人狼物語 三日月国


224 【R18G】海辺のフチラータ2【身内】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


【独】 花浅葱 エルヴィーノ

警察署に銃声、怒号が鳴り響く。
銃弾に貫かれた男は、まるでスローモーションがかかったようにゆっくりと視界が回転するのを見ながら、地に倒れた。

勢いよく流れ出した血は、鮮やかな赤。
動脈を損傷したのは誰が見ても明らかで、警官の中の一人がその動脈を圧迫止血を始めた。
肩関節が無事かは、この時点ではわからない。

「…………約束」
「……僕が守れなかったかも」


さりとて、意識が落ちるその直前。
つぶやかれた言葉は、宙に消える。
その意味を正しく理解できるものは、この場には一人も居なかった。


――その後。
病院に運び込まれた男は、直ぐさま緊急手術を受けることとなる。
長時間に及んだ手術ではあったが、ひとまず命を失うことだけは免れたようだ。
(-3) 2023/09/26(Tue) 22:12:58

【魂】 花浅葱 エルヴィーノ

―――夢を見ている。
それはいつもの幼い頃の夢。

ルチアーノの両親が殺された現場を見たときのこと。
僕は息子同様に可愛がってくれる二人が大好きだった。
でも、不幸になった。


ルチアーノが突然居なくなってしまったときのこと。
僕はいつも一緒に遊んでいた彼が大好きだった。
でも、不幸になった。


ラーラが交通事故に遭って養育院から居なくなってしまったときのこと。
僕は彼女に初めての恋をしていた。
でも、不幸になった。


彼女が麻薬に手を出していることを知っていたのに。
何も言わなかったから。

僕が好きになる人はいつも、不幸になる。
(_0) 2023/09/26(Tue) 23:25:41

【魂】 花浅葱 エルヴィーノ

だから、死んでしまった二人へは何も出来ないけど、生きてる二人に幸を送りたい。
ラーラには、彼女に合う義足をプレゼントしたい。
彼女が施設を出ても、普通に生きていけるように。
生きてさえ来れば、いいから。

でも、ルチアには。
マフィアを抜けるのがだめなら、ルチアには何をしたらいいんだろう。

それが僕にはわからない。


これ以上、大事な人を作ったら。
みんな不幸になってしまうのに。


お願いだから、僕を残して行かないで。

僕は―――――――
(_1) 2023/09/26(Tue) 23:26:05

【魂】 花浅葱 エルヴィーノ



―――いつもなら直ぐに覚める夢が、
       今日はいくら見ても、覚めることがない……
(_2) 2023/09/26(Tue) 23:27:19

【秘】 新芽 テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ

時間の合間を縫って、男は病院に辿り着く。
自分も診てもらうべき部分は多かったが、
今回に限っては友人の為に、珍しく進んで訪れていた。

「……エルヴィーノ」


自分たちの背中では、全てを背負うにはあまりにも小さい。
知っていたはずだ。託すこと、その代償、全部、全部。

毒吐く余裕もあったりはせず、
ただ静かに、その病室で静かに佇んでいる。

見放したわけではない。けど、夢も希望もない自分は、
みっともなく声を掛けることに意味を見出していないだけ。
(-7) 2023/09/27(Wed) 6:37:00

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 新芽 テオドロ

>>-7

「…………」

病室に来た時、男はベッドで静かに寝ていただろう。
点滴に繋がれた線は多く、肩から胴にかけたガッチリとギプスと包帯で固められている。
輸血も受けたようで、意識は戻り顔色は大分良くなっているが、まだまだ寝ている時間が多かった。

こんなに寝て過ごすのは子供の時以来だ。
命の危険にさらされたゆえに、流石の男も夢を見ても目覚めること無く長時間を寝ている。
あなたは、男の顔からクマがなくなっているのを見るのはきっと初めてのことだろう。

「…………ん」
「……テオ……?」

友達……と、いって良いのだろうか。
あの時一歩進めたのだと感じたことを、そう断定しても怒られやしないだろうか。

そう思ったからだろうか、舌が回らなかっただけだろうか。
同期の名前が最後まで呼べない。
(-8) 2023/09/27(Wed) 8:35:26

【秘】 新芽 テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-8

「──」
「全く、やってくれたな」

一先ず決まり文句だけ述べておく。
その前に挟まれた息を呑む為の沈黙は誤魔化せただろうか。

「牢で乱暴されてた俺よりも、
 なんであんたの方が重体で寝こけているんですか」

そして当然のように文句をとってつける。
それは勿論、ただ苦言ばかりを呈しているわけではなく、
心からの心配が滲んでいるかのような声色だった。

「今までの睡眠の帳尻を返すのは結構ですが、
 負債が多すぎて目覚められなかったらどうなることかと」

「……でも、あんたはやるべきをやった。
 だから……無事なだけ、喜んでやりますよエルヴィーノ」

他でもなく、友達の掴み取った未来だから。
互いに命があるだけ及第点というものだろう。
(-9) 2023/09/27(Wed) 9:08:46

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 新芽 テオドロ

>>-9

「……キミと約束したからね」
「無事に釈放されたみたいで良かった」

力なく、にこりと笑う。
約束だけが理由ではないけれど、あの時背中を押された事が力になったのは確実だ。

「牢で乱暴……?」
「僕は、まぁ……避けきれなくて」

銃弾を避けれる人間など居るものではないが。
そういえば、あの時のあなたは手をずっと後ろに隠してやいなかっただろうか。
あんな法があったとはいえ、どうしてそんな事がまかり通ったのかわからず眉を下げた。
あわよくば、気になっている手を覗こうと視線を動かす。

「夢を見るんだ。
 ……何度も繰り返し見ても、起きれない。
 これが今までの負債なのなら、確かにそうかもしれないね」

大事な人に不幸が訪れる夢。
いっそ今までのようにすぐに起きられた方が、心は楽だ。
それでも、無事を喜んでくれるのは嬉しく思うから、その賛辞は素直に受け取ることにした。
(-11) 2023/09/27(Wed) 13:55:50

【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ

 
「エルヴィーノ、今大丈夫……?
 お見舞いに来たんだけど、凄い事、やらかしたって」

ひょっこり、病室のドアから少しだけ顔を覗かせて。
やらかしたとは失礼な事を言いながら、
貴方が目を覚ましているのを確認すると中へと入ってくる。

「銃で撃たれたって聞いた時は本当に驚いて……
 多分、署の全員が間違いなく驚いていたと思うわ。

 ……でも、この騒動が終わりを迎えられたのは、
 エルヴィーノの力が大きいと思う……ありがとう。
 ……先にこれだけは、どうしても言いたかったの」

少しだけかしこまって、頭を下げて、ふわりと髪が揺れる。
牢での日々はとてもいい思い出とはいいがたいものだから、
それをなくしてくれた一員であるあなたに心からの感謝を。
(-33) 2023/09/27(Wed) 20:15:17

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ

>>-33

「……! やぁ、アリーチェ。
 私服のキミもなかなかだね」

ベッドに横たわったまま、顔をそちらを向けて笑みを浮かべる。
いつもなら手の一つも上げるのだが、あいにく今はそれができそうもない。
肩から胴にかけてがちがちにギプスと包帯で固められ、逆手には何本もの点滴が繋がっているからだ。

署で話を聞いていたなら、あなたは病状を動脈損傷による大量出血と肩関節損傷だということを知っているだろう。

「……うん。まぁ……テオドロと約束したからね」
「キミ達が皆無事に釈放されたみたいで安心したよ」

署からも感謝の言葉は何度か聞いた。
改めてあなたからも告げられると、むず痒さが出ていけない。
だから挨拶もそこそこに礼を言われれば、少しだけ困ったような笑みに変わる。
この怪我がなければ格好もつけれたんだけどねと、そんな事を言いたいようだ。
(-34) 2023/09/27(Wed) 20:28:51

【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-34
「もう、褒めても大したものは出ないわよ。
 ……エルヴィーノは……」

なかなかに、重症だ。一周回って感嘆しそうになるほど、
手術の痕が色濃い様子に、おもわず溜息が零れた。

「男の人はみんな無理し過ぎよ、もう。
 女の人も勿論しているんだろうけど、
 私の耳に入ってきたのは殿方ばかりだったわ」

ベッド脇の椅子にそっと腰掛けながら、病室を眺める。
花瓶にもし花が活けられているならば、
水替えを手伝いながら話の続きを始めるだろう。

「テオと約束?
 まさか、こんな危険な事をする約束を?」

もう、信じられない……と呟きながら少し拗ねたように頬を膨らませて、テオもテオよ。と若干飛び火した怒りが見える。
(-38) 2023/09/27(Wed) 21:06:37

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ

>>-38

「意地を張らなきゃいけないときもある……ってとこかな」
「いや、僕もまさかこんな事になるとは思わなかったんだけど……
 テオドロは応援してくれただけだから、怒らないでやってほしいな」

普段の自分なら無理に行動をおこしたりなどはせず、当たり障りなく行動してたはずだ。
それでも動いたのは、テオドロとの約束もそうだが。
一番は、牢に入ってしまった友人たちを釈放させたかったからで。

「悪いね、……この状態では自分で何も出来やしないから助かる」

花瓶の水換えをしてくれるあなたに、申し訳無さそうに礼を告げて、息をつく。
自分の腕は、きっともう、以前のように動きはしないことを宣告されている。
リハビリをすればある程度までは回復する見込みはあるが、肩の可動は狭くなるし、反動の大きい銃は握れないに違いない。
それは、警察としてはかなりのハンデとなる話で……。
(-39) 2023/09/27(Wed) 21:18:10

【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-39
「それで偉業を成しちゃうんだから。男の人ってずるいわ。
 ……心配だって、怒れなくなるもの」

