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【秘】 中等部 バラニ → 司書 エルナト「ところで……いつも飲んでるそれは……薬、なのかね?」 「以前から気になっていたが、色々と種類があるようだけれど」 透明なものと、色の着いたもの数種類。 一緒の部屋で過ごしていれば何度も目にする機会もあって、中には眉を顰めながら飲んでいるものがあることも知っている。 けれども、それが何なのかまでは今まで深くは尋ねたことはなくて。 良い機会だとでも言うように、続けて尋ねてみるのだった。 (-144) 2022/05/03(Tue) 23:52:10 |
【秘】 司書 エルナト → 中等部 バラニ「心………。」 呟く。 君の病の話は、まったく聞いたことがない。 そもそも、公言していたり目に見えて分かるものでもない限り、 そういう話題にはあまり触れない。 誰もが抱える傷だから、容易には触れられない。 「想像できないなぁ……泣き虫か。」 「……でも、それはそれで可愛いかも。」 想像して、少しくすりと笑う。 君の知らない一面が知れると、嬉しかった。 「じゃあ今は、頑張って気丈に振舞っているの?」 「……病のために?」 問いかけを零す。 ▼ (-145) 2022/05/04(Wed) 0:08:51 |
【秘】 司書 エルナト → 中等部 バラニそれから、齎された言葉にはきょとんと眼を開いて。 まさか、こちらが祝われるなんて思ってもなかったものだから。 「……あははっ!それはいいね。」 「うーん、でも、何がどんな味なのかってあんまり知らないんだ。」 「だから、その時は。」 「君の好きなものをご馳走してもらおうかな?」 微笑んで。 人の食事なんて殆ど取ったことがない。 食べたいもの、なんて浮かぶはずもなく。 強いてあげるなら、それは。 『友人が美味しそうに食べるもの』だから。 明るい姿。 君のその姿はやっぱり好きだ。 きっとか弱い姿も好きだけれどね。 ▼ (-146) 2022/05/04(Wed) 0:09:17 |
【秘】 司書 エルナト → 中等部 バラニ最後の言葉には。 うーん、と少し思案してから、小瓶に触れる。 1日1本。握れば見えなくなるくらいの小さな瓶。 「薬じゃないよ。」 「これはね、僕のご飯。」 結局、隠したって仕方ないと告げる。 一日一食。小瓶程度の食事しか得られないから。 いつもお腹をさすってる。空腹を誤魔化すように。 「何だと思う?」 中身の話。 (-147) 2022/05/04(Wed) 0:09:55 |
【秘】 中等部 バラニ → 司書 エルナトバラニも病気について、努めて漏らさないようにしているのだ。 初等部からこのギムナギウムにいた事実を、中等部も終わりに差し掛かろうとする今まで明かさないほどには。 隠し通さなくてはいけない理由が貴族の子であるバラニにはあった。 裕福なだけではなく、貴族の家に生まれたからこそ生じる悩み事だ。 その中でこうして友人であるあなたに零す言葉は、ひとつひとつが特別なものでもあるのだが。 「よ、止したまえよ! 可愛いなどと!」 相応しい言葉ではないと、語気を強めながら抗議する。 跡継ぎとして立派な男にならねばならないのだから、この手の自身のイメージに関わる言葉には少し過敏に反応してしまう。 どうにも、今さら手遅れなところはあるだろうが。 「うむ……まあ、そういう事になるね」 「病は気から……というのは少し違うかもしれないけれども。 気丈に振る舞うことで、本物に近付いていけるような気がするのだよ」 「……英雄譚の主人公のようにね」 バラニは、勇ましい英雄譚を好んで読むことはあなたもよく知っているだろう。 泣き虫のバラニがそれらに勇気を借りて気丈に振る舞うことで、今があるのだ。 ▼ (-157) 2022/05/04(Wed) 1:32:15 |
