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![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ「……そう、睡眠薬」 「寝れないんだよね、いつも」 その表情は、はぁ、言わされてしまったと拗ねたようにしていて。 いつも”寝るの忘れちゃうんだよね”などと言っていた事とは違うことを認めた。 「……寝ようとしても昔の夢を見て、起きてしまう」 「深酒すれば多少は寝れるからいつもはそうしてて……、深酒するから朝は食べたくないし、夜は深酒したいから食べない」 「それでも無理が来るから、必要なときだけこれを飲んでる」 あなたたちに食べさせられる昼食は、男にとっての命綱だ。 もっとも、こういう生活を続けているお陰で胃は小さく弱いから、それでなんとかなってしまっているのが現状なのだが。 はぁ、と大きく息をついて閉じた目元には、やっぱり消えぬクマが目立っている。 「マフィアから物を買うのは悪いとはわかってるけど。 市販のものは効かないし、今はまだ警察辞めたくはないから……情報探りながらこういう買い物してた、ってわけ」 ちなみに、捜査に必要だと思えば麻薬だって買うけどねと付け加えて言う様子は、まったく悪びれてない。 これはこの男の通常モードだった。 (-160) 2023/09/15(Fri) 14:51:46 |
![]() | 【秘】 Chiavica テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ「その是非を重ねて語るのは、 やはり俺では無責任だから端から考えません」 「ただ、選択をするというのは、 いつだって確かな価値がある行動ですから。 それが罪に問われるものではない、 ならば少なくともある程度の便宜を図ってやるのが、 価値ある人間のすることでしょう、ねえ」 これは決して善意によるものではない。 己の価値を押し上げるための足掛かりに過ぎないのだと。 嘘ではない、丸っきりの本音でもない、 やはりいつもよりか、幾らか柔らかい態度で言う。 「……我々の人生の周囲にはどうも、 ろくでなしも、人がいい奴らも多いようで。 前者を縊り、後者を守る。 俺はあくまでその仕事を全うしているまでですから」 出来ればあなたもそう在りなさい。ケダモノだって。 正義感も誇りもなく。自己価値の顕示に従って動く男は、 何か満足の行くものを得たのか。薄い笑みを浮かべていた。 (-164) 2023/09/15(Fri) 16:17:24 |
![]() | 【秘】 陽光の元で ニーノ → 花浅葱 エルヴィーノ――麻薬中毒。 単語を聞けば驚いたように目を瞠る。 何も珍しいことじゃなかった、昔は。 何も珍しいことじゃなかったから、今は素直に胸が痛む。 養育院で過ごすような幼い少女が薬物に依存する理由を思えば、それが明確に分からずとも視線は落ちた。 「……そ、だったんですね」 聞こえる声は淡々としている。 聞いたこちら側の色の方が落ちてしまって、申し訳ないような。 「あの、……えっと」 でもそこまでを聞いたからには、最後まで確認したくて。 何かを安心したかったのか、それとも。 「今も――友達ですか?」 「……ラーラは、元気?」 (-168) 2023/09/15(Fri) 17:41:16 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ「うわ……」 最早それ以上は突っ込むまい。 二人が再会する様子を、男は黙って見守っている。 ラーラはじぃっとあなたの目を見つめたまま、暫く言葉を発しなかったが、やがて何を思ったのか、何かを言いたそうに口をぱくぱく動かして、にこりと笑った。 「珍しい。 僕だって暴れないようになるまで結構時間かかったんだけどな」 その口ぶりから、男がここに何度も足を運んでることが伺える。 事故に遭って最初は病院に入院していたが、退院後はすぐこの施設に移送されている。 養育院はあくまで子供を保護して育て、社会に出して上げる場所。半身不随で薬物中毒になった子供を更生させるような場所では、決してない。 (_10) 2023/09/15(Fri) 18:03:24 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → Chiavica テオドロ彼女が外で生きることを望んでいるかなんてわからない。 意思の疎通が、今のところほぼ不可能だから。 だけど薬の影響は10年も経てばもう、大分抜けている。 未だに禁断症状に苦しむことはあるが、残りの精神疾患は事故にあった事による自己防衛本能だと、医者は言っていた。 このまま施設から放り出されたら、彼女はどうしたって生きられない。 「そうだねぇ、僕はろくでなしだよ。 生きることを押し付けようとしているんだから」 「でもまぁ、ろくでなしをどうにかするのは、同じろくでなしの仕事だと思わないかい?」 そうだよ、僕はケダモノで、ろくでなしだ。 正義感なんて、誇りなんて欠片もない。 これは、今の僕にできる、最大の我が侭なんだ。 (-177) 2023/09/15(Fri) 18:41:37 |