「テオは応援しただけ…?それなら……」

それなら、いいのだろうか。
うーんと唸って、OKの結論が出たらしい。
すっきりした表情に戻った。

「……エルヴィーノも、腕、動かないの?
 じゃあ、警察を続けるのは、難しくなる?
 ……ああ、わたしが落ち込み過ぎても、だめね」

警察として、いや、どの道を選んでも腕がうまく動かないとは苦難の道となるはずだ。それを心配しないはずがない。

「うん、未来の話をしましょう。
 余計に朝ごはん食べたりするの、面倒臭くならない?
 ……やっぱり、皆で交代でご飯持ってこようか?」

先日も考えた案をぽつり、困ったように漏らす。
(-43) 2023/09/27(Wed) 21:58:58

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ

>>-43

「今回が特別だよ。
 こんな事はもうないと願いたいとこだけど」

そう何度もあってはたまらない。
こんなヒーローまがいな事は、自分には決して似合わないのだから。
それに、アニメや漫画と違って、こういうのはそう簡単に治るものでもないから、次の話では元通り!とはいかないのだ。

「……そう、だね。
 医者からはリハビリ次第とは言われてるけど、関節が壊れてるらしいから……以前と同じレベルをとはいかなさそうだ」

神経が切れたわけではないから、麻酔が切れればきっとすごく痛いんだろうね。なんて軽く話しては笑う。
落ち込まれてしまったらどうしようかと思ったが、あなたがその様子なら大丈夫かとホッと胸をなでおろした。
身内になってしまった人間で女性なのはあなたくらい。
どうあがいても、あなたには甘くなってしまうらしい。

「警察辞める事も考えたけ………ど、って、ええ?
 それ、退院してからの話かい? 朝ごはんはそもそも食べないんだけど……昼だけで勘弁ならない?」

とはいえ、胃についてはご覧の通り。
そう簡単に大きくなるようなことも、なかった。
(-45) 2023/09/27(Wed) 22:28:06

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

「……はあ、まったく……」

このあと直ぐにタートルネックを部下に持ってこさせた男は、あまり目立たせることなく監獄を過ごせることにはなる。
差し入れも、もしその時が来るのであれば助かったのだろうが。

「おー……まあ。少しでも寝られたか。
 ついてやるとも言ったのに……こんなことして」

「おう、戻れ戻れ。ああだがちょっと最後に聞かせろ」

「お前にこの入れ知恵をしたのは誰だ? 絶対居るだろ。
 そして……本当にそいつがここまでするように指示したのか」

ここまで、というのには首についた歯型を指している。
随分な見た目になったし、正直貴方がここまでやるとは思わなかったと返して。
(-46) 2023/09/27(Wed) 22:34:45

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-46
「うん、
大事な仕事
があるからね」

絶対に失敗できない仕事だ。
成功すれば、タートルネックを男が持ってくることはない。
それ以前にそんな時間は全くといっていいほどなかったのだが、それは未来の話だから割愛させてほしい。


「……?」

あなたに背を向けて牢を出ようとしたところ、かけられた言葉。
なんだろうと振り向けば、首についた歯型を指している。
これはどう返せばいいだろうか。
自問すること、数秒。
少しだけ言いづらそうにすること、数秒。

「……ええっと、ルチアをどうにかしたいならって話をしてきたのは、黒眼鏡だよ。
 首のそれは……そうしたほうが良いのかと思って……その」

自分のタートルネックの襟を、ぐいっと引っ張る。
襟の下から出てきたのは、あなたについているのと似たような、多くの歯型と鬱血痕がつらなった首輪があった。

だ、かれる、のは初めてじゃなかったから
………見様見真似で」
「あ、これは流石に黒眼鏡じゃなくて、その、…………………
後輩が


怒られるかもしれないと、あなたに忠告される前の話だったのだ、と説明を付け加えたが、
多分。時期の話はあまり関係ないだろう。
(-48) 2023/09/27(Wed) 22:52:23

【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-45
「私もそうであってほしいと願ってるわ。
 世界を救うヒーローになったって、泣く子はいて。
 それは大体貴方のそばにいる子になってしまうからそれが心配。
 そういう人がいないならまあ、たまには、ね」

地味に遠回しな「いい人はいるの?」と聞いてきている。
最もいたとしてその人が泣くタイプかは未知数だけど。

「……そう。……リハビリ、大変だっていつも聞くわ。
 少しでも友人として支えになれるかはわからないけど……
 弱音を吐きたくなったら、いつでも使ってね。聞くから」

以前のアリーチェなら確かに落ち込んで、私達のせいで……なんてしょぼくれていた姿を見るのは明らかだった。
それが、どうしたことか。何か心境の変化でもあったのか、
成長する"何か"が起こったのか。少しだけ強くあった。

「……そう、こればかりは難しいわね。
 私個人の意見だと、エルヴィーノには警察に残って欲しいけど…

 ……あら、でも朝食べて行かないと体力もつかないわ。
 腕が動きにくいならせめて体力はつけておきたいじゃない」
(-54) 2023/09/28(Thu) 0:10:48

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-48 

「あの老害は俺を一体どうしたいんだ」

頭を抱えた、どうしてこんなことを教えたのだろうか。
俺になにか恨みでもあったのか?と言いたくなるような仕打ちだ。
よくもまあ、ここまで。本当に理解をしていて困る男だ。

「……
こんな噛まれ方をして抱かれた事がある

「……
名前を言え


言ったらかえって良いぞ、と。
同時に、言うまで帰るなとシンプルで分かりやすく笑顔を向けておねだりをした
(-56) 2023/09/28(Thu) 1:36:38

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ

>>-54

「僕に何かあって泣くヒロインの話かい?」
「……そんな子はキミくらいでしょ。残念ながら僕のヒロインではないけどね。
 ……まぁ、ヒロインかはともかく―――――……いや、なんでもない」

言いかけて、止まる。
それはあたかもそういう存在が居ると言ってるようなものだが、あまり不確かなことは言いたくなかった。
少なくとも、頭に浮かんだ人物が泣く所は想像できない。

「はは、キミが元気づけてくれるのはありがたい。
 それにしても……随分様子が変わったね。クロスタータでおどおどしてたのが嘘みたいだ。
 僕としても職は失いたくないけど……ま、リハビリ次第かな」

今、右手を失うわけにいかない。
男の目的はまだ、何一つ果たされていないから。
そんな事を考えながら、右手に力を入れてみた。
―――まだ何一つ動かすことの出来ない手だが、痛みという感覚だけはある。
自分の手はまだちゃんと腕に、肩に繋がっている。
それがわかるだけ、今は十分なことなんだろう。

「食事の方は……
まぁ、退院するまでに少し胃を強くしておこうかな


ある意味、肩のリハビリより努力がしづらい難題だった。
(-57) 2023/09/28(Thu) 1:51:48

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-56

「……ええと……」

これは怒っている。
笑顔だけど、怒っている……気がする。
言ったらどうなるというんだろうか。……主に、後輩が。

彼がこれまでやってきた事を、何一つしらない男は、流石に言いづらそうに視線を彷徨わせた。
流石にこの件で喧嘩しに行く、なんてことはないと思いたいのだが。

「ぼ、僕が頼んだ、ことだから」
「意識が落ちるまでしてくれたら、薬も酒もなしに寝れるんじゃないかって…………だから」

彼は何も、悪くないからね?
と、できる限りの念を押して。
仕事にだけは行かねばならぬと、ぼそぼそと小さな声で名前を告げた。

「イ……イレネオ・デ・マリア……僕が教育係をしてたひとつ下の後輩だよ」

「ひどく見えるかもだけど、本当に心配をしてくれただけだからね」

これは大分頑張って庇っていた。可愛い後輩のために。
あなたからしてみれば、その名を聞けば思う所はきっとあるだろう。
だが、男から見た彼は、ただの大型犬であった。
この意識の差を埋めるのは、かなり困難なハードルだ。
(-58) 2023/09/28(Thu) 2:09:55

【秘】 新芽 テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-11

「避けられなかったなら仕方ありませんね。
 少なくとも……今回の俺が咎められることではない」

視線に気づけば、見せびらかすように片手を胸の前に掲げる。
指先には残らず包帯が巻いてあり、骨が折れたものもあるのか固定具が付けられている指もいくつか見えるだろう。

「この忙しいのに人員の欠けや身体の不自由で、
 普段に比べて著しく効率が落ちている。全く面倒です」

「全体の最適ばかりを気にしていた俺と、
 他人の幸福ばかりを気にしていたあんた。
 自分勝手な我々に与えられた罰……とすら思えてきますね」

己を疎かにすればいつか負債が返ってくる。
あまりにも当たり前のことを、忘れていたように思える。
文字面以上に深刻には受け止めておらず、浮かべる表情は気楽なものだったが。

「ま、それでもやっぱり、
 命と取り返しのつかないほどでもない肉体があるだけマシで。
 俺たちはまだ後戻りできる場所にいたともいえる」

「だからこれからは……俺はあんたと違って夢を見ませんが、
 エルヴィーノの健康くらいは願ってやりましょう。
 覚悟してください。その身体は何から何まで健全から程遠い」

願うなどと言っておきながら、
その実はやはり自分が世話を焼く気満々でいる。言葉だけでも相手を想うことが言えるだけ進歩はしているだろう。
(-65) 2023/09/28(Thu) 6:06:05

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 新芽 テオドロ

>>-65

「キミも十分酷い怪我じゃないか……。
 捕まる時に無茶をしたのかい? それか、違法な取り調べか」

男は拷問が行われていたことなど一つも知らない。
心配気な表情であなたを見上げて息をつく。

「そうかもしれない。
 これが罰なら、甘んじて受けるしかないなぁ」

それでも幸を願わずにいられないのが、浅葱の瞳を持つ男だ。
願うだけじゃ足りないから、これからも他人に幸を与えようとするのだろう。
それでも、これまでよりは幾許かは、自分の身やその他の事も気にするようになるはず。
巡り巡って大事な人が不幸になってしまうなら駄目だということを、学んだから。

「はは……健康を得るには寝るのが大事なのはわかってるんだけど。
 どうしてもなら本当に僕を寝かしつけてもらうしかない気がするよ。
 ……や、本当にそんな事はしなくて良いんだけど……、まぁ、僕もキミの回復と幸を祈っておくよ」

寝かしつけの何かを思い出して、一つ咳払いをして。
ただ祈るをすると告げる。
あなたはきっと幸を自ら掴んでいくタイプだと、今なら尊重することが出来た。
(-67) 2023/09/28(Thu) 8:02:29

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-58
「……ほお。お前が、頼んだ。
 そんな噛み方をして、答えた奴が」

「…………イレネオだあ?? あのガキ」

「心配しただけでこんな噛み痕もキスマークつけてるなら
 随分この町はもっと性犯罪が頻発しているだろうなあ!
 お前、そいつを庇ってるんじゃねえぞ! 少しは文句を言え!
 首まで隠す羽目になるのは仕事の支障にしかならないだろ。
 それと、善意で強姦して許されるなら警察はいらねえ!
 お前らは何処で働いてる、鏡見てから仕事するんだな」

結局怒った。

「さっさと出ていけ、馬鹿野郎。……ああ最後に」
二度と黒眼鏡に会うんじゃねえぞ!


