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【人】 灯された星 スピカ>>姿の見えない君へ 「有難う。助かるわ」 アマノと別れた後、女は使用人にお願いして長い長いミシン糸を用意してもらった。 それから、幼い子供から貰った封筒を取り出す。>>3:10 便箋の上を万年筆が踊る、踊る。 整った字がつらつらと並んでいく。空を飛んだり、物を浮かせたりなんて凄い魔法は使えないけれど。 私にだって、想いを伝える“言葉”という魔法がある。 「……お願いね、アルの元に辿り着きますように」 書き終えるとミシン糸を封筒に括り付ける。それから便箋をしまい、封をした。 封筒がアルの元に届くと言うのなら、城にまだ彼女がいるのなら。 封筒に糸をくくりつけておいて、それを辿ればどこにいるかまでは把握できるのではないか? 糸が途中で切れたり外れてしまったりしたら意味はなくなるけれど。 それでもやらないよりはマシだ。 女は願いも一緒にしまい込み、小さな子供宛に手紙を飛ばした。 (17) 2022/01/26(Wed) 16:05:56 |
【秘】 灯された星 スピカ → こどもの アルレシャもし子供の元に手紙が届いたのなら。 綺麗に整った字が便箋に並んでいるのが分かるだろう。 『アルへ ずっとふたりをさがしてくれてありがとう。 アマノには会えたの。それから、おしろのひみつもちょっとだけ聞いたわ。 アルはきっと、おしろのまほうにかかって人から見えなくなるようになっちゃったのかもしれないわね。 でも、わたしが、わたしたちおとなが、がんばるから。少しさびしいかもしれないけれど、どうか待っていてね。 会えたらまたお話しましょう。 あなたをちゃんと、守るから スピカ』 (-31) 2022/01/26(Wed) 16:06:41 |
【秘】 こどもの アルレシャ → 灯された星 スピカ踊り場に足を投げ出し、階段に腰掛けていたアルレシャはベルの音色に顔を上げました。 山羊の郵便屋さんが、アルレシャ宛の手紙を持って来てくれたのです。糸が括り付けられている理由はわかりませんが、そっと手紙を受け取ります。 「……スピカ!」 封筒を見て直ぐ、差出人に思い当たりました。 糸がはらりと床に落ちます。意にも介さず手紙を取り出しました。 ――――わたしが、わたしたちおとなが、がんばるから。 ――――少しさびしいかもしれないけれど、どうか待っていてね。 ――――あなたをちゃんと、守るから 「…………」 視界が霞み、涙が頬を伝います。瞳から溢れ落ちた雫は、手紙をすり抜けて床を濡らしました。 (-32) 2022/01/26(Wed) 19:18:29 |
【秘】 こどもの アルレシャ → 灯された星 スピカ「……スピカ」 名前を呼びます。透明な声では届かないと、知っていながら。 「……スピカ」 何年も、何年も、何年も前から探し求めていた 何か が、見えた気がしました。知らない筈の感傷に、ただの文字が染み渡るのです。訳もわからず、背中を丸め泣きました。 「スピカぁ……!」 アルレシャは、待ち続けます。 再びみんなと、話せる刻を。 (-33) 2022/01/26(Wed) 19:19:00 |
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