［家の前にはお兄ちゃんがいて
　心配したってぎゅーっとしてもらって
　月影君に本当にありがとうってお礼を言ってたわ。

　帰ってきたパパとママにはやっぱり怒られたの。
　お昼寝しちゃってたって言えば呆れられて
　次から気を付けるようにいーっぱいお説教されたわ。


　結果は散々なのに不思議とそう落ち込んでなかったの
　また月影君に会えないかな。
そんな事ばっかり考えたのよ。］
　　

　***

［それから。
　私は改めて月影君にお礼が言いたくて

　同じ学校の子かなって放課後校舎をうろうろ探していたの。

　自然の風がぴゅう、と吹いて
　スカートを抑えて見上げれば
　空飛ぶ帽子が目に入ったのよ。>>53］





［見つけた！　反射的に飛び出そうとして
　その前に髪の毛をせっせと手櫛で整えたの。

　そこでピン、と一つ閃いたのよ。］
　

　

　月影君、月影君つーきかげくんっ


［てててと小走りで駆け寄るの。
　隣に立ったらにっこり笑顔を向けるの。］


　この前はありがとう。

　今度は私が助ける番よっ！
　見ててね


［意識を集中する。

　

　




［木の上にあった帽子にピンポイントで風を起こす。
　ふわり、と浮遊したそれは木から飛んで
　そのままふわりと落下したの。

　それをキャッチ出来たのは私よ。 ］**



　　　
　
　

　

　この時の私は子供だから
　疑いもせずそう信じていたのよ。


　

　
［好奇心の行動はビックリされて>>63
　困った顔にダメだったかな、と首を傾げるの。


　

　
［家族を褒められればそうでしょうって笑ったの。>>64
　お兄ちゃんは何度も頭を下げていたわ。
　帰る時には二人で気を付けてねってバイバイして
　その背が見えなくなるまで見送ったの。


　

　***

［名前を呼ばれればぱぁっと、気分が明るくなるの。
　覚えていてくれたんだって。］>>65


　そう、緋彩。
　言いにくかったらヒーロがお勧めよ


［それはお兄ちゃんがつけてくれた呼び方。
　ヒーローみたいな響きで気に入っているの。］
　

　
　
　へぁっ！？
　え、えと……うん。

　へへ、そ、そうかしら。へへ……


［私が出来たのは本当にささやかな事。
　でも私がなりたい存在に例えて貰えれば>>67
　やっぱりすごく嬉しいのよ。

　そうして帽子をはい、と差し出したわ。］
　

　

　あ、あのね、急な話なんだけどね
　ね、ねぇ……月影君



［おずおずと、勇気を出して言葉にしてみるの。


　私の魔法を褒めてくれたこの人と繋がりが欲しい。
　ただその一心だったの。］**　
　

　
［お気に入りの呼ばれ方をすれば>>74
　そうそう、ってにこにこするの。

　名前を呼んでもらえるだけで嬉しいと感じる。
　特別を分け合える相手だからなのか


　この時はまだ全然わかってなかったの。］
　

　

　そんなに褒めてもらえるとね
　嬉しいのよ、すごく嬉しいの。
　でもちょっと……


［顔を赤くして、頬に手を添えてちょっと俯いたの。
　慣れてないのよ。
　信じてもらう事がそもそも初めてだもの。］
　

　

　本当！？
　わぁ、それは嬉しいわ！！

　
　とばり君？　とばり君、とばりくん……
　いい響きね。



［お名前を呼ぶのが気に入って、何度も何度も口にするの。
　用事はないんだけど、呼びたいのよ。］