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サルガスは、朝食の席に現れなかった。 (a1) 2021/05/30(Sun) 20:04:36 |
【人】 小さな心臓の サルガス「――……」 サルガスが朝食の席に現れたのは、朝食の時間も終わりかけの頃だった。 幽鬼のように動きはおぼつかず、顔色は昨日の午後に中庭に現れた時よりも一層に白い。 けれど、周りの子供たちは彼を"囃し立てた"。指をさして笑うものもいる。 治療を受けていないことの証左は、皮肉にも烏合の衆の反応によって成されている。 ふらふらと、自分が何をすべきなのかも忘れたような足取りで。 ぼんやり、食事をトレーに乗せようとして。でも、うまく選び取ることもできない。 (5) 2021/05/30(Sun) 22:23:29 |
【人】 小さな心臓の サルガス>>4:8 朝の食堂 レヴァティ 「ぅ、」 貴方の手、こどもよりも大人に近くて、するりと伸びた指先を見て。 何も入ってやしない胃の中がぐるりと回ったように、ひくりと喉を動かした。 なんとか込み上げるものをこらえて、こらえて、緩やかに首を横に振る。 「だい、じょうぶ……テーブルで、食べるよ。自分で、持てるから」 真っ白い指でトレーを返してもらうとそのままよろよろと席を探した。 (11) 2021/05/30(Sun) 22:56:22 |
【人】 小さな心臓の サルガス>>4:10 朝の食堂 ブラキウム 少し二の足を踏み気味ながら、昨日と同じように席のそばまで行って。 遅れた時、いつかと同じようにまだ席に立たず、貴方の返答を待ち望む。 「……まだ、となり、空いてるかな。 ルヴァと……カストルは?」 状況に気づかない。気づけていない。それらをとりまく違和感に、目がいっていないのだ。 (12) 2021/05/30(Sun) 22:58:34 |
【人】 小さな心臓の サルガス>>4:13 朝の食堂 レヴァティ 「レヴァティは、どうして――……」 ほとんどぼやくように、ぽろりと。ここでは多くの者が目を逸らしていることを口にしかけて。 ぐ、と飲み込んだ。ここでは、こんなにも人がいるところでは。どうしても言葉は制限される。 まるで貴族の舞踏会のように、まつりごとが通い合うこの場所で。 ひとたび、口にすることが何を呼び起こすのかということは、はっきりとわかっているのだ。 「……ううん。なにか、おはなし、あったら……あとで、聞けるとおもうから」 ふらついた様子のまま、少年は既に出ていく方面に多くなっている人波に紛れていく。 (15) 2021/05/30(Sun) 23:32:45 |
【人】 小さな心臓の サルガス>>4:14 朝の食堂 ブラキウム 「うん。うん、……そうだね。ごめんね。寝坊、しちゃって……。 ふたりとも、少し、遅れてるのかな。みんなつかれてるし、しかたないよね……」 言外に不安をいだきながらも、それを明確に言い表そうとはしなかった。 言ってしまえば現実になるような気がして。 聞いた者が眉をひそめたのも見ないふりして。 いつも以上に乗せられた品の少なく味気ない食事を並べて、それでも少しほっとした。 少なくとも目の前にいる彼の無事は確認できたのだ。 無事って、なんのことだろうか。 「……ちょっとだけ、へんなもの、見つけたりはしたんだけど。 でもやっぱり、これだって思うようなものは、見つけられなかったなあ……」 (16) 2021/05/30(Sun) 23:48:05 |
サルガスは、研究員の一人がいなくなった噂を聞きました。 (a18) 2021/05/31(Mon) 0:42:51 |