先程流そうとした思考が戻ってくる。
誰しも自分の信じる姿でいることなどない。
疑って過ごすべきだ、だから一番に気にかけるべきだった。
この幼馴染はちっとも信頼できない不用心な人間で。
マフィアなんかと関わるべきじゃない大事にしなければいけない存在だったと。

男のくせに、とため息を吐いて牢の出入り口に向かって追い払うように手を振った。
此処から出てからも話すことが多すぎる、そう考えながら。
(-77) 2023/09/28(Thu) 10:06:14

【秘】 新芽 テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-67

「どっちもです」

どっちもらしい。酷い怪我をした理由じゃないにしろ、
ちょっと無茶をしたときもそれなりに痣が出来た。嘘はついていない。

何より、これをした人間の名を上げたところで、
良いことがおきるとはこれっぽちも思っちゃいない。
罪はともかく、何か俺に対して悪いことをしたか≠ニ問われればそうとは言い切れない。己にも非があり、そしてきっと彼にも彼なりの報いがある。それに任せようと思うのだ。

「罰をある程度受け終わったら、
 その時はまた張り切ってやっていきましょう。
 こうして休んでる間にも溜まっていきますからね、仕事って」

それよりも、今は目の前のあなたに、
もう少し誠実であれるところを探したい。

「……へえ。これまでは度々冗談を言っていましたが、
 今度こそ本当に寝かしつけてやりましょうか?
 手仕事が出来なくて暇な時間は本当に暇なんですよ、こちとら」

やはり願うだけは性に合わない。
自ら率先して、今度は自分を使いつつも削らない全体の利益を求める。ありていに言えば───ちょっと図々しく成ろう。そう決めたのだ。
(-92) 2023/09/28(Thu) 14:31:15

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

「え、ちょ、な……っ」

なんでキミがそんなに怒るんだよと、喉まででかかった言葉は出ぬまま、牢屋を追い出されてしまった。
この仕事をしていればマフィアに会わぬことなどできないというのに、無茶苦茶なことをいうと、ぶつぶつ何かを言っている。
あなたに大事にされていることくらい、周りから見ればすぐわかることだろうに、当の本人はそれに気づかない。

ただ、それでも。
たまにしでかす物事が、危なっかしいと心配をさせてしまっているのは確かな話。
これから行う仕事も、あなたには絶対にいえない話ではあったが、言えばきっと怒られてしまっていたのだろう。

事実、マフィアにただ会うよりも危険なことをして、
大きな負傷をもって病院に運ばれてしまったのだ。

あなたと次に会うのは病院か、それとも外になるか。
何にせよ怒られる案件をひとつ、増やしてしまったのは確かな話だった。
(-93) 2023/09/28(Thu) 14:33:05

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 新芽 テオドロ

>>-92

「どっちも」

それは軽く言うことだろうか。
まぁ、本人がそれほど気にしてない様子に見えたので、それ以上は聞かないことにする。

――きっと、言えない事情もあるのだろうし。


なんていう事を考えてるのだから、結局身内に甘い男なのだ。

「考えたくないな……実際キミ達が居なくて僕と先輩の仕事量すごかったんだ」

それこそ、あの自分磨きが好きなリヴィオが、鏡を見る時間もないほどだったのだから、どれほど仕事がためられていったかは想像に難くないだろう。
仕事に真面目な人間というわけではないが、それでもその時のことを思うと、まだ起きることも難しい身体が少し恨めしくなってしまった。
珍しい話である。

「え”……、や。冗談のつもりで言ったんだけど。
 ここでそれを頼んだら前の二の舞い……じゃなくて、後で僕がものすごく叱られることになるんだ」

ないとは思うが、ついでにキミも怒られることになるかもしれない。
事件の日の朝を思い出して、重い息をついた。
(-96) 2023/09/28(Thu) 15:08:41

【秘】 新芽 テオドロ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-96

「今はさらに周りに任せてしまいなさい。
 俺たちはこれでも功労者として扱われているんです」

自分たちの踏み出した一歩は、
周りに確かに影響を及ぼしたものだから。
これ以上更に無理をする必要はないし、何かあったら本当に丸投げしてしまうつもりでいる。この身体の状態でどうしろと。

「俺以外にもものすごく叱る相手がいたんですね、あんたは」

いるだろうなあ。納得感は勿論ある。
罪作りな男だろうなと客観視していたから。

流石に叱責を丸投げしては名が廃るというものだが。

「じゃあ今回はその人に免じて、
 寝しなにくどくど言うのは別の機会にしましょう。
 あんたが叱られることに関して言えば、俺が止める理由も別にないんですからね」

悪戯な笑みで言ってのけた。
(-101) 2023/09/28(Thu) 18:47:24

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 新芽 テオドロ

>>-101

よくよく男の身体をあなたが見たならば、患者用の服の胸元から少し薄くなった噛み跡などが見えるだろう。
本人としてはタートルネックで隠したいのだが、入院してると流石にそれは許されなかったようだ。

「うん、まぁ……色々あって、心配かけてしまったのは確かだから」

とはいえ、何故そこまで叱責を受けなければならなかったのかはついぞわからず。
次に会うときは、今度はこの怪我のことを叱られるのだろうなと思うと苦笑いの表情を浮かべる。
ここに入院していることは警察の人間くらいしか知らないだろうから、会うのは退院してからになるかもしれないが。

……まぁおそらく、あなたの予想のその罪づくりな男で間違いないはずだ。

「あぁそうだね……二人がかりで叱られると流石の僕も立ち直れなくなりそうだ。
 というか。キミのその色気のある声で、寝ながらくどくど言われたら寝れる状態であっても寝れない気がするよ」

皮肉には皮肉で返して口端を上げる。
気のおけない同期とのこの関係は、きっとこれから先もずっと変わることはないのだろう。
(-103) 2023/09/28(Thu) 19:11:56

【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-57
「あら、あらあら……」

ヒロインかはともかく、の先に、
何か紡がれる言葉があったのだろうと鈍い女でもその意味にはさすがに気付いたようで。
自らの頬に手を添えながら、「エルヴィーノの事を大切に思ってくれる人がいるのね」と微笑む。

「今度よかったら紹介してね」

何て、嬉しそうに笑みを深めて笑う。
のだが、貴方の大切な人はこちらの大切な人の拷問相手と言う有様である。
その事実を知った後に出会うと互いにどうなるか、今は不明なのが恐ろしい。


「あ、あの日は、自分のタイミングの悪さに普段よりも
 落ち込んでいたのもあったりしたからで……
 ……変わった、かなぁ。自分ではいまいちよく
 わからないのだけれど、支えたい人ができたから、かも」

少し照れ臭そうに前髪を指先で弄って、くるり。

「あんなに凄い事をやってのけたのに、朝ごはんの話に
 なると途端に自信なさげになるんだから。
 ん。病院の人の指示をよく聞いて無理なく鍛えてね」
(-108) 2023/09/28(Thu) 20:39:08

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ

>>-108

「…………何も言ってないのに」

言ってはないが言いかけたことが完全に失言だった。
苦虫を噛み潰した幼な顔をして息をつく。
余計なことは言うまいと心に決めて話を聞いてると、支えたい人という単語に、「へぇ」と目を見張った。

「なるほど、前よりずっと綺麗に強くなったわけだ。
 僕らの助けはもう必要なくなるのかな? それはそれで寂しい気もするね」

恋する女は強いものだ。
多分、男よりもずっと強くて、勝算は万に一つもありえない。
これは好かれた男は大変だなと、目を細め。

「まだ重湯くらいしか食べてないけどそれでもキツくてね……」

などと言いながら困った顔をしながらも、心の中ではあなたの幸を祈っていた。
(-116) 2023/09/28(Thu) 21:28:40

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

入院して1周間くらい経った頃だろうか。
流石に寝るのにも飽きた男は、こっそり点滴を抜いて外に出た。
片腕が全く動かない上、肩から胴までギブスでガチガチに固められた状態では、着替えるのがほぼほぼ不可能なため、入院着にカーディガンを羽織っただけだ。
担当のナースに見つかれば間違いなく、青い顔をされた上で怒られるに違いない。

夢の中で名前を呼ばれた気がずっとしていたし、
悪夢を見続けるのにも飽きてしまって、外の空気に触れたいと……そう、思ったから。
病院の庭を散歩するくらいは許されたい。

