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![]() | 【神】 pasticciona アリーチェ「え、あ、」 「そんな……」 その法案を聞いた時、真っ先に過ぎったのは自分を助けてくれた恩人達の姿だ。 明確に動揺を隠せない姿がこのような法案が可決されてからは随分と賢くない振る舞いだろうが、幸か不幸か女は普段からもこんな調子だ。 賢くはないが、これで即マフィアとの繋がりで検挙される程に、普段の振る舞いの異質さは小さくはない。全く笑えた話でもないが。 「こんな、こんな強引なの……私はあまり……」 「どうして、こんな急に? 今までの関係だって、そんな悪いものじゃ……」 まだ誰も述べなかった事を、口に出してしまう。 それがどういう意味を持つか、睨まれる可能性を理解した上で発言したわけでもないにもかかわらず、こうして考えを口に出さずにはいられない、愚かな女だった。 #警察署_朝礼 (G1) 2023/09/14(Thu) 21:52:04 |
![]() | 【人】 pasticciona アリーチェ余談だが、この時もう一つ、 女は心底自分の行いを悔いていた。 "こんな日に限って"呑気にお菓子を焼き上げてきてしまったのだ。 「これ、どうしよう……」 まさかこの場で。こんな状況で。平然と。 「今日、苺のクロスタータを焼いてきたんですよ。よかったら食べて下さいね!」 とは言え女が今日持ってきた鞄は普段の物より明らかに大きいもので、時折菓子を署に持ってくる時はいつも同じものを使っていたから、今日が"その日"なのは周囲もすぐに察しがつくだろう。 #警察署 (5) 2023/09/14(Thu) 21:56:10 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ──アリソン・カンパネッロ。 白昼夢のように聞き覚えのない名前が、突如脳裏に浮かぶ。 その人物の詳細こそはわからないが、多額の献金を現所長に行った事、マフィアの排除を望んでいる事、これによって速やかにこの震えあがりそうな悪法が施行されたという事実に、不思議と確信を持てた。 「……これもまた、私が見ている夢なのかしら」 「それでも、何一つ情報がないよりはきっと、」 アリーチェが今望んだのは、確かに「ほんの少しでもいいからこの件についての手掛かりが欲しい」と言う物で。 この夢がまた一つ、それを小さく叶えてくれた事に、まだ気づいてはいなかった。 (/0) 2023/09/14(Thu) 22:27:17 |
![]() | 【人】 pasticciona アリーチェ>>8 テオ 「もう。私が主催者だったら、 間違いなく一か月は開催を先伸ばしにしていたわ」 意地が悪く響く声色も幼馴染となれば怖くないのか、そう軽く拗ねたように肩を竦めて。 「この法を使ってくれるのがテオだけならそうも前向きに考えられるかもしれないけど…… それまでに冤罪の血の海で溢れないかが一番心配ね」 #警察署 (11) 2023/09/14(Thu) 22:37:31 |
![]() | 【人】 pasticciona アリーチェ>>9 エルヴィーノ 「そっ、そう、ね……一体何が入ってるのか…… こ、こんな時に、場違いにもお菓子を……お菓子……」 失言した。さすがに女も即座に気づいた。 貴方の推測通り、出すにも出せず困っている。と言う所なのも事実。 さて次に述べられた言葉を聞けば、きらりと目が光って背筋がしゃっきりと伸びる。 「ほ、本当に? その、本当に丁度今、クロスタータを焼いてきていて……だから……」 「朝!そう!朝は食べた方がいいわよ、エルヴィーノ!」 白々しさを見事に理解しないで貴方が本気で独り言ちたのだと捉えた女は、ようやく取り出せると少し浮かれたように、仕方ないなと世話を焼けて嬉しそうに、鞄を開けて一切れの扇形になるよう複数切り込みの入ったお菓子を差し出した。 #警察署 (15) 2023/09/14(Thu) 22:53:45 |
![]() | 【人】 pasticciona アリーチェ>>10 イレネオ 「そ、そうなの……よりによって 苺のクロスタータ、焼いてきてしまって……」 チラリ、電気鍋の方も見つめる。 明らかに自分の挙動不審な行動のせいで気遣って貰ったのは理解できたのか、さらに小さく縮こまって。 でも、しっかり鞄からお菓子は取り出して貴方が取りやすいようにそっと差し出す。 「……"こんな日"に、って、お、怒りません? その、一切れ食べてからこう、怒られると わたしとしてはとても助かりはするんですが……」 貴方が普段通りに受け止めていてくれている事を全く理解していないから、怒られる覚悟をすでに決めている決死の表情だ。 自分より年下だけど、自分よりも上司に当たる。 だから少しだけ改まった口調になっているけれど、何処かぎこちない上に発言もどこかズレていた。 #警察署 (16) 2023/09/14(Thu) 23:01:38 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「ペネロペ!」 貴方の姿も存在していると認識すると、先ほど頭に叩き込まれた情報に靄突く頭が急速に覚醒したかのように引き戻される。 「よしてよ、貴方を逮捕するつもりはないし…… そんな権限、私にはないわ。あっても使う気もないけれど」 逮捕されたいって言うなら別だけど、と拗ねたように零し。 「……、アリソン・カンパネッロって人、知ってる?」 (/2) 2023/09/14(Thu) 23:07:30 |
![]() | 【人】 pasticciona アリーチェ>>18 テオドロ 「……犠牲を出した上に得るものがあるとしても、 犠牲にされた側には到底納得できないものなのにね」 「……言うならお外と家で、って事?」 これは、話題と名前両方に向けた言葉。 「ごめんね」と言って、次の呼びかけはテオドロに直しはするもののの、数日も日が空くといつもの呼び名に一戻りが普段の流れだ。 貴方がエルヴィーノのに向けた乾いた笑いの真意を知る事もなく、良かった。の言葉にうんうんと相槌をただ打つ。 >>19 エルヴィーノ 「よかった!やっぱりクロスタータは 朝食に食べるのが一番だから、丁度良かったかなって」 非常に残念ながら、そこに気づく女ならあなたの白々しさにも既に気づいていたというところであって、つまりは貴方の苦々しさに全くと言っていいほど気づいてはいない。 元々クロスタータはこの国では朝食に食べられることが多い。だからあなたが朝食を食べていなかったのも、これまでの面倒臭がりな不摂生としか思っていないのだ。 #警察署 (20) 2023/09/14(Thu) 23:28:47 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「まあ。そ、そんな事は……な、ないわよ? はぁ……もしなったらペネロペ、会いに来てね」 なんて、無理難題を述べる。 あらゆるもので鈍い女だが、さすがにこれもジョークの一つだ。本当に自分が捕まったのなら、真っ先に逃げて欲しがる。 「夢で会った」だなんて荒唐無稽な理由ですら逮捕されない暴利な悪法が施行されてしまったのだから仕方ない。 「その、さっき『少しでも手がかりが欲しい』って考えてたら、この名前が浮かんできて……」 そうして、先ほど浮かんだ内容を貴方にそのまま伝える。 (/4) 2023/09/14(Thu) 23:35:52 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「でも……本当に、気を付けてね。 今の警察は冤罪前提の検挙を行いかねないから…… 私も、ノッテマフィアで捕まって欲しくない人は複数いるし、何とか少しでもこの法が早く撤回される事を望んでいるわ」 あなたの所属がどこのマフィアか聞いたことはないが、この地域のマフィアと言えばまずノッテだ。 だからつい真っ先にそこの所属を想定して話をしてしまう。 「私は一介の警察官だから、こんな事知ってもどうしようもできないけれど…… この法の施行の狙いを、少しでも力のある人に届けられれば何かが変わったりはしないかしら……」 (/6) 2023/09/14(Thu) 23:52:25 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレゴン!と貴方のバーの外で小さく聞こえる音。 「いたっ」っという呟きと何かが物にぶつかったような音の後、赤くなった額を抑えながら女が一人、人気がない時間か、あるいは営業時間外に飛び込んでくる。 「ヴィットーレ!」 肩で息をしながらカウンター席にゆっくりと腰を下ろすこともなく立ち尽くしたまま、心配と困惑の入り混じった表情で貴方の名を呼ぶ。 「……よ、よかった。ここは、あなたは、まだ無事なのね。 急に変な法案が通って、今、大変な事になって、……っ」 頭に酸素が回り切ってないのか、そもそもまだ混乱状態なのか、いまいち掴みどころのない話を振ってくる。 「わたし、居ても立っても居られなくて……」 (-53) 2023/09/14(Thu) 23:59:13 |