【人】 小さな心臓の サルガス>>4:17 朝の食堂 ブラキウム 「無茶なんて……ううん。無茶、したのかな。何も……しないのは、はばかられて。 なんか、今日のブラキウムかっこいいね。……ブラキウムこそ、なにかあった?」 成果が得られず、ただ日々を過ごすことにも気を咎め。けれど、それにしたってぼうっとしている。 隠して、ごまかそうとしているよりは、もはや何も具体的に考えることすらできないようで。 そのくせ人の変化には漠然としたものながら気づきがあったようだった。 立ち振舞いになにか、覚悟ともいえるようなものを感じ取っている。 「そうだね、なんでもいいから、食べなきゃ……。 きのう、青りんご、おいてきぼりにしちゃったね」 緩慢な動きながら食事に手を付け始める。 つやつやと魅力的にみつの気配を知らせる青りんごだけが、かがやかしい食べ物に見える。 何事もなく、二人揃って席につけたけれど。ここに呼びたかった者達はどこだろう。 "明日、また明日、また明日と"。 歩み続けるでしかないのに、その足取りがこうも重いのはどうしてだろうか。 前を、顔を上げて前を見つめる彼と、一転して何かが頭を擡げて離れない少年は。 歩みゆく行き先が少しずつ違えてしまっていても、同じものを見つめていると言えるだろうか。 (19) 2021/05/31(Mon) 7:44:37 |
【人】 小さな心臓の サルガス「ああ、……ああ。シェルタン、戻って、来たんだ……」 耳に聴こえるバイオリンの旋律が、誰しもが耳を傾けるそれに戻っている。 気づいて、顔を上げて。そのまぶしい姿に、人知れず目を細めた。 今なら声をかけられるだろうか、 或いは自分にその資格があるだろうか。 あまりにも貴いその姿を、食堂の片隅でただぼんやりと見つめている。 (20) 2021/05/31(Mon) 7:46:58 |
サルガスは、朝食の後、自室で祈りを捧げていた。 (a23) 2021/05/31(Mon) 7:49:48 |
サルガスは、自分がどうして咎も受けずにここにいるのか、わからない。 (a24) 2021/05/31(Mon) 7:50:10 |
【置】 小さな心臓の サルガス【吊り懇願ロール】 教員用の生活上水の中から、研究員 おとな の死体が発見された。幸いに死体は全身へ腐敗ガスが行き渡るよりも早くに発見され、人物の特定に障りはなかった。 遺体は内密に保管され、子供たちがそれを知ることはない。と言うことになっている。 実際には、速やかに"犯人探し"が始まった。 まず、大人たちに指令が走らされ、現場の精査が進められた。井戸の周辺に小さな足跡が見られたことから、子供が関わっている可能性が挙げられた。 次に、教員棟付近に出入りのあった子供の特定のために、大人から子供への聞き込みが行われた。 小等部から高等部まで、考えられる限りほとんどの人間に匿名、直接様々な方法で詰問が行われた。 時間は刻一刻と、過ぎていく。 (L2) 2021/05/31(Mon) 10:18:43 公開: 2021/05/31(Mon) 13:00:00 |
【人】 小さな心臓の サルガス>>4:22 朝の食堂 シェルタン 「シェルタン……お、おは、おはよう!」 食器も下げ、手持ち無沙汰になってしまった頃だろうか。声に振り向き、柔らかい足音が向かう。 見えても、触れても、それでも取り払われなかった見えない暗幕が取り払われているかのよう。 子犬のように駆け出しかけて、足が一度止まって、勇気を出すようにもう一度歩き出した。 「……なんだろう、なにか……どう、お話ししていいか、わからないね。 ぼくは、だめだなあ……なんともないようにしなきゃって、おもってたのに。 ああでも、おかえり。おかえり、シェルタン、きみが……ここにいてくれて……」 『治療』されたもの、されていないもの。分け隔てなくあるようにしたいと思っていながらに。 それでも確かに受け入れられたものとして立ち振る舞う貴方の姿を見て、少年の鼻はつんと童謡のトナカイのように真っ赤になった。 「ぼく、どうしたらいいだろう? どうやって、立ち向かっていけばいいだろう?」 (24) 2021/05/31(Mon) 12:15:10 |
サルガスは、自分の手がいつも水浸しであるように感じている (a25) 2021/05/31(Mon) 12:29:47 |