「いたた……でも流石に早かったかな……」

点滴には痛み止めも含まれてるのだから、抜けば痛みが戻ってくるのは当然の話しだろう。
(-124) 2023/09/28(Thu) 22:38:37

【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ

「ふふ。声に出してない言葉、聞こえちゃったから」

少し機嫌よさげに笑って、そっか、やっぱりいるのね。
なんて、何も言われていないのに一人話を進める。

「もう、褒めてもお土産しか出ないわよ。

 ……それは、どうかしら……支えたい人ができたからって
 書類仕事が急にできるようになる訳でもないし……
 ……まだまだみんなにはお願いするかもしれないわね……」

言いながら封の空いた小さな紙袋を貴方に差し出して。
中に入っているのはテントウムシのキーホルダー。
男の人が持っているには少々可愛らしすぎる、といったデザインだ。
 
「お守り代わりにでも、と思って」
「フルーツと悩んだけど、エルヴィーノまだ余り食べられないでしょ?腐らせちゃうのもまずいなって」

「そうだ、退屈していない?
 あれなら本でも適当に買ってくるけど。
 ……でも、エルヴィーノならお願いできる人沢山いるかな」
(-133) 2023/09/28(Thu) 23:21:00

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ

>>-133

「お土産?」

話を逸らすように聞き返せば、差し出されたのはテントウムシ。……の、キーホルダー。
聖母マリアの使い。幸運を呼び込み、病や災いごとなどの不幸を運び去ってくれるそれは、愛らしいデザインで確かに男性向けのものではない。
それでも、そこから伝わってくるのは気遣いと祈りが込められてるのがわかるから悪い気はしなかった。

「ありがとう。ごめん、もう少しこっち来て」

右手が動かないから、左手をそちらに伸ばして受け取った。
逆手では届かなくて、あなたにこっちに来て貰う形になっただろう。

「可愛いね、これ。
 あぁ……今はまだ殆たべられないからね……本は助かるな。
 毎日寝てるだけだと暇だし……ページがめくれるようになったら読みたいな。
 推理小説が好きなんだけど……、……ブックスタンドも欲しいかもしれない」

両手が使えぬと本も読めなかった。
(-138) 2023/09/28(Thu) 23:53:55

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-124

貴方が病院の中庭に辿り着いた頃、ベンチに見慣れた男のシルエットがあった。
その男は誰かの見舞いであろう病院の前にはない店の紙袋を下げながら暖かな日差しの下で眠っている。
他人の視線や居場所を関係なく眠っている。
時々身じろぎしては丸まって器用に長い脚を収めている。

貴方は彼を放置することも出来るし、声をかけて起こすことも出来るだろう。
(-173) 2023/09/29(Fri) 7:54:05

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-173

流石に歩くのがつらくなってきた散歩の最中。
中庭のベンチにでも座ろうかと視線を投げれば、何故か見知った男がベンチに寝ている。

「……いや、なんで?」

浮かんだ疑問は言葉になって呟かれ、きょとん、と小首を傾げた。
あの日のようなあどけなさのある寝顔は、何も警戒してないようにも見える。
部屋やホテルとは違うのに、なんとも無用心だ。

「誰かの見舞いにでも来たのかな……」

あの強制的な逮捕の裏で拷問などもあったらしいから、怪我人もきっと多いだろう。
部下を沢山もつマフィアは大変だな、なんて思いながら、連なる隣のベンチに腰を下ろした。
そろりと、動く方の左手を伸ばして。
柔らかな髪に触れてみる。

いつも気持ちよさそうに眠るから、起きないだろうなんて思いながら、その頭をゆっくり撫でて表情を緩めた。
暫く休憩したら、そっと立ち去ろうと思いながら。
(-174) 2023/09/29(Fri) 8:38:24

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-174

「ん」

ぱちくり、と、少しだけ時間をかけて瞼を開くと視線だけ隣のベンチに座る貴方へと向ける。
そのまま戻して、つまり結局微動だにせず口を開いた。

「なんで撃たれてるんだお前」

調べたらすぐに分からなくもなかったことを敢えて見ずにやってきた。
貴方が今何処にいてどうなっているかだけを男は知ってきたのだから。
(-176) 2023/09/29(Fri) 8:46:08

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-176

「うわ、起きた」

少し驚いたものだから、呻くような言葉が、思わず口をついてでてしまった。

「ごめん、気持ちよさそうに眠ってたからつい……」
「あー……えっと……」

あの騒動を引き起こしたのは、何もあなたのためだけではなかった。
まさかギリギリになってあなたまで捕まると思っていなかったし、自分に出来ることを友との約束を果たすためにやったことで。
彼らを釈放させるためにやったことで。
でも……、あなたが捕まったことでその必死さに拍車がかかったことまた、事実で。

騒動のことくらい情報通のあなたなら知ってそうなことなのにと、言い倦ねて、それからぽつり。

「…………代理逮捕の時の騒動の首謀者だったから…………かな……」

事実、あの時僕が死ねば、証拠を持つ問題で自体はややこしくなってたはずだ。
とはいえ、まさかあんな所にノッテのボスが潜んでいて援護射撃をしてくれるなどとは思ってもなかったのだが。

ともあれ、あなたとの約束を破って危険な行動にでたことは確かなので、申し訳無さそうに眉を下げた。
(-177) 2023/09/29(Fri) 8:57:19

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-177

「……なんだ、そのまま撫でて居ろ、聞いている」

どうしてそんなに言いよどむのだろうかと疑っていたが
貴方の思惑を聞き取れば、と納得するように相槌をうった。
やっぱりお前は馬鹿だと小さな声で呟いた。

「そうか」
「もうお前は信用しないと決めたから気にするな。
 ……勘違いするなよ、嫌いになったわけじゃない」

「お前は安心ができん。心配もかける常識も時々外れている。
 もうまともな人間だと思わないことにした。
 これまでは一人でやっていける立派な大人だと信じていたんだが、……思い違いだったなあ?」

何も気にしていなかったわけじゃあない。
何も思っていなかったわけじゃない。
いつだって頼られれば答えたし貴方の心配ばかりし続けていた、会うたびに面倒は見ていたつもりで。
それでも足りなかったんだなと改めて知る。何にも知ろうとしてこなかったのだと。

「……もう、一度お前のことは
洗いざらい調べようと思う

 だがその面倒くさい程開かん口はどうしようもならんから、
 何か疚しいと思っていることがあったらバレ早めに言えよ。
 言わなかった事一つある度に、お前の事嫌いになるから」

何とも子供らしい言い方で貴方をとがめた。
調べようと思う、という言い方に何処までの意味が含まれているか貴方にわかるとは思っていない。
(-193) 2023/09/29(Fri) 16:49:19

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-193

「べ、つに。
 今はもう何も隠してないよ……入院したこと言わなかったのは悪いと思ってるけど……」

これは間違いなく、この人は自分に会いに来たのだと思った。
たまたまなんて反応ではなかったから、きっと、その情報網の広さでここに居ることを知ったのだろう。
でもそれなら、どうしてこんな所で寝ていたんだろう?
病室に来てくれたらいいのに、僕がここに散歩に来なければいつまでここに居たのかと、ちょっと心配になった。

そのままと言われたので左手でそのまま柔らかな髪を梳くように撫でながら、浮かべる表情は困惑した表情だ。

「代理を引きずり降ろそうとした結果、肩を撃たれましたとか、格好付かないし……」
「あ、洗いざらいって……あ、ねぇ……でもそれなら」
「キミになら何知られたって良いし聞かれたら答えるけど……それなら、僕にも教えてよ」
「キミのこと」

駄目かな? と、あなたの顔を覗き込んで問う。

僕は多分、知らないことがたくさんあるんだ。
今まで知ろうとしてこなかったマフィアの話とか。
幼い頃何を考えてたのかとか。
色々だ。
(-195) 2023/09/29(Fri) 17:15:41

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-195
「……」

その心配そうな顔に答えを返してやる。
今となっては貴方の顔から疑問が読み取りやすい、本当疑う方が俺は性に合っている。

「……言わないってことがどういうことか教えてやろうと思ってなあ。
 ずっと連絡を取らず、偶然お前が散歩をしなかったら、
 俺は何日もここで昼寝して一生お前に会えず無駄な時間を過ごしていた。
 どうしてかって? わざわざ見舞いに来たのが恥ずかしかったから。等言ってやろう。
 そうして風邪を引いたとしても自業自得だな、馬鹿だろう? 馬鹿なんだよ」

お前がしたことを真似しただけだけどなあ。と鼻で笑った。

「俺が駄目だなんていったことがあるかよ」

あ。と言ってから気づく。
あの男と同じ台詞をいってしまってしかめ面をした。
本当に何もかも背中を追っていた弊害で、所作や口調が染みついてしまっていて嫌になる。

「気味が悪い……あいつなんで俺の人生に侵食してるんだ。
 はあ……なんでも聞けよ。なんでも答えてやるから」
(-197) 2023/09/29(Fri) 17:29:21

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-197

「ほ、本気かい?」

本気でなかったらこんなところで寝ていない。
ここで見つけなかったら。
この後もずっと連絡をしなかったら。
……その先はちょっと想像したくない。

「はぁ……これからは後ろめたくてもちゃんと言う。
 だからこんな嫌がらせ無茶はやめてほしい」

重々しく息をついて、降参の白旗を上げた。
皮肉めいた言い方だが、流石にそれは後悔するどころではない。
あなたに風邪をひかせてまで守るプライドなんて、本当はないのだ。

「今、なに思い出したの?」
「そうだな……じゃあ、なんで子供の頃の夢はどうでもよくなったの。
 おじさんとおばさんを殺した犯人をもう追わないのはどうして?」

これを知らなきゃ、僕も調べる手が止められない。
男はまだ、あなたに幸を届ける方法がわからない。
(-199) 2023/09/29(Fri) 17:45:37

【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-138
「あ、ごめんね。はい」

貴方の左手で自然に取れる位置まで移動して、
改めて大変そうだなと手の様子をまじまじと見つめている。

「ちょっとかわいいの買いすぎちゃったかな……
 って思ってはいるのよ。……不要だったら他の子に
 遠慮なく渡してくれたりしてくれていいからね」

棄ててもいい、とは、貴方は絶対しないタイプだろうから
わざわざ言葉に出したりはしなかった。

「それならお土産、ブックスタンドの方がよかったかも。
 今度持ってくるわね。推理小説好きって格好いいし
 表紙が格好いいデザインが多いものだから、エルヴィーノの為って理由をつけて本屋で選ぶのちょっと楽しみになってきたわ。

