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![]() | 【秘】 ツルギ → 規律 ユス無味乾燥なアナウンス。だけどそれはまるで、 俺にとって トロフィーのような重みがあった。ほら、やっぱり!俺は、俺たちは運がいい! 「義徳〜っ!」 たとえ君がどこにいても探し出して、無邪気な子供のように抱き着いて。 心の底から嬉しそうに目を細めて笑った。 「……やったな、俺たちの勝ちだ!つまりさ、いいってことなんだよ。 この 」幸運 は俺たちのものなんだ!…ただの偶然であることもわかってる。 それでもかつて、自分を救った偶然を己の幸運や奇跡として扱われた青年にとっては───大勢の人から認められたに等しくて。 自分たちのものであるかのように、思えた。 (-10) 2022/03/08(Tue) 16:44:08 |
![]() | 【人】 剣道 ツルギ>>フカワ 裁判場の外。 一人でいるところを見計らって声をかけた。 「…うまくいきました?」 君が生きているということは、上手くいったということだけど。主観的な感想を聞きにやって来た。 本当にそれだけ。向き合うためとか、そんなんじゃないので。 まあ、どう捉えられても死人に口なしって言うし? 「騒ぎになってない…ってことは隠したんですか。死後の希望も結構汲むタイプなんですね。」 (7) 2022/03/08(Tue) 16:56:01 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → 剣道 ツルギ そのアナウンスを聞いても、青年は眉一つ動かさなかった。それ以外の結果に見向きもせず、当然勝つものだと思っていたから。 賭けに負けていたら? そんなの、決まっている。 ……生きている意味、無いだろう? 「……賭けに、勝ったんだな」 実感は無い。 ……自分一人では。 「っ!」 飛び込んできた体を抱きとめて、その心からの笑顔を真正面から目に焼き付けて。 そこで、ようやく。 「……ああ、そうだな。これは紛れもなく俺たちに与えられた、俺たちが掴んだ奇跡だ」 珍しい景色をこの目で見てようやくこの手に欲しかったものが一つ手に入ったのだと理解する。 揃いの 幸運 に目を細め、貴方を抱き止める腕にそっと力を込めた。 (-12) 2022/03/08(Tue) 17:15:41 |
![]() | 【秘】 ツルギ → 規律 ユス噛み締めるように、回した腕に一度力を込めて。……少ししたら身体を離した。 ずっとこうしてるのは、流石に緊張しちゃうから。 「これからのことだけど、どうしようか。 卒業まで待った方が動きやすそうだけど…殺した後どうするかなあ。」 海外に逃げるとか色々考えてはいたけど、君の方が頭いいし。 そもそも君といられればどこだって構わないから。 「んー…逃げたり隠したりするより、いっそユスも被害者にしちゃうパターンも考えてはみたんだけど。 ユスは何か考えてる?」 (-18) 2022/03/08(Tue) 18:02:52 |
![]() | 【人】 剣道 ツルギ>>10 フカワ 即死させる難しさは知っているから、その点に関してはそうですか、と軽い返事。 「 うわめんどk …そういえば死体見られたくないって言ってましたね。まあ、死体見たら気分悪くする人いますし。いいんじゃないですか。」 故カミクズ氏がまだログアウトしていないとは知らず、生前の話だと思っている。 君に問われれば軽い調子で答えた。 「ん?俺たちは特に何も。 こうなることに賭けてたわけですから。 でも、もし予備からも摘出することになってたら、ユスを殺して俺も死ぬつもりでしたよ。 どうせ死ぬなら死に顔も見たいなあって程度で、ユスが望むなら心中もアリかなって。 