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【秘】 雷鳴 バット → ライアー イシュカ声を掛けられなかった理由は相手の様子が途方もなく落ち込みきっていること、 自身の事情なども含めて様々にあった。 ただ、それっていうのはそこで諦めきったわけではなく、 その後も頭の端には、知己の人間の異変を記憶しておいてはあったのだろう。 以前よりもぎこちなく飼育小屋の辺りに足を運ぶ。 はじめは遠巻きな様子であったが、その中に貴方を見つけて。 「……大丈夫?」「元気、ないように見える」 「昨日、食堂にいなかったって」「噂されてるの、聞いた」 居なくなったのは同じ。おそらくは互いの様子というのは聞かされていないだろうし。 改めてそうした状況にあったと聞いたのは遅れてから。 声が届くくらいの距離まで、おそるおそるといった様子で近づいてくる。 (-95) 2022/05/05(Thu) 17:18:51 |
【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクスまだ食堂では互いの心配をするものがあり、 消えたものの安否を確認しあって相談している頃。 朝の授業が始まるまでには、また時間がありそうだ。 青年の姿は貴方が探した内、貴方が彼に教えた一室の中にあった。 食べ物の匂いがする、というには香ばしい香りは薄く。 ある程度食べきった様子ではあるものの、ほとんど無傷のパンやトマトが残っている。 扉の開いた先に顔を向けて、やっぱり隠すように食事の前にさりげなく腕を伸ばした。 入ってきたのが貴方だとわかれば、少しは安堵が混じるけれども。 「……ごめん」「長く、使い過ぎていた?」 「なるべく早く」「片付けるから」 (-99) 2022/05/05(Thu) 17:56:45 |
【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット「ぁ……お、おはようございます」 ぞく、と背筋か震える。 いっしゅんの背徳感のようなものが走りつつ、 君の口元を拭えば、もうその声は震えていなかった。 「大変な目に遭いましたね。 先生たちにおこられでもしていましたか〜。 こんな風に捕まっちゃって、森にばっか行ってるからですよ」 ベッドに体重をかけ、体を寄せ。 なれない手つきで、もう片方の手で手錠を外しにかかった。 薬が効いていたその姿をみやれば、また小さく深呼吸をして。 人のをはずしてやるのは、なかったな。 「ねぇバット君、……大人のかたがいっていました。 ミゲルとは君の名前ですか?」 (-106) 2022/05/05(Thu) 18:33:34 |
【秘】 神経質 フィウクス → 雷鳴 バットドアノブが回れば遠慮も無く部屋へ立ち入って、 閉じたドアに背を預けるように凭れ掛かった。 余計な気を回す義理はない。 内鍵は掛かっていなかったし、入るなとも言われなかったから。 「別に。少し聞きたい事があっただけだ」 だから椅子を引く必要はない。立ち話で構わない。 謝罪と気兼ねする言葉には素っ気ない返事だけ。 「お前が長く入り浸るほど気に入ったなら、 この部屋も、あのお節介も浮かばれるだろうな。 ……こうして隠せている間は良いだろうが、 医者や他の大人達に嫌になるほど言われた事だろうが。 いつまでもずっと、隠し通せるものじゃないだろ。」 「……お前は、…」 どうするつもりなんだ、と問い掛けようとして。 あなたはどうにも意思決定が苦手なふしがある事から、 ほんの少し押し黙って、言葉を選ぶような間。 「隠す以外のやり方は見付けられたのか?」 (-109) 2022/05/05(Thu) 19:27:19 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ声を聞いて、次第に光に目が慣れて。 ここがどこで、目の前にいるのが誰であるかを理解した。 ぱちぱちと目を瞬いて、枷が外れていくのを目で追っている。 まだぼんやりしたままの意識で身を起こし、記憶をたぐるように天井を見た。 「おは」「よう」 大人との対話を終えてから、おそらく部屋へ連れてこられたのだろう。 それ以外にとびきり変わったことというのはないように見える。 腹の音が鳴って思わず手で押さえて、朝なんだなとか考えて。 「……」 「そう」「でも」「みんながバットって呼ぶから」 「それでいいやって」「いうことにしてる」 (-123) 2022/05/05(Thu) 21:45:14 |
