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【秘】 花信風 トット → 高等部 ラピス「?」 「あれっ ラピスだ! こんにちは!」 くるりと振り向き、持っていたスコップを花壇のふちに置く。 「なんかごようじ……」 手に持つメモを見る。ひとつふたつ、まばたき。 「だね! どしたの?」 (-138) 2022/05/05(Thu) 23:11:27 |
【秘】 司書 エルナト → 花信風 トット「人のために、疲れてでも配ってるんだ。」 「偉いね。」 「良い子だね。」 労いの言葉。 本当ならあんまり血を流したくもないだろうに。 幼いのに偉いな、と思う。 「じゃあ………そうだな………」 「貰えるだけ、貰いたいかも………?」 たくさんある方が嬉しいからさ、と。 そんなお願いをするのは心苦しいのだが。 大丈夫?と首を傾げて問いかけて。 お腹をさすった。 (-141) 2022/05/05(Thu) 23:24:36 |
【秘】 高等部 ラピス → 花信風 トット「………」 こくん。 普段より動き少なく首肯をして、メモを手渡す。 そこにはラピスのものではない文字。 【本日の治療予定者:トット ○日○○時迄に所定の場所へ誘導すること。 手段は一任します】 ラピスに宛てられたものだろう。 それをわざわざ見せに来たことは、 彼女なりの真摯さであったのかもしれない。 (-144) 2022/05/05(Thu) 23:50:59 |
【秘】 花信風 トット → 司書 エルナト「! ぜんぜんいーよお!」 「おへやにもとっておいてるのあるし たくさん」 「その あう えと こっそりまいばんしてるので」 「いまもちょっとはわたせるし」 「はずかしーけど」 「まえばらいかも」 できます!のガッツポーズ。 (-145) 2022/05/06(Fri) 0:06:54 |
【秘】 花信風 トット → 高等部 ラピス手渡されたメモを、首を傾げて受け取る。 黒板にも書かない内緒話である事は察しているけれど、いつもよりぎこちないな、なんて思って。 ──メモの内容を目で追えば、「ぇ」と声を漏らした。 しばらくそのメモを黙って 何度も、何度も読んで。 やっと上げた顔は、……青ざめている。 「ラ」「ラピ ス」 「おれ」 「お れの ばんなの ?」 掠れた声で 決まり切った事を問う。 (-146) 2022/05/06(Fri) 0:12:58 |
【秘】 高等部 ラピス → 花信風 トットもう一度、頷く。 何度読んでも、書いてある文字は変わらない。 今日居なくなるのは、トットなのだと。 いつか来るかもしれないと、薄々は考えていたこと。 青ざめるその顔を、それよりずっと深い青色の瞳が見つめている。 『決まってしまったことです』 無慈悲に、そう伝えるしかできなかった。 (-150) 2022/05/06(Fri) 0:25:48 |
【秘】 司書 エルナト → 花信風 トット「本当に?わぁ、嬉しいなぁ。」 「……?毎晩してるんだ、偉いね。」 何でちょっと言い淀んだんだろう、と思いつつ。 たくさん貰えそうなので嬉しそうに笑う。 良かった、やっぱり、あると安心感が違うから。 非常食があると安心できるのとおんなじ。 「!」 「じゃあ、今ちょっぴりもらってもいい?」 「…こっち、くる?」 恥ずかしいなら、あんまり屋外じゃない方が良いのかな、と。 開けた窓の内側を指さして。 さて、血の花はどんな感じなのだろう。 楽しみだな。 (-154) 2022/05/06(Fri) 0:41:46 |