![]() | 【人】 pasticciona アリーチェ>>22 テオドロ エルヴィーノ 「ふふ」 あらゆる事に鈍い女だけれど、その一言に嬉しさが増したのか、頬を僅かに赤く染めながら微笑みを浮かべた。 幼馴染がこの調子なのはいつもの事で。 投げやりだとしても伝えられる素直な言葉が心に沁みる。 「よかった。これで家に帰って一切れも減ってない クロスタータを見て途方に暮れる事もなくなったわ。 結構お腹膨れちゃうだろうから、無理しないでね」 「二人とも、いつも助けてくれてありがとう」 勿論何枚も食べて貰えれば助かるけれど、ここは優しい人が多いだろうから自分が持って帰る量を考えて気を使われることもないとは限らない。 だからつい、先手で無理をしないでと伝えてしまう。 (23) 2023/09/15(Fri) 0:26:43 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「う」 あのざま。そう言われると何も否定できない。 そもそもこの法案だって現所長が大きく関わっているのだ。 「漁夫の利、かぁ……」 「もしそうなら、手を組めたらもっと、って思うけれど…… ……検挙ばかりしている側が言い出せることではないし、 今の警察も、そちらも絶対受け入れないでしょうね」 仕方のない事だ。そんな甘い世界ではなく、仲良くと手を組むと慣れあいは近いようでまるで違う話。 今までは緊張を放ちながらも付かず離れずの距離を取っていたのをぶち壊したのもこちらなのだ。 「……恨まれても仕方ない事、してるわね」 考えた末にその言葉が出てくること自体、やはり女の思考は比較的お花畑に近いのかもしれない。そんな小さな感情の話ではきっとないのに。 (/8) 2023/09/15(Fri) 0:50:17 |
![]() | 【人】 pasticciona アリーチェ>>24 ニーノ 「ニーノ」 「外に行くの?勿論、持って行って。……」 「今日、上手く焼けた自信作だから、可愛い一番弟子に食べて貰いたかったの」 小声でそう言ってウインクをした後に、一切れ。何かに包む?なんてやりとりもした後に貴方に満面の笑みで手渡して。「声をかけてくれてありがとう」と伝えながら、出ていく貴方に手を振って見送った。 「いってらっしゃい。がんばってね」 (25) 2023/09/15(Fri) 0:56:59 |
![]() | 【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ「あら!どうしたのアリーチェ、まだ開店前よ。 アタシに会うのが待ちきれなかった?♡」 カウンターの中のヴィットーレは いつも通りの様子であなたを迎える。 膝に置いてたアルバムをカウンターに置いて、 よいしょと立ち上がれば、座りなさいなと促して。 よく磨いたグラスに氷を数個と、冷たいお水を注げば、 あなたの前に置く。 「大変なことになったわね。 その様子だと、警察にとってもサプライズだったのね。」 パチ、とお店の灯りをつければ、 ヴィットーレの顔が良く見える。 血色のいい、いつも通りの顔だ。 「でもね、きっと無理をして通したサプライズのはずよ。 無理をしたらね、必ずどこかで崩れるの。 昔、懇親会の時に皆でトランプタワーを建てたの覚えてる? アリーチェったら、背伸びして上のところを組み立てようとして よろけて全部崩しちゃって!ふふ、あの時は お腹を抱えて笑っちゃったわねぇ」 くすくす、楽しげに笑うヴィットーレの姿は、 あなたを落ち着かせるのに一役買えるだろうか。 今は冷静にいましょう、とあなたの目を見ながら添えて。 (-109) 2023/09/15(Fri) 6:19:39 |
![]() | 【秘】 黒眼鏡 → pasticciona アリーチェ――あの『反社会組織取締法』初の逮捕者が出たあと、 そしてあなたが教会に立ち寄る日。 礼拝堂の前で、上は柄シャツ、下は短パンにサンダル履きというラフにもほどがある格好でうろうろとしている男がいる。 彼は何かを待っているよう、 あるいは冬眠を控えた熊のように 妙に重たげな動きで足を引きずり、 ぺたぺたと足音を響かせていた。 「お」 …そんな男の顔が、あなたの方を見てぱ、と上がる。 #教会 (-166) 2023/09/15(Fri) 17:28:11 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「爺さんの代……?わからないけど、昔はもう少し、 今より警察と仲のいいアルバがあった、んだっけ……」 爺さんが誰を指しているかは曖昧だが、小さく聞こえた言葉には思わず反応してしまう。 確かその頃は勢力図が今よりも大きく変わっていた記憶がある。 「うぅ……そう言うさっぱりしてる所は助かるわ…… ねちっこいのは警察の方だと思うし…… それだけ真面目に仕事してる人も多いんだけど……」 「……でも、ペネロペって随分何て言うかこう、 争い?好きじゃないのね。さっきの手を組む話だって、 上がいいなら構わなさそうに言うんだもの」 マフィアが好戦的な人だらけとまでは思ってはいないが、 こと一触即発まで関係が悪化していた警察相手に そんな穏健な案を否定しない人がいるのは珍しく感じた。 (/10) 2023/09/15(Fri) 22:12:51 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「さ、サプライズどころじゃないわ。一人、同期も検挙されて……パオロ、パオロは、少なくとも逮捕されるような人間では絶対なかったのに、……っ」 焦り捲し立てる構図になっている事、そして貴方の表情も顔色もいつも通りなのにようやく気付けば、恥らうように頬を染めて俯いた後に勧められた椅子に腰かけ、水でこくりと二、三度喉を潤す。 突如振られた昔の話には目をぱちぱちと瞬きをしたあと、懐かし気な表情になってそれに乗り出した。 「えっ、そう、そうね。……ふふ、懐かしいわ。そう、あの時みんなに喜んで貰おうとしたのに全部台無しにして……泣きべそはかいたけど、ヴィットーレがそんなに笑うから、すぐに悲しいじゃなくて楽しくなって……」 昔話を思い出せばその当時の気持ちが強く思い出されて、それに貴方がそんなにも楽し気に笑っていれば、爆発した焦りも徐々に落ち着いていき、目を細めながらコップを揺らして、わざとカランと氷の音を鳴らした。 「……ごめんなさい。もう、大丈夫。ヴィットーレの事は勿論、もし、って思うと子供たちの事も心配になっちゃって、慌てて……」 (-204) 2023/09/15(Fri) 22:35:12 |