【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクスしばらくは、まるで怒られる前のこどものように顔色を伺っていた。 よくよく腕の後ろに隠されたものを見てみれば、 塊のハムやベーコン、焼いた肉や保存食がほとんど。 おまけのように、一口ちぎっただけのパンと、プレパラートほどの切片を除かれたトマトがあるだけ。 偏食の生まれやすい子供時代と言ったって、程度の問題はあるだろう。 それら、或いは部屋の使い方に関することではないとわかると、 そろそろと腕を下ろして貴方のほうへ身体を向けた。 「……」「フィウクスも誰かに」「ああして、貸してもらった?」 「僕もこの部屋は」「助かってる」「数日だけど」 それから問われたことについて暫し考えた。 相手が何について問い、慮っているのか。 自身のどこに、他者に気を持たせてしまうことがあるのか。 ちら、と食事のほうに目を向けて、相手の求める答えを頭の中で組み立てる。 「人に」「……」「バレたら」 「いやな目で見られるから」「隠したほうがいいって」 「怒られること」「しなくて済むものは」「そのうち、もらえるらしい」 治療の効果は目覚ましいものではないというのは、 大人に連れられていく前と行動が大きく変わったわけではないことからわかること。 それでも、何もされずに放逐されたというわけではないのだろう。 根本的な解決にはなっていない、一時しのぎのものでしかないようだが。 心配いらない、というふうに言いたいような節はあるようだった。 (-126) 2022/05/05(Thu) 21:55:59 |
【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット「君の名前じゃないですか、そんなにきれいで」 「……呼ばれたい方で呼びます」 ベッドに腰を掛けて見おろしつつ、一息。 枷が完全に外れた君を見つめ、頭を優しく撫で続ける。 「もう少し、眠っていても良いですよ。 授業を休んでも今日は文句言わせません。 ご飯は食べられるだけで……ああ、何か欲しいものはありませんか? 朝食だけは顔をだしに行きますが、実はおやすみ取ってるんです。 嫌といっても付き合えますよ」 (-127) 2022/05/05(Thu) 22:16:37 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキどことなく、自分の話であるのに、そうでないように。 遠いもののように名前について聞きながら。少し、首を傾げさえした。 青年にとっては、他人が選んで呼んでいた名前だ。 身体を起こして窓の日をまぶしいように見る目は、細く月の色をして。 「……だいじょうぶ」「悪い目にあった、わけじゃない」 「色々検査し直して」「わかったことがあるのだって」 枷を嵌められて身体を窮屈にしていたのだから、少しは身体も固まっている。 撫でる手から離れすぎないようにはしつつ関節を軽く動かして、 どこも痛くないな、なんていうのを確かめた。 優しい声を聞きながら、自分の意識との差異に気づく。 どうしてこんなにも、貴方は痛ましそうな顔をしているのだろう。 「……ツキは」「大人が生徒を連れていくの」 「あまりよいことと、おもってない?」 (-142) 2022/05/05(Thu) 23:25:54 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス時間は夕に差し掛かり、授業を終えた子どもたちが寮へ散開する頃。 人によっては己の趣味に没頭したり、最近の変化に対して動きのある頃。 貴方もまた、自身の"やるべきこと"に備えている頃かもしれない。 こんこんと、ノックをしてから部屋の扉に手紙を挟む。 手紙の内容は『大丈夫?』という簡素なもので、宛名も名乗りも無かった。 ただ、世辞にも綺麗と言えない字の綴り方だけで、貴方には誰のものだかわかるかもしれない。 ひょっとしたらすぐに返事は帰ってくるかもしれないし、 或いは貴方がその日の"仕事"を終えたあとになるのかもしれない。 扉の向こうに貴方がいないのだとしても、青年は少し待ったら扉の傍から離れて、 再度貴方からの応答があるまで、どこかしらで待つことだろう。 (-143) 2022/05/05(Thu) 23:41:37 |