【秘】 花信風 トット → 高等部 ラピス決まってしまったこと。 その言葉に大きな瞳を揺らして、薄く開いた口から「ぅ」「ぁ」と意味の無い音が漏れる。 「だっ て」「や」 「うん、うん わかっ た 」「おれがいけばいーなら そ、やっ て」 何度も、何度も何度も、自分を納得させるように頷いて。 ここで拒めば迷惑になってしまうから、自分が素直にならなければならないと。 素直にならなければいけないんだけれど。 ──ぐしゃりと、花飾りを掴むように頭を抱える。 「お、おれ」「はっ、」 「 おれたち が」「さけなくなる」 「さけなくなっちゃう」「はな」「が」 ……浅くなっていく呼吸の合間、とぎれとぎれに。 困らせちゃだめなのに、大丈夫なのに、 巡る血がそれは駄目だと頭を揺らす。 「わ わ、かった わかったよ んふ ありがとラピス」 「あは あの いつでもついてく 、 からさ」 (-155) 2022/05/06(Fri) 0:48:00 |
【秘】 高等部 ラピス → 花信風 トット「………」 誰もが、病を治したいと考えているわけではない。 誰もが、治療を受けたいと考えているわけではない。 それはよくわかっていた。 花飾りを掴み頭を抱える様子を見る。 『無理をしなくても大丈夫です』 "あなたたち"にとっては、受け入れ難いことなのだろうから。 子どもらしく、我がままを言ってほしかった。 子どもらしく、弱音を零していてほしかった。 「………」 『花を』 『花のお茶を、飲みましょう』 『森に行く前に』 紙袋でもらった花弁。 一度、仕事をこなすために使った。 まだ余りはあるから、あなたと一緒に飲みたかった。 (-157) 2022/05/06(Fri) 1:11:35 |
【秘】 花信風 トット → 高等部 ラピス「ん」 「んう うん うん……」 息を整えて、整えて。 無理はしなくて大丈夫という言葉がありがたくて。 ──頭から手を離す。ぶらりと降ろした腕の包帯は、朝食の後にまた新しくなっていた。 「……いっしょにのんでくれるの?」 「おれ ラピスといっしょにおちゃのみたい……」 歩み寄って、あなたの袖を引く。 (-186) 2022/05/06(Fri) 11:42:09 |
【秘】 高等部 ラピス → 花信風 トット真新しい包帯が目に止まった。 袖を引くあなたを安心させるように微笑んで、そのまま手を引いて歩き出す。 生徒を"連れて行く"ときには、 ある程度行動に自由が与えられる。 とことこ、小さな足音が向かった先は 誰もいない調理実習用の教室。 鍵で施錠を解いて、その中へ。 「………」 広い教室の中、調理台の一角にトットを座らせると 鍋にミルクを注いで火にかける。 沸くのを待つ間に、花弁を紙製のティーバックに詰めた。 紅茶でミルクティーを作るのと同じ手順。 ▼ (-200) 2022/05/06(Fri) 14:05:24 |
【秘】 高等部 ラピス → 花信風 トット「………」 後はカップに注ぐだけというところで少し考える。 ポケットから小瓶を取り出して、 あなたに見えるように持ち上げた。 入っているのは真っ白な粉末。 一見しただけだと塩や砂糖にしか見えないそれは、 何度も"仕事"で助けられている睡眠薬。 ──使う? 麻酔と同じだ。 眠っている間に運ばれてしまう方が楽なら、そうする。 自分で向かうのなら、やめておく。 その確認を取るために、掠れた息だけであなたに尋ねた。 入れてしまえば、飲み終わる頃には睡魔が意識を奪っていくだろう。 (-201) 2022/05/06(Fri) 14:06:37 |
【秘】 花信風 トット → 司書 エルナト「えらくないよ。だめっていわれてるの」 「でも……がまんできないから それだけ」 いつもは褒められれば素直に喜ぶのに、それだけは違うとハッキリ言った。 自分の身のためにはならないことだから。 自分の身の事は、二の次にしてしまうから。 「でもこーやって、やくにたてるなら、とてもうれしい」 「おれねー おれのはなつかってくれるひとがすき」 こくりと頷いて、窓の内側まで寄って。 腕の包帯を解けば──夥しい数の 傷跡 がそこにあった。ポケットから鞘の付いたナイフを取り出して、刃を鞘から抜いて。 深呼吸して……腕へ振り下ろす。 血は 噴き出さずに。 「う」 「 ぐ 、ふ ぁ……っ、あ」「は」紅はみるみる間に芽吹き、咲かせ。 傷口から花開くのは、デイジーやアスター、ゼラニウム。 「い、ッ……あ、ぁ えへ へ も……ちょっと」「だけ、ぅ」 ▽ (-219) 2022/05/06(Fri) 18:57:47 |
