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【秘】 pasticciona アリーチェ → 黒眼鏡「本当ですか?それなら安心…… あれ?言って大丈夫そうだと思われて……?」 「わっ」 ここは喜ぶべきなのか、怒るべきなのか。 悩んでいる間に渡されたケースから突如伝う重みに思わず落としてしまいそうになったから、慌てて両手でそれを抱き留めた。 「こちらで眠られているんですね」 共同墓地に一度視線をやり、次に貴方に視線を戻す。 先程までの様子と何もかも違う貴方の姿に僅かに動揺の姿を隠せないでいたが、両手で抱えていたケースを一度足元に降ろし、こくりと頷き両手を組んで、祈る。 「……わかりました。 こちらの寄付は、この墓地の為に使わせて頂きます」 「主の御慰めと励ましが注がれますよう、お祈りいたします」 ぱちりと瞬きをして、オパールグリーンの目が真っすぐにあなたの目を見つめ返す様子は、普段の気弱さはとくと鳴りを潜め、凛とした力強さを含んでいる。 「……死は一時的な別離であるとはいえ寂しいものですね」 (-230) 2023/09/16(Sat) 1:13:36 |
【人】 pasticciona アリーチェ>>49 >>a9 イレネオ 「あ、よかった……皆のお陰で私が持ち帰っても 何とか食べられる量になった気が……え、あ」 「ありがとう……」 素直にお菓子の出来を後輩に褒められれば頬に朱が差し、 両手を合わせてはにかみながら穏やかな笑顔を零した。 「でもテオドロのを奪ってしまうのはまずい、かも…… あと数切れ足りなかったら渡しますので、ね?」 そして心外と思われる方の取り方をする。 心外だと言う顔をされたかもしれない。 しかし、すれ違っていた女は本当に真剣に入れ替えが発生するのを心配していたのであった。 先程の朝礼でのヒリついた空気を一時的に忘れ、 このひと時だけは穏やかに過ごすことができただろう。 #警察署 (52) 2023/09/16(Sat) 1:28:22 |
【秘】 黒眼鏡 → pasticciona アリーチェおどけた様子など、吹いて散らしたかみくずのようにどこかへと飛んで行ってしまった。 木々の間をすり抜ける軟風が、ざわざわと枝葉を擦らせる。 そのざわめきがほんの少し、男の口元を緩ませる。 ――肺の奥、一呼吸ぶんの息すら吐き出すように、それはか細く。 それは、死の間際の灯か、あるいは引き絞る喘鳴にもどこか似ていた。 「ああ、頼む」 かちゃ、と音がする。 北欧系のルーツを持つであろう、夜の海のような黒目が覗く。 「死といったって、いろいろあるさ。 そして俺は悪党だから、死後の世界でなにがあっても、生前の苦しみは拭われたりはしないと思っている。 だから、死にざまには、等級があると思っている」 あなたの瞳からついと目を逸らすと、男は墓地の方に視線をやった。 決してそれ以上近づくことはなく、まるで見えない壁があるかのよう。 ならばその双眸は遠くを、壁の向こうへと向けられているのだろう。 「彼女は多くの家族係累、友人たちに囲まれて死ぬべきだった。 それを奪った俺に、寂しいは上等すぎるだろう。 別離で苦しむのは、その資格があるものだけだ」 男はきっと、その言葉に滲む寂寥を認めない。 (1/2) (-234) 2023/09/16(Sat) 1:30:00 |
【秘】 黒眼鏡 → pasticciona アリーチェ「俺が彼女にできるのはせいぜい、 好き勝手に弔いの鐘を鳴らすことだけだもの」 かちゃり、と。 胸ポケットに差し込んだ黒眼鏡が、音を立てて揺れた。 「ありがとな、アリーチェ・チェステ。 俺からじゃ、受け取ってはもらえねえだろうから」 (2/2) (-238) 2023/09/16(Sat) 1:33:45 |