![]() | 【人】 pasticciona アリーチェ>>31 イレネオ 「えっ、と」 厳しさに少し怯え、突如ピンと背筋が伸びる。 言い切られると怒っているのではないかと心配してしまう性分はそう簡単にかえられなくて、この日も言い切りの言葉にいちいち表情をコロコロと変えていく。 「本当……?」 恐る恐る貴方の表情を盗み見て、言葉が嘘じゃないのに気付くと途端にはふ、と息を吐いて脱力する。 「えっ、あ、大きいのがよかっ、た? ……それなら、これかしら」 全部均等に切っているのではなく、あえてお腹の好き具合に合うように大きさは少しばらけて切っていたから、1.4枚分くらいの大きな欠片を上から指さしている。 またその言葉で自分のお菓子に興味を持ってもらえたのが嬉しくて纏っていた怯えの空気が一瞬にして霧散した。何ともわかりやすい女だ。 #警察署 (47) 2023/09/15(Fri) 22:43:06 |
![]() | 【人】 pasticciona アリーチェ「そうかしら。ハードル、低いかな…… でも『一人5枚食べてね!』って言うのは、それが実際助かるとしてもあんまりだと思うの。 多分、業務に支障が出ちゃうし……ううん、今は出た方がいいのかもだけど……」 女は加減と言う物がまた下手であった。 最も、一切れだけでなく二切れ目に手を出してくれた時点で助かる以上に嬉しいと言う感情でめいっぱいで手から零れ落ちそうなくらいだ。 「わ、わかったわ。次こそは、 「今日、苺のクロスタータを焼いてきたんですよ。よかったら食べて下さいね!」 「って言える人間になってみる。この日以上に恐ろしい日なんて、そうないもんね」 幼馴染の言う通り、この日程にやらかしてしまったと言うほど恐るべき間の悪さに出会うことは早々ない。次からは明るく堂々とお菓子が飛び出てくるはずだ。 #警察署 (48) 2023/09/15(Fri) 22:53:39 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → 黒眼鏡「アレッサンドロ、さん?」 あ、と貴方を視界に映した時に真っ先に声が零れて、 それから貴方との再会を安堵したように駆け寄ってくる。 「だ、大丈夫でしたか?よかった、無事で…… い、今凄く大変なことになっていて……」 なんて、そんな事は当然とっくに知っているだろう相手た捲し立てそうになっているのに気付き、一度息を呑めば貴方に申し訳なさそうに頭を下げた。 「あの……誰か、お探しでしたか?何か用事があったなら、 代わりに教会に言付けてきますけど……」 #教会 (-206) 2023/09/15(Fri) 23:00:11 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「……そう、そうだったの」 アルバファミリーと言うマフィアがあったのだと自分は知識としてしか知らなかったが、彼女のように血縁者がアルバの物だったなら、少し無神経な言い草をしてしまったかもしれない。少し後悔を秘めつつ。 「……ペネロペは、割り切るのがうまいのね。 私はどうしても地続きに考えてしまって、半端に情が沸いて、その結果どちらにも迷惑をかけてしまいそうだもの。 お爺様も、今のペネロペに近い考え方だったのかしら」 「……ただ……え、っと……ううん、やっぱりなし、で」 争いについての考え方はそれは最もだと何度も頷いて聞いていた。 ただ一つそれを聞いて思い浮かんだことがあるが、それは口に出さない方がいい話題なのも薄々察していて。だからこんな歯切れの悪い中途半端な話題ひっこめになった。 (/12) 2023/09/15(Fri) 23:20:43 |
![]() | 【秘】 黒眼鏡 → pasticciona アリーチェ「ちょうどよかった、<kana signorina>お嬢さん<kana>」 今まさに街を騒がす大騒動の、 プレジャーボートくらいなら沈んでしまいそうな渦中の さらに真っただ中。 そういう立場にいるはずの男は、とんと礼拝堂に続く石段を蹴る。 とん、とん、とんと緩やかに。 大股であなたのほうに近づくと、 黒眼鏡の奥の瞳を細めて、にかり、と笑った。 「ああ、ご心配どーも。 まぁこのとおり、まだお縄を頂戴してはいないんだが」 礼拝堂の方を振り返る。 「そう、ちょうどよかった。 声をかけられそうな人が見当たらなくてね、 言伝を頼みたいんだ」 そうして、肩に担いでいたアタッシュケースをぶらり、と下げた。 「実はね、寄付がしたいんだが。 寄付って使い道が指定できるものだっけか?」 それは寄付ではない。 #教会 (-211) 2023/09/15(Fri) 23:27:26 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → 黒眼鏡「構いませんよ、何……」 「を、……… ? 」アタッシュケースの方にまず視線を移して固まり、 続いて述べられた言葉に更に固まる。 文字通り、雷にでも打たれたような衝撃が走った。 「だ、だめですよ!使い方を指定したら賄賂ですよ!」 思わず叫んでしまったが、献金と賄賂と寄付と言う物は紙一重と言われればそうハッキリ答えられないのも事実である。 それはともかくとして、中に何が入ってるのか、想像通りでも想像外でも恐ろしい事になりそうだな、と思いながら声を震わせたまま尋ねる。 「いえ、いえ……指定の内容にも寄るかもなんですが…… 一応お聞きますが、どんな使い道をお望みですか?」 #教会 (-213) 2023/09/15(Fri) 23:38:25 |
![]() | 【秘】 黒眼鏡 → pasticciona アリーチェ「まぁーまぁーそう言わずさあ」 「……」 「あんまり大きい声じゃあ言えないから、ちょっとこっち来てくれる? ちょーっとだけ、すぐ終わるから。 そう、そこの物陰辺りにさ。 プライバシーってのがあるじゃん、俺みたいな男にもさ、一応さ」 にやーー…っと笑ってなにやらまくしたてながら、 礼拝堂の脇の茂みを指さす。 黒眼鏡、柄シャツ、アタッシュケースと、怪しさが青天井の違法建築だ。 なんてうさん臭さだろう……。 #教会 (-216) 2023/09/15(Fri) 23:42:34 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → 黒眼鏡「え、えぇ……」 「大きい声じゃ言えないならやっぱり賄賂じゃ……」 「…………」 「プライバシーが必要なお願いもやっぱり賄賂じゃ……」 「……うぅん、……」 さすがのノッテの周辺を嗅ぎまわろうとして失敗したあげく貴方に何度も助け出された筋金入りの女でも、「これは怪しいのではないか?」という感覚は辛うじて残っているらしい。 さて、どうしよう。とは言え、とは言えだ。 貴方の外見の胡散臭さは今に始まった事ではないし、もしかするとまともな寄付だった場合は教会に取って大変助かるのも事実。 そもそもこの女は貴方の意図がどうであれ、貴方に恩義を大層感じている。 万が一の最悪が発生するとしても、この役目を他の教会の人間に押し付ける訳にもいかない。と、くれば。 「……わかりました。ついていけばいいですか?」 こんな状況下でも、女の答えはYESだ。 #教会 (-218) 2023/09/15(Fri) 23:58:35 |
![]() | 【秘】 黒眼鏡 → pasticciona アリーチェ「そうそう、ついてくるだけでいいから」 このままホテル来いって言ってついてきそうだなあ。 とかいうと怒られそうなことを口にしない程度には配慮があった。 アタッシュケースを再び肩に担いで、 コッチコッチー、と手招きしながらぐるりと角を曲がり茂みの中へ。 がさがさ、と木立を腕でかきわけて、木漏れ日がまだらに落ちる 木々と壁の隙間にあなたを引き込むと、 「ん」 笑顔でアタッシュケースを差し出した。 ……重そうだ。 #教会 (-219) 2023/09/16(Sat) 0:05:09 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → 黒眼鏡「こう、もう少し言い方がある気がするんですが…… わ、私以外だったらビンタされているかもしれません」 最も、もし貴方が口にしていてたとしても、怒るどころか本当についていく愚かさを秘めていたが、辛うじてそれが明るみになる事はなかった。 「……その。わ、わたしでも持てる重量、ですか……?」 ……重そうだ。 いくら警察官として鍛えているとはいえ、見かけが想像以上に重そうだったため思わず弱音を吐いてしまった。 だがここで引くわけにもいかないので、差し出されたケースを、とりあえずは受け取ろうとする。 「寄付の使い道は希望があるんでしたっけ」 #教会 (-221) 2023/09/16(Sat) 0:15:45 |