サルガスは、知らない生徒に声をかけられ、逃げました。 (a26) 2021/05/31(Mon) 12:33:23 |
【人】 小さな心臓の サルガス>>4:26 朝の食堂 シェルタン 「……ああ、ああ。"ごめんなさい"、"ごめんなさい"。 ぼくらにできることは、それだったのかもしれない。何があっても負けないことだったのかもしれない。 きみが、つよくて、まぶしくて。いつもその音色があったことに、もっときづけばよかったな」 ヘイズがいなくなった時。自らがいなくなった時。自らがもとってきた時。 いずれの時でも美しい音色でそこにいることを訴えていたあなたを、ひょっとしたらよく見ていなかったかもしれない。 もっとそばに居たならば、もっと良い気づきを早くに得られただろうか。 抱き着くというには弱々しく、伸べられた腕に両手を引っ掛けた。 きゅうと、小さい指が袖を握りしめる。 「そうだね、シェルタン。いつでも、どうあっても、おたがいの傷を癒やしあえれば、それが救いになったんだね。 きみのやってきたことが、どれほどだれかの助けになったか。 ……メレフとカストルを、見かけないんだ。 おねがい、シェルタン。かれらを、みつけてあげてください」 (28) 2021/05/31(Mon) 12:53:44 |
サルガスは、逃げている。それがいじめっ子たちの心証を悪くした。「逃げたネズミを捕まえろ!」 (a29) 2021/05/31(Mon) 12:55:53 |
サルガスは、追いかけられている。足をかけられ (a30) 2021/05/31(Mon) 12:56:24 |
サルガスは、転ばせられた。子供たちの好奇の目と、無邪気な猜疑心を刺激した。 (a31) 2021/05/31(Mon) 12:57:13 |
サルガスは、助けを求めない。求められない。諦めたように俯いて、唇を噛んで。けれども何が言えるだろう。 (a32) 2021/05/31(Mon) 12:59:22 |
サルガスは、だって。己のしたことを知っている、彼らは知らない、でも自分は、知っている。 (a33) 2021/05/31(Mon) 12:59:48 |
【秘】 小さな心臓の サルガス → 褐炭 レヴァティ/* ボンソワールボンカレーです。 こちらは大丈夫です! 前日深夜以降はキャラクターは殺害現場には寄り付かないため、情報だけモブ大人からお出しする形になるかもしれませんが大丈夫でしょうか? なにかイメージなどあればお申し付けください! (-120) 2021/05/31(Mon) 13:23:35 |
【人】 小さな心臓の サルガス>>4:30 朝の食堂 シェルタン 「ありがとう。ほんとうに、ありがとう。 いつだって、弱音をはいていいからね。ぼくでなくても、寄りかかれるだれかに、そうしてね。 ……たとえば、メレフとか。ぼくは、なにも聞いていないけれど……」 二人の間に、あの日の深夜に何かがあったのだと言うことは聞いている。それが何かは、敢えて問いたださなかった。 けれど、二人がそれを同じく抱えているのなら、二人なら何とかできると、信じている。 言葉少ない彼と、優しさで口を隠した貴方が。互いを大切にしようとしていること。 互いの言葉の中に言外に抱えた見えないものを、なんとなく、信じているのだ。 「いつか、また、あのひの音色を聴きたいな。 愛の喜び 、こんどはあたまからちゃんと、さんにんで……」くしゃくしゃになった涙声は、俯いた頭の下側からのぼるやうに聞こえる。それを、鼻を啜って押し返して。 あまり小綺麗ではなくなってしまった顔をぱっと上げると、両手をやさしい腕から離した。 人のほとんど捌けかけそうな食堂の出口へ、くるりと足を向けて、振り返らないように駆けていく。 「じゃあね! みんなのこと、よろしくね!」 (31) 2021/05/31(Mon) 14:42:20 |