【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ貴方の焦りが徐々に落ち着いてくるのを見れば、 ヴィットーレは目を細めてそれを見守る。 冷静さは有事に対して最も必要なものだ。 なにをするにも、まずは落ち着くのが一番で。 「ふふ、本当に楽しかったわね♡ あの時もほら、無理して組み立てようとして 崩れてしまったんだもの。」 「今回だって同じよ。アタシたちは、 トランプタワーが崩れるまで耐えればいいの。」 逆に、それ以外でどうにかできる術がないとも言える。 下手な動きを見せれば被害が増えるだけ。 じっと待つのは、最も精神的につらい事だけれど…… そうするしかない、今は。 「……そうねぇ、教会も、孤児院も…… マフィアと関わりがない、と言えば嘘になるものね。」 マフィア 少なくとも、自分とは関わりのある場所だ。 もし自分が捕まって、過去を洗われでもしたら 無事では済まないかもしれない。 無論教会に他のマフィアが関わっているなら、 その人達経由で目を付けられる危険性だってある。 「………大丈夫よ。少なくともアタシからは、 あの子達に繋がらないように対策しておくわ。 ……ねぇ、もしアタシが捕まったら、 『ヴィットーレは旅行でしばらくこれないみたい』って、 孤児院の子達に伝えに行ってくれない?」 今でも定期的に顔を出している、自分の孤児院。 急に顔を出さなくなるとしんぱいさせてしまうだろうから、と ウィンクして。 (-260) 2023/09/16(Sat) 10:31:37 |
【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「タワーが崩れるまで……耐え、続けないとだめ。 ……でも、本音を言うと怖いわ、ヴィットーレ。 こんな法案を通した時点で、警察は生半可な扱いをしてくれるとも思えなくて……摘発者を牢に並べて満足するとは思えない」 焦りの根本的な部分かもしれない。 耐えるしかないという結論が出た以上、ここを蒸し返しても仕方がない物ではあるが、こうして口に出してしまうのは女の弱さで。 「教会、はきっと大丈夫。逮捕されるとしたら私だけ。 ……そうなるように、きっと言いきってみせるわ。貴方も、皆も、誰も傷つけたくないから」 事実、マフィアとの関わりという意味で言えば、教会の方も原因は自分にあるものも多い。自分一人が全部の疑惑をかぶって差し出せば何とかならないだろうか。そんな楽観視をしている。 「……やだ、縁起でもない。って言いたいけど…… わかったわ。もし、本当にそんな事になったら孤児院の子達にもそう伝えておくわ」 表情は晴れないけれど、いつもの調子のあなたのウインクを見て肩の力が少し抜ける。こんな会話ができるのはいつまでだろうか、と言う暗い懸念に蝕まれながら。 (-287) 2023/09/16(Sat) 18:46:24 |
【教】 pasticciona アリーチェ「……私の幼馴染や教会みたいなものね」 「居場所を守る、か…… この法の施行でもっと考えないといけないって、 重々想い知らされちゃったわ」 「それは…… 話し合いさえ応じない、なら、……そうね」 その時は引けるかしら、引き金……」 「でもやっぱり話を聞いてて、ペネロペ、格好いいわ。 ってたくさん思うわね。理想の大人のお姉さんって感じ。 わたし、女の先輩で仲いい人が全然いなくて、 相談とか悩む件も多かったからペネロペがいて嬉しいわ」 (/16) 2023/09/16(Sat) 19:29:39 |
【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ「……そうねぇ、きっと捕まったら、 あまり人道的な扱いは受けないかもしれないわね。」 そればかりは、誤魔化せるものではないから 素直に肯定をする。 きっと奴らは世間体なんてものはほとんど気にしない。 …いや、『マフィアなんてゴミ同然の存在なのだから、 何をしようが世間体には響かない』とさえ思っているかもしれない。 捕まり、外から隔離された世界でされる事など、 想像するだけで身震いしてしまう。 「………今のアタシたちに出来るのは、 守りたいものを守るために、マフィアと接していたという 情報をどうにか隠ぺいする事くらいよ。 アリーチェ、貴方も捕まったりしてはだめよ。 貴方が捕まったと聞くだけでも、アタシの心は傷つくの。」 貴方が、他の誰かに対して心に傷を負うように。 貴方も大切な家族なんだから、とヴィットーレは笑う。 そうしてあなたがこちらの願いを聞き届けてくれたなら、 ヴィットーレはほっとしたように肩の力を抜いて。 「頼んだわよ、アリーチェ。 …さ、今日でここも最後の営業になる予定だし、 今日は張り切るわよ〜♡貴方は何か飲んでいく?」 なんて、お店の看板をひっくり返しに向かいながら、 問いかけるのだった。 (-298) 2023/09/16(Sat) 19:46:54 |
