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【秘】 寡黙 エミール → 聖女 リッカ聖女に宣言するなら、教会で。 あの人同じように聖女像の前で、その顔を見上げた。 この像の聖女の顔がそのままなのかどうかは自分にはわからない。 けれども纏う雰囲気は、きっと同じもので―― 「答えを持ってきた」 俺は―― 「俺は帰らない。この世界で生きていく」 すぅ、と息を吸って、大きく吐いて深呼吸。 あなたの反応があるはずだと信じて、静かに目を閉じた。 (-43) 2024/02/19(Mon) 1:38:51 |
【秘】 聖女 リッカ → 寡黙 エミール>>-43 エミール 静謐な教会。ステンドグラスの外は雪が降る。 そんな天気だから、いつもより薄暗い教会にあなた以外の気配はない。 ―――気配はなくとも、そこに聖女は確かにいた。 聖女はいつだってどこにだっている。 それが、この世界の、創造者。 でも。 ―――どうして、と。 音もなきまま、聖女のその瞳だけが瞬きを繰り返す。 だって、その選択は、 有り得ない とすら思えるもので。 (-44) 2024/02/19(Mon) 12:47:30 |
【秘】 聖女 リッカ → 寡黙 エミール>>-43>>-44 エミール ふわりと。 だから、音もなく。 本来ならば有り得ないことがそこで起こった。 あなたの前に降り立ったのは、目の前の像と変わらぬ見目の小さな子ども。 雪のような白銀の髪を冷たい空気に揺らし、冬空と同じ色の瞳であなたを見上げている。 「 …… ほんとうに いいの ? 」 もう機会はないかもしれないよ、と暗にその声は告げている。 その表情や声音全てから、困惑のいろが見て取れることだろう。 (-45) 2024/02/19(Mon) 12:48:24 |
【秘】 寡黙 エミール → 聖女 リッカ>>-44>>-45 聖女 ぱちり。 目を瞬かせた。 だって、像と見た目は変わらないとは言え……先日話したときよりもずっとイメージが幼くて。 「……良いも何も、そう決めた」 「俺がここで過ごした時間は、元の世界での時間よりも……もうずいぶん長い」 だって、わかるだろ。 男が前の世界で生を閉じたのはわずか10歳。 あなたと変わらぬ小さな子供だった。 家族への想いがなくなったわけではない。 ただ……元の世界に帰って、一人にはなりたくなかった。 この世界で、一緒にこの世界を見て愛せたらと思えた人がいる。 その人をここに一人残して消えることが、何より嫌だったから。 「もう、チャンスなんてなくていい」 あなたの前でしゃがみこんで、目線を合わせた。 困惑を隠せないその顔に、目尻を下げ。 その頭をぽんぽんと撫でた。 まるで、小さな子供への対応のそれだ。 姿を見てしまったから仕方ない。 ▼ (-52) 2024/02/19(Mon) 14:36:02 |
【秘】 寡黙 エミール → 聖女 リッカ>>-52 「俺はこの世界で生きると決めたからな」 「だから願いも考えた」 本気だから、そんなに困らなくて良いという意味を込めて言う。 「ひとつめは……俺とファリエに守護の加護を」 それは万能のものではないだろう。 それでも、この世界での旅には危険が伴うことを俺は知っている。 自分の力で守り切るのは前提だけれど、加護があれば安心というものだ。 まぁもしかしたら、痣が光ったファリエには必要ないのかもしれないが、そこはそれ。 「ふたつめは……」 「俺みたいにここに連れてこられて、帰れなくなった人たちに。 前の世界の事を忘れてしまいたいやつがいたなら、忘れさせてやってくれ」 帰れないなら、未練を残していてはうまくこの世界に順応できない。 絶対に忘れたくない人もいるだろうから、希望制だ。 「俺は……心のアルバムに仕舞っておくことにする」 それは思い出そうとしなければ考えもしないもののように。 ふっと、時々懐かしむくらいで丁度いいと、そう思えたのだ。 (-53) 2024/02/19(Mon) 14:37:29 |
【秘】 聖女 リッカ → 寡黙 エミール>>-53 エミール 伸びたその手は、本当ならば聖女に触れることはない。 聖女にとって、転生者はみな手を伸ばしたところですり抜けてしまう流れ星。 触れる温度は、惜しむ気持ちを生むだけだから。 だけどあなたは、権利を得てなおここを離れないのだという。 なら、惜しむ必要も、怯える必要も、どこにもないのではなんて。 そう思った聖女がいたから。その手は、聖女の柔らかな髪に触れている。 静かに、それでいて少し面映ゆそうに、聖女の瞳は伏せていて。 (-55) 2024/02/19(Mon) 16:03:30 |
【秘】 聖女 リッカ → 寡黙 エミール>>-53>>-55 エミール 次のとき。 そうして、聖女は、くすりと微笑んだ。 同時に、あなたのその手は、するりと聖女の身体をすり抜ける。 そのままひらりと翻して、聖女の身体は宙に浮かぶ。 微笑みのまま、聖女は、 聖女 として。「 ――― たしかに 聞き届けたわ。 エミール 」 「 あなたの 願い … 叶えてあげる 」 しん、と静かな教会に。 けれどその声は、響き渡ることもなくただ静かに。 「 …… ファリエのこと たいせつにしてね でないと わたしが さらってしまうわ 」 (-56) 2024/02/19(Mon) 16:06:35 |
【秘】 聖女 リッカ → 寡黙 エミール>>-53>>-55>>-56 エミール そんな声が聞こえたかと思うと、 聖女の姿はもうそこにはない。 まるで、夢かなにかだったかみたいに。 ただひとひらの雪片が、 聖女がいた場所から舞い降りてゆく。 その雪片に触れたなら、それはあなたの手の中で。 触れなければそのまま教会の床に舞い降りて、 その上で溶けて消えていった。 曇天の薄暗い光がステンドグラスを透かしている。 聖女の像だけは、変わらずに そこであなたのことを見下ろしていた。 (-57) 2024/02/19(Mon) 16:08:02 |
【秘】 寡黙 エミール → 聖女 リッカ「違う……って」 なんでだよ、と独り言のように呟く。 聖女像を見上げながらも、なんだか腑に落ちない顔つきだ。 そういえば、ファリエも聖女についてはなんだか色々思うところも、心境の変化もあったようで、それを確かに見せてくれていた。 聖女にも人と同じような感情があるようだから、もしかしたら二人の間には何か交流のようなものがあったのかもしれないと考えた。 だからといって、それをどうこうするつもりはないのだけど。 「当たり前だろ。……大事にするさ」 色濃い方面には大分無知できてしまった男だが、感情は死滅してはいない。 全ては、これからだ。 ひとひらの雪辺を手のひらで受け取れば、じわっと溶けて水になってしまった。 聖女は、もう居ない。 これからの人生は、自分だけが紡いでいく物語。 (-58) 2024/02/19(Mon) 20:38:09 |
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