![]() | 【秘】 法の下に イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ貴方の、拗ねたような表情。そんな顔は初めて見た。 初めて見たから、こちらもつい怒気を削がれる。 握りこんでいた指は最早ほとんど強さを失っていて、痛みを与えることはない。ただそこに置いてあるだけ。添えてあるだけのもの。温度が伝わるほどの薄着ではないだろう。 「……昔の夢?」 続いて男は、そんな言葉を。 それはプライベートな話で、貴方が隠してきた話だ。それに遠慮もなく立ち入って行こうとする。先輩と後輩というだけで、それ以上の親しさはないのに。 それとも、その関係は男にとって充分に親しいと呼べるものなのかもしれない。いずれにせよ、答えてもらえることを疑わない問いだった。 「……身体に悪い……。」 「事情はわかりましたが。……はあ」 付け加えられた言葉には再度眉間に皺を寄せただろうか。 全く頭の硬い人間だ。 (-179) 2023/09/15(Fri) 19:05:52 |
![]() | 【秘】 Chiavica テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ「まあ俺もだいぶろくでなしの自覚があるから、 この仕事に向いてると思ったんですよねえ」 ろくでなしに向いている仕事と言えばもう一つあった気がするが、今はあまり冗談にもならないので閉口しておくが。 「何はともあれ呼び止めてよかった。 これらを知らないまま、これから先仕事を続けていたかもしれないと思うとぞっとしないですね」 言ってしまえば人の異常性。 己はあらゆるものをひっくるめて価値と呼んではいるが、把握しておいて損はない。不利益があったらそれはそれで構わない。 「改めて言っておきます。手前の命の使い道は自由ですが、 命を無駄にするようであればしっかり叱責しにくるので」 「どれだけ内臓がイカれてても一食はするように。 飢えが祟って動けなかったら本当にお話になりません」 生活に関する小うるさい有難い話の上に、 自分の、過去の因縁に纏わる話をひとつ付け足して。 今日の小言はこれで勘弁してやります、と嘆息した。 (-189) 2023/09/15(Fri) 20:06:14 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 陽光の元で ニーノ「どうかなぁ」 「僕は友人だと思ってるけど……、彼女の方は……」 「―――うん、元気だよ」 別に、後輩にそんな顔をさせたくて話したわけじゃない。 だから嘘ではないが本当でもないことを、答える。 今はもう、体は元気だけど。 薬物の禁断症状はまだ出るし、精神を病んでいるから廃人と変わらない。 加えて事故の影響で半身不随の身だ。 それを五体満足に元気に暮らしてるかと聞かれれば、NOになる。 あなたが言葉の真意に気づくかはさておいて、あなたには、こう答えるべきだと、そう思った。 (-192) 2023/09/15(Fri) 20:25:06 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ「体に悪いのはわかってるけど……こうでもしないと全く寝れなくてね」 「困った体だけど、今のところこれで倒れてないから大丈夫じゃないかなって」 はは、と笑う。 自分のことを思いやる性質は持ち合わせてないらしく、あまり困ったようには見えないかもしれない。 昔のことを聞き返されれば、そこまで話せと?と、訝しげな目を向けて。 いつの間にか緩んでいた手を振りほどくこともせず、ただ、眼鏡の奥にある瞳の真意を探った。 声のトーンも落ち着いて、まっすぐに向けられた視線は、きっと、絶対に答えてもらえると思ってるんだろう。 