【人】 書生 シキ>>31 一ツ目覗かす男の声に当てられれば 手に持つ黒赤色の本を胸へと当てる。 万屋の言葉と薬屋の表情に意識を向けつつ ちらりと揺れた視線でユヅルを一瞥すれば それまで重く噤んでいた口を、小さく開く。 「ええ、こんにちは。 ……怖がらすようなことを言うのですね? 心配せずとも、今から跳んで這って 逃げ出すような真似はしませんよ」 掛けられた言葉の意図には、相応の程度を以て。 どこか貴方の親しさに応えるような声色で しかし、未だ釈然としなさげな面持ちのままに。 「あの人、最初に選ばれなかったというだけで あんなに心を乱して、嘆いていらっしゃる。 そういう祭り なのでしょう、これは」神の肉、神の臓。 左方の舞子が嘯くそれは、 はたしてただの言葉遊びか、それとも。 「俺は、『先生』の言い付けでここに来ただけです。 何があっても、許される分は俺の勝手にします」 付け足した言葉は、仄かな苦みを帯びていた。 (40) 2021/07/21(Wed) 16:41:45 |
【人】 書生 シキ>>45 五十鈴 向けられる笑みには、笑みを以て返す。 青年のそれは、ややぎこちなさがあったが。 「俺は、シキです。 成程、そういう関係だったのですね――」 そうして、慰めの言葉を添えようとした刹那。 あなたとモクレンとのやり取りが脳裏を過れば 下手な物言いを添えるのは心情に悪かろうと、言葉を慎む。 「……そうですかね、俺には他所の程度は分かりませんが。 でも『先生』は良い人ですよ、こんな時代に 貧乏家の息子1人の世話を引き受けてくれて 作家としての勉強もさせてくれるんですから」 兎にも角にも、日々妙な目移りを繰り返していた青年も その時だけは、あなたの面立ちをじっと眺めていた。 (47) 2021/07/21(Wed) 20:00:47 |
【秘】 書生 シキ → 左方舞 五十鈴――青年の声は、 囁くような小さきものへと変わる。 「……その。 五十鈴さんは、この島の"祭り"について どういったことを知っているのですか?」 青年は、自身の手首に巻かれたブレスレットを 手にした赤暗色の本と共に小さく揺らす。 「あなたのあの様子に対して、他の大人たちの言い分。 もはや隠し事もすることも無いと来たものだ。 まぁ、"連れて往かれる"というだけで 随分と大袈裟なことをしているとは思いますが やはり物騒な感じは否めないものでしてね」 言わば自分は『巻き込まれた』側の人間なのだ。 その分、この村の祭事に対する疑念は深い。 「俺は『先生』に言われて此処に来ただけなんです。 それが、こんなことになるなんて……」 ――続く言葉は、意図の読めぬ声色に乗せられて。 (-51) 2021/07/21(Wed) 20:53:26 |
【秘】 左方舞 五十鈴 → 書生 シキ「シキ……そっか、なんも知らないで来たんだね。 ……この島はね、神狼様っていう神に守られてるんだ。 神を動かすには対価が必要でしょ? 100年に一度……誰かの命を捧げるんだよ。 別に、100年に満たなくても、いつ何人捧げてもいい。 供物は多い方がいいから。 ……そういう祭りだよ。 僕たちはその、生贄の候補さ」 (-55) 2021/07/21(Wed) 22:07:13 |
【秘】 書生 シキ → 左方舞 五十鈴「…………。」 何も知らない、と謂われれば。 それについては、云とも寸とも取り合わず。 ただ、"思い違っていた"とばかりの焦燥を目に浮かばせる。 大人たちのまま成らぬ言葉遊びを見やる。 一枚岩ではないことをあからさまにする様な応酬。 嗤う沙華の白い顔を、ちらりと一瞥したすれば ようやく、青年は返事を紡いだ。 「知っていたのですね、五十鈴さん。 あなたはそれを知っていて。 "一番"になりたいなどと言っていたのですか?」 真っ赤な林檎飴の、艶やかな色を見つめて 青年は、自身のことなど二の次であるように 浮んだ疑念の端切れを、つらつらと吐き出していく。 「………神の、心臓などと。 あなたは、神を"喰い返そう"とでもいうのか?」 無意味に詰め寄るような物言い。 これまで暗がりの中で曖昧に揺れていた青年が、 初めて、感情的な色で瞳を染めている。 (-68) 2021/07/22(Thu) 17:27:16 |
【人】 書生 シキ「…………。」 己の言葉 を引かれれば。それについては、云とも寸とも取り合わず。 しかし、■■■と小さく言葉を交わしたその後は 一転して、ただただ"思い違っていた"とばかりに 隠しきれぬ疑念で、目を細め凝らすばかり。 そうして小さく息を殺し、 大人たちのまま成らぬ様子を見やる。 嗤う沙華の白い顔をちらりと一瞥する折 これまで暗がりの中で曖昧に揺れていた青年が、 初めて、感情的な色で瞳を染めているのが見て取れただろう。 (61) 2021/07/22(Thu) 17:39:30 |
【秘】 左方舞 五十鈴 → 書生 シキ「察しがいい子はさ、好きだよ、僕。 そ、この島はさ、生贄によって成り立ってるんだよ。 りんご飴みたいなさ、捧げられた心臓の上に成り立ってるんだ。 ……僕はそれを壊すために来た。 できれば一番手で選ばれたかったけど、それはしょうがないね。 早く選ばれてさ、踊って釣り出して……神狼を殺す。 生贄が必要な偽物の平和じゃなくてさ、誰も生贄にならなくていい島にしたい。 ……僕が、本物の”神”になるんだ」 (-73) 2021/07/22(Thu) 18:21:09 |
【秘】 書生 シキ → 左方舞 五十鈴「……っ…」 夜の帳の中で明かされる、神の島の真意。 それを食い下さんとする舞子の思惑。 "大概"だと思えていた自分の疑問の言葉は そのままの意で以て、返事を成される。 この場において、言葉の綾だと高を括れるものなど はじめから何一つ無かったのだと そう真に自覚するには、些か遅きに失していた。 「……あなたのその目的。 村の人間たちが知ったら、 この場の命すら危ういものだ」 かろうじて小さな返事は 自らの秘めたる思惑を隠したままにして。 (-86) 2021/07/22(Thu) 20:35:02 |
シキは、交わされ合う言葉の合間を縫い歩き、暫しその姿を隠すだろう (a6) 2021/07/22(Thu) 20:36:53 |
【秘】 左方舞 五十鈴 → 書生 シキ「でも楽しいと思わない? 僕”達”が、この島を救う正義のヒーローになるんだよ。 うふふ、あはははは! そんな怖がらないでよ。 ホントに生贄要求する神狼の方がずっと怖いでしょ? ……僕は生贄なんていらない。 生贄じゃなくて、りんご飴でみんなを守ってあげる。 美味しいりんご飴くれれば、それでいい。 ね、だから……」 五十鈴は、笑っている。 (-88) 2021/07/22(Thu) 20:41:26 |
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