【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バット部屋の住人は青年が扉を叩く頃に丁度居合わせていた。 つつがなく仕事を終えたからだろうか。 「?」 ドアに挟まった手紙の内容に目を通す。 といっても、中身はとても簡潔に済まされた文字だけだった。 よく共に勉強をしていたおかげか、 手紙の主が誰かはすぐに気づくことができただろう。 何か書くよりも、扉を開ける方が話が早い。 ドアノブが捻られて、少女が顔を覗かせた。 少なくとも体調が悪そうには見えない。 用件を尋ねるように首を少し傾げる。 (-148) 2022/05/06(Fri) 0:20:37 |
【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット「……私は、わかりません。 連れて行かれたことがないので。 暗い顔で帰ってくる子も、普段とは違う姿の子も居ました。 あまり、よいこととは、思っていません。 ただ、よいことであれと信じています」 沢山の意見を聞いたわけではない、幾つかの偏見。 よかったと笑顔で帰ってきた生徒達を知らないだけ。 「現に今だって、 君が拘束されていたことのどこが良いことなんですか。 ない方が良いに、決まって……」 わからない。 「私は、君が過ごしたいように過ごしている姿が一番見たいと思っているんです。 君には沢山のよかった、と、心地がいいを感じて欲しい。 私だけいつも気遣って貰って、君の為になることが何一つわからないんです。私に何か出来ることはないんですか……」 やらなくちゃ、いけないことと、 やりたいことが混ざってわからなくなる。 「私になにか、させてください」 不安定なまま、君に縋ってしまう。 一秒一秒、"先生"になりたい時間が延びていく。 (-149) 2022/05/06(Fri) 0:25:15 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス扉の前で暫し腕を組んで立ち尽くしている様子は、 けれども変わった人間として捉えられているのだろういつもどおりの青年からすれば、 特別変わったこととは見られなかったはずで。 つまり、目撃するものがあったとしてもそれを別の事項と紐付けられることはなかっただろう。 閉じていた目を開けて、貴方の方を向く。 変わった様子はないようだから、少しほっとしたように体の力が抜けた。 口を開きかけて、しばし。あちこちに目をやって。 「歩こうか?」 行き先は寮の建物よりかは外、特にどこと定めているわけではないけれど。 誰にでも聞かれていい話では、ないだろうから。 (-156) 2022/05/06(Fri) 0:59:43 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ朝、姿を見せない子どもたちのことは神隠しであると聞いている。 それだけ口止めは厳重なものであるから、団結した反発もないのだろう。 ただ、そう。青年が口止めをどれだけ受けたのか、 そもそもそれまでの事象と自分のことがどれだけ結びついているかは、疑問だった。 少し困ったような、動揺したような。 わずかに丸くなった目が、貴方を見下ろしている。 「僕は」「……」 「ツキには」「僕が、不幸に見えている?」 きっとかれが自分のことを慮ってくれているのだということは、 十二分に伝わっているのだ。ただ、それがどうしてなのかがわからない。 ぼんやりとした頭の中で、その輪郭がつかめない。 「僕は、困ってる?」「人と違うから?」 「ツキには、僕にはなにか」「足りてないように、見えるのかな」 手を伸ばす。すぐそこにある頭を腕の中に収めてしまった。 どうすれば貴方の抱いている不安を軽減できるのか、わからない。 だから、小等部の子どもたちにそうするように、同じことをなぞった。 「ツキが僕を見て苦しいなら」「それは僕だけのせいじゃないと思う」 「ツキは、何が苦しい?」 (-158) 2022/05/06(Fri) 1:15:41 |