【秘】 中等部 バラニ → 司書 エルナト「ほほう、私の好きなもの……」 「いいだろう、その時は私の好物を存分に振る舞ってあげようではないか」 「願わくば、エルナトくんもそれを気に入って欲しいものだね」 同じものを好きになってくれればいいと、ちっぽけな願いを抱きながら。 いつかの未来である、その時を祝うための準備を今から進めてその一歩。 神隠しなどと、重苦しい空気が漂っているここ数日だけれども。 こうして、将来の希望や明るい未来について語らっていると少しは気分も晴れやかになってくるものだ。 ▼ (-158) 2022/05/04(Wed) 1:32:58 |
【秘】 中等部 バラニ → 司書 エルナト「食事、なのかね……?」 「ふうむ……」 食事だと聞いて、その中身が何かと問われて考える。 握れば見えなくなるほど小さなそれの中にある液体。 考えてみても、おおよそ妥当と思えるような答えは見つからず。 「……ダメだ! 皆目見当もつかない!」 「果実から搾ったものだとか、そういうものでもなさそうだしね……」 思い浮かんだものをひとつ挙げてみるものの、降参だと言わんばかりに両手を挙げて見せた。 (-160) 2022/05/04(Wed) 1:33:29 |
【秘】 中等部 バラニ → 月鏡 アオツキふわふわとした金の髪は、頭を撫でる手を緩やかに押し戻すように。 優しく撫でられたことに、安心感を覚えながらも少し不服そうにも眉を顰めるも。 それだけ。 その手を強引に跳ね除けたり、優しさに全てを委ねるわけでも、どちらでもなく。 「そう、ですか……」 変わらないと、そう答えたあなたにそれだけの言葉を返して。 ▼ (-161) 2022/05/04(Wed) 1:56:49 |
【秘】 中等部 バラニ → 月鏡 アオツキ「……」 「ありがとう、ございます……先生」 「私には…… 訳あって、簡単に頼ったりはしたくない気持ちがあるのだけれど」 「善処は、するようにします……我慢をするつもりはありませんから」 バラニは、貴族の子だ。 貴族の子には、貴族の子であるが故に抱え込まなくてはならないものもある。 それが素直にあなたたち大人に近いものを頼ることの障害になっているけど。 「また、何かあれば相談させてください、先生……信じていますから」 それでも、信じて頼る先がいるのは心強いこと。 こちらに視線を合わせてくれた瞳に、まっすぐと眼差しを返す。 あなたを信じていると、頼ることのできる人間と見なしていると伝えるように。 (-162) 2022/05/04(Wed) 1:58:03 |
【秘】 夢見る乙女 シャルロッテ → 中等部 バラニそんなことない、と言おうとして、口を噤む。 少女にとってあなたは、とても目映い素敵な男の子。 けれど、家族に出来損ないを詰られる気持ちは、少しだけわかる。 『シャルロッテ』はそうじゃない、と何度も言われたから。 けれど、少女がそうやってまごついている間に、あなたは。 やっぱりまぶしいな、と思う。 まっすぐな言葉。 誘惑に縋らない強い心。 あなたはちゃんと、大切なことを知っている。 ▼ (-163) 2022/05/04(Wed) 2:03:04 |
【秘】 夢見る乙女 シャルロッテ → 中等部 バラニちらと視線を落とす。 その先には、隣を歩くあなたの手。 少女は勇気を出して、そっと、その手を取った。 「……うん」 「バラニが家を継ぎたいなら、そのために病気を治すことが必要なら、ロッテも早く治ればいいなって思う」 「でも」 「病気さえ治れば上手くいく訳じゃないって、それだけではだめだって言えるバラニは、とっても強い」 「きっとね、バラニが立派な大人になったとき。 いろんなことを勉強して、今よりもっと素敵になったとき。 そのときには、病気もよくなってるんだと思う」 それは、もう少しこのままでいたいという少女の身勝手な願いかもしれなかった。 それでも。 特効薬のようなもので一足飛びに解決するより、今、ふたりで歩いているみたいに、ゆっくりと変わっていけばいいと思った。 (-164) 2022/05/04(Wed) 2:04:06 |