だから、一緒に死にたい気持ちは俺もよくわからないかな……」 (11) 2022/03/08(Tue) 18:22:50 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → 剣道 ツルギ「そうだな。弟や妹はすぐにでも片付けられそうだが、色々と都合がいいのは卒業してならだな。それまではゆっくり計画を練ろう」 父 、母、妹、弟、先生 、医師 、親族 。多くの顔を並べていく。 「俺を被害者に? 死んだことにするということだろうか。お前がそうしたいなら構わないが、ああいや……だいぶ動きにくく不便そうだな。 出来れば俺もお前と同じW幸運で家族を失ったW遺族になりたい」 作る状況は近ければ近い方がいいと思ったから。 「その後のことは全く考えていなかった。お前がいて、お前と生きて、珍しい景色が見れるのなら俺はなんだっていい。 ……恐らく、お前もその後のことはまだ深く考えていないな?」 お互い、相手と一緒にいられたらそれだけでいいと思っているのだろう。 理解はできていないけれど、少しずつ貴方のことは知っているから。 「それもまた帰ったで考えればいいんじゃないか? 賭けに勝って戻ってきた配当は随分あるのだから」 (-24) 2022/03/08(Tue) 21:44:38 |
![]() | 【秘】 ツルギ → 規律 ユス「俺が考えてた被害者ってのは…柚須家に強盗が入ってはち合わせた家族が殺された、みたいなやつ。運良くお前だけ生き残る、とかそういうの。 でもな〜、そうだよな。なるべく同じ状況がいいよな……」 女 、女 、男 。見知らぬ顔を並べていく。彼らにも人生があるとか、夢があるとか、感情があるとか、そういうのはわかってる。 わかってるけど、人ってそういうものだから。 そういうのって、否応なく奪われるものだから。 ほしいなら誰かから奪わなきゃいけないんだ。 俺がそうだったように。 君の問いには素直に頷きを返した。 こちらも似たようなものだ。まずは最初の目的を達成することが第一だし。 「俺もそんな感じ。…お前がいて、お前と生きて、」 でも俺の目的は君と少し違う。きっと今言ってもわからないだろうし、いいよって言ってくれたから言わないけど。 (-25) 2022/03/08(Tue) 23:09:28 |
![]() | 【秘】 ツルギ → 規律 ユス君が見てくれるって約束した景色は、 君にほんとうに見てほしい景色は、 君と一緒に見たいと願う景色は、 「 お前が俺と同じ 景色を見て くれるのをずーっと待ってるよ。どんなに時間がかかっても、死ぬまでかかっても、ずっと待ってる。 まあ、できればなるべく早く見てほしいけどさ。」 地面が崩れ落ちた真っ暗なトンネルの中で、 己 (-26) 2022/03/08(Tue) 23:10:42 |
ツルギは、絶望をそんな風に感じる。 (a17) 2022/03/08(Tue) 23:11:35 |
![]() | 【人】 剣道 ツルギ>>12 フカワ 表情こそ変わらなかったけど、声に喜色を滲ませて、ありがとうございます、と頷いて。 そういえば、池の前で似たようなことを言われたなと思った。 やっぱり、あの時と答えに大差はない。 「 違いますよ 。多分ですけど、こう、恋人ってもっと………なんていうか、相手の幸せを望むみたいな感じですよね?」 それはつまり、この青年が彼の幸せを望んでいないということで。 「まあ、全部くれるのもそうだけど……全部受け入れたいって言ってくれたのが大きいかな。 普通はいけないことも、ですよ?嬉しくなるに決まってるじゃないですか。 だからきっと、友達でもないんでしょうね。俺も自分たちがどんな関係なのか、上手く言えないんです。」 倫理や道徳がそれを間違っていると定めていても、関係ない。 自分の善は自分が決めるものだから。 そう言ってましたもんね?フカワさん。 (13) 2022/03/08(Tue) 23:45:39 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → 剣道 ツルギ「ああ、成る程。