【人】 小さな心臓の サルガス>>4:32 朝の食堂 ブラキウム 「……ごめん、ごめん」 貴方の声を聞くごとに。人を率いるものである姿を見るごとに。その成長と認めるごとに。 自分がやはりどれだけ愚か者であったかを知るのだ。貴方が最初に見出した通り、愚か者なのだ。 いかに貴方が自分を利用しようとしていたかを、傀儡にしようとしていたかを、どうして。 どうして、最初に理解してしまって、踏み込んで論戦することなく見ないふりをしてしまったのか。 少年を取り巻く多くのからかいと一緒くたにしてしまわなければ、今は同じ高さで戦えただろうか? いまや、貴方の前にあるのは今にも泣き出しそうなくしゃくしゃの顔ばかり。 「どうしてだろう、どうしてきみと語り合うのを、あきらめてしまっていたんだろうね。 きっとひとこと、嫌だと、いっていたなら。たがいのほんとうにほしいものを、わかっていたかな。 もっとこどもらしく、心の中の白も黒も、あかしていれば、よかったかな」 食器を持つ手が止まる。取り落とすように落ちた腕は、伸びかけて、やめてしまった。 あなたを引きずり込んでしまわないために。 大人でも、子供でも、患者でも、被害者でも、もう、なんでもなくなってしまった。 ぼろぼろと涙をこぼしながら、少年は貴方に唯一で、最後の"お願い"をする。 「ねえ、ぼくのこと、さんざんにうらんでしまってもいいよ。 きっとこれはとても残酷になるのかな。これほど、歩み寄ってくれたきみを、おこらせるかな」 → (37) 2021/05/31(Mon) 21:08:47 |
【人】 小さな心臓の サルガス (38) 2021/05/31(Mon) 21:11:42 |
サルガスは、一つ、一つ。握ってくれた手を放して。彼らを、解放する。 (a43) 2021/05/31(Mon) 21:33:52 |
サルガスは、シェルタンの"手"を放した。もう、彼が暗がりに再び立つことのないように。 (a47) 2021/05/31(Mon) 22:09:05 |
【人】 小さな心臓の サルガス>>4:41 朝の食堂 ブラキウム 「ああ、そうだね……ぼくは、どうしてこうも、ばかなんだろう。 きみに、ここまでみんなに声をかけ、あつめ、のりこえてくれたきみに、ちゃんと言わないと。 ――ありがとう」 "今まで"。 半ばまでを食べただけの食器を下げて貴方に微笑みかけ、確かに言葉にする。 さあ、まだ、遅いことなんて無い。これは悲しい離別ではなく、旅立ちなのだから。 "明日、また明日、また明日と"。今日という日を乗り越え、行くべきだ。行かなくてはならない。 明日のわれら (us) を思うのならば、貴方は自らの大切なものを守るべきだ。決してこれは、絶望のための決別ではない。 貴方が幸せになることを、祈っている。 (42) 2021/05/31(Mon) 22:44:14 |
サルガスは、サルガスは、ブラキウムの"手"を放した。もう、彼が思う人々を見失わないように。 (a49) 2021/05/31(Mon) 22:45:16 |
【秘】 小さな心臓の サルガス → 褐炭 レヴァティ/* ボンカレーです。 個人的な見込みとしては、大人は面子の死守を優先すると考えています。 そのため、子供たちには聞き込みをする際に各々に則した条件付けを行った上で「他の子供に言わないこと」を前提条件とし、実際に怪しい証言を得た場合にも他言無用であることを示した上で大人達独自で有効証言を絞り込むことでしょう。 これにより、大々的に触れ回るのは大人にとって不利になると考えられます。 大人に対して友好的な立ち回りをするのであれば、それとなく、或いは堂々と手柄とするために、有効な証言をまとめて大人に提出するのが良いのではないかと思います。 あとは単純に、プレイヤーとして事を大きくするつもりがないのと、平日進行であることを加味すると、なるべく他のキャラクターやプレイヤーさんに情報が蔓延しない形でやっていただきたいというのがありますね……。 (-185) 2021/05/31(Mon) 23:25:29 |
サルガスは、知らない生徒から逃げ、自分の部屋に帰ってきました。 (a67) 2021/05/31(Mon) 23:31:28 |