【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バットここ暫く、前よりも遠巻きに周囲と接しているところを見ていたから、心配する気持ちがあったのは少女も同じで。 久し振りに近くに感じる青年の姿に、安堵する気持ちがあった。 受け取った手紙を自分の言葉代わりに掲げて、『大丈夫?』と同じように尋ねる。 あちこちに視線を巡らせるのを見て、 気を遣ってくれているのだろうなと少し嬉しくなる。 後ろ暗い役目を背負ってしまったものだから。 「!」 提案に頷きを返して、部屋を出る。 いつも持ち運んでいる黒板を肩から提げて、 歩き出す青年にちょこちょことついて外に向かうのだった。 (-159) 2022/05/06(Fri) 1:26:52 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス廊下から外へと出でて外を歩く。夜気はほんのりと冷えている。 向かう先は森の方――……ではなく、寮の後ろ側に回ったところの草木の茂み。 森には繋がらず、建物間を仕切るようにある人工林。 少なくとも話し声は緑に吸われて、外へは通らない。 「大丈夫?」「ええと」 じゅうぶんに人の耳からは離れただろうところまで行って改めて問い直す。 けれども少し考えてから、その内容が伝わらないことに気づいた。 どう説明すべきか。それを頭の中でなぞっている内に、 あまり良くない姿を見せた――青年はそう思っている――ことを思い出す。 先導する足が遅れて、少しばかりうつむきがちになった。 「森へ連れてってしまった」「だから、なにか」 「疑いを持たれたりしたんじゃないかなって」 (-161) 2022/05/06(Fri) 1:50:53 |
【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バット『何もありませんでしたよ』 何も、疑われることはなかった。 あなたが庇ってくれたことも理由の一つだし、 森に居ても"不自然ではない"生徒だから。 少なくとも、青年が見かける範囲で少女の扱いが何か悪くなったような兆候は見当たらない筈だ。 同じように、少女の中で青年の扱いが何か変わることもなかった。 それは充分に真実を理解していないからであるかもしれないのだけれど。 『バットくんは』 『バットくんではなかったのですね』 あの森での出来事。 その時に聞いたもう一つの名前のことを指しているらしい。 ただの確認以上の意味は込められていない言葉。 つられて歩みが遅くなる。 風に合わせて、草木の枝葉が微かに揺れるのを眺めた。 (-166) 2022/05/06(Fri) 2:50:16 |
【秘】 神経質 フィウクス → 雷鳴 バット腕の向こう、随分と偏った食事の品目と。 それから、怖じ怖じと顔色を窺う子どものような様子を。 それぞれを一瞥して、けれどそれだけだった。 食事の内容については大人達の指導すべき事であって、 教育実習生ならまだしも、自分が関与するものではない。 であればやっぱり、自分が口煩く言う義理は無い。 フィウクスはジャステシアや他の高等部の生徒のように、 誰かの面倒を見るだとか、そういった事は殆どしない。 自分はそうされるのは好かないし、それができる人間でもない。 「……アオツキが。 俺は頼んでもないのに自由に使えと寄越して来た 正直持て余してるんだ。 お前が時々使うくらいがちょうどいいんじゃないか」 その後にこの部屋を貸し与えた人物を問われれば、 やはり返答はどこか突き放すような、素っ気ないものだった。 こうして現に有効活用されている事を思えば、 自分は一度くらい件の人物に礼でも言うべきなのだろうが。 (-168) 2022/05/06(Fri) 3:49:28 |
【秘】 神経質 フィウクス → 雷鳴 バットそれから。 「……そうか」 あなたの答えへの返事は、ごく短いものだった。 回りくどく、そして根本的な解決には至らない。 そんな治療なのだろうと薄々察してはいた。 こうしてあなたがここに居る時点で、 それは病と直接的に関連するものではないか、或いは。 即座に病状が大きく和らげられるような治療は行われていないか。 答えが概ね二択となるのは明白だった。 「お前は。」 「抱えた傷や病を治して外へ出たいのか、それとも。 何処であっても、嫌な目で見られる事を、怒られる事を しなくて済むならそれで良いのか。」 「 お前はどうなりたいんだ ?」わからないのであればわからないでもいい。 この場に於いてはそれも一つの答えだろう。 ふとした問いへの答えを受け取れば、 ドアから背を離し、踵を返して部屋を後にするつもりでいる。 (-169) 2022/05/06(Fri) 3:50:41 |
