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【人】 会社員 ツグアキ[ ぞわり。 背を蟲が這う。 再生能力を持たない歯が 奥のほうでみし、と軋む。 奥歯の音に共鳴する。 ぴしりと心にヒビが入るような。 やめて、こわさないで おれがてにいれたものまでうばわないで。 しあわせなひとのてでさわらないで。 まやかしのらくえん (27) 2022/06/12(Sun) 6:00:14 |
【人】 会社員 ツグアキあなたみたいに綺麗な方が 俺みたいに勉強しか取り柄のない男と お近づきになるメリットなんて 俺には思いもつかないですよ? [ からからと爽やかに笑ってみせる。 込み上げる笑みは、本物だった。 だって、初恋が実った日の幸福体験を 書き込んだどこかの誰かと こんなに似ているなんて。 ───こんなに別次元のものなのに。 (30) 2022/06/12(Sun) 6:05:43 |
【人】 会社員 ツグアキ[ こんなに様々な面において文明は進化しているのに なんで未だに論文は紙で提出なんだろうな。 馬鹿馬鹿しい、と思いつつ 整える束が微かに震えているのを感じていた。 堅苦しい文字が蚓のようにのたくっている 紙の束の表面 『腎臓内における神経の走行について』 なんていう仰々しいタイトルは あなたの目に映ることがあったか。 脳へ記憶されただろうか。 ] ……そうだな 次は俺からナンパするよ。 (32) 2022/06/12(Sun) 6:08:05 |
【人】 会社員 ツグアキ[ 一応ね、弁解しておくとその約束を きちんと守るつもりはあったんだ。 命を削って書き上げた論文が 理事長のご子息様の名で大々的に 発表されるのはすぐのことで。 そうだな、残念だったよ ……ナンパ出来なくなったこと。 各方面からの良い評価を 作者では無い"持ち得る者"である お坊ちゃんが得た事実は、 あなたの耳にも届いただろうか。 その時俺の姿はもう学校には なかったかも知れないけれど。 ] (33) 2022/06/12(Sun) 6:10:52 |
【秘】 会社員 ツグアキ → 内科医 カナ[ 不思議なことにね古森さん。 呆然と荷物を整える最中、 ああそういえばコーヒーくらい 飲んどけばよかったな、なんて 下卑たことを思って虚に笑ったんだ。 ] (-13) 2022/06/12(Sun) 6:12:08 |
【秘】 会社員 ツグアキ → 内科医 カナ (-14) 2022/06/12(Sun) 6:13:42 |
【人】 会社員 ツグアキ*** 『ストレスチェック……重大な症状が 潜んでいる可能性があります。 速やかに専門医の診断を受けましょう。』 [ 机の上で紙がかさりと音を立てる。 職場の健康診断の結果をもらった時は驚いた。 まじまじと穴が開くほど見つめ 可笑しいな、ストレスなんて あるはずないのに、と笑った。 きちんと緩やかな位置に固められた口角は そのままに、指定された病院の 予約時間を確認して、笑ったままため息を吐く。 ] (34) 2022/06/12(Sun) 6:15:34 |
【人】 会社員 ツグアキ[ 気づけば外はいつのまにか日が傾いて 電気もつけずに狭い部屋で一人 イヤホンを耳に、借り物の幸福に揺蕩っていた。 耳の上から宝物のように両手で大事に 覆い包み込んで、目を閉じる。 空腹感もあまり感じない。 食事を摂ったのはいつだったっけ。 立ち上がるのもめんどくさい。 歩くことも面倒なのに、 指示されたことに背くことも面倒で、 ノロノロと病院へ向かう。 病院なんて 一番、行きたくないのにな。 ] (35) 2022/06/12(Sun) 6:17:28 |
【人】 会社員 ツグアキ[ 医者になりたいと願って 掴みかけた幸福のこと、思い出してしまう。 まさか、そこで ナンパの続きが、 時を経て不意にやってくることになるなんて。 (36) 2022/06/12(Sun) 6:19:40 |
【独】 会社員 ツグアキ/* 体調を崩しておりましてですね ご挨拶すらしておらず大変にご無礼を致しております この度は村建て様とペアを組んでいただけてほんとに幸せです ありがとうございます! あのねほんとに直近のカナちゃんが天才 (-19) 2022/06/12(Sun) 22:00:48 |
【人】 会社員 ツグアキ[ もう、今更どうでもいいのだけれど。 どうせ研究するなら、対象を 脳にすればよかったとだけはつくづく思う。 忘れたいことを綺麗さっぱり消し去るような 奇跡の仕組みがあれば 脳に血糊の手型がべっとり張り付いて 離れないこの靄に 覆われることもなかっただろうに。 ] (77) 2022/06/13(Mon) 13:46:12 |
【人】 会社員 ツグアキ[ 結論から言えば俺の論文の出来は かなりよろしく、ぱっとしない後継の 箔付にぴったりだと見染められたと いうだけの話。 今思い出しても笑いが止まらない。 それは取引、などという対等なものではなく 強要、恫喝、脅迫を、 礼儀正しい体裁と言葉で包みかくした 結論ありきの交渉だった。 なんのことはない。 俺は多額の金と引き換えに 未来とプライドを売り渡した、 売り渡さざるを得なかった、だけの話。 ] (78) 2022/06/13(Mon) 13:46:56 |
【人】 会社員 ツグアキ─── 光の丘診療所 [ 病院の名前は知識としては知っている。 Override Syndromeという病状も知ってはいる。 だからこそ俺が今この病院の待合室に 座っていることだけがひどい違和感。 落ち着かない気持ちを無理矢理 落ち着かせるように柔らかな椅子に背を預け 持ってきた本を開く。 変わらぬ穏やかな表情のまま 口角の位置はゆるやかに弧を描いている。 ただ、ページを捲る指先は小刻みに震える。 ] (80) 2022/06/13(Mon) 13:51:45 |
【人】 会社員 ツグアキ蟾蜍。 それが、自分だ。 世間がゆるすも、ゆるさぬもない。 葬むるも、葬むらぬもない。 自分は、犬よりも猫よりも劣等な動物なのだ。 蟾蜍。 のそのそ動いているだけだ。 (81) 2022/06/13(Mon) 13:52:38 |
【念】 会社員 ツグアキ[ 開いた扉に向かう。 背筋は伸ばして、整えた穏やかな笑みで、 真っ直ぐに足を運んでいるつもりだけれど 診察室までの数歩がやや遠い。 床がぐにゃりと歪んでいるような錯覚に 二、三度足を止めながら、 迎え入れてくれる医師の前に立つ。 ] こんにちは。 [ あくまでにこやかに、声音も穏やかに 軽く頭を下げれば、医師の顔を見られただろうか。 ぼんやりと靄がかかる頭の中、 ちかちかと何かが瞬くのがわかる。 ] (!2) 2022/06/13(Mon) 13:55:57 |
【念】 会社員 ツグアキこんにちは。 こん、………… [ 医師の顔を訝しげに、虚に見つめながら 挨拶を繰り返す。 無意識に手が、イヤホンを探していた。 ]** (!4) 2022/06/13(Mon) 13:58:20 |
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