サルガスは、扉の下に正式な通告書を見つけました。 (a68) 2021/05/31(Mon) 23:31:46 |
サルガスは、覚悟を決めました。 (a69) 2021/05/31(Mon) 23:32:04 |
【置】 小さな心臓の サルガス【吊り懇願ロール】 封筒、封蝋、滑らかなインク。"大人"からの呼び出しだった。 授業が終わり、夕刻を過ぎ。夕食を受け取って、その後の時間が指定されている。 悠長にも思えるような通告は、しかしふつうの子供には十分なものだった。 もはや逃れようのない事を示し、穏当な手段からそうでないものに切り替わる最終通告。 逃げ延びようとしたところで、守りに囲まれた院から出ることはできない。 追い詰めたと獲物に知らせるためのものではなく。喉元に刃を突きつけるようなものだった。 そして、サルガスもまた。それに逆らおうとはしなかった。 まだ、すこしの猶予を与えられながらも。再び反目を手にすることはなかった。 己の罪が、確かに罰せられる機会を与えられるのであれば。 最早それを否定する理由さえも、少年の真直ぐな心の中にはなく。 自らの意思を持って受け入れるものであり―― 時間は刻一刻と、過ぎていく。 (L8) 2021/06/01(Tue) 0:55:09 公開: 2021/06/01(Tue) 2:00:00 |
小さな心臓の サルガスは、メモを貼った。 (a83) 2021/06/01(Tue) 9:04:53 |
【秘】 小さな心臓の サルガス → 迷子 メレフ まだ、夕方に差し掛かった頃だろうか。決められた刻限よりは少し手前。 まるで時間が過ぎていくのだけをじっと耐え忍んで待つようにして。 だからそれよりもあまりに早くの他社の来訪には、珍しく気づきが遅れた。 「……はい?」 訝しむような声。それもそのはずだ。だってまだ、大人の迎えの時間には早い。 身支度を整えしっかりとケープの前を閉めて、背筋を伸ばして扉を開いた。 「……あれ、メレフ……? どう、したの?」 "いなくなった人"にはもう気づいている。けれどそれ以上に、自身の方に後ろ暗さがあった。 いつものように訪ねてきてくれた、それだけなのに、なぜだか声音は強張った。 "見ないふり"にしては、体は硬直し真直ぐに貴方を見つめて、じわじわと焦りが息を荒くする。 (-315) 2021/06/01(Tue) 15:04:22 |
【秘】 小さな心臓の サルガス → 迷子 メレフ「ううん、あとで……あとで、ひとと約束をしてるから。 ばんごはんの、あとなんだけど……だから、ずいぶん早いんだなって、かんちがいしちゃった」 どことなくぎこちなく、しかし浮ついた様子でもなく。嘘を付くのも誤魔化すのも下手だ。 けれども適切に貴方を追い払う言い訳の内容も理由もなくて。 また、いつものように扉を少し開けるだけは、してみせた。あいた隙間からは退かないのに。 「調子は、だいじょうぶだよ。きょうはむちゃもしてないし、ほんとうに……。 ……ああ、そうだ。あのね、シェルタンが、"戻って"来たんだ。もう、会いに行った?」 うまい話題も思いつかず、口を開けばボロが出そうだ。 窮してしまって、ぱっと共通の友人のことをあげた。目先を逸らすかのように。 (-328) 2021/06/01(Tue) 15:48:58 |
【秘】 小さな心臓の サルガス → 迷子 メレフ「、そっか。もう、おはなししたんだ。なんだかへんな言い回しだけど、ふたりとも、げんき? ふたりの間になにがあったかは、知らないけれど……しんぱいしてたみたいだったから」 ほっとしたのも半分、話を逸らしきれずに動揺しがちになってしまったのが半分。 少ししどろもどろでうつむきがちな話しぶりは、普段の様子からはかけ離れている。 相手を戸惑わせてしまっているのはわかっているだろうに、勇気が出ず、脇をあけられない。 そも、"大丈夫"なんてことはないのだ。子供の回復力であっても、一日二日で満足に動くなんて。 どれほどの心を砕いて心配しているのかも、伝わっているからにこそ振り払い難く。 「――だいじょうぶだよ! ぼく、なにも、とがめられるようなことしていないもの!」 だから貴方を悲しませたくなくて、つい、嘘が口をついて出た。 (-335) 2021/06/01(Tue) 16:41:43 |