【秘】 司書 エルナト → 中等部 バラニよほど隠さなければいけない理由。 心に起因するものともなれば、やはり体裁等に係るものだろうか。 とくに家柄の良い人達は、完璧主義であると聞く。 健やかで、一縷の非もなく、誰もの模範になる者。 そうでなくてはいけない という思想。…窮屈そうだなぁ、なんて庶民の少年は思う。 「あははっごめんごめん。」 「でも、やっぱりバラニは可愛いよ。」 「どこかの貴族の跡取りじゃない、僕の友達のバラニはね。」 だから、せめて自分の傍では自由であってほしいな、と思う。 どこでも完璧だなんて、それこそ心の負担になってしまいそうだから。 止まり木の一つにでもなれたら、と。 「……そっか、うん、応援するよ。」 「でも、英雄譚の主人公にも、仲間は居るんだよ。」 「一人で抱えて頑張りすぎないようにね。」 穏やかに、優しく柔らかく。 いつも通りの声色と微笑みで、そう告げた。 ▼ (-168) 2022/05/04(Wed) 2:10:02 |
【秘】 司書 エルナト → 中等部 バラニ「うん、ありがとう。俄然楽しみだ。」 「早く治療したいな。治るといいけれど。」 誰かと一緒に食べるなら、少しは美味しくも感じるだろうと。 ささやかな未来を思い描いて、笑い合う。 子供の夢。無垢で、眩しいくらいの夢。 それがこの狭い鳥籠の中の、太陽であった。 それから、瓶の中身を考える君を眺める。 多分、分からないだろうなと思っていた。 別に、君を馬鹿にしているわけではなくて。 ただ。 君は純粋そうだから。 「わからないかぁ。」 「残念、僕は果実も食べられないんだ。」 くすくす、挙げられた答えに、指でバツを作って。 「じゃあ、ヒントをあげよう。」 「これはね、君も作り出せる物だよ。」 「透明なものも、 紅色 も。」「 黄色がかったもの も、………多分、白色 も。」「ぜーんぶ君が作り出せる。」 わかるかな?と。 ………少し怪しく光る眼で、君を見た。 (-170) 2022/05/04(Wed) 2:11:28 |
【秘】 中等部 バラニ → 夢見る乙女 シャルロッテ「シャ、シャルロッテくん……!?」 不意に手を取られて、驚いたようにそちらに向いた。 どきどきと、胸が高鳴っているのが否応なくわかる。 こうしてみたいと願うことはあったけれど、心の準備ができていない内にそうなってしまうと緊張ばかりを感じてしまう。 「すっ、すまないね! 大きな声を出してしまって…… ええと、うむ、ありがとう……嬉しいよ……とっても」 言いたいこと、伝えたい気持ちはたくさんあるのだけど、出てくるものはその切れ端ばかり。 顔がとても熱くて、熱に浮かされているのようだと、これこそ病のようではないかと思って。 このまま、まっすぐに君の顔を見ることも難しいとも、思うのだけれど。 ▼ (-173) 2022/05/04(Wed) 3:06:44 |
【秘】 中等部 バラニ → 夢見る乙女 シャルロッテ「…………」 まだひとつ。こんな幸せがあっても、幸せだからこそ、拭いきれぬ不安がある。 慎重に言葉を選んで話をした、まだ言ってはいないこと、不確かなことだけど。 「シャルロッテくん」 「今から私の言うことは……まだ、本当かどうかもわからないことだから……」 「全部信じなくてもいい、私もわからないし、そうかもしれないというだけで」 曖昧な言葉とは裏腹な険しい顔をしながら、君をしっかりと見つめて。 「……昔の話だけど、神隠しに遭ったと言われる子は病気の治療のために…… 酷いことをされていた、らしい。それで、結果的には病気は治るのだけれど それは、今でも続いている……かもしれない、まだ本当かわからないのだが」 「アオツキ先生に、そう、教えて貰ったのだ……内緒だと、言われていたけど」 「君には……どうしても、伝えて置きたい理由があって……」 内緒だと言われていたにも関わらず、声を震わせながら自分の知りうることを伝える。 不確かな情報しかないけれど、その可能性があることにバラニは耐えられない理由があった。 「わ、私は──」 ▼ (-174) 2022/05/04(Wed) 3:07:28 |