【人】 pasticciona アリーチェ「……お、思ってない! 思ってないわ……いえ、ですよ?」 まずい。心外と思わせてしまった。 しかしながらその後の反応を見て、思う。 隣の幼馴染も一件誤解されやすい言動を取るが、彼もそのタイプではないのかと気づきを得たようにうんうん唸っていた。 「些事じゃない事をいつもしてしまってるわ……」 と、聞こえてきた会話には思わず震えあがった。 大方、非効率な真似を行うのはこの女であることだろう。 クロスタータ片手の講釈も散々見慣れた幼馴染の顔なので滑稽どころかいつも通りの安心感を得てしまうのだが。 「朝ご飯自体は食べた方がいいと思うから…… エルヴィーノの事が心配な子達で、 交代で軽めの朝食を持ってきた方がいいかもしれないわね」 なお、今朝の法案の件の時点で再びしょんぼりしなおしたが、この渦中の事を思えば些細なことである。 #警察署 (64) 2023/09/16(Sat) 20:42:00 |
【秘】 pasticciona アリーチェ → Chiavica テオドロそうしてそんな会話の最中、 合間と隙を見計らって貴方に耳打ちを一つ。 「こんな時に言うのもあれなんだけど、あのね。 今度作ろうと思ってた新作の材料があるから、 もしよかったら味見して欲しいの」 悪法が施行されようと休日は平等に回ってくる。 そんな時に頭を抱えて過ごすよりはいつも通りお菓子作りを行いたくて、そしてそのお誘いだ。 「おいしくできるか不安だからテオにしか言えなくて……」 (-307) 2023/09/16(Sat) 20:47:56 |
【秘】 pasticciona アリーチェ → 黒眼鏡別離で苦しむのは、その資格があるものだけ。 本当にそうだろうか。どんな人物でも自分の感情を蔑ろにしないといけないなんて、とアリーチェは最初に思う。 神は、神から見て善人と言う区分を設けないと思うから。 悪党がいるとして、それは悪党の側が神の愛を拒否しているだけ。 悪党と自らを例える貴方に、昔聞いた言葉を不意に思い出した。 「等、級?」 「……今からでも悔い改めれば救われる、と言っても、 きっと望まれないし、信じられる事もないのでしょうね」 「私も、神の愛を疑ったことがありますから、 人にこんな事を言える身分では全くないんですけどね」 自分は人を導く神父でも、シスターでもない。 なにより、聖職者であっても、他者の選択は全て自らに任されており、その選択を誰であっても裁く事はできないのだから。 貴方のその選択を少し悲しくは思うが、価値観の押し付けはよくないとそれ以上この件について言葉を紡ぐのを辞めた。 「いいえ、私は大したことは何も。 もし少しでもアレッサンドロさんの役に立てたのなら、 昔のご恩を返したと言うだけですよ」 (-316) 2023/09/16(Sat) 21:28:47 |
【秘】 Chiavica テオドロ → pasticciona アリーチェ「俺はお世辞は言わないってのに、 あんたって意外と怖いもの知らずだよな……」 素に近い口調で、その妙な心配性をつつく。 この俺に出せるんだったら誰でも行けないか。 気を遣われないのが楽ってんなら構いやしないが。 「別に……いいですけど。予定があるわけじゃなし。 仕事もすぐに忙しくなるわけでもないだろう」 一瞥くれただけで、その視線はすぐに正面に戻される。 まず最初に一度断っていない時点でそれほど面倒がってはいないらしい。幼馴染であるあなたなら分かるはずだ。 (-317) 2023/09/16(Sat) 21:32:48 |
