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【妖】 古城の吸血鬼 ニクス[ 昔、少し弾いていた。 そんな彼に誰かから教わったの?って聞いたの。 彼は曖昧に笑ってばかりだったわ。 この人の悪い癖。 触れられたくないことは誤魔化す人。 ただ今日は悲しそうだから黙っておいたの。 二人してピアノを弾けば気分も少し和らぐかしら。 隣で腰掛けて白鍵を鳴らしたら、 少し驚いた顔をしたけれど拒まれなかった。 そのまま二人で一緒に弾いたわ。 困ったことに楽しかったの。 化物だなんて村のみんなからは恐れられてる人は、 私が思うより普通で、同じ人で、だから ] ($74) 2019/04/14(Sun) 15:18:54 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス ―日記 36頁目― [ このまま続けばいいのに。 そう思うくらいにこの日々は楽しい。 彼は相変わらず朝は眠り続けて 昼も静かに息だけを繰り返して 夜になるといつのまにか傍らにいたわ。 曖昧に笑ってばかりの彼も少しずつ、 いろんな表情を見せてくれるようになった。 彼の知らないことを私は教えて 私の知らないことを彼は教えてくれる。 人と吸血鬼。 そんな垣根を超えても私達は変わらない。 そう思ったから伝えたら彼は悲しい顔をした。 化物は世界から嫌われているから、 神様に祝福されている私達とは違うって ] ($76) 2019/04/14(Sun) 15:19:38 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス[ 堪らなくなったから抱きしめた。 死んだ人みたいに冷たい躰。 息を吸うより簡単に溢れたわ。 私はあなたが大好きだって。 だからそんなあなたが傷つく世界なんて、 私が壊してあげるって。 本当に真剣に思ったから伝えたら 彼は本当に困った顔をしたの。 それでも抱き返してくれた。 ありがとう、って ] ($77) 2019/04/14(Sun) 15:19:58 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス ―日記 55頁目― [ 最近のニクスは機嫌がいい。 彼から踊りに誘ったり、ピアノを弾いたり 夜の庭園を歩いたりしてくれる。 でも、日に日に顔色が悪くなってる。 風にでも吹かれたら消えてしまいそう。 きっと食事をしていないんだと思う。 彼に伝えたわ。 でも、大丈夫だって笑うの。 随分と綺麗に丁寧な笑顔を見せるの。 薔薇の精気を吸っているから平気だって。 嘘だと思った。 だけど否定できなかった。 君と同じ人になりたいなんて そんな事を呟く彼に言えなかった ]* ($85) 2019/04/14(Sun) 16:02:50 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス ―日記 84頁目― [ ごめんなさい。全部、私のせい。 シスターに手紙を書いたの。 どうすればいいって。 返事はまだ来ない。 返事はまた来ない ] ($86) 2019/04/14(Sun) 16:03:23 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス夢、か。 様子を見るに悪夢じゃなくてよかった。 どうせ夢を見るなら優しい夢がいいだろう? [ 夢を見ることすら許されない環境>>$78 彼女から聞いていた村と 彼から少しずつ明らかとされる村の様子では 大きく異なっているように見えた ] 君がまるでそうじゃないといった具合だ。 [ 誰かに想われた子供の証>>$80 彼は違うというのだろうか ] 君達は知り合いだったのか? あの子から聞いていた話と君から知った話、 随分と違うような気がしてしまうけど…… [ 彼の態度は謙遜ではなく本音だろうか>>$81 ] ($95) 2019/04/15(Mon) 1:30:41 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス確かに君とあの子は違う存在だと思う。 君は正しく月のようだよ。 どちらも優しいことには変わりない。 [ 励ますような言葉を向けたのは何故だろう。 落ち込んでいるように感じてしまった。 負い目を得ているようにも思えたからだ。 中途半端な微温湯を与えてどうするのだろう。 彼の答え>>$82を耳にして落胆の色は隠せないが ] 待つことには慣れてるんだ。 大丈夫だよ。 俺にはその可能性があるだけで随分…… [ 救われているから。 人に殺される事で贖罪となるかだなんて 男にとっても最早分からない。 唯の自己満足に彼を付き合わせている。 そんな自覚だってあった ] ($96) 2019/04/15(Mon) 1:31:07 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス……そうかい? こう見えても慣れているから、 口にしたいものがあればいつでも願って。 それから此処にある果物も食物も、 君の好きに持っていっても構わないよ。 [ 日常を思わせる会話は眩しい程に人らしい対話であった ] ($97) 2019/04/15(Mon) 1:31:35 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス[ だが、続く彼の言葉>>$84は、 化物を化物として突き落とす尤も簡単な台詞だった ] ……そうだね。摂らなくてはならない。 君が来る前に訪れた少女からも 随分と得ていなかったから。 俺は薔薇の精気だけで生きられる程 人のように愛を知った生き物ではないから。 [ 冗談、だったのか、どうか>>$90 砂の城のように溢れる音色に儚さを感じ 自然に笑う少年に何とも言えない顔をする。 泣くのを我慢する子供とよく似た表情だった ] ($99) 2019/04/15(Mon) 1:32:29 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス[ その表情>>$91は彼の境遇を知り、 より深く眉を下げさせる一因となった。 彼は、要らない子として訪れたのだという。 淡々と述べられる言葉に男は唇を引き結び>>$92 事実だとばかりに言い切れた彼の過去に憐憫を感じた。 だからとても、気にしないなんて、 この男には出来なかったのだ>>$93 彼は確かに彼女と違う。 彼女は運命に翻弄されたが神に愛されていた。 その彼女の息の根を手折ったのは他ならぬ怪物だ。 彼女に何の罪もなかったのだ ] ($100) 2019/04/15(Mon) 1:32:47 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス[ しかし彼にも何の罪もない。 眸の色や髪の色が物珍しい。 ただそれだけで過酷な日々を送ってきたのだろう。 それこそ男が目を背けたくなる事も 彼が息をする為には必要だったのかもしれない。 だが、それだから良いと言い切れないのは何故か ] そんなもの、答えでも何でもない。 この世に生まれて不要な命など、ない。 ……俺、は。 [ 答えられない。 顔を背けて目を閉じて口を噤もうとした。 しかし、それよりも早く彼が問うた>>$94 ] ($101) 2019/04/15(Mon) 1:33:03 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス大切、大切な、もの? セレン。 そんなもの、怪物には……。 [ ないんだろうか。 今も尚たった一人の少女の死を引き摺り 彼女と同じ名を持つ少年に運命を押し付け 彼の境遇を知って尚、死にたい想いに囚われている。 そんな身勝手な男にとっての大切なもの。 男は、何故、人の真似事をしたのだろう。 考えて、考えて、考えて、 それから困ったように笑ってしまった。 自身のどうしようもなさに胸が焦げ焼けてしまいそうだった。 いいや、灼かれてしまえばよかったのだ ] ($102) 2019/04/15(Mon) 1:33:23 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス同じに、なりたかったんだよ。 [ ぽつりと、独白めいた呟き。 まるで懺悔室で囁くように男は指同士を絡めた ] 君達と同じように、人のように。 [ 視線は落ちる。水の底に沈むように ] ($103) 2019/04/15(Mon) 1:33:48 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス…………生きたかった、のだろうね。 私は私の中の化物を殺して、それから ……きっと、同じになって死んで、 そばに、いたかったんだ。 [ 自嘲気味に笑う男は彼にどう映るのだろう。 どうしようもない顔をしている。 だから男は自分の表情を隠すように また一つ、一つ、笑みを浮かべた ]** ($104) 2019/04/15(Mon) 1:34:07 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス[ 悪夢への問い>>$105に対しては 忘れたよと嘘ばかりを重ねる。 少年の諦観>>$106に男はいよいよ同情したが、 それをどうしてやればいいか分からず ] これまでとこれからは違うだろう。 [ 彼にとって慰めとなるのかならぬのか 分からない台詞を口にした。 先程から彼は彼女と比較するような物言いばかり>>$107 ] 誰だって自分勝手だ。 だから君が選んだ答えが未来を閉ざすものではない限り、 俺に君を責める権利はないよ。 気にかけてくれるのは嬉しいけどね。 [ 彼の言葉>>$108を知らぬふりする。 しかし隣に腰掛ける彼の白い首筋に>>$110 こくりと喉奥が嚥下させてしまった ] ($116) 2019/04/15(Mon) 12:27:00 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス君の言う通りだよ。 あの子にだって言われたんだ。 何であっても構わないって。 だからこれは俺のエゴなんだろう。 [ 人であり続けたいなんて、 別に誰にもそうであれと願われた訳でもない。 ただ、木漏れ日の元に生きることを許された人間に この男が情景を抱いてしまっていただけだ ] ($117) 2019/04/15(Mon) 12:27:25 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクスセレン。 