 後は最近音声で本を読む、って言うのもあるから、
 あれ、試してみたらどう?お料理の最中とかに
 わたしはたまに聞いたりしているのよ」
(-201) 2023/09/29(Fri) 17:50:20

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-199

「無茶だ? いくらでもできるぞ。何なら退院するまでやってやる。
 もっとも風邪なんて引かない上に途中からは仕事をしながらここで医者でも口説いてコネクションを増やしにいくさ」

無駄なことにはしたくないんでねと、肩をすくめながらよいしょと起き上がった。
この先は寝ながら話すことでもない、病院の中庭で話すことでもないが聞いている人間もいないのでいいだろう。

「今だあ? 馬鹿老害だよ、同じ事言ったんだ。
 あいつも俺に目立った隠し事なんてしてなかった、聞いてれば素直に答えたんだ。
 だけど……もういい。あいつはもういいお前も関わるな」

いつか黒眼鏡がこの世から居なくなった噂は広がってそして忘れられていくだろう。
実際貴方の頭にそんな記憶が残り続けるのも嫌なのだ、
本当に喪失感を味わう人間は一人でも減らした方がいい。

(-203) 2023/09/29(Fri) 18:05:46

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-199 >>-203

「どうでもいいというか……そんな暇がないのが正しい。
 大学に行かなくとも俺は頭がいいからな。
 それよりもやりたいことがある上に、
 お前たちと遊ぶ時間が取れなくなる方が問題だった」

「あと犯人捜しだが――見つかってる。内容は言わん。
 マフィアと関係ない反社組織で、そいつらはもう死んでる。
 俺は両親が落ち込みも泣きもしなかったただの薄情者だ。
 ただ犯人が何のために殺したのか、理由だけが知りたかった。
 お前を止めなかったのは関わらせないためと、
 その……調べることに意味があるかと思って。
 ずっと頑張ってくれていたのに、知ってるからもういいなんて、嫌だろ……?」

「……お前が居るから別に家族が死んでも寂しくなかった。
 想像しているより俺は引きずってないんだよ、それよかアジトでの毎日が慌ただしくて
 辛いや悲しいなんて気分になることなんて一度もなかった。
 だから――悪いな、俺は今いる場所が、本当に大好きなんだ」

例えこれからどれ程辛いことがあっても、無茶をさせられても、
怪我をしても、犯罪にかかわることをし続けても、辞めたいと願うことはないのだろう。
はっきりと貴方に意志を伝えるのはあまりなかったように思える。

「それでも俺を抜けさせたいって言うなら――それを全部奪うつもりで来るんだな。
 俺の大切で守りたいものを全部奪ってまでやり通したいって言うなら受けて立つ」

全く嫌がっていない様子で、それでもそんな日が来ないで欲しいと願う気持ちで。
貴方に向けるのは、好いている人間には裏切られてもいいという絶対の信頼だ。
(-204) 2023/09/29(Fri) 18:10:15

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-203 >>-204

「……そっち行って良い?」

あなたが起き上がってしまうと、寝転がってた分の距離が開いた。
あなたはきっと断らないだろうから、せめて同じベンチに座ろうと隣にすとんと腰を下ろした。

「黒眼鏡と何があったのか知らないけど……その口ぶりだと彼も脱獄したんだね。
 明確に罪状がでてるあの二人黒眼鏡とヴィンセンツィオの釈放は認められないはずだったんだけど」

まぁ、どうせそうなるだろうとは思っていた。
あの二人がそう大人しく捕まったままでいるわけがない。
二人が消えたら喪失感を覚えるのかということならば、やはり、上司の死を聞かされる方が喪失感はあるだろう。
喪失感から歪んでいった事を考えると、あなたの判断は正しいものだ。

(-214) 2023/09/29(Fri) 20:05:51

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-203 >>-204 >>-214

「えっと。つまり……」

話される言葉を噛み砕いて、理解する。
ずっと仲良しで優しい家族だったと思っていたあなたの家族は、実はそうではなかった。
そんな事すら知らなかった事が、少し恥ずかしい。
ただ、それよりも。
あなたの言葉を聞いていると、どうにもうずうずしてしまっていけない。
だって。

「……それって、全部……僕のため?」

だってそうだろう。
大学よりも、両親よりも、
自分を優先してくれてるように聞こえた。
なんなら、牢屋であんなに黒眼鏡や後輩との事に怒ったのも。
――全部。

あぁ、本当に僕は馬鹿で愚か者だったのだ、今まで、ずっと。

「…………。もう、そんな事望まない。
 キミがまた、依存してしまうようなら別だけど……大好きな場所から引き離すほど、聞き分けのない子供じゃないよ」

自分だって、今いる警察が
嫌いじゃない

嫌いな上司は沢山いるけれど、それ以上に大事な同僚たちがいるし、守りたいものを守る事くらいは出来るのだから。

「でも……やっぱりね。
 キミが誰かに捕まるくらいなら、僕が捕まえに行くつもり。
 マフィアのこともちゃんと知りたいし、好きな人が好いてる人の事くらいは知りたいから……会ってもいい人くらいは紹介してね」
(-215) 2023/09/29(Fri) 20:08:15

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → favorire アリーチェ

>>-201

「いや、これも嬉しいよ。
 キミの気持ちが籠もってるしね」

手の中のキーホルダーをみつめて、表情を緩めた。
流石に持ち歩くには可愛すぎるから、家に帰れるようになったら飾っておこうと思う。

「あぁ、ブックスタンドと本の代金は払うから頼むよ。
 ここにいる間に何冊も読めてしまいそうだから、キミのおすすめも混ぜてくれて構わないし。
 格好いいかはわからないけど……トリックとか先に解けたらよし!ってなるでしょ」
「音声か……イヤホンつければ確かにここでも聞けるからいいかもね」

料理は確かにやってると手が離せないから、音で聞けるのはいいのかもしれない。
なるほどね、なんて言いながら相槌を打った。

それはそれとして……。

「あれで皆外に出れたと思うけど……皆無事かな。
 ここにいると、外のことが何もわからないんだ」
(-216) 2023/09/29(Fri) 20:21:05
エルヴィーノは、イレネオの電話を鳴らした。
(a21) 2023/09/29(Fri) 23:38:24

エルヴィーノは、イレネオに通話が繋がる事はない。
(a22) 2023/09/29(Fri) 23:39:50

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-214 >>-215

「あの二人は仲良くデートの約束だったんだろうよ。
 脱獄したのと、色々あってなあ。……まったく」

「なんだと……別にお前だけ、のためではないがあ……?
 まだ色々勘違いさせてるかもしれんな、ちゃんと話してやるからな」

わかりやすく嘘をついて照れ隠しをした。
隣に来ることを了承すればため息を付いて肩にもたれかかる。

「依存は、わからん。
 ……血の繋がりもないあいつらに、
 既に俺はしっかりと依存しているのかもしれんし」

「会っていいやつなんてそんなにいないが……?
 血の掟は聞いたこと無いのかお前、
 ……本当は警察と俺たちは会っちゃならん。
 関わることから禁じられてる、だから俺は……まあ」

(-257) 2023/09/30(Sat) 2:18:43

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-214 >>-215 >>-257

「捕まるんならお前しかいないと思ってるさ。
 だけど簡単には捕まらない、
 それに大きな事をどうせなら起こすかもしれん」

この時点でもまた誰かをなぞっているだろうか。
それでも、何となく、いつかの終わりは来るような気がして。
永遠に平穏なんて続かないのを知っている。

「番狂わせを見せてくれるほど俺の幼馴染は面白いからな。
 その時は絶対逃げ切ってやる、覚悟してろよエル」

逃げ切るということは、俺はその手を拒む日が来るということだ。
生きることをやめようとするかもしれないし、すべてを投げ捨てているかもしれない。
いつかそんな日を迎えても、最後は貴方の顔を見たいと甘えている。
あの日からずっと、貴方は大切な唯一の幼馴染で、かけがえのない人なのだから。
(-258) 2023/09/30(Sat) 2:20:09

【秘】 幕引きの中で イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ

院内は清潔な空気で満ちていた。
容態は悪くないのだという。示された先の病室で、貴方は一人、未だに眠っていた。

その姿を認めた男は靴音を立てることなく・・・・・・・・・・近寄っただろう。
眠る姿をいつもの高みから見下ろす。上からではまだ遠かったので、すぐに腰あたりから折り曲げるようにして顔を寄せた。

色が白い。
けれど顔色はさほど酷くない。繋がれた点滴のおかげだろうか。
線が細い。
それでも今すぐ命を落としてしまうほどに儚くはないのだろう。
命がある。
たったそれだけの事実に、自分が酷く安心したことに気づいた。

男は更に腰を折り、頭の位置を下げる。肩口に顔を近づけたのは当然、噛み付くためではなかった。
顔を傾ければ僅かに上下する胸元が見えた。それでも足りずに手をかざせば呼吸を感じられた。未だ痕の濃い首筋に指で触れれば、生きている温度が伝わった。
しまいにくん、と鼻を鳴らして短く空気の匂いを嗅ぐ。血の匂いは僅かにもせず、ただ清潔な布の匂いと、その奥にほんの少しだけ消毒の香りの混じりを感じた。
貴方の負った傷は、遠からず治っていくのだろう。
それにようやく、心から安堵した男は上体を戻した。