そういうことか。 それならそれでも構わないが……同じ状況を作れるに越したことないな」 取り上げられ続けた人生だった。 自分の中に他人の心臓が入れられた時から、自分の居場所に他人が居座るようになった。 今更、何を奪われると言うのだろう。 自分は貴方のもの。貴方のものは自分のもの。 それなら貴方から何を奪われたところでもう、何も問題など無い。 「何はともあれ、終わったことだし今はここで過ごすことを考えよう。 俺は少し話をしたい奴がいるし、お前も挨拶を済ませたい者がいるかもしれないから」 ▼ (-29) 2022/03/09(Wed) 17:07:27 |
![]() | 【秘】 規律 ユス → 剣道 ツルギ「……」 目がほんの少し柔らかくなった。 貴方の夢を、貴方の望みを、そっと受け止める。 自分から何も取り上げなかった人。 自分の中の他人ではなく、自分を見てくれる人。 「早く見られるように努力する。その為に俺は生きるのだから」 色褪せ続ける世界に留まる選択をした。 床が壊れて、落ちたその先で何を経験するか…… ……答えを知るのは、まだ先のこと。 (-30) 2022/03/09(Wed) 17:08:03 |
![]() | 【神】 剣道 ツルギ「コーラ取りに来た。2本は俺とユスの、1本はアクタの。」 フカワと入れ違いくらいのタイミングで、何の遠慮も躊躇いもなく裁判場へやってきた。 「ほらアクタ。はい、お疲れ。」 91くらいの強さでアクタにコーラをパスした。 そしてついでみたいに、エノさんとアクタって仲良かったんだなあ…と思った。 エノさん、寂しがりだろうし良かったな、と。 人伝てに聞いた話はやっぱりアテにならないなあ、なんて。 (G10) 2022/03/09(Wed) 19:52:50 |
![]() | 【人】 剣道 ツルギ>>14 フカワ 「いいえ、大丈夫ですよ。自分たちですらわからないんだから、周りからしたらもっと良くわからないでしょうし。 ここに電車が走ってればもっとラクだったんでしょうけど…まあ、何事も一人よりは二人でやった方が楽ですよね。」 走る凶器さえあるなら、突き飛ばすというのはかなり簡単な手段に思えた。無い物強請りをしても仕方ないけど。 そんなことを口にしながら、今度は一人ではなく二人で行う予定のことを、ふと思い出して。 「俺たち………というより、俺はユスを連れて行きたい場所があるんです。 ユスは俺と一緒なら、どこでもいいらしいので。 じゃあ、一緒に来てもらおうかなって。そんな感じです。」 目的地については、ユスにさえ明言していない。 もしかしたら土壇場で逃げ出されるかもしれないし。だから、その時まで内緒なんだ。 「……死ぬのはいつでもできますから。 あっこれ一緒に行けそうにないな、って思ったらあいつを殺して俺も死ぬつもりですよ。」 深く聞かれると、フカワさん相手なら話してもいいか、って思っちゃいそうだから。 クルリと踵を返して、背を向けたまま呟いた。 (15) 2022/03/09(Wed) 22:20:22 |
ツルギは、「ん。」蓋を開けたボトルを差し出した。 (a23) 2022/03/11(Fri) 10:28:42 |
![]() | 【神】 剣道 ツルギ>>G20 >>G24 アクタ/ユス ピースサインに自分の印をふと思い出して。 自分の襟から覗くガーゼを軽く引っ掻いた。 「はいはい、頑張れ。……、………」 君の精一杯の応援を聞いた時、こちらは僅かに心が動いた。嬉しいとか感謝じゃなくて、今度は「困ったな」と。 真相を知った上で言われたのなら、とても嬉しかったんだろうな。 でもきっと優しい君は…少なくとも、心を砕くだろうから。 だから言わない。 知らない方がいいことだって、たくさんあるから。 やめとけ、と言いかけて。 君に対してはこう言った方が良いと思い直す。 「───俺は。 応援なんかいらねえよ。自分の心配だけしときな。」 (G25) 2022/03/11(Fri) 10:37:16 |