【秘】 小さな心臓の サルガス → 迷子 メレフ「い。い、よ」 がたりと腕が扉を揺らした。断りきれず、いいや正確には断るべきかもわからず。 中へ入ることをゆるしてしまった。……本当にそれでいいのだろうか? 一度"治療"が成されたとはいえ、それが一度きりでは済まないかもしれないのに? そんな混迷が頭を占めているさなかで、貴方の問いが聞こえて。 「ぼくはっ、ぼく、は……メレフ、ごめんね。だめなんだ、こっちに来ちゃだめだ。 ぼくは、きみとも、シェルタンとも、みんなとも。もう、おはなししちゃいけない。 ぼくは……おとなに、よばれてしまった、から。ぼくと仲間だと、おもわれちゃいけない」 弾けるように言葉が口をついて出る。それが"治療"を伴うものかはわからないけれど。 頭を通り越して向こう側、いつかはお菓子の置かれていたテーブルには、 "大人"からのものであることを示す通告書が封をひらかれている。 (-342) 2021/06/01(Tue) 17:15:33 |
【秘】 小さな心臓の サルガス → 迷子 メレフ「っ、だめだ、むりしなくていいんだ、大丈――」 貴方の体質のことを知っている。それが寛解したことは知らない。 だから何より、頭に浮かんだのは貴方が以前に苦しみ、傷ついたことだった。 よわい力で押し返そうとした腕は、しかし貴方の言葉によって止まる。 「――メレ、フ。メレフは…… でも、でも、だめなんだ。ぼくは、やってはいけないことをしたから、だめなんだ」 通告書になぜ呼ばれたかは直接的には書かれていない。 ギムナジウムの中の掟に反し、規律を乱し、大人に対して反目したことだけだ。 だからほんとうに何をしたかは直接は伝わっていない。けれども、焦った言葉は出るばかり。 震える体は失望や嫌悪をおそれてだった。貴方に、友人に。おそろしい自分を知られたくない。 「ぼくは、ぼくは、だって。やってはいけないことをした。もう、だめなんだ。 だって、ぼくは。もし、奇跡があって、もし、大きくなれたなら、 医者になりたかったんだ。人を、みんなを救いたかったんだ だから。人を傷つけてしまった自分は、もう何にも許されてはいけない。 事実がある限り。そればかりはもう言い訳できず、許されてはいけない、己への裏切りだった。 (-348) 2021/06/01(Tue) 17:50:43 |
【置】 小さな心臓の サルガス【吊り懇願ロール】 子供たちが夕食を終え、一人は自主学習に勤しみ、一人は消灯までの時間を友人と楽しむ。 ひそやかな変化を肌の外に感じながらも、おおむねの子供たちはいつもどおりの生活を送っている。 多大な変化があったとしても、己の身に降りかかるものがなければ、みなそれと気づくことはないのだ。 ひとりふたり、消えたとて。それが自分の友人でなければ、想人でなければ。 見ないふりをして、本当に見ずに済んでしまうのさえ、たやすいことであるのだから。 だから、加えて少しの異変があっても、それを疑う者はなかった。大人が関わるならば尚更。 よけいなことを考えないほうが幸せになれると、みな、知っている。 一人の教員が一人の生徒の部屋までわざわざ訪れ、迎えに来ても。余計な詮索は、なかった。 少年は教員に連れられて歩く。背中の傷を庇うように、動きはかすかに鈍い。 顔色は未だ青白さがありながらも、おもては惑いもなく状況を受け入れているように見えた。 少年も、教員も。なるべく人気の少ない廊下を渡り、棟を渡っていく間、一言も喋らなかった。 教員のほうは抵抗に備え多少の緊張が見られたが、警戒に引っかかることなど何ひとつなかった。 少年の目はまっすぐに前を向き、不要に周りを見ることもなく、然るべき場所へと歩み入った。 後ろでかすかな喧騒が聞こえる。風がざわめくようなそれは、こどもたちの声だ。 悩み、苦しみ、痛みを負った子供たちは数多くいた。そしてその多くは、反目を示さなかった。 いなくなった子供のことを探さない。いなくなる子供のことを顧みない。 もはや見えなくなってしまったことの者など、意識の内側にはなくなってしまっている。 今日も、ギムナジウムはささやかな幸せと無邪気に彩られていた。 これより"治療"される少年の姿を、大人の領域は格納する。 (L16) 2021/06/01(Tue) 17:55:03 公開: 2021/06/01(Tue) 18:00:00 |