#AbbaiareAllaLuna
(-268) 2023/09/30(Sat) 5:05:11

【秘】 幕引きの中で イレネオ → 花浅葱 エルヴィーノ

エルヴィーノさん・・・・・・・・。」


無骨な指がさらりと頬を撫でる。
呟いた声を聞いた者は一人もいなかったはずだ。

男は暫くの間、そのまま貴方の傍にいた。
それは飼い主の目覚めを待つ愛犬の姿のようでもあったし、やはり貴方の眠りを守る番犬のようでもあった。

#AbbaiareAllaLuna
(-269) 2023/09/30(Sat) 5:05:40

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-257 >>-258

「違うの?
 それなら勘違いした僕が悪かったかな」

知らないことはたくさんあっても、その性格位はよく知っているつもりだった。
幼馴染が照れているのも、嘘をついているのもわかったけれど、その言葉を額面通りに受け取って、表情を緩めて笑う。
怪我のない左肩にあなたの頭が置かれれば、その頭を左手で柔らかく撫でた。

「……居ないの?
 血の掟は知ってるけど……あまり守られて無くない?」

これはあなたのことを言ってるわけではない。
事実、マフィアと関係を持っている知人が周りに多いのだが、男はその事をよく知らない。
あなたとの関係を外に漏らすことがなかったのは、掟に裁かれることがないようにと、勝手に配慮していたことだった。

(-282) 2023/09/30(Sat) 7:37:13

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

「…………逃げ切ってくれなきゃ、困るよ」


呟かれた言葉が、あなたの耳に入ったかはわからない。
男は本来、正義感なんていうものはあまり持ち合わせていない。
あなたを捕まえると豪語する理由は、たった一つだけ。

あなたを警察に渡す気はない。


ただ、それだけだった。

恋愛感情なんて、とうにない。
だけどその重い鎖が切れることも絶対にない。
すでにそんな感情は超越して、重く歪んでしまっている。

それでもはっきりと、僕はキミに愛していると告げることが出来る。
何だって出来る。
死ぬことだって別に怖くないのだ。
あなたに幸を与えられれば、それだけでいい。

これはだって、僕に出来る、最大の我儘なんだから。


花浅葱の瞳が、遠い異国で知られるダンダラのようだ。
そこに『忠愛の誠』が存在しているというのなら、
その相手は決して、警察へのものではなかった。
(-283) 2023/09/30(Sat) 7:40:36

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-282 >>-283

「悪くは、ない……いや……。
 今思えば本当にお前以外見てなかったのが恥ずかしいんだ。
 子供の頃は全部お前優先にしてたから……」

その頃から向けている感情は変わらない。
大事なひとつ下の幼馴染、歳の違いなんて気にしないで。
一緒にいられるために周りの媚を売れた、文句を言ってくるやつの排除もした。
その時から貴方に対する感情はとっくに歪んでいた。
愛でも恋でもなくて、きっと純粋な友情ではなくて、それでも失いたくないものだった。

「まあまあ……守られてるぞ。というか隠されとる。
 厳格に気にしてるのは俺より上の立場のやつだ。
 下の輩はすこーしだけ緩いんでね」

今の地位を保っていたのも、貴方との交流を咎められないためもあった。
血の掟を交わしてしまえば自分はきっとそれに従うようになる、
貴方に会うなと言われるのまでは良い、殺せと言われたらどうすれば良い?
そんな日が訪れてしまうぐらいなら、きっと自分は此度の騒動のような大事を起こさないと言い切れないのだ。
世界と貴方を天秤にかけて釣り合わせることが出来る。
今はそれが落ち着いているからこんなに穏やかでいられるけれど。

(-304) 2023/09/30(Sat) 13:20:38

【秘】 口に金貨を ルチアーノ → 花浅葱 エルヴィーノ

「……
俺はマフィアだからなあ


愛してる、誰にも言えないと思っていた言葉。
あなたにかけられたとき、そのままそっくり返せると思った。
あの牢屋で揃いの首輪をつけられて、
確かにその言葉に懐かしさと切なさを抱いてしまったから。

何だってできる。
死ぬことだって別に怖くない。
貴方が幸せであれば、それだけでいい。

これは我儘なのか? 俺はいくらでもし続けていたいのに。
終りが来るその日まで、穏やかに笑っていたいだけだったのに。
(-305) 2023/09/30(Sat) 13:21:48

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-304 >>-305 >>_4

「……ちゃんと気づいていればよかったな」

そうしたらこんなすれ違いなんて、最初からなかったろうに。
あの頃は純粋に幼馴染を慕っていたのだと思うけれど、重い感情に不快感を示すことなどきっとなかっただろうと思うし。

今思えば、初恋はラーラではなかったのだ。
ラーラを好きになって、想いを告げた日。
「私はルチアーノが好き」だと言われ抱いたのは、ラーラに対する嫉妬心だった。
ラーラに振られることよりも、ルチアーノを取られる事が、嫌だった。
それは友情の域をゆうに超えていると指摘できるほどに。

「ふぅん。
 そういえばルチアはまだ血の掟は結んでないんだったね」

それをきちんと守って初めて上に上がれるというのなら、本当は自分たちは会わないほうが良いんだろう。
でもそんな事、出来ないよ。
もう疎遠だった頃みたいには戻れない。
あなたがずっと無事であるように手を回して、見守っていたいと思っている。
あなたの心が、悪いものに囚われてしまわないように。

(-310) 2023/09/30(Sat) 15:52:35

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → 口に金貨を ルチアーノ

>>-304 >>-305 >>_4 >>-310

「なにそれ、わかってるよ」

あなたがマフィアであることは、ちゃんと。

でもこの時、まだわかってなかったんだ。
あなたの愛の重さもまた、とっくに歪んでしまっていたんだって。
すれ違った重すぎる心は時に、鋭い刃になって互いを傷つけ合う。

けれども。
その原因を作ってしまったのは、紛れもなく、何も知らなかった愚かな自分だ。

(-311) 2023/09/30(Sat) 15:53:43
エルヴィーノは、不思議そうにその紙袋を見た。
(a30) 2023/09/30(Sat) 15:54:07

【魂】 花浅葱 エルヴィーノ

>>-304 >>-305 >>_4 >>-310 >>-311

「見舞い……?」

冷たい風が、互いの髪を揺らした。
手渡された小さな包をしげしげと見つめて、「あけても良い?」と聞いてみる。

駄目だなんて言われることはないから、左手で苦心しながら包を開いてみれば、そこには――――――

壊れた、丸い眼鏡。
レンズが片方割れてしまっていて、それが新品の物でないことは誰にだってわかる。

ヒュ……

乾いた息を吸った。
吸ったけれど、まるで酸素が入ってきていない、気がする。

だって、脳裏に浮かんだのはあの。
ギラギラと輝いた、金の瞳で。


「な……で……。
 これ、は……っ、どうし、」


目の前に居る幼馴染は、マフィアだ。
聞かずとも何が起きたかなんて――――――
わかってしまう


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!」 
(_5) 2023/09/30(Sat) 15:58:20
エルヴィーノは、が上げたその慟哭は真昼の庭に響いた。
(a31) 2023/09/30(Sat) 15:58:36

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

あなたは騒動の後、署に出向く機会がいくらかあっただろうか。
それともあなたの友から話を聞く機会があっただろうか。

いずれにせよ、あなたが教育係を務めたひとつ下の後輩が、銃に倒れ入院しているとの知らせだ。
怪我の詳細は肩関節損傷、鎖骨下動脈損傷。
噴水のように吹き上がった赤い鮮血は、その場に居合わせた警官が圧迫止血を施し命をとりとめたらしい。
あの日仰いだ協力の約束。
その仕事の最中、署長代理逮捕の大金星との引き換えにしては大きすぎる代償だ。

あなたがその病室を訪れるのはいつ頃だろう。
1週間以内の事ならば、ベッドの上の男はあなたににこやかな笑みを浮かべて迎えるはずだが―――――
(-312) 2023/09/30(Sat) 16:19:35

【秘】 favorire アリーチェ → 花浅葱 エルヴィーノ

>>-216
「……よかった。
 何だかんだ、正直言うと選んだからには、ね。
 喜んで貰えた方が嬉しいから安堵したわ」

両の手を合わせながら喜びを素直に露にする。
この辺りの喜楽の感情を正直に見せる所は昔から変わりのない所で。

「実は推理小説、あまり詳しくないのよね……
 あ、モンタルバーノは私も好きよ!あれ、あれはミステリーの方になるんだっけ……
 だから買おうとした本は一回」

「……警察を、やめる事になる人が少しいそうね。
 こればかりは皆各々の考えだから何も言えないけれど、
 寂しいって気持ちはあるわね。
私が言えた話じゃないけれど…」


なんせマフィアになろうと考えていた女である。
寂しいですら本来言ってはいけない話かもしれないが、皆なら許してくれるだろうとの甘えだ。

「さて、本屋が閉まる前に一度どんな本が並んでるか
 見に行ってこようと思うわ。またねエルヴィーノ。
 次の機会には本をどっさり持ってくるわ」

この女の事だから、加減しろと言うレベルの多さの本を持ってくるかもしれない。
(-319) 2023/09/30(Sat) 17:32:14

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



署に出向く機会も、友人に聞く機会もあっただろう。
そのどちらかは明かすことはないが、
ともかく、君の病室に出向くのは確かで。
それはきっと一週間以内のこと。

ガガッ。…ガッ、………ガラガラ。


扉を開ける音が外から響く。
何やら、少し手こずっているような様子だが。
暫くすればドアは開いて、君の知る男の姿がそこにある。

とは言っても無事とは言えず、左手は三角巾で吊り、
右手は包帯で巻いて、左耳にはガーゼが貼ってある。
しかしそれを感じさせることもなく、

「やぁ、エル。…随分と、無茶をしたようだね?」

何となくいつも通り、
しかし少し異なった印象を覚えるような冷静さで問う。

「……約束、守れなくてすまなかったね」

そうして、二言目は謝罪だ。
もしもあの日君の約束を果たせていれば
君は、そんな怪我を負うことなどなかったのかもしれない。

考えたところで、仕方のないことだけど。
(-331) 2023/09/30(Sat) 19:20:00

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

>>-331

「……!?」

慣れぬ左手でスマホの操作をしていたときだろうか。
急に不器用に扉を開く音が部屋に響いて、びくりと肩を震わせた。

「誰かと思ったら……。
 先輩こそ、僕とそう変わらない大怪我に見えますよ」

一週間がもうすぐすぎるとはいえ、未だ何本もの点滴を受けながらベッドで過ごす身の上としては、話し相手になってくれる人が来るのは喜ばしい。
リハビリは早い方がいいというから、明日にはおそらく始まるのだろうが。
なにせ暇なのだ。
寝るだけの日々というのは。