【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「……そうよね。やっぱり、 何としても皆が捕まらないようにしないと。 もっと、もっと、何か情報でも握れればいいのに……」 貴方が素直に肯定してくれたことで、それ以上大きく騒ぐことはなかった。 そうして零すのは情報への渇望。待つしかない。けれど待つ時間を少しでも短くできないかと言うもの。 「うん、ありがとうヴィットーレ。同じ気持ちよ。 きっと貴方が消えたらわたし、平静を装える自信がないから、きっと署でわんわん泣いちゃうかもしれないわ」 だから、絶対捕まらないでね。 本当は"絶対"なんてないなんて知っていて。 それでも貴方にそう言わずにはいられなかった。 「あ。それじゃあわたし、モヒートで」 「……わたし、ヴィットーレがマフィアになった理由、 そう言えば知らない気がする。孤児院の皆のため?」 看板をひっくり返すあなたの背にそう問いかける。 こうは言ったものの昔から気になっていたのは事実で、こんな話題の中じゃないと切り出せないと言う所があったから。 (-323) 2023/09/16(Sat) 21:45:20 |
【教】 pasticciona アリーチェ「裏切者……」 「組織内での裏切者なんて考えたくないわね…… 最も、今の警察は裏切りどころか分裂状態だけど……」 公僕である以上、上が水は赤いと言えば赤くなるのだ。 新法案に反発している人は少なくはなくなくとも、 それに表から批判できる人はいないし、"いなくなる"。 「……ノッテに裏切者がいない事、私も祈ってるわ。 どこでどんな利権が発生しているかわからないだけに、 いないと言い切れないのが複雑だけれどね」 (/19) 2023/09/16(Sat) 22:00:08 |
【教】 pasticciona アリーチェ「……えっ?」 「……やだ、ペネロペ。 わたしが幾らドジだからって、性別を間違えたりは…… 間違えたりは…… しない…… はず……」 またからかおうとして〜。くらいの軽い笑みを最初は浮かべていた物の、徐々にその表情が固くなって。 「………… うそ 」 (/20) 2023/09/16(Sat) 22:01:09 |
【秘】 pasticciona アリーチェ → Chiavica テオドロ「もう。テオ相手だから怖いはないわよ。 お世辞、言わないのもあるけど一番は安心できるから」 優しい、優しくないは各人色々差はあるけれど。 同い年で恐怖も共有した大切な幼馴染に勝る安心度はない。 例えお世辞の有無にかかわらず、貴方であればそう。 「本当?よかった! それじゃあ、今度のお休みに作って待ってるね」 相手が面倒臭がっていても多少押す気は満々だったのだが、今回は割と乗り気の部類らしい。 下手な事をやってその気を逸らしてはいけないからと、その場は大人しく元通りに正面に向きなおした。 (-326) 2023/09/16(Sat) 22:12:29 |
【教】 pasticciona アリーチェ「夢、一瞬で儚く砕け散ったわよ…… ううん、まだ夢の中ではあるんだけど」 「絶対女の子だと思ってたのになぁ…………」 完全に女性の先輩と思って慕う気満々だった女は、ショックのあまり机に顔を押し付けるように突っ伏した。暫くは起き上がってこない事だろう。 「じゃあどうして女の子に見える格好を? ……女の方が有利なこととか、やっぱりあるのかしら」 (/22) 2023/09/16(Sat) 22:17:23 |
【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ「ふふふ、駄目よそんな露骨に悲しがっちゃ。 泣くならせめてお手洗いの中にしなさいな。」 ちゃぁんと努力するわよ♡と貴方を安心づけるために 笑ったヴィットーレは────しかし、 明日には捕まる運命だ。まだ誰も知る由はないけれど。 場末のバーは開店してもすぐにお客が来るようなことはない。 注文通りにモヒートを貴方に差し出して、 問われた言葉には、一度何かを片付けるようなしぐさで 背中を向けて。……表情は見て取れない。 「………う〜ん、どちらかというと自分の為ね。 知りたい事があったの。その為に、マフィアになるのが 一番都合がよかったのよ。それに………」 「……孤児院で過ごすのが、辛くなってしまって。逃げたのね。」 「……昔、アリーチェを助けた時……… 一緒に居た子供達を覚えてる? アメリータ、レオニタ、トール…皆貴方と遊んだことがあるのだけれど。」 (-331) 2023/09/16(Sat) 22:26:49 |
