「――――うっかり　　しまわなければ良いが」

見開かれる瞳は、あなた……ではなく。
監視カメラ、そのレンズへと睨み向けられる。

「兎を此処へ放った奴の……、後悔の滲んだ顔が浮かぶよ」

無表情のまま　　に染まる瞳が。
　の如く、揺れ動いた。

開かれた目は、良く知る紅水晶の色ではなく。
それは例えば



「……ニア、」

思考の間を置き絞り出した声が、あなたの名を呼ぶ。

『殺してくれるのか』

その言葉に兎は寂しそうに笑う。
また戯れにキューブを呼び出し、それをくるくると回転させながら思考して。

漸く紡ぐ。

「僕には君の刑を軽くしてあげる権利はない。だから、叶えてやれるのは大分先になるね」


「けれど」

「…いいよ。それで、君が救われるなら」

名を呼ばれれば、視線を下げる。目を閉じる。

罪状の話題に触れる事もきっと、あった筈だが。
この少女は『赤を沢山にした』、としか口にしなかった事だろう。

看守の間で流れている少女の　　も。
無抵抗のか弱い少女からは、一切感じられないモノ。
ただの戯言とする者が殆どで。

「…………、なんだい？　……ミズガネ」

震える身体はいつも通り、そのままに。
出される音はいつも通り、そのままに。

あなたが注文してくれた飲み物を、小さく喉に流して。

あなたへと目を向ける事は　　しないだろう。

「おや、ミズガネ殿ではありませんか！」
まだ燻る煙草の香。そちらの反応は聞こえていないようで、洋々と挨拶を交わす。

「拙は自由行動エリアを散策していたところでした、ミズガネ殿は何を？」
悪気はないのである、が。結果望まない接触になるだろうか。
あなたの進む方向へくるりと方向転換し、横について歩くのだった。

/*ありがとうございますわ〜〜！！

視線を逸らさぬまま、逃さないという様に、じっと……じっと、待つ。
長い長い時を生きる人類にとって、その間は大した時間では無いのだろうけれど。あなたにも、そして自身にも。妙に長く感じられるようだった。

そうして紡がれた、肯定の答えを捕らえ。

「……マジかよ」

叛逆者の眼が、僅かに揺れ動く。