【人】 橘 幸也……ん。ん。 [ こほん、と小さく咳ばらいみたいにして。 声を整えて、華さんについていく。 僕もコートを脱いで、セーターとジーンズ姿。 寝転がる彼女の様子に少し、緊張がほぐれるのを感じる。 だからだろうか、その次の言葉はすっと出て来てくれた。] 順番に入ります? それとも、一緒に入っちゃいますか。 [ その言葉を投げてから僕の視線はキャリーバッグへ向かう。 中から取り出す紙箱は、姉さん謹製のパウンドケーキが収められたもの。お湯を沸かさないとな、と少し考えて室内を見回すと、ちょうど華さんの笑顔が目に入った。 気をおかない様子の、寛いだ笑み。なんかやりたいこと、って言われて一番思ったのは、その笑顔を見てることだったんだけど。] (46) 2020/12/29(Tue) 23:35:47 |
【人】 橘 幸也― 客室 ― [ ケーキを収めた紙箱を手にしたまま、少しの間僕は動きを止めていた。一年前にはこんな風に、彼女の笑顔をみる機会があるなんて想像していなかった。 ずっと憧れて、密かに恋心を抱いていた、年上のお姉さん。 そう、去年の>>0:122>>0:123。 ちょうどこんな雪の降ってた日だった。 その日、僕は華さんに告白したんだ。] ……そう、ですねー。 [ 一瞬の回想は華さんの声で>>14途切れて、 いま現在の事柄に僕は思考を振り向ける。] うーん、どうかなあ? それなら最初、お風呂を使ってからでも良いのかなって。 まあ、とりあえずお茶淹れる準備、してきますね。 せっかく作ったケーキなのに、食べてもらえなかったって佳純姉さんにバレでもしたら、僕すっごい怒られちゃいますから。 [ 一方で、華さんは雪の積もった外へと出ていく様子。 暫くしてお茶の用意を整えた頃には、丸盆にちょこんと載った可愛らしい雪うさぎが室内に現れていたのだった。*] (50) 2020/12/29(Tue) 23:49:21 |
【人】 橘 幸也― 客室 ― [ 真白な体に赤い目と緑の耳。その姿を目にして破顔した。] あは。可愛いうさぎですね。 南天の木、あったんですか。 [ 尋ねつつ、外を覗くようにすいと身を傾けて。それから、丸皿に切り分けたパウンドケーキを差し出して、湯呑に緑茶を注いでいった。] これ、どうぞ。佳純姉さんからです。 旅行に行くって聞いて、羨ましがってました。ふふ。 [ 高校を出たあと、パティシエになりたいって専門学校に進んだ佳純姉さん。もちろん、華さんのことは――僕と同じく――大好きで、是非にって持たされていたんだ。 その道に入ってまだ日は浅いけど、試食を何度も命じられたおかげで腕前はよく知っている。ドライフルーツとナッツのパウンドケーキは一番のお得意だ。含ませる洋酒の割合もちょうど良い加減。最初の頃にはほろよい加減になっちゃったりもしたものだけれど。] ――そう、雪うさぎ。 三人で作ったりもしましたね。 これがお父さん、こっちがお母さんで、こっちは子供たちって。 [ 子供の頃の懐かしく楽しい記憶。 もっと作ろうよ、ってせがんだことを思い返しつつ、ケーキとお茶を口に運んだことだろう。]* (51) 2020/12/30(Wed) 0:06:47 |
(a6) 2020/12/30(Wed) 0:09:52 |
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