「良いんですよ。
 先輩は先輩の仕事をしていたんでしょう?」
「それで十分です。けど、その傷は……何があったんですか」

確かにあなたが居ればこの怪我は負わなかったかもしれない。
それでもこの傷はあなたのせいではない。
自分への不幸ならば、このように考えることが出来るのに他人の不幸はそう考えることができない。
男の思考は何処か歪だ。
(-337) 2023/09/30(Sat) 19:33:49

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



同じように入院している誰かさんのように
何を言っているんだ?
と首を傾げたり、
緩やかに閉まっていく扉に足を挟む、ことはない。
素直に病室内に入り、ベッド際へと近づいていく。

「はは、俺はデートをしていただけだよ」

嘘、とも言えない。
その詳細までは言えないが、確かに彼女とデートをした。
女性を誘うには些か、
いや、かなり色気のない場ではあったが。

そうして、怪我のことを問われれば、
落ち着きを見せた表情からパッと切り替え笑って。

「デートに心が弾み過ぎてね、ついうっかり
 階段から足を踏み外してそのまま転がってしまってね……」

いやぁ、君も気を付けた方がいい。
男は笑顔のままそう付け足して、傍にある椅子に腰掛けた。

これは嘘。しかし必要な嘘だった、と考えている。
誰を守るためか、誰を隠すためか。
そんなことは、どうだっていい話だ。
(-339) 2023/09/30(Sat) 19:51:42

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

>>-339

「デート、ですか。
 まぁ良いですけどね、相手は美人でした?」

あなたが【A.C.A】の人間だったことは聞いている。
それでも男はあなたへの態度を変える気はなく、今もたったひとりの先輩だと思っていた。
そのあなたがデートだと言ってはぐらかすならば、それは詳しく聞かないほうが良いということなんだろう。

それでも怪我の方については、明らかに嘘だとわかってしまった。
そんな、笑顔で心配させまいとする下手くそな嘘だ。
デート相手よりも気になる事だったけれど、そう言われるとやっぱり、あまり追求はできない。

「それはあまりにも不用心が過ぎるでしょう……。
 言いたくないってことなら、深く聞かないことにしますけど……もう少し後輩にも心配させてくださいよ」

男は何も知らない。
あなたと同じように、自分が教育係を務めた後輩がその怪我を負わせたこと。
行方不明となって、その捜査も手打ちになってしまっていること。
その他も、全部だ。
(-341) 2023/09/30(Sat) 20:04:04

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



「…あぁ、とても美人で俺には勿体ないくらいだった」

本当。それが誰だとは言わないし言えやしない。
でも君はきっと聞かないでいてくれる。
そう信じているから、男は緩やかに微笑んだ。

それで怪我の嘘、その笑顔は
"いつも通り"に振舞っていたつもりだが、
君が察してしまうのなら何も言えるはずがない。
だとして、その詳細を明かすことは一生、ないだろう。
聞かれたら答える男ではあっても、
それだけは語ってはならない真実ものだった。

「はは、これが真実だよ。俺を疑うのかい?
 こんなにも正直者で無敵の俺だと言うのに」

今まで散々リヴィオ・アリオストに騙されてきたんだ。
君は、何も知ることなく未来を歩いていくべきだ。
例え歪んだ道だとて、その道が途絶えない限り、ずっと。

ただ、出来ることなら本当は、
その歪みがいつか、真っ直ぐになればいいと。
君のことが大切な先輩は未来に期待している。

例えその未来を、この海のような翠に映すことがなくとも。
(-345) 2023/09/30(Sat) 20:34:04

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

>>-345

「デートついでに病院まで連れて行ってもらったらいいんですよ、先輩は」

まさか本当にそうなってたとは、流石に思ってないが。
それでも手当をされている様子を見れば、病院に一度は行ったのだろうからとりあえずは及第点だろう。

「そういう事にしておいてあげますよ。
 僕の周りは皆すぐ無茶をする人ばかりだ……あ、そういえば先輩、イレネオ知りませんか。
 連絡が取れないんですけど……アイツ、釈放ちゃんとされてますか?」

勿論正直に答えなくて良い。
答えるべきではない質問だ。
ただそれでも、それを知らぬ愚かな男は、可愛い後輩を純粋に心配をしていただけ。

「……先輩?」

どこか遠くを見ているようなあなたに気づいて、ベッドに寝かされたまま不思議そうに、その顔を見上げた。
(-348) 2023/09/30(Sat) 20:56:00

【魂】 花浅葱 エルヴィーノ

>>_6

「むり。……嫌だ。行かないで」

何処にも行けないから、
頼むから、今僕をひとりにしないで。

胸にぎゅっとその眼鏡を抱いて、頭を振った。
すがるように伸ばした左手は、あなたの袖をぎゅっと掴んでいる。
事実、痛み止めが切れた肩が悲鳴を上げるかのように痛んで、顔色も青白く死にそうな顔をしている。

けれど。

「……どうして……」
「イレネオは殺されたの……?」


震える声が、それを問う。

あなたがこれを持ってきた。
それは、マフィアかそれに関係する何かによって彼は殺されたということ。
あなたはその死を見届け、正しく処理をしたということだ。
だったら、その死の原因をあなたは知っているはずで……。

僕は、それを知らなきゃいけないはずで――――
(_7) 2023/09/30(Sat) 21:13:22

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



「はは、病院デートなんてつまらないだろう?
 今度は埋め合わせとしてカフェに行く予定さ」

嘘、本当。ぐるぐると混ぜて、分からないようにする。
それが今までのリヴィオ・アリオストという男で、
無敵という仮面は剥いでしまったとしても
リヴィオもまた、都合の悪いことは覆い隠していく。
それが上手く出来るからこそ、
"リヴィオ・アリオスト"は20年近く生きていた訳だ。

「…イレネオ?いや、俺は知らないな。
 ばたばたしたまま警察を辞めてしまったからね」

本当。行方すらも知らない、生死だってそうだ。
でもそのひとつを考えない訳ではない。
答えは結局分からないから、箱の中に仕舞われたままだ。

元気だといいねと呑気にも語るのは、願いか、あるいは。

「あぁ、あと君は"僕の周りは"と称するが
 今の現状を見ると君が一番無茶をした人間だからね。
 それを忘れず、見舞いに来る人の有難みを噛み締めてくれ」

「君がこうなる事で悲しむ人はちゃんと、いるんだからね」

これに懲りたら無理はするな。
今回は仕方がないとはいえ、命がいくつあっても足りない。
不思議そうにこちらを見る視線に笑いかけて、
ゆっくりと、腰掛けた椅子から立ち上がった。
(-350) 2023/09/30(Sat) 21:25:37

【秘】 花浅葱 エルヴィーノ → リヴィオ

>>-350

「え……本当に連れて行ってもらったんですか」

埋め合わせと言うくらいだから本当にそうだということだ。
冗談のつもりだったのに。
誰だか知らないが、相手の女性に少しだけ同情してしまった。他意はない。

「そうですか……。
 携帯にかけてるんですけど、繋がらなくて。
 ……まぁ、いいです彼も忙しいんだろうし……って、ええ?
警察やめた?


どうして、という言葉はあなたの笑顔に封殺されてしまっただろうか。
なんとなくだけど、答えてくれる気がしない。
答えてくれたとしても、それもまた、はぐらかされたような答えに違いない。

「僕のは運が悪かっただけで……。
 まぁ、死にかけたのは確かですけど…………」

あなたより傷は少ないけれど、この一つの傷が致命傷になりかけた。
それは本当だ。
けれども、僕は。
僕はあなたの後輩だから。

「でも」
「それブーメランですからね」

僕だって、心配するんですよ。
ねぇ? 先輩。
(-355) 2023/09/30(Sat) 21:59:49

【秘】 リヴィオ → 花浅葱 エルヴィーノ



連れて行ってもらったのか。
さて、笑顔に隠されたものはどちらだろう。
混ぜて隠して、本当の答えは箱の中。

椅子から立ち上がった後、ぐっと背を伸ばす。
傷んだ骨に若干響いたが、これくらいじゃ笑顔は崩れない。

辞めた理由を問われれば「A.C.Aだったから」の一言。
他の理由はもしかすると、まだ、あるのかもしれないが、
複数回答を求められた訳じゃあないから、内緒のままだ。

「おや、君は一体いつから先輩に言い返すようになったのかな。
 俺は無茶ではなくてデートの結果さ、同じじゃない」

「棚上げは良くないよ、エルヴィーノ後輩君

包帯の巻かれた右手を伸ばす。
その手は、君の背……ではなく、軽く肩を叩いて、
それから身を反転。都合の悪いことブーメランは知らないフリ。

「君とも今度、約束の埋め合わせをしよう」

君の心配を背に受けながら
ひらひらと手を振り、緩慢な足取りで扉の前に。
「あ、しまった」などと呟いているのは、多分気の所為。

両手が不自由ってのは本当に──不便なことだ。
(-359) 2023/09/30(Sat) 22:24:46

【人】 花浅葱 エルヴィーノ

ゆっくり、上がる。
病院の階段を、一歩ずつ。

それはまるで天国へ続く道のようで、あの屋上への扉を開いたら、あなたが居そうで。

ルチアーノと別れ病室に戻された時は満身創痍だった。
絶対安静の人間が、受けるべき点滴を受けずに外に居たのだから、ナースも医者も皆が青い顔をしていたのは仕方のない話だ。
すぐにまた点滴に繋がれ、青白い顔に生気が戻ってくるのにまた数日を要したに違いない。