「やるべきことを思い出せって言われてるような夢……かな」 「事件解決のために犠牲にした女の子の夢とか」 「見て見ぬふりをして取り返しの付かない事になった初恋の相手のこととか」 「もう戻ってくることがない昔の幼馴染のこととか」 「そんなところさ」 それでも答えてやるくらいには、あなたのことを近しい同僚としては認めているらしい。 でなければきっと、先程の問い詰めにすら向き合うことはなかっただろうから。 (-198) 2023/09/15(Fri) 21:42:57 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → Chiavica テオドロ「警察はろくでなしが向いてるのかい? 他の上司が聞いたら怒りだしそうなセリフだね」 あるいはイレネオあたりも怒るのではないだろうか。 正義を信じて刑事になった人間も、それなりにはいるのだから。 何にせよ、あなたの事はまだ善良な部類だと思っているのだが、本人は自分のことをろくでなしと思っているようだから、まぁ、何か抱えてることもあるんだろう。 少なくとも、子供の頃に危険な目にあった事は、アリーチェなどからやんわりと聞いたことはある。 勿論、詳しくは聞いてないから知らないのだが。 「こんな事がなければ一生言うつもりなんてなかったんだけど……。 そうだねぇ、まぁ倒れないくらいにはしておくよ。 そこまで行くと愚の骨頂だし……あぁ、誰か寝かしつけてくれれば忘れたりはしないんだろうけどね」 冗談まじりにそんなことを口にして、カバンを手にした。 小言が終わりなら、ここに居る理由はない。 夜勤でもないのに長々と居残るわけにはいかないだろう。 (-202) 2023/09/15(Fri) 22:08:32 |
![]() | 【秘】 法の下に イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノまっすぐな男だ。 貴方には、良いものに見えたかもしれない。悪いものに見えるかもしれない。 無遠慮で、不躾で、無謀で、無鉄砲な男だった。 「今日まではよくても明日まではわからないでしょう。」 「マフィアの薬だ。それに、酒も。悪い、身体に。」 ここにも滲む、マフィアへの嫌悪感。貴方への心配は純然たるものだろうが、そこに交わって増幅する。 手に力はなくとも、立ちはだかるような位置関係は変わらないのだろう。今は詰め寄る激しさもなくなったから、内緒話でもしているように見えるかもしれない。 その距離。 囁くような距離の近さで。 男は、変な顔をした。 おそらくこれも、貴方に見せたことがない顔。鳩が豆鉄砲を喰らうような、良かれと思ってしたことで叱られた子どものような。片眉を上げ、片眉を下げ、口をへの字に曲げた、妙な顔だ。 「……」 視線が右に、左に行った。 逡巡するような、考えあぐねるような仕草は、珍しい気遣いからだった。 「先輩には」 「いい想い出が、たくさんあるんですね。」 考えて言ったのはそんなこと。見当違いだっただろうか。 (-220) 2023/09/16(Sat) 0:08:54 |
![]() | 【秘】 Chiavica テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ「ははは。勿論善い人≠煬いてると思いますよ。 ただ俺が警察を志した理由は、漠然とやれそうだったからで。 いつだって誰か真面目な人に聞かれたら怒られるものです」 暗に自分は善い人≠ナはないという。それだけは譲らない。 真面目で誠実だという側面は強ち間違いじゃないんだろうが、自覚がない部分も含めたとして自分の事を一番よく知ってるのは自分に他ならないのだから。 「色々と……思い通りにはいかないものです。 何せ一つの命には一人以上の人生が引っ掛かってることが多々ありますから」 「はあ。そんなことを言えてしまうのすら愚かだという自覚を持ってください。子守唄でも聞きたいですか?」 こちらも冗談半分。子守唄なんか歌えない。 「長々と引き留めてすみませんでしたね。 何かの予定に食い込んだとて責任は持てませんが」 (-223) 2023/09/16(Sat) 0:23:22 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ「そうもいかない」 「この施設はあくまで更生施設だ。 薬物の心配がなくなればまた…………」 追い出されてしまう。 あの時、養育院から出て入院して、ここに移されたように。 「僕の押し売り相手は彼女だ。キミもだけど」 言葉端に重みを感じて、目を伏せた。 今、あなた以上の大切な人なんていないだろう。 そういう事を考えること自体、拒否して生きてきたようなものだ。 