【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレモヒートを受け取りながら、一口飲みほす。 果実の酸味とラムの甘い香りの液体が乾いた喉に染み渡る。 「知りたい事があるから、マフィアに……」 一度そこで口を開いたのは、自分にも思い当たる何かがあったのかもしれない。 表情が見えない事に少し不安も覚えるけれど、本当に話したくなければきっと話を流してくれただろうと受け取り、続く貴方の話を神妙な顔で頷きながら聞いて。 辛くなって逃げた。 いつもの貴方からはとても想像できない動機で、それだけにそれ程の何かがあったのかと途端に心配そうに表情を歪める。 「……ええ、勿論覚えているわ。 あの日の事を忘れたことは一日足りともないから、 誰が一緒にいたかは記憶にしっかり残っているよ」 あの日。貴方に助けられたあの日。 不審な男に絡まれて恐怖で身も竦んだ時、貴方の姿が見えた時、自分がどれ程救われた事か。 きっと貴方に伝えたくても伝わり切らないその心を思い出していた。 (-333) 2023/09/16(Sat) 22:46:17 |
【教】 pasticciona アリーチェ「諜報するには女の方が有利なのはよくわかったわ。 いざとなれば、男の力で抵抗もできるし…… ちょっと羨ましいかもしれないわね、ペネロペのそれ」 夢のない話に更に潰されて机に突っ伏していた顔がようやく上がる。 「……今、やっぱりペネロペの所、忙しい? よかったら様子を見るだけでもいいから、 ちょっと、ある人をサポートして貰ったりは……」 ごにょごにょ。 自分でも、余りいい提案じゃないのは理解していたのだろう。 声が小さく潰れて行って、目線は逸らされる。 普通は多忙なら、誰かひとりじゃなく身内全体の利になるように動く筈だ。 それを夢で出会ったどこの馬の骨か知らない女の要望を聞いてくれることなんてまずないと思うけれど、言わずにはいられなかった。 (/24) 2023/09/16(Sat) 22:55:32 |
【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ「あの時は本当に驚いたわ。 貴方が無事でよかった。 大切な家族が襲われたとなったら、 アタシも冷静じゃいられなかったもの。」 あの時のヴィットーレたるや否や。 元々スラム育ち故の喧嘩慣れした体術は荒々しく卑劣で、 その頃から変わらなかった普段のやんわりとしたイメージを 払拭してしまうには十分すぎるくらいの姿を君に見せていた事だろう。 ヴィットーレにとって、家族を助けるのは当たり前の事。 だからきっと貴方にどれだけの感謝を伝えられようと、 気にしないで、の一言で軽く流してしまって。 「…………うちの孤児院、経営が厳しかったの。 前の院長が大往生でお亡くなりになって、後継ぎもいなくて アタシが継いで………まぁ、まだ16だったから、 お金のあてなんてないし………当たり前よね。」 依然として背中を向けたまま語る。 確かに裕福そうではなかった孤児院ではあるが、 貴方の記憶では、そこまで貧困にあえいでいた、というほどの 困窮具合でもなかったはずだ。 「最初は色々売ってたのよ。まだ使える家財とか、 皆で内職したものとか………まぁ、それでも 子供たち全員を養うには全然足りなくて…… 売れるものだってどんどんなくなっていって……」 客は未だに誰も来ない。 今ここには、貴方とヴィットーレの二人だけ。 (-339) 2023/09/16(Sat) 23:09:47 |
【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ「───孤児院に必要最低限の家具しかなくなった頃。」 「子供しかいないうちの孤児院に、 あと売れるものは 一つしか 残っていなかった。」アメリータも、レオニタも、トールも。 あの日以降の交流会で、貴方が見た覚えはないはずだ。 ヴィットーレは背中を向け続けている。顔は見えない。 (-340) 2023/09/16(Sat) 23:13:00 |