【秘】 花信風 トット → 司書 エルナト自然じゃ見られない速度で育っていく花々はトットの腕を彩り、その分だけトットの身体はびくりと震えた。 かく、と膝に力が入らなくなった。そのまま座り込む。 「んぁ、ふ、ッ、あは、は、…………っあ"、」 ブチリ。 ──勢いに任せて花を引き抜いた。 引き千切ったと言ったほうが正しいかもしれない。 「……………………、おわ、おわり」 「えへ、へ……あは、こ、こんなかんじ」 「さいたよ」 肩で息をしながら、涙の滲む上気した顔で貴方を見上げて花を差し出した。 腕に血はもう流れていなかった。花が咲けばすぐに塞がるようだ。 (-222) 2022/05/06(Fri) 19:00:59 |
【秘】 花信風 トット → 高等部 ラピス手を繋いで先導するあなたの後ろで、鼻をすする音が聞こえたかもしれない。 調理実習室に入れば、素直に座って。 ふつふつとミルクが鍋にかけられて泡が浮かぶのを、ぼうっとした顔で見ていた。 一つ一つの手順を、緩慢に目で追って。 小瓶を見れば。 「……………………」 「うん。おれ、ねむりたい」 「そのほうがいい」 頷いた。 「……しあわせなゆめ みてたほうが」 「おれは こころのじゅんび できるから……」 (-223) 2022/05/06(Fri) 19:14:41 |
トットは、自分の部屋の鍵を掛け忘れたなぁ、とぼんやり思い出した。 (a28) 2022/05/06(Fri) 19:15:05 |
【秘】 高等部 ラピス → 花信風 トット「………」 頷かれれば、淹れたてのお茶に匙ですくって粉を入れ溶かして、片方をトットの前に置いた。 からん、とティースプーンが乾いた音を立てる。 しあわせな夢を見るための片道切符。 怖いことが何もなければいいのにと思う。 いつも元気なその姿が今は見えないのが寂しかった。 どうぞ、と身振りで促して、自分は両手でカップを包むように持つ。 手袋越しにじんわりと温かさが移った。 (-227) 2022/05/06(Fri) 19:42:37 |
【秘】 司書 エルナト → 花信風 トット「我慢できないんだ。」 「……なんでだろう、辛いわけじゃないのかな。」 「気持ちいいとか?」 血を出すという行為は、自分を傷つける行為に等しいもののはず。 なればあまりしたくない、と思うのが道理な気がするが…… 君に手を伸ばして、窓の内側まで招き入れ。 そっと窓を閉めて、カーテンを閉じる。 図書室には誰もいない。 今の図書室は鍵を閉めていて、営業していない状態だったから。 「…っぅ、ゎ」 それから、解かれた包帯の中身を見て。 それそのものでは、目を細めこそすれ声を出すことはなかったのだけれど。 その後の、ナイフを突き立てる行為には。 思わず声を上げ、目を閉じてしまった。 恐る恐る、目を開けて。 「……わぁ……!」 行為と裏腹に奇麗な言葉の花が咲く。 それは何とも奇麗なもので、奇麗すぎて不気味ささえ覚え。 ぶち、と引き抜かれる花弁に、思わず目が釘付けになる。 こんなに奇麗なのに、血なのか。 「……ありがとう、痛くはない?」 零れそうな涙を、指で掬いながら、問いかけて。 掬ったそれを、ぺろりと口の中に運んで ▼ (-232) 2022/05/06(Fri) 19:52:35 |
【秘】 司書 エルナト → 花信風 トットそうして、受け取った花。 しげしげとそれを眺めて。 くぅ、とお腹が鳴いた。 「うん、じゃあ。」 「頂きます。」 貰う側だから、きちんとした敬語で。 ………なんてわけではなく。 それは。 食事の前の、簡易的な祈りの言葉。 ぱくり、とその花を口に運ぶ。 こんなに奇麗な花だけれど、それも血であるのなら。 それは、自分の"食事"の対象に他ならなくて。 今まで、食事の時に噛むなんて行為、してこなかったから。 その新鮮さと、ずっと空腹のお腹が満たされる快感と。 色んなものが混ざって、嬉しくて、気持ち良くて。 「………美味しい………。」 熱っぽく呟いた言葉。 上気した顔は、こちらも同じだった。 「もっと食べられたらいいのに………」 お腹いっぱいまで、食べられたらいいのにな。 (-233) 2022/05/06(Fri) 19:58:08 |