俺は君を生贄にしたくない。 [ 頑張ると告げた彼に対して>>$112 この言葉はどのように響くのだろう。 彼の胸中>>$113を知れたのなら 何か変わったのだろうか、どうだろうか。 献身的な少年の指>>$115に双眸を眇めた ] 君の前でも人でありたいの望むのは、 強欲なんだろうか、傲慢なんだろうか。 それとも怠惰なんだろうか。 愚かである事に変わりはないんだろう。 今までだって、二度過ちは繰り返さないと 食事をする事だってあったのだから 今更なんだ。そんな事は、分かっている。 自分が飢えてしまえばどうなるかも、痛い程。 [ 淡々と落ちる声は小さく、 困ったように笑みは消えないまま ] ($118) 2019/04/15(Mon) 12:27:45 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクスセレン。 どうすれば正解なのだろうね。 ……困った事に、いつだって、渇いてる。 喉が張り付く程に。 それでもそれよりも心が痛いんだ。 [ 心などないはずの化物だと自負しながら囁いて。 白い柔肌から視線を逸らすように白鍵を見つめた ]** ($119) 2019/04/15(Mon) 12:28:03 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス[ 引導を渡せと強請る癖、 彼に人並みの幸福をと願う矛盾>>$120を自覚する。 化物ならば殺めても罪悪感など抱かないと 男は頭の先から足の爪先まで思っていた ] 責めたりなどしない。 残念には、思うけれどね。 [ 彼が結果としてその首を撥ねたり 心臓を打つ事が出来なくとも>>$121 男はきっとこれまで通り日々を殺す ] 君にとっての初めてか。 セレン。 君は君や世界が思うよりおかしくないのにね。 [ 人とは異なる感覚を持つのは化物らしさ故か。 彼の境遇>>$121にますます不憫に思えて ] ($128) 2019/04/15(Mon) 22:50:53 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクスセレン。 そんな時は無理に笑わなくていいんだよ。 君にだって泣きたい夜くらいあるだろう? [ 気休めにも似た台詞を口にした ] ($129) 2019/04/15(Mon) 22:51:27 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス人間と同じだろうか。 人の血を糧に生きるしかない俺なんて。 世界に憎まれているとしか。 だが、どうして君が悲しいんだろう。 [ 生贄としての価値>>$123 それが男にとってどれ程のものか判らず また霞み行き消える問いかけに対しても 男は疑問にすら思えなかった ] ($130) 2019/04/15(Mon) 22:52:26 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス[ 正解なんて分からなかった>>$124 相変わらず笑ってばかりの男の背に手が伸ばされた。 男の眸は見開かれ、彼の言葉>>$125に時が止まる。 一瞬だけ。ほんの一瞬だけ。 男は薔薇の棘に刺されたような痛みを得て 血色の双眸を揺らめかせた ] ……ありがとう。 それなら、安心だ。 君なら……任せられる。 でも、あまり優しくしないで。 ……そんな価値なんてないんだ。 [ 男がたった一言返せた台詞だ。 我慢出来る時>>$126など考えたくもない。 だが、その時こそが決別の日なのだと考えた ] ($131) 2019/04/15(Mon) 22:54:18 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクス[ 知りたいこと>>$127 彼に問われて初めて男は彼について 知らなさすぎていることに気付いた。 初めて出会った時、彼は様々な芸当を磨いていたという。 しかしこれまでの話から不当な扱いを 受けていたように思えた ] 君に尋ねたいこと、は色々ある。 思えば俺は君がいくつかも知らないし、 好きな食べ物や、嫌いな食べ物も耳にしていない。 俺の事を知れと言うくせに 君の事を知らないのは不平等だし 俺自身も君の事を知りたいとは思う。 [ 言葉を区切ってそれから視線を戻した ] ($132) 2019/04/15(Mon) 22:54:33 |
【妖】 古城の吸血鬼 ニクスそれから、君にとって言いにくい事かもしれない。 でも、君は君が過ごしてきた村の事を どのように思っているんだ? ……君はいつも諦めたように笑うから。 だから、気になっている。 君がこれまでどのような生きてきたのか それを俺は知りたいと思う。 [ 男は同じように彼の背に手を伸ばして 結局その手は彼の長い前髪にそっと触れる ] 君の見てきた世界を聴いてみたい。 どんな言葉であってもいいから。 [ 真っ直ぐに彼の眸を見つめれば首を傾げて 促すように口許は弧を描いた ]* ($133) 2019/04/15(Mon) 22:55:59 |
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