【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「……そんなに、厳しかったの? なんで、相談してくれば……なんて、言えない、かな」 そこまで当時の孤児院の経営が悪化していたなんて、幼子だったアリーチェにとって想像もしていなかった事で。それは今となっても同じだ。 教会だって裕福な訳ではない。助けを求めてと言ったってあくまでそれは当時庇護されていた身分のアリーチェが言うことだ。 実際の教会はそんな余裕はないと動かなかったかもしれない。 助けを求めるのだって容易ではないのに、それでも貴方の話を聞いていく度に、何か自分ができる事がなかったのかと後悔の念に駆られる。 「…………」 思わず拳を握りしめた事で爪が刺さって赤みが増す。 アメリータ、レオニタ、トール。 三人を見なくなったのは、誰かに引き取られていたからと今日まで信じて疑わなかった。 それがいかに愚かなで安直で楽観視した考えだったか、思い知らされ突き落とされたような気持ちになる。 「……わたし、は、誘拐された事があるから、誰かを切り捨ててることが凄く嫌いで、怖くて、今もそんな世の中が許せなくて、だから、…… ……だから、彼らを売ったこと、他の方法は本当になかったのかって、怒りが止まないけれど」 (-348) 2023/09/16(Sat) 23:55:15 |
【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「でも、飢える事がどれ程辛くて、 孤独でさもしくて心細くて苦痛か、知ってる」 アリーチェが料理やお菓子を振舞いだしたのもそうした経験からだ。警察官に就職してから教会にも孤児院にも、定期的にお菓子を差し入れにいったことがあるだろう。それもひとえに、飢えの辛さを知っているから。 「それに、」 「わたし、ヴィットーレの家族だから、」 「一番苦しかったのは、家族を切る判断をしなければいけなかった、ヴィットーレじゃないかって、思うの」 潤みそうな目を堪えながら立ち上がり、 貴方の背に近づくとそっと服の裾を握りしめようとする。 涙が零れ落ちそうだった。それでも、自分なんかが泣きたいと思っちゃダメだといい聞かせ、必死に耐え続けた。 「ずっと頑張ってくれてたのに、気づけなくて」 「……選ばせてしまって、ごめんね」 (-350) 2023/09/16(Sat) 23:56:24 |
【教】 pasticciona アリーチェ「……ノッテなら、ヴィットーレがいると思うんだけど」 「勿論、本人が検挙されないのが一番なんだけど、 彼、孤児院を持ってるでしょう。 だからそことの関係性を何とか隠蔽しきれないかって」 「……勿論、ヴィットーレ自身でその辺りの処理は一人で終えるだろうけど、手助けしてくれる人がいれば私も安心だから……」 心苦しそうに、少し顔を困り顔のまま伝える。 ノッテの利益になるかというと、正直な所厳しいだろう。 ただ、自分の恩人が少しでも見つからないように、余裕ができるようにしてほしいだけ。ただの我儘だ。自覚しているからこそ、この表情である。 (/26) 2023/09/17(Sun) 0:14:27 |
【秘】 黒眼鏡 → pasticciona アリーチェ「そうして悔い改めて救われるというのは、 神の愛が降り来るのも俺だろう?」 「ならば、そういうものはもう要らないね。 神様も、いらんといっているものをくれるほど暇人ではないだろう」 あなたの言葉をやんわりと否定する。 彼にとってそれは、もう不要なものなのだ。 教会に押し付ける寄付金だとか、高価な家電とか、そういうものと同じように。 「お嬢さんも神様が助けてくれないなら、 他の者を頼った方がいい。 セカンドオピニオンだろ。 ほんとに愛があるのなら、相手が誰に救われたっていいはずだ」 それでも、あなたの言葉に宿る温度――それこそ、情やら愛やらいうものだろう──を感じたのか、 頬を緩ませるように小さく笑い。 「恩ね。あれも、仕事を楽にしたかっただけだから。 だが、恩というなら、もうすこしだけ付き合っちゃくれないか」 ポケットにひっかけるようにして持っていた、 小さな白い花束を突き出す。 「彼女の墓に、これを。 ここからは善く生き、静かに眠るものたちの場所だ」 俺は入れない、と。気取った様子もなく、事実を告げるようにした。 (-365) 2023/09/17(Sun) 0:28:54 |