ラーラの事にしたって、とっくの昔にそんな気持ちは消え去っていて、いまあるのは償いと、欺瞞だけ。 「眼の前にいたって……いつも、掴めないものばかりだ」 ラーラが事故に遭った時も。 あなたが居なくなってしまった時も。 ―――――結局僕はいつも、独りで残される。 (_12) 2023/09/16(Sat) 0:25:03 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ―――眼前にあなたの顔しか映らなくなって、数秒。 お互い無言の時間が流れた。 沈黙の後紡がれた、”いい思い出”……だなんて、不器用な気遣いにもほどがある。 「くっ……はは、キミ。こんな事も出来るんだ」 「キスでもされるのかと思ったよ」 いつも生真面目すぎるほど職務に忠実な男が見せた変顔は破壊力がある。 スマホで撮っておいて良い? なんて思ったけれど、流石に怒られそうだからやめた。 だからといってこんな事をいうのもどうかとは、思うけど。 本当は全部、後悔を重ねた想い出だ。 笑いで元気づけられるなんて、思ってもなかったけれど。 「そうだね、マフィアの薬だし諸刃の剣かもしれない。 でもまぁ……そうなったら、キミがアイツを逮捕する大義名分になるだろう?」 そういう意味では、今日あなたに打ち明けたことは案外悪いことではなかったのかもしれない。 (-225) 2023/09/16(Sat) 0:42:05 |
![]() | 【秘】 陽光の元で ニーノ → 花浅葱 エルヴィーノ貴方からの答えを受け取って、ほんとうは。 伝えられた言葉の内にある違和感を少し、感じ取っていた。 「そっか……げんき」 それでも見えていない振りをしたのは、敢えてその答えを選んだ理由があると思えたから。 そしてその理由が悪戯にではなく、こちらを慮ってのものだと信じられたから。 「──なら、よかった、です!」 だからはっきりとした真実が何であったとして、今浮かべるのはこの笑みで合っているはずだ。 無理して笑ったわけでもない、気遣ってもらえたことは確かにうれしいのだから。 「へへ。 養育院に居た頃の子と、今になって関わったりとか話を聞いたりとかあんまりないんですよね。 ラーラの話、エルせんぱいから聞けてよかった。 また今度彼女に会ったとき、オレが心配してたよって伝えてもらっても良いですか?」 ……それでも人の心は勝手なもので。 友人だと言い切れない現実があることに、胸はじくりとしたままだったけれど。 でもじゃあ何ができるかって考えたら、そう思い付かなかった。ちょっと悔しいのも勝手な感情だ。 (-228) 2023/09/16(Sat) 1:06:16 |
![]() | 【秘】 法の下に イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ「嫌ですか。」 間髪入れずに返した言葉に理由はない。 あるとすれば、貴方が冗談めかしたから。普段は言わないようなことがうっかり零れただけ。 答えが聞きたいわけでもないから貴方は雑に誤魔化せばいいし、男が身を引く方が早かったかもしれない。 「そうですね。」 齎されるのは肯定が先。 勿論、それはなるだろう。少なくとも一般市民を、正義の徒を害したという理由で。 「ですが。」 「そのために貴方を犠牲にしたくはないですよ。」 「自分なら傷ついてもいいと、思っていますか。」 否定が続く。 やや距離の出来た金。 レンズを隔てた様は窓のよう。向こうから、貴方を見つめている。 (-229) 2023/09/16(Sat) 1:12:08 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → Chiavica テオドロ「はは、特に予定なんて入れてないから平気さ」 どこかの店にいって飲むだけだし、……とは言わず。 この男、夜は食べずに酒だけ入れてるようだが、言えば小言が再開するのがわかっているからそれを口にすることはない。 過去にもなかったし、これからもきっとない。 何らかの事情でバレでもしない限りは。 「何が悲しくて同期に子守唄歌ってもらいながら寝なくちゃならない……ってね。 自分で言っててなんだけど、確かに愚かだ」 「じゃあ、僕はそろそろ帰るよ」 軽く手を上げて、帰路へ。 配属された時からアリーチェとセットで変な二人だと思ってはいたけれど。 案外自分のことは自分が一番よくわかっていないのかもしれないなと、何故だかそんな事を考えてしまうのだった。 (-239) 2023/09/16(Sat) 1:43:23 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ「嫌……うん?」 冗談のつもりだったから、まさかそう返されるとは思わなかった。 思わず言葉を詰まらせて、身を引いていくあなたの顔を再度見上げた。 「え、いや……では、 ないかな……? 」疑問形だ。 実際、よくわからない。 そういった感情は10年前に何処かに捨てたまま、大事なものなど作らないようにしていたから。 実際は、ここに配属されて大事なものは増えたはずなのに、頑なな心はそれを認めようとはしていない。 そして続く矢継ぎ早の否定の言葉も、声量よりずっと強く感じるのは何故だろうかと疑問が浮かんで。 理由などわからないけれど、あぁ、図星を言われてしまったと、事実のみが重くのしかかる。 「……それでやりたいことが成されるのなら、ね」 少しだけ伏せられた花浅葱の色は、揺らめいた。 手段を問わないのは、自分の身の危険すら――顧みないということでもあったのだ。 (-243) 2023/09/16(Sat) 1:59:51 |
エルヴィーノは、美味しいんだけど1枚で限界だよ僕は…… (a11) 2023/09/16(Sat) 2:04:41 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 陽光の元で ニーノ「勿論、伝えておくよ。 近々会う予定を入れようと思ってたからね」 あなたの様子に満足して、うん、と大きく頷く。 勘のいい青年だから、言葉端に含まれた嘘に気づきながら知らないふりをしてくれてるんだろう。 だったら、その厚意には甘える以外の選択肢はない。 「……っと、話し込んでしまったね。 折角の非番なのに時間が勿体ないんじゃないかい?」 キミくらい、元気に人らしく生きられるようになってくれたらいいんだけど。 ままならない現実に思いを馳せて、心の中だけでそっとため息をつくのだった。 (-246) 2023/09/16(Sat) 2:17:57 |
![]() | 【秘】 法の下に イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノいや、では、ない。かな。 歯切れの悪い返答に、男はふ、と破顔した。 これだって、あまりしない顔だ。 気難しそうな顔立ちのわりに、案外表情が変わる男だった。 誰かの冗談ににやつくような顔をすることがある。会釈の際に口角を上げて見せることもある。この国の男らしく身内に甘い、裏表というほどではないにしろ対応の差は明確で。 それでも、こんな風に眉を下げて笑うことは少ない。 そのまま、意識の外にあるように貴方の頭へと手が伸ばされ。 はたと気づいたように、触れる前に降ろされる。 そうしてまた、いつもの仏頂面に戻るのだろう。 「そんな手を取らずとも」 揺れる、水面を見るように。 波紋の先を追うように、これはゆっくりと瞬きをした。 「貴方が危険に晒されずとも。」 「俺たちは、正しいんですよ。」 「身を粉にせずとも」 「手は届きます。」 一言。一言。一言。 こんなことを言うこの男だって、どちらかと言えば危険に飛び込むたちではあるのだ。 だから貴方はそこを衝くことはできる。最も、それで怯む保証はないのだけれど。 「成した先に」 「自分がいなくていいんですか。」 (-249) 2023/09/16(Sat) 2:43:20 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオはっきりとした回答ではなかったのに。 それでも珍しく眉を下げて破顔した顔を見て、思わず閉口してしまった。 だって、ズルいだろう。 こんなのは、誰だって無駄に意識してしまう。 伸ばされた手が触れられる事がなくて、残念にすら思ってしまうではないか。 だから逆に、空いてる方の手をあなたの頭に伸ばして、ぽんぽんと緩く撫でてやる。 触れたいなら、触れれば良い。 この、力を失っても掴んだままの手みたいに。 「身を粉にしてるつもりはなかったんだけど……」 ただ、卑怯だと言われようとも、誰が、自分が傷つこうとも構わないというだけ。 男がやろうとしていたのは、自分にできる最大の我が侭だったから。とても、正義感などという褒められた思想ではない。 今まで犠牲になった大事な人への罪滅ぼしがしたかった。 「僕がやろうとしていたのは、幸の押し売りだから」 「……別に、そこに自分が居ようとは全く思わなかったな」 それはなんて傲慢で自分勝手なことだろうか。 (-269) 2023/09/16(Sat) 15:48:51 |