【秘】 花信風 トット → 高等部 ラピス「ありがと」 ティーカップを貰えば、少し微笑んだ。 倣うように両手で持ち上げて、ふう、と息を吹きかける。 空気の揺らぎと小さな波に混じって、花の香りがした。 瞬きをして、そのまま一口。 甘い。 ……もう、後戻りもできない。 コク、コク、とまた飲んで、ほうと吐き出す息さえ温かい。 ……少し思考がぼやけてきた。眠る前に、と。 「ラピス」 「おれ、たぶん……だめになっちゃうとおもう」 「なおったら」 「 おれたちさかなくなったらつかわれなくなっちゃう 」「それがこわいの」 ゆっくり、まばたき。それから、もう一口。 「ラピスは」 「 さかないはなをゆるせる? 」 (-235) 2022/05/06(Fri) 19:59:49 |
【秘】 花信風 トット → 司書 エルナト気持ちいいのかと問われれば、「ん"う」と唸る。 いつも図星を突かれた時に出す声だった。 「いうな……」 恨めしげな目、恨めしげな声。恥ずかしいというのは、これが原因らしく。 確かに、花が育つ時のトットの様子は正に"そう"であるようだった。 熱い息に、潤んだ目。跳ねる肩に蕩けた声。 年齢に相応しくないとも言えるその様子は、過ぎた感覚をトットに与えている証左でもあった。 だから、痛くはなかった。 「んふ」「き、もちい……よ」 「だいじょぶ」「あは」 一度は自分から不服とした事実を、簡単に認めた。 掬われた涙が、咲いた色とりどりの花が貴方の口に運ばれるのを、どこか恍惚としながら眺めて。 ▽ (-239) 2022/05/06(Fri) 20:15:18 |
【秘】 高等部 ラピス → 花信風 トット何度、微睡みに浸かっていく姿と向き合っただろう。 甘さを口の中で転がして、問い掛けに耳を傾ける。 「………」 少年にとっては、咲くことが、 使われることが存在意義なのかもしれない。 静かに黒板をチョークがなぞる。 『咲かない花があっても、良いと思います』 『世の中全てのものに、使い道は必要ないと思います』 花はただ、咲けるときに咲くだけ。 咲かないなら、そういう花だっただけ。 それが自然なことだと少女は思っていた。 使われなくても、誰が見ていなくても、花はそこにあっていい。 そこにあったことを覚えている人がいれば良い。 『私は、許しますよ』 それが答えだった。 (-240) 2022/05/06(Fri) 20:19:09 |
【秘】 花信風 トット → 司書 エルナト美味しい、と。 その言葉で、なにか どこか 今までにないくらい、色んな気持ちが溢れた。 「おいしい」「あは」 「ふ、んふ あはは えへ ああ……」 「おれおいしいっ?おれたちのことたべてくれるのっ?」 「つかってくれる?おれやくにたつ?」 「うれしい」「うれしい!」「おれたち、もっとさきたい」 ……ゆっくり立ち上がる。足が震えるのは、痛いからではなくて。 体に力が入らないから。ぬるま湯に浮いているような感覚だ。 多幸感。 年相応にはしゃぐ姿は、けれどいつもよりどこかおかしい。 「おれ〜 あは とってくるねぇ」 「もっとあげる んふふ」 言うやいなや、ふらりと図書室を出ようとした。 まるで褒められた犬のよう。……無抵抗に、無邪気に、盲目に。トットは 喜んでいる。 (-243) 2022/05/06(Fri) 20:29:58 |
【秘】 司書 エルナト → 花信風 トット「気持ち良いんだ。」 「………へぇ………。」 というのは、少し揶揄いの混じった声と目線。 こんなに小さくても。 そう言うのはあるんだなぁ、と。 くす、くす、笑って。 実際に目の当たりにしたそれは確かに。 実際にしてる行為は違えど、そうであると言ってもいいもので。 その表情を可愛いと思い、汗ばんだ顔を美味しそうと思い。 ただ、幼子が自分を慰める行為を、目前で見ている。 慰めた君が出したものを、口に運ぶ。 美味しくて、美味しくてたまらない。 もっと食べたい、もっと欲しい。 ▼ (-245) 2022/05/06(Fri) 20:36:09 |