【置】 小さな心臓の サルガス ――…… ひどく、ひどく憔悴した様子のまま、少年は部屋へと戻された。 深夜のことだった。もはや誰もが寝静まり、或いは素知らぬ出来事として聞かぬままを決め込んだ。 本当ならば歩くのもやっとなのだろうか? けれど、異常を抱えた体は神経を鋭敏に尖らせ、 ふしぎなほどに少年の体を突き動かし、からくり人形のように歩ませてみせた。 解放された少年が何を受けたのか、或いは何を見たのか。如何程の懲罰を下されたかはまだわからない。 「は、は、はは。ははは、はは」 けれど、少年は笑っていた。想像の埓外のものを見て、或いは受けて。 このギムナジウムがどのような施設であるかを、理解してしまった。故に、受け止めきれなかった。 小さな体は誰にも届かない空笑いを水滴のように廊下に落としていきながら、 幽鬼さながらにまっすぐに、歩いていた。手には、外から拾い上げた襤褸と輪縄を持って。 見るものが見れば怪談としてひそやかに噂しただろうか、でも、見たものはいない。 柔らかな足音はいびつにかすかな旋律を響かせながら、まっすぐにひとつを目指している。 「ああ、ああ。ぼくは、なんて。おろかで、残酷だったのだろう。 これほどまでなんて。このばしょが、こんなところだったなんて。なのに、なにも、知らずに。 ぼくは、なんて無責任に、おもみのないことばを、みんなにかけてしまえたのだろう」 笑っていた。笑っていた。あらゆる望みを絶たれ、体と心は支えを失った。 冷え切った涙がまるい頬をそろそろと伝って襟首を濡らす。 言い表しようのない感情の荒波が、少年の心を襲った。ゆえに、壊れかけてしまったのだ。 ついには足取りは一つの部屋へたどり着き、誰もいない室内へと歩み出す。 食堂は、まだ朝の用意もせずに静まり返っていた。 この場所が動き始めるのは生徒たちが起き出すよりも少しばかり早いだろう。 働くものさえいない暗い大部屋は、普段の陽気を忘れたようにしんと冷たくなっている。 (L17) 2021/06/01(Tue) 17:55:19 公開: 2021/06/01(Tue) 18:20:00 |
【置】 小さな心臓の サルガス「いないものにされた、あなたがたを。ぼくはどれだけ理解できていただろうか。 ごめんなさい。きっとそのなかには、無神経なことばさえもあっただろう。 ありがとう。おろかで、正しくあなたがたのことを守れないぼくを、見守ってくれて」 懺悔の言葉は、誰にも向けてはしまえない。言ってしまったところで、何になる? 自己満足にすぎない韜晦を明けっ広げにしたところで、かれらの苦痛は取り去れない。 「けれど――……ああ、それならば。ぼくが、見ないひとにも、わかってもらえるよう。 この場所がけっしていいものではなくて、身を守るものがそこにはないということを。 みんなに、わかってもらうから。あなたがたを、ひとりきりにはしないから。 あなたがたを守れなかったぼくの、これがさいごの献身です。 おとなが触れられたがらないものを、ぼくが、みなにおもいださせます」 少年は知らない。決死の覚悟が、"回収"の終了により無為になることは。 少年のしたこと、それを見るものの記憶は、ほとんどが少年そのものの記憶と共に消失するだろう。 布石にはなりえないのかもしれない、それでも、何か一つでも。 "大人"へ対抗するきっかけになればと、その身は魂の使命感で動かされていた。 それは絶望の熱が突き動かす妄念だったかもしれない。冷静で正当な決起ではなかったかもしれない。 それでも、少年は。祈っていた。 食堂の梁に縄が通され、人間ひとりぶんの体重を支えるに十分なしかけが作られる。 いつも座って談笑し、食事をしていたあの椅子は。今は靴の下にある。 ぴんと引っ張って確かめ、用ごとを果たすに支障ないことを確かめると、縄に両手をかけた。 「どうか、ぼくで。ぼくで、さいごでありますように。 だれも、見ないふりなどさせず、しないように済みますように」 (L19) 2021/06/01(Tue) 17:55:38 公開: 2021/06/01(Tue) 18:40:00 |