![]() | 【人】 花浅葱 エルヴィーノ「大型犬で間違ってない気がするけど……、警察の犬っていうと聞こえが悪くないかい? 権力に屈して靴を舐めてるみたいじゃないか」 このメンバーだから良いことではあるが、上に聞かれていたら大分失言な気がしている。 まぁ、この程度で逮捕されるなんてことはないとは思うけれど。 「それにしても二人とも朝からよく入るね……。 Scusa.アリーチェ。僕は1枚が限界だ……」 いつも朝食べるの忘れちゃうからねと言う様子はいつものように悪びれてはいない。 #警察署 (60) 2023/09/16(Sat) 15:59:49 |
![]() | 【秘】 法の下に イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ貴方の心の中など露知らず。 だからその腕は緩く掴んだままだ。離すでも握るでもなく、そこにあるだけ。 伸ばされる手にはひとたび目を瞬かせたけれど、そのまま大人しく受け入れた。 常々、言いたいことはすぐに口に載せる男だ。それが黙っているということは、そういうこと。 貴方が触れたいから触れたのだろうと勝手に納得して、大人しくている。それだけのこと。 それでも気恥ずかしさが僅かにあるのか、視線は下方に逸らした。 「無責任でしょう。」 しおらしいのは姿ばかりだ。 やはり言いたいことはそのままに放つのだ。零すでも、独りごつでもなく、きちりと届くように。或いは押し付けるように、声に出す。 「売りつけて終わり、ではないですよ。」 「貴方が」 「いないことに、文句を言えなくなる。」 「貴方がいないと。」 何とも下手くそな言い回し。 つまり、貴方がいなくなるのは嫌だ、と。 酷く簡単で、陳腐で、普遍的な言葉を、不器用な男はその口下手さでもって台無しに出来る。 (-285) 2023/09/16(Sat) 18:30:16 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ無責任の自覚はある。 何せ自分勝手にやってる事は百も承知だったからだ。 けれども。 まさか、ただの後輩だったはずのあなたに、ここまで後ろ髪を引かれるとは思っていなかったから、眉を落として苦笑した。 下手くそな言い回しが、それが言葉を選べないくらい本気である事を示している。 いつだって、置いていかれる側だったから、あなたが嫌だと思う気持ちが理解できないはずがなくて。 いつも堂々としているあなたが自信なさげにしている様子もまた、なかなか見られない姿だなと目を細めた。 「そうか」 「じゃあ、もう少し……気をつけてあげようか」 だからせめて、危険に一人で飛び込まないくらいの、注意を。 生活改善に関しては、不眠を直さなければどうにもならないから、色々と方法を探さないといけないけど……。 ――――と。 大人しく頭を撫でられたあなたを見上げて、そう心の中で呟いて。 あなたがこれを信じてくれるかはわからないが。 信じてくれるといいなと息をついた。 「キミにそんなに好かれてるとは、思わなかったからね」 皮肉の一つくらいは許されるだろう? まったく、大型犬に首輪をかけられた気分だよ。 (-309) 2023/09/16(Sat) 20:53:06 |
![]() | 【人】 花浅葱 エルヴィーノ「えぇ……」 今食べたのに、昼もまた食わされるのかと嘆息した。 クロスタータは美味しかったのだが、縮みきったこの胃には流石に重かった。 昼はせめてあっさりしたものにしていただきたい。 小言を言う同期はともかく、もう一人とは、どっちが先輩なのだかよくわからないやりとりだ。 #警察署 (65) 2023/09/16(Sat) 20:59:27 |
![]() | 【秘】 陽光の元で ニーノ → 花浅葱 エルヴィーノ「やった、ありがとうございます! じゃあよろしくお願いして……」 応えてくれた貴方の表情に陰りは見えないから、こちらはこちらで内心ほっと息を吐きつつ。 指摘を受ければぽくぽくぽく、と沈黙の後に「あ」と声をあげた。 「……そうじゃん! あっいや、オレの非番がじゃなくて! せんぱいの見回り時間を邪魔しちゃってる……!」 自分の時間はどれくらい使っても何の問題もないのだけれど、貴方の仕事時間はそうではないとはこちらの認識。 「えっと、じゃあこれぐらいで! 色々……話してくれてありがとうございました。 またチェスも教えてくださいね!いっつも楽しいから!」 なので最後にはその一声と、いつかのシエスタの時間での対戦を心待ちにする笑顔を向けた。 特に呼び止められることがなければぶんぶんと手を振りつつ、その場を後にすることだろう。 どうかこの先、貴方の心の憂いが少しでも晴れる日が来ることを祈りながら。 (-335) 2023/09/16(Sat) 22:53:15 |