![]() | 【秘】 剣道 ツルギ → 演者 アクタそして、声量を落として。 「……お前は普通かもしれないけど。」 「だからこそ、みんなが共感できるものが作れるだろうから。」 「あんまりおかしくなるなよ。」 君がどんな道を歩もうと、知ったことではないけど。 どっちでもいいんだけど。 どうせなら健やかな方がいいし、夢は叶った方がいい。 結局こちらの青年は、応援を受け取らなかった。 (-67) 2022/03/11(Fri) 10:37:48 |
![]() | 【秘】 共犯者 ツルギ → 規律 ユス--------------------------✂︎-------------------------- 花見客で賑わう河川敷を見て。随分遠くまで来たな、と思った。 地元はまだ雪が残っていたし、桜も蕾だったから。 卒業式と入社式の間。卒業生の春休みは、在校生より一足先にやって来る。 学生でも社会人でもない数週間を、俺たちは人を殺すために使う。 こんな有意義な休日は初めてだ! ───強盗殺人に偽装して殺す。 俺の拙い発案を、君は計画という形にしてくれた。しかも俺の希望まで汲んでくれて。 久しぶりだから上手くできるかな、なんて心配と。 嫌だけど頑張ろう、という気持ちと。 君への期待で、胸がいっぱいだった。 ……修了式の日だから、学生は昼過ぎに帰ってくる。君の母親は今日早上がり。 だから弟と妹を先に殺して、その後に帰宅した君の母親を殺す。 それが君の提案だった。 普段なら誰もいない時間帯に忍び込んだ空き巣犯が、偶然帰って来た家族を口封じに殺す…っていうのは珍しくないらしい。 まあ、その空き巣って俺なんだけど。 金品とかは売るとバレるらしいから、俺が地元で捨てることになってる。 (-69) 2022/03/11(Fri) 11:00:07 |
![]() | 【秘】 共犯者 ツルギ → 規律 ユス部屋の中なのに軍手とスニーカー。何から何まで全部量産型の、購入店舗が特定されにくい服装。…を、地元で買ってきた。全部、君の助言通り。 昼下がりの一軒家。 その一室で、子供部屋から調達した金属バットを片手に息を潜めて。 一足先に帰宅した君の弟を襲った。 今日は親に内緒で、三兄妹だけでランチに行く予定だったんだよね。桜がよく見える小さなお店にさ。 男の頭へ振り下ろす。 男の頭へ振り下ろす。 男の頭へ振り下ろす。 誰にだってできる、簡単な単調作業。だけど最初は誰だってやり方がわからないから、俺がお手本を見せることにしたんだ。 ……その内弟は動かなくなった。それでも念を入れて追加で数回。呼吸が無いことを確認してから、立ち上がって君を振り返る。 次は妹。弟よりも、きっと簡単だろう。 あちこちへこんでしまったバットを君に差し出して。 「 お前と 妹さんが逃げないように手伝うつもりだけど。実戦、できそう?」 断らせるつもりなんてないけど、一応尋ねた。 (-70) 2022/03/11(Fri) 11:01:12 |
![]() | 【秘】 ユス → 共犯者 ツルギ --------------------------✂-------------------------- 退屈だった。 合議を終えて、五体満足で帰ってきて。 元の生活に戻った筈なのに。 「……」 何もかもが色褪せて見える。 こんなにも味気ないものだっただろうか。元々鮮やかさが失われていたような日常だったけれど、数日ぶりに見たいつもの景色は耐え難い程に無味乾燥であった。 母親は相変わらず「お前の代わりに死んでいった人たちの分までまっとうに生きなさい」とばかり言うし、考えることをやめた俺を腫れ物扱いして距離を置いていた弟や妹達は夢中になっているものへと逃げていった。 俺のいた場所はこんなにも味気ないものだったんだな。 ああ、それはきっと。 