【秘】 中等部 バラニ → 夢見る乙女 シャルロッテ「──君が、好きなんだ……!」 「友人ではなくひとりの 女性 として……君を、愛おしいと思っている!」ああ、言ってしまった。 こんな不安から逃れるような告白など、彼女の言ってくれた立派な大人には程遠いのに。 「だからこそ、だからこそ……君には、酷い目に遭って欲しくないんだ……」 「君が酷い目に遭わないように……私が、君を……守ってあげたいんだ……」 私は今どのような顔をしているだろう。 せめて、涙を流すような酷い顔をしていないといいのだけれど。 このままずっと、君の顔を見てなんていられなかったから、俯いて隠してしまう。 (-175) 2022/05/04(Wed) 3:08:09 |
【秘】 夢見る乙女 シャルロッテ → 中等部 バラニ嫌だったかな、と不安がよぎる。 あなたは優しいから、きっと、振り払うことはできない。 慌てるあなたを見る。 けれど、どうやらそうではないらしい。 うれしいと言ってもらえると、少女もまた、うれしくなって。 ——はにかむように笑んだのも、束の間のこと。 ▼ (-189) 2022/05/04(Wed) 12:26:40 |
【秘】 夢見る乙女 シャルロッテ → 中等部 バラニ『神隠しに遭った子供は治療のために酷いことをされる』 『今でも続いているかもしれない』 『あなたは“女の子”の“シャルロッテ”が好き』 ▼ (-190) 2022/05/04(Wed) 12:27:09 |
【秘】 夢見る乙女 シャルロッテ → 中等部 バラニ胸が軋む。 掠れた呼気が漏れる。 この喉は今、変声期を迎えている。 それはいずれ自然と治るもので、けれど。 そのとき、かつてのようなソプラノの声は永久に喪われるだろう。 あなたの愛する『少女』の寿命は、もう、幾許も無い。 少■は眉を歪めた。 あなたは絶対に『少女』を守ることができない。 恐ろしい治療からではなく、時の流れから。成長の痛みから。 「…………バラニ、」 ——あなたに愛される資格を得るためには、どうすれば。 それはきっと、『シャルロッテ』が願ってはいけないことだ。 『シャルロッテ』は『お母さん』にならなければならない。 『シャルロッテ』は『お母さん』にならなければならない。 見ないふりをした呪縛に足を掴まれる。それなのに。それでも。 少■は震える声をこぼした。 「…………わ、たし、は」 「……バラニのことが、」 好きになってしまった。 あいしている。 けれどそれを今ここで告げるのは、あなたを騙すのとおんなじだ。 息が詰まる。……どうすれば。 ▼ (-191) 2022/05/04(Wed) 12:28:39 |
【秘】 夢見る乙女 シャルロッテ → 中等部 バラニ「————ぁ、……お、」 「先生は、酷いことなんて、しないよ」 「『お父さん』は、いつでも正しい」 初めて繋いだ手は、呆気なく離れてしまった。 少■が離した。 嘘をつき通す勇気も、本当のことを伝える勇気もなかったからだ。 じりじりと後退り、そのまま、背を向けて駆けてゆくだろう。 (-192) 2022/05/04(Wed) 12:29:19 |
【秘】 中等部 バラニ → 司書 エルナト「止したまえと言っているだろうに……」 「まったく困ったものだね、我が友人の悪戯好きには」 悪態じみた言葉を吐きながらも、その調子は気安いもの。 本気で困っているわけでもない、いつものじゃれ合いと同じ線の上にあるようなやりとり。 貴族か、庶民かであることに関わず、同年代の友人としてのかけがえのない関係で。 あなたがバラニにとって、大切な止まり木のひとつなのは間違いないのない事実だ。 「ふふ、なんだか賢者の忠言のようだな、エルナトくん。 そうだね‥‥…英雄譚は決してひとりでは成し得ないものばかりだものな」 「私だけで太刀打ちできそうになければ、誰に頼れるよう肝に銘じておくよ」 告げられた言葉に対して、どこか楽しげな調子でからからと笑う。 確かに友人からの言葉を胸に刻みつけて、しっかりとした声色で応える。 ▼ (-219) 2022/05/04(Wed) 19:53:56 |
