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【秘】 少年 編笠 → 青嵐ほとんどなだれ込むような勢いで、 縁側へと自転車をこぎ到着する。 珍しく表情を崩して、肩で息をする。 何回か速度の出しすぎでスッ転んだのか、 ところどころ傷までこさえた状態で、青嵐を見つけると。 「アオ!!」 と叫んだ。 子どものころの姿と重なる。 ――アオ、遊びに行こうぜ。 ――お前虫取るのめちゃくちゃうまいもんな。 ――なぁ、俺の分も取ってくれよ。 「……何から言ったらいいか、わかんねえけど。 ――お前にしか頼めないことがある」 絶対に、絶対に、俺のやらかしたことを知れば、 こんな頼みなんて聞く必要もないし、 聞く義理もないけれど。俺は、真っすぐアオの目を見て言った。 (-0) 2021/08/16(Mon) 23:38:30 |
【置】 明日へ進む 青嵐目を閉じて、ゆっくりと開く。 自分の中の何かが薄れていくのを感じて、 同時に首を振って忘れようとしていた違和感の正体に気が付いた。 この村に、自分の居場所がない事も、 自分の家がないってことも ましてや、あの時のまま、 自分の部屋が綺麗に整ってる訳が無いってことも 全部わかってた筈だったんだけどな。 ―それでも、例え夢だとしても、 ただの夢なんかじゃない。 アイツといた思い出を、記憶を 夢で片付けたくはなかった。 ここのことは大好きだけど 俺は明日へ行くよ。 (L0) 2021/08/17(Tue) 0:47:42 公開: 2021/08/17(Tue) 1:00:00 |
【秘】 明日へ進む 青嵐 → 少年 編笠名前を呼ばれる。 切羽詰まったような、 でもどこか嬉しそうなような。 聞き覚えのある声。 それは例え10年離れていたとしても 俺の一番の親友だって言えるくらいの奴の声。 知ってたか? ”アオ”って呼ぶの、あれから10年も経ってもお前しかいないんだ。 振り返れば、傷だらけの俺の親友がこちらを見ていた。 「…アキラ?どうした?」 いつもと違う親友の様子に 思うところが無かったわけではないけど 「俺にしか頼めないこと? …いいぜ、俺に出来ることなら何でも言ってくれ。」 俺を真っ直ぐ見つめる親友の目を、俺も見つめ返して 頼みごとの内容も聞かずに俺は頷いた。 でもさ、それが俺だから。 後先考えるのが苦手で思い立ったらすぐ行動しちまう。 ずっと一緒にいたお前なら、分かるだろ? (-4) 2021/08/17(Tue) 0:49:06 |
【秘】 少年 編笠 → 明日へ進む 青嵐即答する、俺の親友。 皆がこいつのことを"シュン"と呼んだ。 確かに呼びやすい名前だから。 でも俺は、あの日一人で見上げた青空がずっと心の中にあるから。 お前の名前の中で、"青"が一番好きな部分だったんだ。 そう呼べばお前が――ずっと傍にいてくれるんじゃないかって そう思ってたから――ただ、それだけの理由だ。 謝らないといけないことがある。償わないといけないことがある。 俺の都合に巻き込んでしまったこと。ここで起きた何もかも。 でも。 アオだけは。他の誰が敵に回っても。 何故か子どものころから俺の味方だと、信じていた。 それだけは、心の底から信じていたんだよ。 だからアオ、お前への謝罪だけは――ずっと後に回すことにする。 「……アカネに。告白された」 ▼ (-5) 2021/08/17(Tue) 1:13:21 |
【秘】 少年 編笠 → 明日へ進む 青嵐この事実を、笑ってくれるだろうか。 俺はさ、お前が青空だけのやつじゃないことも知ってた。 俺がずっとお前を遊びに誘ってたのはさ。 子供心に、ずっとへらへら笑ってるお前が ――心から笑うところが見たかったんだ。 多分俺たちは二人とも、笑うのがそんなに得意じゃないから。 濡れた笠を乾かすのが青空なら、 嵐から身を護るのは笠の役割だから。 「……その答えを。出しに行きたい。 ただ、昔と同じで、一人じゃ勝てそうもない。 ……背中押してくれ。アオ」 今度は、これだけは。 俺は一人で立ち向かわないといけないから。 こんな根深い俺の悩みや苦悩は、 お前の立場から突っ込んでもらわないと――解決できないんだ。 「――お前が居れば、俺は多分無敵だから」 ――お前が居れば、おれ多分むてきだからさ! (-6) 2021/08/17(Tue) 1:15:05 |
【秘】 明日へ進む 青嵐 → 少年 編笠俺、『アホ嵐』だからさ お前の悩みとか全然気づいてやれなかったけど お前が俺のこと、凄く信頼してくれるのは分かってたし 俺も、同じくらいお前のこと信頼してたし、 お前が傍に居てくれてよかったって思ってる。 お前の期待に応えられてるかは未だ分からないけど、でも、約束する。 俺だけは、何が起こってもお前の味方だ。 口に出さなくても、お前ならわかってくれるだろうけど。 「…またアカネに悩まされてんのか。 でも、もうアカネに負けるあの頃のアキラじゃないだろ?」 ▼ (-7) 2021/08/17(Tue) 2:11:14 |