歩けるようになって、リハビリを始めた。
手先はなんとなく動くようになったけれど、肘を動かそうとすると痛みが響いて動かない。
砕かれた肩はミリも動かせる気がしない。

本当は、ベッドの上にいるのが一番楽だけど、今はすごく屋上に行きたかった。
金色に輝く太陽の下、広がる青い空を見たい。

だって。

寂しいんだ。
心に空いた穴はルチアが埋めてくれるけど、ずたずたになった心臓が今も血を流しているから。

#BelColletto
(98) 2023/09/30(Sat) 23:13:14

【人】 花浅葱 エルヴィーノ

「やっとついた」

白く輝く扉を開いて外に出れば、涼しい風が男の髪を柔らかく揺らした。
ゆっくり、一歩ずつ前に進んで、
柵に手をかけたらもうだめで、ずるずるとその場に膝を折って座り込む。

身体の辛さよりも、今は、心の震えが止まらないのが酷くつらい。

手の中にあるたった一つだけの贈り物を見つめて、

……ぱた。
ぱたり。


静かに雨が頬を伝った。

「……忠犬は、主を待ち続けるものだろう?」

「な……んで、キミが先に、僕を置いていくの」

僕がもっと、あなたの手綱をしっかり握ってたならこんなことにはきっと、ならなかった。
僕がちゃんと、あなたがしている事を知っていたなら、あなたの頬を打ってでもそれを止めていた。
僕が撃たれてなんてなかったら、あなたを助けに行ったのに。

――知らないことは、罪だ。

だからこれは、全部僕のせい


#BelColletto
(99) 2023/09/30(Sat) 23:14:13

【人】 今更、首輪を外されても エルヴィーノ

「……レオ……」


あの日約束したその名を呼ぶ。

「レオ………ッ」

何度も、何度だって、その名を呼ぶ。
天国への道を閉ざす、格子の前で。

「約束、守って……る、だろ」
「なのになんで、応えてくれない……っ」

だけどそこに、あなたは居ないのだ。
今更、その首輪を外されても、僕はもう上手く歩けそうにない。

#BelColletto
(100) 2023/09/30(Sat) 23:15:34

【魂】 今更、首輪を外されても エルヴィーノ

>>_8 >>_9

「そう……だね」

僕は
確かに運がいい

ルチアーノが居なければ、遺品の一つ手に入らなかった。
死体は決して見つからず、最後は行方不明で処理されてしまうかもしれない。
死亡したという事実が知れただけ、僕にとってはきっと幸せなことなのだ。

「うん……。
 きっと間違えたんだ……」

じゃなきゃ、あの真面目な、真っ直ぐな人がこんな事になるわけがない。

心に巣食う自責の念はまだ小さい。
それはこうして抱きしめてくれる腕が、優しい声が食い止めてくれているかのようで、心地いい。
がらがらと心が崩れていく。

僕が。
僕が何も見ず、あなたの声だけ聞いてあなたの傍にある事が、あなたの幸だというのなら。
僕はもう、きっと他の誰かを見ることはない。
信じるものは、ひとつキミだけ。

「ルチア……。ルチア……!
 ごめんね。でも、ルチアが外に出れて、本当によかった……」

だからずっと、強く抱いていて。
僕はもう絶対、その心ごと、キミの傍を離れないから。
(_10) 2023/10/01(Sun) 6:54:49

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

「……心配? 大丈夫、ルチアが良いって言うまでここにいるよ」

入院は思ってたよりも長期間に及んだ。
元々一人暮らしをしていた関係上、関節の損傷という怪我の具合もあったが、加えて動脈をやられていたことと、精神も病んでいると診断されたことが理由として大きかったようだ。
本人は早く退院したかったが、幼馴染が最大限病院を利用しろと言うので素直に従ったらしい。

容態が安定してからは精神的な病気の方が厄介で、男はとにかく眠らないと、病院関係者も頭を悩ませていた。
幼馴染が来てくれた時だけはぐっすり眠れているのも確認されていて、薬が効かないから助かると思われていたに違いない。
また、同期の二人や先輩も時々顔を見せてくれていたから、病院で問題行動を起こす……なんてことは起こらないから、扱いやすいおとなしい患者の一人であったことは間違いない。

ただ。
たったひとつの、行動を除いては――――――――


#VerdeMare
(_11) 2023/10/01(Sun) 19:47:07

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

「ねぇ、ルチア。お願い」

首を噛んでほしい首輪をかけてほしい
そう言い出したのは、首についていた歯型の痕がなくなってしまった日のことだ。
幼馴染には勿論そんな趣味はない。
しないと自分で首を爪で傷つけるから、1・2回はそのお願いを聞いたかもしれないが、その後は犬用の首輪がついた。
病院の方々はさぞ不審がったに違いない。
診察の際に「人間関係を整理しては」と遠回しに幼馴染と別れることを勧めた医師もいたことだろう。
時間が経てばそういう発作みたいな衝動も少なくなってきて、首輪はチョーカーとなり、いつしかネックレスなりアクセサリーを首につけていれば安心できるようになっていた。
けれど最初の時の、あのルチアの悲しそうな顔が忘れられない。
悲しくなって、ごめんねと言って頭を何度も撫でたのを、よく覚えている。

この頃には、いつだったか。
僕が二人目に好きになった人
だったラーラが亡くなっていた。
薬の処方ミスがあったらしい。
不運なことだが、彼女には身よりもいなくて訴える人間も居ない。
あしながおじさんを続けていたけれど、その必要もなくなってしまった。
その知らせを聞いた時はまた精神的に危うくなったけれど、この時もまた、幼馴染が傍についててくれたから無事だった。

#VerdeMare
(_12) 2023/10/01(Sun) 19:48:07

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

月日は巡る。
リハビリを経て職場復帰を果たすころには、約2年の月日が経とうとしていて。
表面上はもう、以前と変わらなぬ笑みを浮かべ仕事に取り掛かることができていた。

だが、内面はどうだっただろうか……?


海風が薫る砂浜でひとり、遠くに輝くシーグリーンキミの瞳を見つめていた。

幼馴染ルチアは、僕を大事にしてくれる。
それはすごく、嬉しいことで、幸せなことだ。
あなたが笑ってくれるから、僕は隣で穏やかであればいい。

でも、時々すごく、寂しくなる。
ルチアは、僕を決して抱いてはくれないし、抱かせてもくれない。
愛してると告げてみても、そうだなと笑うだけ。

別に、いいのに。
僕はもう、キミだけしか見てないのに。
悲しませたくはないから、絶対に気持ちを返してほしいなんて思わないのに。
一度抱き潰された体が疼くから、沈めてほしくて。

#VerdeMare
(_13) 2023/10/01(Sun) 19:50:11

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

だけどそれならと、適当な人の腕をつかもうとしたら怒るから、それはせずに首輪をつけるんだ。
あなたが訪れてくれるのを待つ、忠実な犬のように。

僕は――――

もし死に方を選べるなら、
キミに殺されるのが一番いいよ。ルチア。
キミが我慢できなくなったなら。
キミが死んでしまうその前に。
僕を優しく抱いて殺してね。


指先からこぼれる愛を集めて、全部キミにあげるよ。

僕は最期まで、キミの笑った顔が、見たいから。

#VerdeMare
(_14) 2023/10/01(Sun) 19:50:49

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

「やぁ、はじめまして、おちびさん。
 わぁ、思った通りすごく良いね、毛並みもふわふわだ」

ある日。
腕におちびさんを抱いて、嬉しそうに笑う男が一人。付き添い一人。
医師に動物を飼う事による精神治療と生活改善を更に進めてみてはどうだろうかと勧められたから、ペットを飼うことにしたのだ。
ペットはゴールデンレトリバーの子犬。
大型犬のほうが落ち着いていて気性が優しいから、おすすめ出来ると言われたのもあるが、なんとなく、この子犬に一目惚れをしたのだ。
尻尾を振って甘える仕草が、とても可愛かったから。

「キミのお陰で、部屋も随分変わったよ。
 あ、こっちのお兄さんはルチア。よく家に来る人だから覚えようね」

犬を飼うと決めてから、同期の……特にアリーチェが犬用のグッズを買っては差し入れしてくれる。
今では子犬用のグッズで部屋が彩られ、生活感のなかった寂しい部屋が嘘のように変わっていった。
いつかは庭付きの部屋に引っ越して、外でいつでも遊べるようにしてあげたいとも思っている。

#VerdeMare
(_15) 2023/10/01(Sun) 19:52:11

【魂】 指先からこぼれ落ちたのは エルヴィーノ

「え、名前?」
「勿論決まってるよ。
 ……というより、それしか浮かばなくて」

名前を問われ、子犬に舐められくすぐったそうにしていた顔を上げて、男は頷いた。
抱いた子犬をじっと見つめ、気に入ってくれるかなと頬を緩め。
もったいぶるような間を取って、口を開く。

日に当たればきらきら輝く金の毛並みだから、それは勿論。

「キミの名前は今日から
”レオ”
だよ」

想いに想いを重ねて、僕は今日を生きる。
こぼれ落ちた愛は、全部集まったかな。

忠犬さん。
どうか僕が死ぬ殺されるその日まで、ずっと傍に居てね。

#VerdeMare
(_16) 2023/10/01(Sun) 19:52:58