はなんだか駄目な気がして、他のみんなはよくても駄目って言われる気がして、呼べなかった言い方。

僕の声が響くだけ。返事はない。

それで、もうひとつやったことないのを思い出す。いいかな？いいかな。いいよね。
手を広げて、思い切り抱きついてみた。
あっ、まだあったかい。



誰かに見つからないように早く離れなきゃいけない。
だからそうしたのは一瞬だけだったのに、離れるときはとても、満ち足りた気分。嫌な気持ち、さっきまであったはずなのに。