![]() | 【秘】 黒眼鏡 → pasticciona アリーチェ「こう見えて紳士でね。 言って大丈夫そうな女性にしか言わないよ」 紳士はそもそもそういうことを言わない。 軽薄な笑みに頬を歪めながら、 「大丈夫大丈夫」と根拠なく言ってケースを渡す。 「手離すよ」 石でも詰まっているんだろうかという、 ずしり、とした重み。 とはいえ、ケース自体はそこまで大きくはない。 …両手で抱えられないことはないだろう。 「そう。そこにさ」 くい、と後ろを指さす。 茂みの向こうには簡素な柵があり、その向こうには共同墓地が広がっている。 葬儀もなく、きちんとした墓地に運ばれるでもない 縁無き人をただ静かに埋葬する、そのための場所。 「知り合いがいるんだ。 彼女のために使ってほしい」 ――黒眼鏡の奥の瞳が真っ直ぐに、あなたの目を覗き込んで。 気が付けば、その顔からは笑顔も軽薄な態度も、 嘘も虚飾も、なにもかも。 何もかもが、剥がれ落ちていた。 (-224) 2023/09/16(Sat) 0:28:05 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「……身内の事が大好きなのね。 その為に身を切れる人こそ本当の身内想いなんでしょうね」 自分は、どうだろう。 「身内のように親しい子もいれば大切な同僚もいるけれど。 守る為に、恩人に銃口を向けられる自信はない、なぁ」 ひっこめた話題については暫く悩んでいたが、「ごめんなさい」と告げてそれ以上それについての発言はなかった。 自分の小心者の度合いにまた少し心が磨り減る。 (/14) 2023/09/16(Sat) 0:28:31 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → 黒眼鏡「本当ですか?それなら安心…… あれ?言って大丈夫そうだと思われて……?」 「わっ」 ここは喜ぶべきなのか、怒るべきなのか。 悩んでいる間に渡されたケースから突如伝う重みに思わず落としてしまいそうになったから、慌てて両手でそれを抱き留めた。 「こちらで眠られているんですね」 共同墓地に一度視線をやり、次に貴方に視線を戻す。 先程までの様子と何もかも違う貴方の姿に僅かに動揺の姿を隠せないでいたが、両手で抱えていたケースを一度足元に降ろし、こくりと頷き両手を組んで、祈る。 「……わかりました。 こちらの寄付は、この墓地の為に使わせて頂きます」 「主の御慰めと励ましが注がれますよう、お祈りいたします」 ぱちりと瞬きをして、オパールグリーンの目が真っすぐにあなたの目を見つめ返す様子は、普段の気弱さはとくと鳴りを潜め、凛とした力強さを含んでいる。 「……死は一時的な別離であるとはいえ寂しいものですね」 (-230) 2023/09/16(Sat) 1:13:36 |
![]() | 【人】 pasticciona アリーチェ>>49 >>a9 イレネオ 「あ、よかった……皆のお陰で私が持ち帰っても 何とか食べられる量になった気が……え、あ」 「ありがとう……」 素直にお菓子の出来を後輩に褒められれば頬に朱が差し、 両手を合わせてはにかみながら穏やかな笑顔を零した。 「でもテオドロのを奪ってしまうのはまずい、かも…… あと数切れ足りなかったら渡しますので、ね?」 そして心外と思われる方の取り方をする。 心外だと言う顔をされたかもしれない。 しかし、すれ違っていた女は本当に真剣に入れ替えが発生するのを心配していたのであった。 先程の朝礼でのヒリついた空気を一時的に忘れ、 このひと時だけは穏やかに過ごすことができただろう。 #警察署 (52) 2023/09/16(Sat) 1:28:22 |
![]() | 【秘】 黒眼鏡 → pasticciona アリーチェおどけた様子など、吹いて散らしたかみくずのようにどこかへと飛んで行ってしまった。 木々の間をすり抜ける軟風が、ざわざわと枝葉を擦らせる。 そのざわめきがほんの少し、男の口元を緩ませる。 ――肺の奥、一呼吸ぶんの息すら吐き出すように、それはか細く。 それは、死の間際の灯か、あるいは引き絞る喘鳴にもどこか似ていた。 「ああ、頼む」 かちゃ、と音がする。 北欧系のルーツを持つであろう、夜の海のような黒目が覗く。 「死といったって、いろいろあるさ。 そして俺は悪党だから、死後の世界でなにがあっても、生前の苦しみは拭われたりはしないと思っている。 だから、死にざまには、等級があると思っている」 あなたの瞳からついと目を逸らすと、男は墓地の方に視線をやった。 決してそれ以上近づくことはなく、まるで見えない壁があるかのよう。 ならばその双眸は遠くを、壁の向こうへと向けられているのだろう。 「彼女は多くの家族係累、友人たちに囲まれて死ぬべきだった。 それを奪った俺に、寂しいは上等すぎるだろう。 別離で苦しむのは、その資格があるものだけだ」 男はきっと、その言葉に滲む寂寥を認めない。 (1/2) (-234) 2023/09/16(Sat) 1:30:00 |
![]() | 【秘】 黒眼鏡 → pasticciona アリーチェ「俺が彼女にできるのはせいぜい、 好き勝手に弔いの鐘を鳴らすことだけだもの」 かちゃり、と。 胸ポケットに差し込んだ黒眼鏡が、音を立てて揺れた。 「ありがとな、アリーチェ・チェステ。 俺からじゃ、受け取ってはもらえねえだろうから」 (2/2) (-238) 2023/09/16(Sat) 1:33:45 |
![]() | 【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ貴方の焦りが徐々に落ち着いてくるのを見れば、 ヴィットーレは目を細めてそれを見守る。 冷静さは有事に対して最も必要なものだ。 なにをするにも、まずは落ち着くのが一番で。 「ふふ、本当に楽しかったわね♡ あの時もほら、無理して組み立てようとして 崩れてしまったんだもの。」 「今回だって同じよ。アタシたちは、 トランプタワーが崩れるまで耐えればいいの。」 逆に、それ以外でどうにかできる術がないとも言える。 下手な動きを見せれば被害が増えるだけ。 じっと待つのは、最も精神的につらい事だけれど…… そうするしかない、今は。 「……そうねぇ、教会も、孤児院も…… マフィアと関わりがない、と言えば嘘になるものね。」 マフィア 少なくとも、自分とは関わりのある場所だ。 もし自分が捕まって、過去を洗われでもしたら 無事では済まないかもしれない。 無論教会に他のマフィアが関わっているなら、 その人達経由で目を付けられる危険性だってある。 「………大丈夫よ。少なくともアタシからは、 あの子達に繋がらないように対策しておくわ。 ……ねぇ、もしアタシが捕まったら、 『ヴィットーレは旅行でしばらくこれないみたい』って、 孤児院の子達に伝えに行ってくれない?」 今でも定期的に顔を出している、自分の孤児院。 急に顔を出さなくなるとしんぱいさせてしまうだろうから、と ウィンクして。 (-260) 2023/09/16(Sat) 10:31:37 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「タワーが崩れるまで……耐え、続けないとだめ。 ……でも、本音を言うと怖いわ、ヴィットーレ。 こんな法案を通した時点で、警察は生半可な扱いをしてくれるとも思えなくて……摘発者を牢に並べて満足するとは思えない」 焦りの根本的な部分かもしれない。 耐えるしかないという結論が出た以上、ここを蒸し返しても仕方がない物ではあるが、こうして口に出してしまうのは女の弱さで。 「教会、はきっと大丈夫。逮捕されるとしたら私だけ。 ……そうなるように、きっと言いきってみせるわ。貴方も、皆も、誰も傷つけたくないから」 事実、マフィアとの関わりという意味で言えば、教会の方も原因は自分にあるものも多い。