【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ「ふふ、言えないわよ。 教会の人たちだって頑張ってやりくりしてたもの。 同じ経営者だったから、それがよくわかった。」 それに、もし助けてもらったとして。 それで貴方や他の子達が貧しい思いをしたら意味がないから。 そう思うと、頼れる先なんてどこにもなかった。 自力でどうにかするしかなくて……それも限界だった。 爪が食い込む手は、二人分。 依然背中を向けるヴィットーレの体の横で、 白くなるほど握りこまれた拳から、細く血すら流れ出す。 「……なんで貴方が謝るの? だめよ、嫌な事を聞いたら怒らないと。」 発する言葉は少しか細くて、小さい。 本当なら、語りたくなんてない事だった。 でも、貴方には。 ……伝えておかなければいけない事だと、思ったから。 (-376) 2023/09/17(Sun) 0:56:44 |
【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェヴィットーレ、俺達を売ってよ。 そしたらお金も手に入るし、ご飯の人数も減るし。 大丈夫だよ、3人で話し合ったんだ。 ヴィットーレ、いっぱい頑張ってるの知ってるよ。 私達も力になりたいの。お願い。 私達、家族でしょう?助け合いたいよ。 今でもあの時のあの子達の言葉を思い出す。 合意の上での売買だった。………なんて、 自分の行いを弁護する気はない。 「………アタシに、そんな優しい言葉を掛けられる権利はないの。 アタシに力がないせいで、あの子達を犠牲にしてしまった。」 「もっと力があれば、もっと勉強をしていたら。 …………今も一緒に、 居れたかもし れないのに…… 」ふり絞るような声は酷く揺らいで。 いつも落ち着いているヴィットーレは、 今は片手で自分の髪を掴み、ぎゅっと目を閉じる。 大きな背中も、随分小さく縮こまって。 「………せめて、あの子達がどこに引き取られたのか…… ……知りたくて、マフィアになったの。 ………どんな形でも、また、会いたくて……」 「……ごめんなさいね、アリーチェ。 アタシは……貴方が思ってるような、善良な人間じゃ、ないのよ……」 ようやく振り返ったヴィットーレは。 ……泣きそうな顔で、貴方に謝罪をしたのだった。 (-380) 2023/09/17(Sun) 1:05:51 |
【教】 pasticciona アリーチェ「それだけでも十分すぎるくらいよ。 彼の頼みなんかじゃなくて、私の勝手な我儘だから……」 「ありがとう。勿論、わかってる。 ……自分と部下だけじゃなくて、孤児院との繋がりまで色々と隠そうとするのは普通よりきっと大変そうで…… もし回せてもらえるならきっと助かるし、私も少しだけ安心できるから……」 丁寧に頭を下げた。 (/28) 2023/09/17(Sun) 15:25:53 |
【秘】 pasticciona アリーチェ → 黒眼鏡「せ、せかんどおぴにおん?…………。」 余りに神とは程遠い単語を聞いたものだから、 即座にその意図が通じず目をぱちぱちとさせて。 暫くの間のあと、ようやく腑に落ちたかのように頷く。 「ざ、斬新な視点だわ…… いえ、神の教えを知る身としては大問題なんですが……」 「……相手が誰に救われたっていい、か……」 困惑と動揺が綯交ぜになった曖昧な表情を向ける。 自分の信仰とは大きく異なるものだけど、 アリーチェの悩みを的確に抉る言葉でもあった。 思う所は山ほどあったけど。 けれど深く物思いに耽る前に目の前に花束が突き出されて、 「……あら。それは困りましたね、それだと」 「"その括り"だと、私も中に入れなくなるんです」 穏やかな表情のまま髪を軽く掻き揚げて、墓地の方に視線を移す。 「共に入って共犯者になりましょうか?」 無論、声色に無理強いをする様子は微塵もなく。 (-507) 2023/09/17(Sun) 16:21:30 |
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