あの紛い物の世界の中で、久しぶりに味を知ってしまったからなのだろう。心が動く程の景色を見たからなのだろう。 不可逆の変質。知らないままならずっと愚か者として生きていられたのに。 帰ってきてからは手の中にある予備の携帯端末だけが俺の全てだった。 望む景色をお前と見るために考える時間だけが俺に取っての救いだった。 だから犯行計画は逃げるように夢中になって企てた。 だから、花見客が桜に集う季節になって、もう一度お前と会った時。 言葉を詰まらせ、胸が締め付けられるような心地になったのだ。 ああ、もう、戻れない。 ▼ (-117) 2022/03/12(Sat) 8:28:28 |
![]() | 【秘】 ユス → 共犯者 ツルギ 殴打音。殴打音。殴打音。 うららかな春の陽気。昼下がりの穏やかな時間帯。 日常が、一回ずつ丁寧に殴られ壊され崩れていく。 弟が呼吸すら止めるのに時間はたいしてあまりかからなかった。殴られて意識を手放す瞬間か細い声で「兄ちゃ、」と自分を呼びながら助けを求めていたのを熱も何もない瞳で見下ろしていた。 弟だったものがじわじわと床を赤く濡らしていく。日常がじわじわと非日常に侵されていく。 「ああ」 ……それでも、弟に関して何か思うことはなかった。 「何度も振り下ろすのは意外にも疲れそうだとは思ったが」 バットを受け取る。 持ち手から伝わる貴方の温もり。歪んだ先に残された弟の痕跡。 人が人らしく生きた、生きていた名残に一度触れて、 「何も問題ない」 それきり、弟の名残に興味を持つことはなかった。 ▼ (-118) 2022/03/12(Sat) 8:33:16 |
![]() | 【秘】 共犯者 ユス → 共犯者 ツルギ 女の頭へ振り下ろす。 女の頭へ振り下ろす。 女の頭へ振り下ろす。 誰にだってできる、簡単な単調作業。お手本の通りに、妹を壊していく。 自分や弟と出かけられると、浮かれて無防備に背を向けていたところを襲った。最後に聞いた妹の声は甲高い悲鳴だった。事態を把握できないまま苦痛に満ちた声がこぼれ落ちた。 それも直ぐに金属が肉と骨を叩く音で塗り潰されていく。 人を殺すのは初めてだったから、何度やればいいのか分からなくて。 ぴくりとも動かなくなってからも、ツルギが念入りに叩いた回数よりも多く金属バットを妹だったものに振り下ろした。 「……」 どれくらい殴っただろうか。 気付けば手も額も汗にまみれていた。慣れない作業でやたらと息が乱れてしまって、呼吸を整えようと何度も肩が上下に揺れた。 妹の様子を確認する。息をしていないことを確認してから、更に歪んでしまったバットを握ったまま共犯者へ向き直る。 「人ひとりを殺すのも楽ではないな」 妹を殺して出た感想はそれだけだった。 妹に関する感想は、特に何も無かった。 (-119) 2022/03/12(Sat) 8:37:05 |
![]() | 【秘】 共犯者 ツルギ → 共犯者 ユス躊躇なく凶器を振り下ろす君を、後ろから満足気に見つめている。 もし躊躇ったらこのまま背後から襲うつもりだったけど、 リュックにコッソリ入れてきた包丁の出番は無さそうで良かった。「…だろ?もしかしたらまだ生きてるかもしれない、って思うと何度もやっちゃうんだ。」 君の額に手を伸ばす。軍手はそんなに汚れていなかったけど、少し血痕が付いていた。 わざと血の付いた部分で君の汗を拭う。 「次はお母さんか。まだ少し時間あるんだっけ? それまでもうちょっと部屋荒らしとかないとな〜。」 子供部屋からは電子辞書やゲーム機。 リビングからは古い結婚指輪や腕時計。 抜かれたままの電話線。 既にある程度荒らしていたけれど、さらに室内を散らかしていく。現金は貰っていこう、交通費として。 ベランダに干された洗濯物。 まだ湿っていた。 冷蔵庫の扉に貼られたメモ。 中にあったハムを食べた。 色んな行事が書き込まれたカレンダー。 もう捲られることもない。 どこにでもある、普通の家だった。普通ってこんな感じなんだなあ、と思いながら。 その普通≠何の感慨もなく壊していく。 「………そろそろ?」 冷凍庫にあったソフトクリームを食べながら君に問いかけた。 玄関の鍵が回る音を、今か今かと楽しみにしている自分がいる。 早く帰って来ないかな。誰かの帰りを待つなんて久し振りだから、何だか変な感じ。 もしかしたら、食後のデザートを待つような。そんな気分かもしれない。 (-135) 2022/03/12(Sat) 14:29:07 |