【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット「 『不幸に思えてます 私には』 」違う、本当は不幸がわからない。 だけど、ほんの小さな幸福だけを知っている。 「君が」「幸せでないように、見えてる」 ――それは俺だけのせいじゃないと思う。 深呼吸をしろ。繕えない、先生でなければいけないのに。 「 『よかった、だとか 嬉しい、だとか 」欲しい、だとか 未来に願うことを 君から聞けないことが苦しい』 (-178) 2022/05/06(Fri) 7:53:12 |
【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット「 『普通を与えることが幸せだ』 「 『普通を経験できないのは幸せじゃない』 「 『他人とその普通が違うのなら、 その人にとっての普通をさせてあげたい』 「 『君の幸せな姿が見たい』 「 『君が笑っている姿が見たい』 「 『表情が変わらないとわかりませんよ』 「 『言葉にしないと伝わりません』 「 『だから教えて下さい』 ――『クロツキがして欲しい事を教えてください』 それは、過去にクロツキという人間が告げられた言葉。 頭から離れない、大切な言葉。 どうして、声も顔も同じように出来ないのだろう。 言葉を真似をしただけで、その人のようになれないのか。 男は信じたくなかった、彼のようになれないことを。 (-179) 2022/05/06(Fri) 8:12:51 |
【秘】 月鏡 アオツキ → 雷鳴 バット「ちがう、うまくやれる。 聞かなくたって、できる、どうやって?」 「 『君を幸せに出来ないままで、私は先生になれないですよ』 誰かの言葉を引用して、うわごとのように呟いて。 その胸に納まりながら、ふいに体の力を全て抜きもたれかかる。 しがみついている手が弱くなって、まるで人形になったよう。 先生になれる時間が、切れてしまった。 「苦しい、君を幸せにする方法がわからなくて」 「本当に幸せ、だったときがあった。あおは僕を幸せに出来た」 「あおなら君を助けられた。 ここにいるのが、ぼくだから私は、君を喜ばせられないのか、と、苦しい。 私が、僕が? いるから、ごめんなさい。 先生じゃない、あおじゃない僕は、嫌だ。 誰も助けられないから、嫌だ。 早く戻るから、――あおがしてくれたこと、全部、ちゃんとやるから」 そこで震えていたのは小さく聞き取りずらい声を出す、何かを模倣するだけの子。 言われたとおりにだけしか動けない愚かな生徒だった。 ここに居て良いのは僕じゃない。 居るべきだった、彼にならなくちゃ。 生徒を笑顔に出来るのは彼しかいないのだから。 彼が救いたい生徒を傷つけるなど、あってはならないのだ。 (-180) 2022/05/06(Fri) 8:28:39 |
【秘】 ライアー イシュカ → 雷鳴 バット「…… あるように……いや、……ああ。 "治療"されて、元気なままのやつなんかいるのか? って言うか、お前もいなかったらしいじゃん。 そんな高待遇で済んだのかね」 やや遠巻きに恐れが滲んで聞こえた声に、 一度だけ振り返ってまた見つめていた兎に視線を戻す。 皮肉めいてるが高待遇を信じている声ではない。 そう言う話も稀に聞いたことがある。 自分がその手のに当たらなかった為全くもって腹立たしいが。 「……お前さあ。……んん、……何て言うかな…… ……病気が変化した感じ、具体的に何かあるか?」 (-197) 2022/05/06(Fri) 13:31:54 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス「そうか」 貴方があの場所、あの時の立会人だと知らない青年は、 ただただ貴方になんらかの疑いが及ばなかったことに安堵した。 教員棟から出ることの叶わなかった一日、 それからもう一日を経て周りの変化を目にして、やっと安心したのかもしれない。 「バット、であってる。ただ、そうじゃない呼び方をする人もいる。 人によって違う、のかな。わからない。家族は、バットって呼んだ」 日の落ちるごとに青年の動きはしっかりとしてきて、言葉も明瞭になる。 まるで陽光に押さえつけられていたかのように、背筋は真っ直ぐに伸びる。 鬱蒼と茂る木々は森ほどではないが、周りの光を遮って。 下生えの長いところまで足を進めると、木の根元に腰掛けた。 「先生の中には、そう呼ぶのを咎める人もいる、みたい」 (-225) 2022/05/06(Fri) 19:27:13 |