自分一人が全部の疑惑をかぶって差し出せば何とかならないだろうか。そんな楽観視をしている。 「……やだ、縁起でもない。って言いたいけど…… わかったわ。もし、本当にそんな事になったら孤児院の子達にもそう伝えておくわ」 表情は晴れないけれど、いつもの調子のあなたのウインクを見て肩の力が少し抜ける。こんな会話ができるのはいつまでだろうか、と言う暗い懸念に蝕まれながら。 (-287) 2023/09/16(Sat) 18:46:24 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「……私の幼馴染や教会みたいなものね」 「居場所を守る、か…… この法の施行でもっと考えないといけないって、 重々想い知らされちゃったわ」 「それは…… 話し合いさえ応じない、なら、……そうね」 その時は引けるかしら、引き金……」 「でもやっぱり話を聞いてて、ペネロペ、格好いいわ。 ってたくさん思うわね。理想の大人のお姉さんって感じ。 わたし、女の先輩で仲いい人が全然いなくて、 相談とか悩む件も多かったからペネロペがいて嬉しいわ」 (/16) 2023/09/16(Sat) 19:29:39 |
![]() | 【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ「……そうねぇ、きっと捕まったら、 あまり人道的な扱いは受けないかもしれないわね。」 そればかりは、誤魔化せるものではないから 素直に肯定をする。 きっと奴らは世間体なんてものはほとんど気にしない。 …いや、『マフィアなんてゴミ同然の存在なのだから、 何をしようが世間体には響かない』とさえ思っているかもしれない。 捕まり、外から隔離された世界でされる事など、 想像するだけで身震いしてしまう。 「………今のアタシたちに出来るのは、 守りたいものを守るために、マフィアと接していたという 情報をどうにか隠ぺいする事くらいよ。 アリーチェ、貴方も捕まったりしてはだめよ。 貴方が捕まったと聞くだけでも、アタシの心は傷つくの。」 貴方が、他の誰かに対して心に傷を負うように。 貴方も大切な家族なんだから、とヴィットーレは笑う。 そうしてあなたがこちらの願いを聞き届けてくれたなら、 ヴィットーレはほっとしたように肩の力を抜いて。 「頼んだわよ、アリーチェ。 …さ、今日でここも最後の営業になる予定だし、 今日は張り切るわよ〜♡貴方は何か飲んでいく?」 なんて、お店の看板をひっくり返しに向かいながら、 問いかけるのだった。 (-298) 2023/09/16(Sat) 19:46:54 |
![]() | 【人】 pasticciona アリーチェ「……お、思ってない! 思ってないわ……いえ、ですよ?」 まずい。心外と思わせてしまった。 しかしながらその後の反応を見て、思う。 隣の幼馴染も一件誤解されやすい言動を取るが、彼もそのタイプではないのかと気づきを得たようにうんうん唸っていた。 「些事じゃない事をいつもしてしまってるわ……」 と、聞こえてきた会話には思わず震えあがった。 大方、非効率な真似を行うのはこの女であることだろう。 クロスタータ片手の講釈も散々見慣れた幼馴染の顔なので滑稽どころかいつも通りの安心感を得てしまうのだが。 「朝ご飯自体は食べた方がいいと思うから…… エルヴィーノの事が心配な子達で、 交代で軽めの朝食を持ってきた方がいいかもしれないわね」 なお、今朝の法案の件の時点で再びしょんぼりしなおしたが、この渦中の事を思えば些細なことである。 #警察署 (64) 2023/09/16(Sat) 20:42:00 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → Chiavica テオドロそうしてそんな会話の最中、 合間と隙を見計らって貴方に耳打ちを一つ。 「こんな時に言うのもあれなんだけど、あのね。 今度作ろうと思ってた新作の材料があるから、 もしよかったら味見して欲しいの」 悪法が施行されようと休日は平等に回ってくる。 そんな時に頭を抱えて過ごすよりはいつも通りお菓子作りを行いたくて、そしてそのお誘いだ。 「おいしくできるか不安だからテオにしか言えなくて……」 (-307) 2023/09/16(Sat) 20:47:56 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → 黒眼鏡別離で苦しむのは、その資格があるものだけ。 本当にそうだろうか。どんな人物でも自分の感情を蔑ろにしないといけないなんて、とアリーチェは最初に思う。 神は、神から見て善人と言う区分を設けないと思うから。 悪党がいるとして、それは悪党の側が神の愛を拒否しているだけ。 悪党と自らを例える貴方に、昔聞いた言葉を不意に思い出した。 「等、級?」 「……今からでも悔い改めれば救われる、と言っても、 きっと望まれないし、信じられる事もないのでしょうね」 「私も、神の愛を疑ったことがありますから、 人にこんな事を言える身分では全くないんですけどね」 自分は人を導く神父でも、シスターでもない。 なにより、聖職者であっても、他者の選択は全て自らに任されており、その選択を誰であっても裁く事はできないのだから。 貴方のその選択を少し悲しくは思うが、価値観の押し付けはよくないとそれ以上この件について言葉を紡ぐのを辞めた。 「いいえ、私は大したことは何も。 もし少しでもアレッサンドロさんの役に立てたのなら、 昔のご恩を返したと言うだけですよ」 (-316) 2023/09/16(Sat) 21:28:47 |
![]() | 【秘】 Chiavica テオドロ → pasticciona アリーチェ「俺はお世辞は言わないってのに、 あんたって意外と怖いもの知らずだよな……」 素に近い口調で、その妙な心配性をつつく。 この俺に出せるんだったら誰でも行けないか。 気を遣われないのが楽ってんなら構いやしないが。 「別に……いいですけど。予定があるわけじゃなし。 仕事もすぐに忙しくなるわけでもないだろう」 一瞥くれただけで、その視線はすぐに正面に戻される。 まず最初に一度断っていない時点でそれほど面倒がってはいないらしい。幼馴染であるあなたなら分かるはずだ。 (-317) 2023/09/16(Sat) 21:32:48 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「……そうよね。やっぱり、 何としても皆が捕まらないようにしないと。 もっと、もっと、何か情報でも握れればいいのに……」 貴方が素直に肯定してくれたことで、それ以上大きく騒ぐことはなかった。 そうして零すのは情報への渇望。待つしかない。けれど待つ時間を少しでも短くできないかと言うもの。 「うん、ありがとうヴィットーレ。同じ気持ちよ。 きっと貴方が消えたらわたし、平静を装える自信がないから、きっと署でわんわん泣いちゃうかもしれないわ」 だから、絶対捕まらないでね。 本当は"絶対"なんてないなんて知っていて。 それでも貴方にそう言わずにはいられなかった。 「あ。それじゃあわたし、モヒートで」 「……わたし、ヴィットーレがマフィアになった理由、 そう言えば知らない気がする。孤児院の皆のため?」 看板をひっくり返すあなたの背にそう問いかける。 こうは言ったものの昔から気になっていたのは事実で、こんな話題の中じゃないと切り出せないと言う所があったから。 (-323) 2023/09/16(Sat) 21:45:20 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「裏切者……」 「組織内での裏切者なんて考えたくないわね…… 最も、今の警察は裏切りどころか分裂状態だけど……」 公僕である以上、上が水は赤いと言えば赤くなるのだ。 新法案に反発している人は少なくはなくなくとも、 それに表から批判できる人はいないし、"いなくなる"。 「……ノッテに裏切者がいない事、私も祈ってるわ。 