【置】 小さな心臓の サルガス 椅子に登り、自分の首に縄をかける。重みで滑ってしまわないようにしっかりと首の下に通し、 食堂の真ん中で少年の体は宙に浮かされるようになった。 涙が縄をしとどに濡らし、皮肉にも皮膚にしっかりと食い込むようになった。 人間の脳は活動を停止する前に、幸福を呼び起こす物質を出して苦痛や不安を取り除くのだという。 まるで酒に心地よく飲まれているような幸福感を覚え、愛するものらが想像の中に現れ、 走馬灯のようにしあわせな光景を映し出す。それが現実に非ずとも。 間際に彼は何を思うだろうか。きっと、自分の友だちと、その友だちのことだろうか。 想像の中の風景には大人はおらず、身の回りに居たひとびととそれらが大切に思うひとびとを、 若木と青草の匂いでいっぱいに囲まれた、青空の下で笑い合っているのだ。 そこには苦痛もなく、不運もなく、かれらをくるしめるものは何一つ無い。 こどもたちの楽園ばかりを少年はただ願い、そっと、微笑んだ。 "みなさまがたの御手を借りての拍手の御力で、なにとぞこの私めの呪縛をお解き下さい。 みなさまがたのご好意の息で私の船の帆を一杯にふくらませて頂かねば、 みなさまがたをおもてなそうとした私の企てはすべて失敗です。 今や命令すべき精霊もなく、魔法を行う術もなく、 みなさまのお祈りによって救われるのでなくば、 私の終末は絶望あるのみでございます。 そのお祈りは上天に達し、 慈悲のお耳にあらしとなって吹き荒れて、 すべての罪のお許しを。 みなみなさまがよろず罪からの許しを願われるように、ご寛容のほど願います、" 少年は、足元の椅子を蹴った。 "どうぞ私めにもこれにて自由を。" (L20) 2021/06/01(Tue) 17:55:59 公開: 2021/06/01(Tue) 19:00:00 |
【秘】 小さな心臓の サルガス → 迷子 メレフ「そう……か。そう、だったんだね。ううん、何もなくて、本当に良かった。 ぼくは……どうなるか、きっと、痛みよりも。みなに無視される方が、つらいかもね」 慰む言葉をひとつひとつ拾い上げるように確かに聞き届けている。 彼の優しさであったり、支えたいという心が伝わってくるようだった。確かに、届いていた。 けれども。それでも。彼が案じているのは無垢な自分なのだと。 ますますもって心に想うのは、自分が彼を騙しているようだということ。 「……うん。ぼくは、きっと……また、戻ってくるよ。 また、きみの、みんなのちからになる。守って、みせるから……」 少年はこれより先に何が起こるかはまだ知らず、まだ見聞きしていない。 自分がこののちに何をするのかを、知りはしない。だから、そう、言ってしまえた。 そこに希望があることをのぞみ、貴方の言葉を、受け取ってしまった。 「ありがとう、メレフ。……ぼくの友達。 ああでも、ぼくはきみのこと。なにもしらないや、何が好きで、なにが得意か。 ……いつか、きみのこと、また、聞かせてもらえたらいいな……」 するりと。細いこどもの指は、あなたのおなかを押して距離をはなした。 (-369) 2021/06/01(Tue) 18:42:48 |
サルガスは、メレフの"手"を放した。もう、彼が触れ合うことに恐れを持たないように。 (a103) 2021/06/01(Tue) 19:59:08 |
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