【秘】 花信風 トット → 高等部 ラピス「…………、……ふふ」 蕩けていく思考の中。狭くなった視界であなたの文字をなぞって。 「よかったぁ」 「じゃあ、 おれ さけなくなっても」 「まだ さけてても」 「いーんだ」 遠のく意識の中、置いたカップは もう空だ。 「ありがと」 「……らぴす」「これ」 座っていられなくなって、机に伏せた。 おもむろに頭に──花飾りに手を伸ばして、 ぷちり、と 音がした。 「……じつは これも」 「おれ のはな……ヘヘ」 「あげる」 あなたのカップの横に、そっと置いて。 そのままふと、意識を手放した。 幸せそうな顔で寝息を立てている。 (-248) 2022/05/06(Fri) 20:39:40 |
【秘】 司書 エルナト → 花信風 トット「…君の事、全部食べちゃいたいな………」 君の中の、その全部。 部屋に貯めこんでるものも。 全部、全部、全部。 全部が欲しい。そしたらお腹いっぱいになれる。 「君がくれると、とっても助かるんだ………」 恍惚とした顔で、蜂蜜のような声を漏らす。 様子のおかしい君を、その言葉をぼんやりと聞き。 取ってきてくれるんだ、嬉しいな、と。 思って。 「トットくん………大丈夫………?」 ふらりとした足取りに、ほんのわずかに残った理性で手を伸ばし。 叶うなら体を支えるようにして、問いかけた。 大丈夫だというなら、そのまま。 部屋に行かせるだろうけど。 /* 更新時間が近づいてきちゃったので、ふわっと区切ってもらっても大丈夫です! 勿論続けてもらったら喜びます!どちらでも大丈夫なのでお好きなように! (-249) 2022/05/06(Fri) 20:42:09 |
【置】 花信風 トットトットの部屋は、トットが一人で使っていた。 寂しがりやのトットが自分から「一人部屋が良い」と申し出た時は、周りから驚かれた事を覚えている。 トットの部屋にはトットしかいなかったから、閉め忘れた部屋の鍵を掛ける人も居ない。 薄く開いた部屋の扉の隙間から、ひとひら。 それから、開けたままの窓から吹き抜けた風が扉を押して。 花を、 花を、 花を、 花を、 花を、 ゜花を、 花を、 *。 花を。 廊下へと散りばめるように、花を溢した。 部屋の中は行き場のない花に溢れている。 ベッドに、棚に、机に、床に。 遅すぎる花信風が吹く部屋に、今夜トットは帰らない。 (L8) 2022/05/06(Fri) 20:51:47 公開: 2022/05/06(Fri) 20:55:00 |
【秘】 高等部 ラピス → はなわずらいの トット寝息を立てる姿を見て、黙り込む。 最初からそこに声は無かったけれど。 ゆっくり、手袋を外す。 その下にあったのは、所々が青い鉱石で覆われた肌だった。 夜空を映したようなそれは、まるで ラピスラズリ だ。眠りに沈んでいくあなたの頭にそっと、その手を置く。 きっと記憶にも残らないかな、なんて思いながら数度撫でて。 カップの側に置かれた花を指先で拾い上げて、大事に抱える。 大人たちが迎えに来るまで、少女はずっと側にいた。 ありがとう。良い夢が見られるといいね。 ………おやすみ、トット。 (-251) 2022/05/06(Fri) 20:55:26 |
【秘】 はなわずらいの トット → 司書 エルナト「ゎ」 体を支えられて、ハッとしたようにそちらを見る。 少しだけ元に戻ったような様子は、あなたの恍惚とした顔に、耳に残った蜂蜜のような声に、また溶かされて。 「……ん〜ん」「だいじょぶ!」 今度はさっきより確かな歩みで。 「おれ ほんとにうれしいから」「おれいにあげる」 「あは」 風に乗るように、ひらりと開けた扉の隙間からすり抜けた。 ……それから、トットが戻ってくる事はなかった。 少なくとも、今日は。 (-252) 2022/05/06(Fri) 20:59:24 |
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