どこでどんな利権が発生しているかわからないだけに、 いないと言い切れないのが複雑だけれどね」 (/19) 2023/09/16(Sat) 22:00:08 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「……えっ?」 「……やだ、ペネロペ。 わたしが幾らドジだからって、性別を間違えたりは…… 間違えたりは…… しない…… はず……」 またからかおうとして〜。くらいの軽い笑みを最初は浮かべていた物の、徐々にその表情が固くなって。 「………… うそ 」 (/20) 2023/09/16(Sat) 22:01:09 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → Chiavica テオドロ「もう。テオ相手だから怖いはないわよ。 お世辞、言わないのもあるけど一番は安心できるから」 優しい、優しくないは各人色々差はあるけれど。 同い年で恐怖も共有した大切な幼馴染に勝る安心度はない。 例えお世辞の有無にかかわらず、貴方であればそう。 「本当?よかった! それじゃあ、今度のお休みに作って待ってるね」 相手が面倒臭がっていても多少押す気は満々だったのだが、今回は割と乗り気の部類らしい。 下手な事をやってその気を逸らしてはいけないからと、その場は大人しく元通りに正面に向きなおした。 (-326) 2023/09/16(Sat) 22:12:29 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「夢、一瞬で儚く砕け散ったわよ…… ううん、まだ夢の中ではあるんだけど」 「絶対女の子だと思ってたのになぁ…………」 完全に女性の先輩と思って慕う気満々だった女は、ショックのあまり机に顔を押し付けるように突っ伏した。暫くは起き上がってこない事だろう。 「じゃあどうして女の子に見える格好を? ……女の方が有利なこととか、やっぱりあるのかしら」 (/22) 2023/09/16(Sat) 22:17:23 |
![]() | 【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ「ふふふ、駄目よそんな露骨に悲しがっちゃ。 泣くならせめてお手洗いの中にしなさいな。」 ちゃぁんと努力するわよ♡と貴方を安心づけるために 笑ったヴィットーレは────しかし、 明日には捕まる運命だ。まだ誰も知る由はないけれど。 場末のバーは開店してもすぐにお客が来るようなことはない。 注文通りにモヒートを貴方に差し出して、 問われた言葉には、一度何かを片付けるようなしぐさで 背中を向けて。……表情は見て取れない。 「………う〜ん、どちらかというと自分の為ね。 知りたい事があったの。その為に、マフィアになるのが 一番都合がよかったのよ。それに………」 「……孤児院で過ごすのが、辛くなってしまって。逃げたのね。」 「……昔、アリーチェを助けた時……… 一緒に居た子供達を覚えてる? アメリータ、レオニタ、トール…皆貴方と遊んだことがあるのだけれど。」 (-331) 2023/09/16(Sat) 22:26:49 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレモヒートを受け取りながら、一口飲みほす。 果実の酸味とラムの甘い香りの液体が乾いた喉に染み渡る。 「知りたい事があるから、マフィアに……」 一度そこで口を開いたのは、自分にも思い当たる何かがあったのかもしれない。 表情が見えない事に少し不安も覚えるけれど、本当に話したくなければきっと話を流してくれただろうと受け取り、続く貴方の話を神妙な顔で頷きながら聞いて。 辛くなって逃げた。 いつもの貴方からはとても想像できない動機で、それだけにそれ程の何かがあったのかと途端に心配そうに表情を歪める。 「……ええ、勿論覚えているわ。 あの日の事を忘れたことは一日足りともないから、 誰が一緒にいたかは記憶にしっかり残っているよ」 あの日。貴方に助けられたあの日。 不審な男に絡まれて恐怖で身も竦んだ時、貴方の姿が見えた時、自分がどれ程救われた事か。 きっと貴方に伝えたくても伝わり切らないその心を思い出していた。 (-333) 2023/09/16(Sat) 22:46:17 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「諜報するには女の方が有利なのはよくわかったわ。 いざとなれば、男の力で抵抗もできるし…… ちょっと羨ましいかもしれないわね、ペネロペのそれ」 夢のない話に更に潰されて机に突っ伏していた顔がようやく上がる。 「……今、やっぱりペネロペの所、忙しい? よかったら様子を見るだけでもいいから、 ちょっと、ある人をサポートして貰ったりは……」 ごにょごにょ。 自分でも、余りいい提案じゃないのは理解していたのだろう。 声が小さく潰れて行って、目線は逸らされる。 普通は多忙なら、誰かひとりじゃなく身内全体の利になるように動く筈だ。 それを夢で出会ったどこの馬の骨か知らない女の要望を聞いてくれることなんてまずないと思うけれど、言わずにはいられなかった。 (/24) 2023/09/16(Sat) 22:55:32 |
![]() | 【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ「あの時は本当に驚いたわ。 貴方が無事でよかった。 大切な家族が襲われたとなったら、 アタシも冷静じゃいられなかったもの。」 あの時のヴィットーレたるや否や。 元々スラム育ち故の喧嘩慣れした体術は荒々しく卑劣で、 その頃から変わらなかった普段のやんわりとしたイメージを 払拭してしまうには十分すぎるくらいの姿を君に見せていた事だろう。 ヴィットーレにとって、家族を助けるのは当たり前の事。 だからきっと貴方にどれだけの感謝を伝えられようと、 気にしないで、の一言で軽く流してしまって。 「…………うちの孤児院、経営が厳しかったの。 前の院長が大往生でお亡くなりになって、後継ぎもいなくて アタシが継いで………まぁ、まだ16だったから、 お金のあてなんてないし………当たり前よね。」 依然として背中を向けたまま語る。 確かに裕福そうではなかった孤児院ではあるが、 貴方の記憶では、そこまで貧困にあえいでいた、というほどの 困窮具合でもなかったはずだ。 「最初は色々売ってたのよ。まだ使える家財とか、 皆で内職したものとか………まぁ、それでも 子供たち全員を養うには全然足りなくて…… 売れるものだってどんどんなくなっていって……」 客は未だに誰も来ない。 今ここには、貴方とヴィットーレの二人だけ。 (-339) 2023/09/16(Sat) 23:09:47 |
![]() | 【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ「───孤児院に必要最低限の家具しかなくなった頃。」 「子供しかいないうちの孤児院に、 あと売れるものは 一つしか 残っていなかった。」アメリータも、レオニタも、トールも。 あの日以降の交流会で、貴方が見た覚えはないはずだ。 ヴィットーレは背中を向け続けている。顔は見えない。 (-340) 2023/09/16(Sat) 23:13:00 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「……そんなに、厳しかったの? なんで、相談してくれば……なんて、言えない、かな」 そこまで当時の孤児院の経営が悪化していたなんて、幼子だったアリーチェにとって想像もしていなかった事で。それは今となっても同じだ。 教会だって裕福な訳ではない。助けを求めてと言ったってあくまでそれは当時庇護されていた身分のアリーチェが言うことだ。 実際の教会はそんな余裕はないと動かなかったかもしれない。 助けを求めるのだって容易ではないのに、それでも貴方の話を聞いていく度に、何か自分ができる事がなかったのかと後悔の念に駆られる。 