![]() | 【秘】 演者 アクタ → 共犯者 ツルギそうして、潜められた声には。 「……なんだそれ。」 君の言葉の真意を知らずに 無邪気に、 残酷に、 満面の笑みで答える。「当たり前だろ!」 真実は、人の数だけ存在する。 男の中では、君との出会い、過ごした時間、その全てが 喜劇に映って見えた。───ただ、それだけ。 やっぱり、君と、分かり合えなかった。 (-141) 2022/03/12(Sat) 19:00:08 |
![]() | 【秘】 共犯者 ユス → 共犯者 ツルギ まだ少し荒れた息のままじっと動かず、大人しく貴方に拭われる。 無愛想な顔に紅が混じる。自分の弟や妹だったものの名残。けれどそれが心を揺らすことなど微塵もなく、先程まで聞こえていたような気がする幼い声がもう一度呼び起こされるなんてこともないまま青年の顔を汚した。 「親が俺たちに何かあった時のためにと隠すように続けていた貯金の通帳がそこの棚にある。 使わずとも持っていけばより空き巣らしくなるだろう。後はそうだな……」 他人事のように家の内部を説明し、荒らせる箇所を示していく。 日常の名残が、共犯者達が残していく名残によって上書きされていく。 粗方説明し終えると二人分のグラスを食器棚から取り出し、水道水をいっぱいに入れて片方をツルギに差し出した。本当はこの日の為に炭酸飲料でも買っておこうと思ったが、家で殆ど飲まなかったのにいきなり用意すると家族に怪しまれるので買えなかった。 水を一息に呷る。思ったよりも喉が渇いていた。 「ああ。そろそろだな」 バットを持ち直す。 「いってくる」 (-151) 2022/03/12(Sat) 20:57:24 |
![]() | 【秘】 共犯者 ユス → 共犯者 ツルギ 玄関の鍵が回り、それからすぐに慌ただしい足音と共にリビングの扉が開かれる。 目を見開き入り口で立ちすくむ母の顔は仕事帰りもあってか疲労が滲んでいた。 二年前に父が亡くなって専業主婦をやめて働くことを決意してから、みるみるうちに母は草臥れたような姿に変わっていった。 W……ぇ、あ。よしの──W 母は状況を掴めず混乱していた。それもそうだ。何の前触れもなく日常が滅茶苦茶に荒れ果てていたのだから。 でもそんなものだろう。父が交通事故で亡くなった時だって、何の予兆などなかったじゃないか。 己の名前を呼ばれるよりも前にまず一度金属バットを振り下ろした。 女の体が呆気なく床に崩れ落ちる。邪魔だったから物が沢山詰まった手提げ鞄を足で蹴飛ばした。 もう一度両腕を持ち上げる。 女は呻いていた。 なんで。どうして。義徳。義徳。 頭を揺さぶられて吐き気がするのだろう、気持ち悪そうに呻きながら己の名を呼んでいた。殴ったのは自分なのに。 「……」 何も思わなかった。そのまま凶器を振り下ろした。 (-152) 2022/03/12(Sat) 20:58:02 |
![]() | 【秘】 共犯者 ユス → 共犯者 ツルギ 母の頭へ振り下ろす。 母の頭へ振り下ろす。 母の頭へ振り下ろす。 誰にだってできる、簡単な単調作業。きっとこれは神様がくれた、否、違う。 俺たち二人が掴み取った 幸運 だ。もうなんだってよかった。 もう生きたいなんて思わなかった。 どうでもよかった。 だって、 何故なら、 「お母さん」 自分の命は、自分だけのものでは無いらしいので。 (-153) 2022/03/12(Sat) 20:59:27 |
