「警戒すべきは誰だ」
「近づくべきは誰だ」
「私がここで過ごすために必要なものは」
「私が今後を過ごすために必要なものは」



……囚人達の中では比較的軽い罪とはいえど、
まだ船を降りることは許されていない身だ。
降りるまでの間に人としての己が死なないよう、
上手い立ち回りを考える必要があるだろう。

「……本当はもっとゆっくり入りたいが、付け入る隙をわざわざ見せてやる筋合いもない、な」

元々、入浴自体は好きだった。投獄される前などはじっくりと時間をかけて寛ぐような時間を好んでもいたのだが。
……自らの下腹にある、雄の象徴に隠れるようにして存在する蜜壺をきゅっと締める。これがあるせいで、これをつけられたせいで、己は明確な弱点を持ってしまったと言える。
男のままで在れたのなら。過去の自分がもっと主人を選べていたのならば、こんなことになりはしなかったのだろう。

望まず両性となった己を悔やむ感情と、入浴できる喜びとを天秤にかけた結果がこの中途半端な行動となってしまったのだが……さて。他者に見つかることなく入浴を終えることができるだろうか。