「…………」 思わず拳を握りしめた事で爪が刺さって赤みが増す。 アメリータ、レオニタ、トール。 三人を見なくなったのは、誰かに引き取られていたからと今日まで信じて疑わなかった。 それがいかに愚かなで安直で楽観視した考えだったか、思い知らされ突き落とされたような気持ちになる。 「……わたし、は、誘拐された事があるから、誰かを切り捨ててることが凄く嫌いで、怖くて、今もそんな世の中が許せなくて、だから、…… ……だから、彼らを売ったこと、他の方法は本当になかったのかって、怒りが止まないけれど」 (-348) 2023/09/16(Sat) 23:55:15 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「でも、飢える事がどれ程辛くて、 孤独でさもしくて心細くて苦痛か、知ってる」 アリーチェが料理やお菓子を振舞いだしたのもそうした経験からだ。警察官に就職してから教会にも孤児院にも、定期的にお菓子を差し入れにいったことがあるだろう。それもひとえに、飢えの辛さを知っているから。 「それに、」 「わたし、ヴィットーレの家族だから、」 「一番苦しかったのは、家族を切る判断をしなければいけなかった、ヴィットーレじゃないかって、思うの」 潤みそうな目を堪えながら立ち上がり、 貴方の背に近づくとそっと服の裾を握りしめようとする。 涙が零れ落ちそうだった。それでも、自分なんかが泣きたいと思っちゃダメだといい聞かせ、必死に耐え続けた。 「ずっと頑張ってくれてたのに、気づけなくて」 「……選ばせてしまって、ごめんね」 (-350) 2023/09/16(Sat) 23:56:24 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「……ノッテなら、ヴィットーレがいると思うんだけど」 「勿論、本人が検挙されないのが一番なんだけど、 彼、孤児院を持ってるでしょう。 だからそことの関係性を何とか隠蔽しきれないかって」 「……勿論、ヴィットーレ自身でその辺りの処理は一人で終えるだろうけど、手助けしてくれる人がいれば私も安心だから……」 心苦しそうに、少し顔を困り顔のまま伝える。 ノッテの利益になるかというと、正直な所厳しいだろう。 ただ、自分の恩人が少しでも見つからないように、余裕ができるようにしてほしいだけ。ただの我儘だ。自覚しているからこそ、この表情である。 (/26) 2023/09/17(Sun) 0:14:27 |
![]() | 【秘】 黒眼鏡 → pasticciona アリーチェ「そうして悔い改めて救われるというのは、 神の愛が降り来るのも俺だろう?」 「ならば、そういうものはもう要らないね。 神様も、いらんといっているものをくれるほど暇人ではないだろう」 あなたの言葉をやんわりと否定する。 彼にとってそれは、もう不要なものなのだ。 教会に押し付ける寄付金だとか、高価な家電とか、そういうものと同じように。 「お嬢さんも神様が助けてくれないなら、 他の者を頼った方がいい。 セカンドオピニオンだろ。 ほんとに愛があるのなら、相手が誰に救われたっていいはずだ」 それでも、あなたの言葉に宿る温度――それこそ、情やら愛やらいうものだろう──を感じたのか、 頬を緩ませるように小さく笑い。 「恩ね。あれも、仕事を楽にしたかっただけだから。 だが、恩というなら、もうすこしだけ付き合っちゃくれないか」 ポケットにひっかけるようにして持っていた、 小さな白い花束を突き出す。 「彼女の墓に、これを。 ここからは善く生き、静かに眠るものたちの場所だ」 俺は入れない、と。気取った様子もなく、事実を告げるようにした。 (-365) 2023/09/17(Sun) 0:28:54 |
![]() | 【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ「ふふ、言えないわよ。 教会の人たちだって頑張ってやりくりしてたもの。 同じ経営者だったから、それがよくわかった。」 それに、もし助けてもらったとして。 それで貴方や他の子達が貧しい思いをしたら意味がないから。 そう思うと、頼れる先なんてどこにもなかった。 自力でどうにかするしかなくて……それも限界だった。 爪が食い込む手は、二人分。 依然背中を向けるヴィットーレの体の横で、 白くなるほど握りこまれた拳から、細く血すら流れ出す。 「……なんで貴方が謝るの? だめよ、嫌な事を聞いたら怒らないと。」 発する言葉は少しか細くて、小さい。 本当なら、語りたくなんてない事だった。 でも、貴方には。 ……伝えておかなければいけない事だと、思ったから。 (-376) 2023/09/17(Sun) 0:56:44 |
![]() | 【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェヴィットーレ、俺達を売ってよ。 そしたらお金も手に入るし、ご飯の人数も減るし。 大丈夫だよ、3人で話し合ったんだ。 ヴィットーレ、いっぱい頑張ってるの知ってるよ。 私達も力になりたいの。お願い。 私達、家族でしょう?助け合いたいよ。 今でもあの時のあの子達の言葉を思い出す。 合意の上での売買だった。………なんて、 自分の行いを弁護する気はない。 「………アタシに、そんな優しい言葉を掛けられる権利はないの。 アタシに力がないせいで、あの子達を犠牲にしてしまった。」 「もっと力があれば、もっと勉強をしていたら。 …………今も一緒に、 居れたかもし れないのに…… 」ふり絞るような声は酷く揺らいで。 いつも落ち着いているヴィットーレは、 今は片手で自分の髪を掴み、ぎゅっと目を閉じる。 大きな背中も、随分小さく縮こまって。 「………せめて、あの子達がどこに引き取られたのか…… ……知りたくて、マフィアになったの。 ………どんな形でも、また、会いたくて……」 「……ごめんなさいね、アリーチェ。 アタシは……貴方が思ってるような、善良な人間じゃ、ないのよ……」 ようやく振り返ったヴィットーレは。 ……泣きそうな顔で、貴方に謝罪をしたのだった。 (-380) 2023/09/17(Sun) 1:05:51 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「それだけでも十分すぎるくらいよ。 彼の頼みなんかじゃなくて、私の勝手な我儘だから……」 「ありがとう。勿論、わかってる。 ……自分と部下だけじゃなくて、孤児院との繋がりまで色々と隠そうとするのは普通よりきっと大変そうで…… もし回せてもらえるならきっと助かるし、私も少しだけ安心できるから……」 丁寧に頭を下げた。 (/28) 2023/09/17(Sun) 15:25:53 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → 黒眼鏡「せ、せかんどおぴにおん?…………。」 余りに神とは程遠い単語を聞いたものだから、 即座にその意図が通じず目をぱちぱちとさせて。 暫くの間のあと、ようやく腑に落ちたかのように頷く。 「ざ、斬新な視点だわ…… いえ、神の教えを知る身としては大問題なんですが……」 「……相手が誰に救われたっていい、か……」 困惑と動揺が綯交ぜになった曖昧な表情を向ける。 自分の信仰とは大きく異なるものだけど、 アリーチェの悩みを的確に抉る言葉でもあった。 思う所は山ほどあったけど。 けれど深く物思いに耽る前に目の前に花束が突き出されて、 「……あら。それは困りましたね、それだと」 「"その括り"だと、私も中に入れなくなるんです」 穏やかな表情のまま髪を軽く掻き揚げて、墓地の方に視線を移す。 「共に入って共犯者になりましょうか?」 無論、声色に無理強いをする様子は微塵もなく。 (-507) 2023/09/17(Sun) 16:21:30 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → オネエ ヴィットーレ「……ばか、わたしが怒れるわけないじゃない。 