【秘】 中等部 バラニ → 司書 エルナト「そうか……果物もいけないのだね」 指でバツを作る姿を真剣に見つめながら、だとすれば何をと少し考えて。 そうしているとあなたからヒントが与えられる。曰く、自分でも作り出せるものだというではないか。 「私にも作り出せるもの……」 透明なもの、紅色のもの、黄色がかったもの、白色のもの。 小瓶に入るような液体らしきものと考えて、紅色に心当たりがひとつ。 「も、もしかして……紅色のものは、血液かい……?」 だとしたら、黄色がかったもの、白色のものは…… まだ正解は判明していないけれど、連鎖的にとある可能性を思い浮かべてしまって思わず苦い顔を浮かべてしまった。 (-220) 2022/05/04(Wed) 19:54:41 |
【秘】 中等部 バラニ → 夢見る乙女 シャルロッテ「っ、ま、待って、シャル────」 それ以上、声が出なかった。 手を伸ばすことができなかった。 背を向けて駆けていく君を追いかける一歩も、踏み出すことができなかった。 この手に僅かに残ったぬくもりが、空気に融けて消えていく。 伝えるべきではなかったのだろうか……この想いも、不確かな情報も。 そこに残ったものは、君との関係が修復不可能になるかもしれない不安と、とても大きな後悔の念。 「おとう、さん……」 「ひとりで舞い上がり、先走って……私は……」 溢れて零れ落ちそうになる涙を必死に堪えながら、絞り出すように独り言ちる。 あなたの背がとっくに見えなくなっても、バラニはその場に立ち尽くしていた。 歩き出せるようになったのは、それからしばらく経ってからのことだった。 (-225) 2022/05/04(Wed) 20:08:31 |
【人】 中等部 バラニ「…………」 この日、お昼を過ぎた頃からどこか浮かない顔のままふらふらとこの学び舎を歩き回っているバラニがいた。 いつものような明朗さはどこへやら、ぼんやりとしていた心ここに在らずと言った具合で。 何をしているのかと尋ねれば、姿が見えない子を探していると答えるが、きっとそれだけだろう。 (50) 2022/05/04(Wed) 20:11:57 |
バラニは、珍しく勉強会に参加する気分にはなれなかった。 (a35) 2022/05/04(Wed) 20:13:08 |
【秘】 司書 エルナト → 中等部 バラニくすくす、じゃれ合いはいつまでも続いてしまう。 そうして寝るタイミングを失う事も多々ある。 今もそう。 でも別に、それが嫌なわけでもないから困り所だ。 この狭い箱庭で、ただ普通の子供として過ごせる時間が、 果たしてどれくらいあるだろうか。 貴重な時間をくれるこの部屋が好きだ。 明日も明後日も、続くといいな。 「あはは、確かに僕は賢者のポジションかも。」 「勇者を導いてあげようかな。」 だからぜひ頼ってね、と。 にっこり、笑ってみせて。 ▼ (-226) 2022/05/04(Wed) 20:16:33 |
【秘】 司書 エルナト → 中等部 バラニエルナトは、人の食事が取れない。 一定のものからしか栄養が取れないし、 美味しいとも感じない。 悩む様を、にこにこと眺めて。 そうして、君が。 その答えの一端にたどり着けば。 変わらぬ表情で、鷹色の目を君にまっすぐ向けて。 「───正解。」 誰に聞かれてるわけでもないのに、小さく囁いた。 苦い顔を浮かべる君に、くすくすと笑い声をあげる。 「大人から支給してもらってるんだ。」 「でも、やっぱり足りないな。お腹が減っちゃう。」 「かといって、色付きの奴はあんまり、食べたくないんだよね。」 量を増やしてほしい、と言って、 色付きのものが増やされたらいやなので、 この量に甘んじているのだと肩を竦めて見せる。 美味しいと感じるとしても、やはり人らしい感性はあるから。 紅も、黄も、白も、口に含むのには抵抗がある。 普通の人間からすれば、透明のものだってそうであろうけど。 それはもう、慣れてしまった。 ただ美味しいとしか感じない。 「お腹が空いて仕方ないんだ。」 「君が食べさせてくれる?」 まっすぐ、君を見つめたまま。 変わらぬ微笑みの中、問いかけた。 (-228) 2022/05/04(Wed) 20:24:21 |