![]() | 【魂】 花浅葱 エルヴィーノ「警察がマフィアに金を借りるなんて、バレたらうちの大型犬にまた詰め寄られてしまうよ」 あなたとの関係を知っているのは、同期のテオドロだけのはず。 既に黒眼鏡の店に行ったのを見られてて問い詰められたというのにと、肩をすくめた。 とはいえ、満足行くだけという言葉には「当たり前でしょ」と、不敵に笑って。 人の人生を左右する傲慢な情を再確認した。 「探してる人……、それって、あの時の事件の犯人じゃないんだ……。 キミはそいつに死んでほしくないって思ってるんだね」 「……大事な人?」 本当は。 昔のあなたの夢だって大事にして、今も目指して欲しい。 それでも10年以上経ってしまった歳月は、子供を大人に変えてしまった。 資料を洗ってあの時の事件の犯人を探しているけれど、本当はもう、あなたはみつけたいとすら思っていないのかもしれない。 「教えてくれれば、こっちで調べられることくらいは調べるけど……」 僕はあなたに自由になってほしいのだ。 誰よりも、きっと。 (_14) 2023/09/16(Sat) 23:23:51 |
![]() | 【秘】 法の下に イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ金色は未だに貴方を見ている。 確かめるように、見通そうとするように、見つめていた。 暫くの間があって、後。 「そうしてください。」 それがいい、だとか、そうしてくれると嬉しい、だとか、そんな控えめなものではない。 信じている。信じようとする。信じたいから、信じますよ、という、意思のある言葉。 そうしてください。それは断定であって、半ば指令じみた響きで、貴方の言葉に肯った。 実のところ、理解していないのだ。自分の言葉がどれほど貴方に響いているか、なんて。 していないから好きに口にする。していないからまっすぐ声を出す。していないから、気にしていないから、何もかも思ったように貴方に向けた。 変わってほしいのに、変えられると思っていないから、一生懸命真摯になった。 「今更ですか。」 今だって。 (-372) 2023/09/17(Sun) 0:44:25 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 法の下に イレネオ「大丈夫。……無駄に死にに行くようなことはしない」 「危険なことをしようとする時は、キミに言えば良いんだろう?」 全く、見られすぎて穴が開いてしまいそうだ。 心配なら、ついてきたら良いんだよ。 どっちが先輩なんだかわからないような言葉を聞きながら、何度目かの息をついた。 真摯だからこそ、戸惑いを隠せない。 「……、 今更、って 」その一言が、耳に残った。 こんなに真っ直ぐ好意を示したことなど、なかったくせに。 あぁ、もう。 流石に少し、照れが上回ってきた気がする。 いつもは冷めた表情をしていることが多い頬が、熱を持った。 「じゃあもう、キミが僕を寝かせてくれても良いんだけど?」 酒は入れてたとはいえ、一度だけ……朝までぐっすり寝れたことが、あるものだから。 口をついて言葉が出た。 (-390) 2023/09/17(Sun) 1:37:30 |
![]() | 【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 陽光の元で ニーノ「これくらいはサボりにも入らないし、問題ないよ」 慌てた様子のあなたに、笑いかけて。 チェスのことを持ち出されれば「勿論」と肯定の頷きを返した。 あなたはいつの間にか一番弟子を名乗っているから、これからも時間を見つけては対戦をするんだろう。 向こう3年くらいは負けるつもりはない。 「じゃあまた。キミも楽しい非番を」 手をふり去っていくあなたを、姿が見えなくなるまで見送って見回りの再開する。 ここはスラムの中央で、通り過ぎる人たちが場違いな自分たちを振り返って去っていく。 時代に取り残された、寂れた風景だ。 憂いはとっぷりと深く、静まっているけれど。 いつかきっと、陽は昇るものだと……そう思いたいものだった。 (-392) 2023/09/17(Sun) 1:47:23 |
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