【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクスしんと静まりかえった伽藍堂の部屋の中を見回す。 一人で過ごすのがどうにも寂しく、一人のうちにも何度か見渡した景色。 そこにあるものは決して賑賑しいものではなく、……ただ、そこにある優しさに、 与えたものの名前を聞いて合点がいったようにうなずきもした。 「ここは、落ち着く」「フィウクスの時間を奪ってたら」 「申し訳ない……けど」「僕はひとりでもそうでなくても」 「フィウクスは、僕が黙ってても」「怪訝に思わないから、いい」 文節のつながりのふんわりとした言葉は要するに、 自分がこうして使うことを肯定されるのと同じく、 貴方のまだ見ぬ部屋の使い方がなんであれ、肯定するつもりだという意思表示。 逆はどんな気持ちが抱かれているのだとしても、 青年の方はこうして優しさを橋渡しされることについて悪い気はしていなかった。 「大人は」「ゆっくりこれから」 「おまえに合った解決法を探そう、と」 果たしてここにいる子どもたちがどんな病を抱えているのかはわからない。 大人たちだってその善性の程度は様々で、悪意を隠しきれないものもいる。 ただ、青年は誰かのように、帰ってきてすぐに怯えを抱くこともなく。 自分が子どもたちにどう思われるようになったかを気にする素振りが増えた以外は、 以前と様子が変わったようでは、なかった。 「僕は……」 「フィウクスやみなと一緒に」「ご飯が食べられるような」 「ちゃんとした身体がほしい」 → (-228) 2022/05/06(Fri) 19:42:42 |
【秘】 雷鳴 バット → 神経質 フィウクス青年は自分がどんな瑕疵を抱えているのか、適切に他者に伝えたことがない。 理由は彼の学力の低さもある。周りに比べると、追いつけていないフシがあった。 周りの助けや努力もあって深刻な落ち込みを見せているわけではないが、 それでも同年代の子供に比べると、"しようのないもの"なのは確かだった。 だからそれというのはいつでも的外れで、貴方の状態をしっかり捉えてないこともあるだろう。 「フィウクスは?」 「フィウクスは、どうなりたい?」 それでもまっすぐ、青年の目は貴方へと向けられる。 貴方がこうして他者に向けた気の回しがきまぐれであったとしても、 与えられたものは、あったのだ。 それを受け止め見上げる人間が、こうして己から返るものを少し意識しただけの。 ほんのささいな、幼い善意や厚意であるのかもしれない、小さな問いかけだ。 (-229) 2022/05/06(Fri) 19:42:55 |
【秘】 雷鳴 バット → ライアー イシュカ「……」 「なにか、よくないこと」「されたの?」 青年の目は少しの驚きを湛えていた。光の薄い目が小さく丸められる。 その実、貴方やこの飼育小屋に対して遠巻きにしていたのは別の理由だったから。 おそるおそる、もう一歩、二歩。腕を伸ばせば届く距離。 それに合わせてがたがたと、飼育小屋の中の動物たちがざわめいた。 一匹欠けた兎小屋の獣たちは、手の届かない方へと壁を作るように追いやられた。 「わからない」「ただ、これからは」 「僕にあった解決法を探す、って」 「今までは、そうじゃなかった」「みたいだった」 たとえその扱いは理不尽に見えるものだったとしても、 例えばかつての子どもたちのように苦しめられたりということは、 青年から見ればなかったのかもしれない、ただ。 実習生へは、青年は学力の遅れや社会行動性の未発達、 いわゆる精神遅滞のきらいがあることを伝えられていた。 実際に青年に行われたことが客観的に見て妥当性のあるものかどうかは、 一面的な意見だけでははかれないものだろう。 「……」 「イシュカは?」 口籠る。貴方が自分と同じように感じていないのは、明らかだったから。 (-231) 2022/05/06(Fri) 19:49:11 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキ「……ツキは……」 頭を撫でる手に手を添え、指を絡めて膝の上へ下ろす。 心の中を吐き出すように訴える貴方に、頷きながら目線を返す。 ぱち、ぱちと呼吸にあわせるように降りる瞼は、耳を傾けていると示すよう。 少しだけ、沈黙だけが挟まる時間があった。 そのうちに腕の中に掛かる重さを受け止めて、髪の硬い感触に頬を寄せた。 ぐったりと弱ったような貴方の背中を見下ろして、青年は考える。 「ツキは」 「可哀想だ」 「誰かがなぞった人間の形をしていないと」 「耐えられないんだ」 「ツキは、普通じゃなかったんだね」 「普通じゃないから、誰かの普通に憧れて」 「自分じゃないものになったんだね」 とつとつと語る。耳に聞こえた言葉への、純朴な感想だ。 それを理性的な形で表すのならば、同情なのだろう。 ひどく脆弱な精神を曝け出す貴方を、悲哀の目で眺め下ろす。 「ツキは幸せに"された"んだ」 「自分が思うものじゃない」 「他人の思う幸せに」 「ツキは本当は」 「僕じゃなくて、誰かを幸せにしたいんだ」 「その代わりを誰かに、やってほしいんだね」 (-236) 2022/05/06(Fri) 20:03:27 |
【秘】 雷鳴 バット → 月鏡 アオツキとん、とんと背中に回した手が子供をあやすように叩く。 落ち着かせ、心の安寧を取り戻すことを望むように。 純粋に、無雑に。青年はそこに一変の屈折もなく、貴方の言葉を受け入れた。 貴方が誰かに言われた言葉の正誤を断ずることは青年には出来ない。 そこまでの知性を持ち備えるほど、青年の精神は習熟していないのだ。 大きな成人の身体に、まだ彼よりも年下の子供にも劣り兼ねない柔らかい心だ。 貴方を真に救う方法は、未熟な心は持ち得ていない。 「僕が幸せになって」 「僕が普通になったら」 「ツキは、嬉しい?」 「僕、アオの代わり、やってあげる」 「だからもう、苦しくないよ」 それはまるで、片割れを亡くした母親に、子供が父親の代わりを申し出るように。 家族をなくした生き物に、誰でもないものが無邪気に寄り添うように。 耳元で流し込まれる声は大人のそれであるのに、抱く気持ちはひどく幼い。 だからこそ、そんなことも簡単に言ってしまえるのだ。 「これからは、僕がアオの代わりだよ」 (-237) 2022/05/06(Fri) 20:03:38 |
【秘】 高等部 ラピス → 雷鳴 バット『では、私は今まで通りバットくんと呼んで良いのですね』 人によって違う。 そこにどんな意味や目的が隠れているのかはわからない。 でも、今まで接してきた"少女にとっての青年"はバットだから、これからもそのままで良いかなと思った。 『呼び方がいくつかあるのは不思議な気分です』 『なぜ、咎められてしまうのでしょうか』 同じように、適当な木の根元にちょこんと座る。 小さな体躯はすぐに木々や茂みに紛れてしまいそう。 普段より更に低くなった目線で、また頭上の枝葉を眺める。 ぼうっと過ごす時間は嫌いではない。 (-242) 2022/05/06(Fri) 20:20:30 |
【秘】 雷鳴 バット → 高等部 ラピス「わからない。でも、理由はあるんだと思う。 ……ミゲルって呼ばれたのは、久々だったかも。 先生たちもたまに、そう呼ぶ人はいるけど」 曖昧に混在している理由は、少なくとも青年はきちんと認知できていないようだった。 どうして自分がそう呼ばれているのか、意味や実情も理解していないのだろう。 だから含みもなく、貴方と同じように首を傾げるだけ。 傍に座った貴方の横に身体を寄せて、じっと見下ろす。 視線の向いた先は自分と同じように、手袋をした手先。 しばらく黙ったまま視線だけが刺すように落ちた。 考えていることを隠すように他愛のないことで間をつなぐ、なんて、 器用なことは青年には出来ないらしかった。 不自然な間があってから、ようやくといったふうに声を出す。 「……ラピスは…… どうして、手袋をしているの。」 (-244) 2022/05/06(Fri) 20:35:11 |
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