【秘】 月鏡 アオツキ → 中等部 バラニ「ありがとうございます。 信じられている分一生懸命働きますよ〜」 立場も抱える者も違う生徒達が理想とするギムナジウムの形が 同じではないことは、もうわかっている。 だから、皆の声を聞けるようになるべきなのだ。 「――……私は君たちの成長を邪魔したいわけでもありません。 できる限り皆が我慢をしない生活が望ましいです。 様々なものをかかえているでしょうが、どうぞ時には利用すると思って。 頑張りすぎないで下さい」 指を唇に当てて一息。 表情は相変わらずだが、そのときだけはどこか和らげで。 「たった少しのきっかけで、いつも通りが変わることだってあるんです。 それじゃあ、気をつけて。 バラニくん。」 踵を返して、背を向け暫くすれば見えなくなるだろう。 一つ一つ、今のギムナジウムが変わっていく。 たった数年前と今がちがう。あと数年で、また変わる。 壊れていく。壊していく。その崩壊の音を楽しみに待った。 (-232) 2022/05/04(Wed) 20:47:56 |
【秘】 中等部 バラニ → 司書 エルナトまっすぐに、微笑みながらこちらを見つめる姿。 いつものような穏やかな調子のはずなのに、どこか怪しげなものを感じて、ぞくりと寒気のようなものが背筋を走った。 「っ、できることなら、君の助けになりたいとは……思う。 私にとって、エルナトくんは大切な友人なのだから……」 ▼ (-234) 2022/05/04(Wed) 20:52:13 |
【秘】 中等部 バラニ → 司書 エルナト「けれど……すまない。 そのお願いには……やっぱり、少し考える時間が欲しいよ」 普通の食事を摂って生活している人間にとってそれは。 すぐに受け入れるには、やはり抵抗があるものだった。 食べることもそうだけれど、食べさせることにも抵抗はある。 それでも、あなたの力になりたい気持ちも本当だ。 だからこそ、バラニは決断をする時間が欲しいとあなたに求めるのだった。 (-235) 2022/05/04(Wed) 20:52:43 |
【置】 中等部 バラニ──消灯時間もとっくに過ぎた頃。 ルームメイトのふれあいで寝るタイミングを失い続けながらも。 それが落ち着き、ようやく静かに寝床に着く時間がやってくる。 ……だというのに、バラニはずっと眠れずにいた。 色々な事があって疲れていたのだから、すぐに寝付くことができてもおかしくないのに。 思い出さないように、考えないようにしていた不安や恐怖が、静かな夜にはゆっくりと忍び寄ってくる。 それを感じていると、ぞわぞわと身体が疼いて仕方がなくて。 まるで抑え込むようにしながら、自らの腕を掴んで気分を落ち着かせようとしている。 けれどこのまま、じっ、としていてはどんどん膨らんで行きそうで、何より恐ろしい。 こんな時間に部屋の外を出歩くのはいけないことだともちろん理解はしている。 だから、少し気分転換をしたいと願ったこの気持ちは……ちっぽけな出来心だ。 すっかり寝ているはずルームメイトを起こさないようにそっ、と部屋を出て行って。 (L5) 2022/05/04(Wed) 20:53:37 公開: 2022/05/04(Wed) 20:55:00 |
バラニは、それから、部屋の外に出た後に誰かと出会った。 (a43) 2022/05/04(Wed) 20:55:34 |
バラニは、とある貴族の跡取りだ。その病気を治療することを、強く求められている。 (a44) 2022/05/04(Wed) 20:55:54 |
バラニは、けれども、そんな方法で病気を治療したいと思ってはいなくて。 (a46) 2022/05/04(Wed) 20:56:11 |
バラニは、けれど、それを許されるような人間ではなかったのだ。 (a48) 2022/05/04(Wed) 20:56:49 |
バラニは、その夜……部屋に帰ることはなかった。 (a49) 2022/05/04(Wed) 20:57:57 |
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