【秘】 明日へ進む 青嵐 → 少年 編笠親友から打ち明けられた内容を聞いて、どう思ったかって? まぁ驚いたよ。 俺たちずっと一緒で、もう兄妹みたいな、そんな感じだったから。 アカネにはちょっと悪いなって思ったけど、 もし付き合うんだったら、どうせ知る事になるんだろうし、まぁいいか。 でもさ、今まで一番真剣な表情だったから もっと深刻な問題かと思ったのは内緒な。 まぁ、こんな顔になるくらい…それだけアキラが 俺たちのこと大切にしてくれてるって証拠だよな。 背中を叩いて活を入れてやる。 え?傷が痛いって? 男だろ、そんくらい我慢しろって。 「行ってこい、 んで男らしく決めてこい! お前には俺がついてる。 なら、今のお前は――無敵だろ?」 そうして、青空にも負けない晴れやかな <心からの> 俺はお前の背中を押してやるんだ。 「…頑張れ、アキラ!!」 ―お前が居れば、俺も無敵だ。 嵐が俺を叩いても、雨がお前を濡らしても、 ――二人いれば、俺たちは無敵だ! (-8) 2021/08/17(Tue) 2:16:59 |
【秘】 親友 編笠 → 明日へ進む 青嵐「――っ」 バシィン! と。 背中を打擲する音が、高らかに青空に響いた。 手加減も何もないまっすぐな活は、 今何より自分に必要なもので――。 いつか俺のやらかしたことにこうやって、 お前がぶん殴ってくれる日もちょっとだけ願っている。 ――今頃になって気づいた。 アカネに言われ、夕凪の姉さんに言われ、アオに言われて。 何もかもが欲しかった。 失ったものを取り戻したかった。 この場所に永遠に保管して、大切に守っておきたかった。 でも、本当にそう思うなら。 ――迷わず言葉にして伝えるべきだったんだって。 (-9) 2021/08/17(Tue) 3:45:32 |
【秘】 親友 編笠 → 明日へ進む 青嵐気合が入った。熱が入った。 いつだって『編バカ』に火を入れてくれるのは『アホ嵐』だ。 どんな冒険だって乗り越えてきた無敵の二人が。 ――10年の時を経て、再びここにある。 「……よし。 ありがとな。 やっぱり、最初に相談するなら、お前だと思った」 倒しておいた自転車を立てて、再びそれに跨る。 「……結果がどうあれ、必ず報告にはくるから。 ……だから、そんときは、笑い飛ばしてくれよ」 そしてそのために。 今お前が地球上のどこにいたって。 ――また遊びに誘うから。 自転車の上から、ビシッと指さして。 「 ……おう、任せろ、アオ! 」そして再び、ペダルを前傾姿勢で漕ぎ出して、発進する。 ――目指すは、アカネの元へ。 (-10) 2021/08/17(Tue) 3:46:50 |
【秘】 無敵の二人 青嵐 → 親友 編笠「アキラは俺のこと買いかぶり過ぎ。 …って言いたいけど、嬉しいな、やっぱ。」 お前の隣はいつだって心地がいい。 似て無さそうで似てる二人だからか はたまた無二の友だからか。 きっと、そのどちらもなのだろう。 「おう、待ってる。 …別に、報告じゃなくてもいつでも来いよな。」 お前が来るか、俺が痺れ切らして行くか、きっとどっちかなのだろう。 その時は、またいつもみたいにバカやって、騒いで遊ぼう。 後先考えない俺のこと、今度はお前が止めてくれるよな。 俺達の冒険は、まだ続くのだから。 啖呵を切ってから勢いよく自転車を漕ぎ出した親友の背を いつまでも、いつまでも見ていた―――――。 (-11) 2021/08/17(Tue) 5:51:29 |
【独】 無敵の二人 青嵐「……おー、もう見えねー。 はは、俺のとこにもあんなチャリ飛ばして来たんかな。」 すっ転ぶなよーと口にしながら、 もうすっかり見えなくなった親友の事を思った。 俺は多分、まだ冒険の道半ばで これからもどんどん色んな事が起こるんだろうし その度に悩んだり傷ついたりするんだろうけど それでも、きっと大丈夫だと思えた。 お前がいるなら、どんな嵐でも、どんな大雨でも 俺たちは越えていけるのだろう。 (-12) 2021/08/17(Tue) 6:08:03 |
【独】 無敵の二人 青嵐空を見上げる。 きっと、もうこんな事は起きないんだと思う。 なんの因果か、神様の悪戯か、 それは分からないけど。 決して悪いだけのものではなかった。 だけど、いつか夢からは覚めるものだ。 俺の夢もそろそろ御終い。 ああ、どうか 青い嵐 <かれ> 彼の愛する人たちを励まし、 迷った彼らの背を押しますよう――。 その為なら、 青い嵐 <かれ> あなたの元にやって来るのです。 だって、それが、青嵐瞬の――唯一の願いだから。 ・ ・ ・ 青嵐…青葉のころに吹く、やや強い風。 瞬…またたきするひま。ごく短い時間。(一瞬、瞬間) (-13) 2021/08/17(Tue) 6:35:34 |
【妖】 無敵の二人 青嵐「……おー……… 多分俺今いい感じにエンドロール流れてたんだけど もう出番な感じ?…しょうがねぇなぁ…」 響いた声の方向を見ながら愉快そうに笑う。 軽口の返事はないけれど、それでも心は満たされていた。 「田舎のいいとこその1、人が優しい。 その2、人も優しい。 その3、人たちが優しい。 っつーことで手伝ってやりますか。」 昔から、目立つのだけは得意だ。 だから、俺が目印になるから ―全速力で、走ってこい。 祭囃子の比なんかじゃない、 でっかい声でここだと叫びながら 皆をみつけて、お前も、見つけてやる。 「あ、でも見つけたら俺が満足するまで冷やかしの刑だな。」 笑って、 村を、山を、海を、 4人で駆け回ったあの日みたいに 俺もまた走り出した。 ($0) 2021/08/18(Wed) 1:23:35 |
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