それとも、わたしに怒って欲しい?」 流れ滴り落ちる血を止めたくて、花の刺繍が入った白いハンカチをその手に押し付けようとする。貴方が頑なに力を込めるなら暫しの後に諦めるだろうが、そうじゃないなら患部を拭おうとするだろう。 こんな様子の、こんなにも小さなヴィットーレを見たのは初めてだった。 いつも明るく、話しているだけで元気が出るような朗らかな気のいいオネエの姿の内に、どれ程の苦労を背に隠して抱えて来てくれたのか。 考えるだけで込み上げてくるものを必死に押し留めた。 泣きたいのに、泣けていない人だっているのだ。 どうしてもそれだけは堪えきった。 貴方の言葉を聞いていく度に胸が締め付けられるように苦しい。 一言一言が、その悲痛さを痛いほど教えてくれるから。 貴方のその食いしばるような判断に基づいて平和を享受した者の誰が、その事を責められるだろうか。 どうしたらその痛みを少しでも和らげる事ができるのか、考えても考えても答えは何一つ出なくて。 ただ、貴方が振り返った時、 咄嗟に体が動いて、貴方に抱き着く。 「それでも、優しいわよ、ばか、ばか、」 「謝らないで。貴方に救われたわたしだっているのよ、」 「善良でも善良じゃなくても、 わたしにとっては大切な、最高の家族、なんだから」 (-521) 2023/09/17(Sun) 17:46:23 |
![]() | 【秘】 pasticciona アリーチェ → Chiavica テオドロそんなわけで後日。二人の休日が被った日。 丁度焼き上がるタイミングを逆算して、あなたにいつ頃に来て欲しいと連絡を入れた日の事。 1LDKの広さのする小さな部屋は、玄関の外でもお菓子の甘さが少しだけ漏れ出ている。 鍵はいつも通り連絡した後には開けてあるから、小奇麗に……少々靴がなさ過ぎる玄関を開ければ、キッチンでちょうどトルタアルリモーネを焼き上げた所だった。 「いらっしゃい、テオ!お腹、空かせてきてくれたかな」 そういってリビングの机にまずは一切れ、とばかりに皿に取り分けてその正面に座る。 勿論、円状のこれを全て食べろと言っているわけではない。 もし貴方が満腹できたとしても、その一切れの一口さえ食べてくれれば本人は満足する事だろう。 「……お菓子はいつも通り焼けたのに、外は大変なことになってるんだね。今も。……マフィアの人たちも、きっと大騒ぎなくらい。……大丈夫かな」 ここはいつも通りに、随分と質素な部屋だ。 アリーチェが母と暮らしていた頃は物が比較的雑然と置いてあったものだが、教会に引き取られ就職し独り立ちをした後のこの部屋では最低限の家具が置かれているだけで少々寂しいほどだ。辛うじて机にかけられたテーブルマットのレースが女っ気を醸し出しているくらいである。 (-524) 2023/09/17(Sun) 18:12:48 |
![]() | 【秘】 黒眼鏡 → pasticciona アリーチェ「医者も神も、自分のいいように言う分には同じ、と。 俺の持論で…不信心者ですまんな」 少し――なんだか気恥ずかしそうに笑う。 ぱちぱちと瞬くあなたの瞳に、黒く澄んだ瞳を合わせて。 「だがまぁ、たいていのやつはそうだろう。 助けるのがよっぽど悪い奴で、のちのち利用するみたいな話じゃなけりゃあな」 その言葉を吐く時のアレッサンドロは、自嘲と自省とその他もろもろ、なんとも微妙な表情だ。 つまりはそういうことをやっているのだが、 神に懺悔しても自分が楽になるだけだとよく知っている。 だからつとめて何も言わず、花束を揺らす――が。 「あんたが?」 興味深そうに首をかしげて。 …にー、と。歯を見せるように笑うと、 「――共犯者があんたみたいな人なら、神様も目こぼししてくれそうだ。頼めるかい、悪党仲間さん」 あなたの肩にガッと腕を回して――よけようと思えば避けられる程度だが、まごうことなきセクハラだ――墓地の方へといざなった。 ただその前に。 「ちなみにあんたの罪は、聞いた方があなたの助けになるやつかい? 面倒なことを頼んだお礼がしたいんだがね」 ――肩を組むにしろ組まないにしろ、耳元でぼそりとこう尋ねる。 デリカシーも配慮もないが、言う通り、お礼の気持ちではあるのだろう。 (-525) 2023/09/17(Sun) 18:19:44 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「あ、はは……やっぱり逮捕されそうに見える?私。 ……結構ミスばかりして迷惑かけているから、 恨みを買ってないとは言い切れないわね、困ったわね」 「でも私がいなくなったら、ペネロペ。 ここの景色を独り占めできるわよ?落ち着けるかも」 なんて冗談めかしていって。 わかっているとは言いつつも、まだ内心「自分が捕まる可能性」への実感は抱けていないようだった。 それが楽観視のしすぎだったと思わされる機会は果たして来るだろうか。 (/30) 2023/09/17(Sun) 18:23:29 |
![]() | 【秘】 オネエ ヴィットーレ → pasticciona アリーチェ「……怒ってくれた方が、楽かもしれないわ。 でも……貴方は、怒るの慣れてないものね。」 そんな者は全部自己満足だ。 ただ自分が罪の意識から逃れたいがために 求めてしまう、現実逃避の結果。 ……貴方が怒らないというのなら、 ヴィットーレは力なく笑う。 本当に優しい子なんだから、と。 抵抗はせずにそのまま大きな手がハンカチに包まれる。 髪色より暗い赤に、ハンカチが染まっていく。 振り向けば正面から抱き着かれて、 思わず目を丸くした。 こうしてしっかり触れ合うのはいつぶりの事だろう。 昔より大きくなったんだな、と今更ながらに思う。 ……アタシ、もうこれ以上あの孤児院に、泥を塗りたくないの。 ………このお店も、燃やすわ。アルバムとかいろいろ、 あの子達に繋がりかねないものがたくさんあるから。」 「……お願い、アリーチェ。もしアタシが捕まっても……」 過去の繋がりを悟られないためには……『赤の他人』で あり続けなければならない。 貴方の体をぎゅぅ…と抱きしめて……… ヴィットーレは貴方に、酷いお願いをしたのだった。 (-545) 2023/09/17(Sun) 19:49:55 |
![]() | 【秘】 Chiavica テオドロ → pasticciona アリーチェ待ち合わせにはいつだって早く着くようにしているが、人の家に上がる場合はそうともういかない。 代わりに時間ぴったりに扉が開くという几帳面さを見せたところで、職場で見るよりいくらか険の少ない顔つきの男が現れる。 「……別に、いつも通りだよ。 今日だって食べたいもの食べて生きてます」 少ない手荷物を適当な場所に置いてから、向き合うように座って。 いただきます、と一声かけてから早速手を付け始める。 本題だからさっさと食っておきたい。そんな気持ちの表れ。 「大丈夫かどうかと言われたら…… 多分、大丈夫ではない。強引なやり口の代理が来てしまったもんだ」 「だからといって俺たちにできることはない。 精々目を付けられないように祈ることしかできないでしょう」 他人の心配よりも自分たちの心配をするべき。 そうでも言いたげに、深々と溜息を吐いてからトルタを一口。 目が覚めるようなレモンの香りがして、うん、と頷く。 自分の家もまた、必要なもの以外は置かれていない故に、 飾り気のない部屋は寧ろ落ち着くとさえ思えた。 (-546) 2023/09/17(Sun) 19:50:55 |
![]() | 【教】 pasticciona アリーチェ「無害……本当にそう思われればいいのだけれど。 教会に迷惑だけはかけたくないから、 せめて、捕まるなら……」 ひとりでじゃないと。 決意表明のように呟いてから、 あなたの答えには少し嬉しそうにはにかんで笑う。 「話し相手としては認めてくれてるみたいで、よかった。 次に会ったときは、お望みのお酒を頼むわね」 なんて笑って、今宵の夢は仕舞いとなるだろう。 (/32) 2023/09/17(Sun) 20:49:36 |
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