![]() | 【秘】 ユス → 共犯者 ツルギ 女の頭へ振り下ろす。 女の頭へ振り下ろす。 女の頭へ振り下ろす。 誰にだってできる、簡単な単調作業。 女が物言わぬ肉塊になっても尚、ずっとそうし続けていた。 珍しい景色が見たかった。 もう一度考えることを始めた心が、久方ぶりに動くほどの景色が見たかった。 俺の中にある他人を見ず、俺を見てくれたお前が心から笑う姿が見たかった。 もう、それしかないんだ。 それだけが、生きる理由なんだ。 ……一成。 俺の命は、俺だけのものではないから。 (-154) 2022/03/12(Sat) 21:04:21 |
![]() | 【秘】 共犯者 ツルギ → 共犯者 ユス通帳を片手に、水を一気飲み。グラスをそのまま置こうとして、リュックに入れる。空き巣の証拠は最低限でいいからね。 使う予定のない荷物をまた増やして、リュックの中に。 バットを持つ君へは、「いってらっしゃい。」と軽く返事をした。コンビニに行く人を見送るくらいの軽さで。 現れた君の母親を見て、やっぱり顔立ちが少し似てるなあ、と思った。 俺とあの女程ではないけれど。 蹴飛ばされた鞄の中から財布を探し出して、現金だけを回収する。 繰り返される殴打音。間近でしか聞いたことがないから、離れた場所から聞こえてくるのは少し新鮮だった。 背中に向けた、品定めをするような視線に君は気付いているかな。 あの日はどんな感じだったっけ。 ………上手く思い出せなかった。いつもそう。 意図的に思い返すと、薄い膜が張ったみたいにボヤけて景色が見えなくなる。 呻き声が煩わしくて、泣き声が煩かったことだけは、はっきりと思い出せるのに。 (-167) 2022/03/13(Sun) 1:14:19 |
ツルギは、なんだかつまらない。 (a51) 2022/03/13(Sun) 1:16:05 |
![]() | 【秘】 怪物 ツルギ → 共犯者 ユス青年の濁った瞳が、硝子のような冷たさを滲ませていた。 君にご褒美をあげなきゃって思うのに、口角が全然上がらない。 「………お疲れ。」 自分でも驚くくらい冷たい声が出た。 かつて母だった女が、呆れた時に出す声色に近い気がした。 氷とかじゃなくて、これは、そう───包丁みたいな。 失望だ。 俺にとっての生きる理由は、いつか理解者が作り出せるかもしれない≠ニいう可能性であって。 決して、君自身じゃない。 俺はね、義徳。 君≠ニ書いて、望み≠ニ呼んでいる。 だから好き。 「…服、着替えなよ。返り血付いてる。」 君とこの青年に大きな違いがあるとすれば。 視野の広さ、というよりは……視野の高さかもしれない。 自分を含むどんな人間にも代わりがいると知っていて、だからこそ君を希少だと考える。 君も俺も、山に転がる石の一つ。ひょっとしたら、同じ形の石があるかもしれない。 そんな山を、青年は見下ろしている。 同じ形の誰かがいたら。 そちらの方が可能性が高かったら。 この青年は、何の躊躇いもなく君を手放してしまう。 俺、思ってたより短気みたい。 でも頑張るよ。気を長くして、待ってるよ。 (-168) 2022/03/13(Sun) 1:20:01 |
![]() | 【秘】 共犯者 ユス → 怪物 ツルギ 何も聞こえない。 痛いほどの静寂が広がっている。耳に飛び込むのは自分の乱れた吐息だけ。 家族がいない時の家はこんな感じだっただろうか。でも、一人でいた時の空気にしてはいやに気持ち悪かった。落ち着かない。 「………………はぁ」 俯けば普段後ろに流しているはずの前髪がだらりと視界を塞ぐことに気付いた。鬱陶しさに思わず乱雑に片手で前髪をかき上げれば僅かに滲んだ手の汗が額をかすかに濡らした。 Wなんか事故でもあって、親が死ねばそこで終わるけどW。 あの時、紛い物の世界の中で貴方が語った嘘を思い出す。 「……あれは確かに嘘だったな。 死んだところで何も終わりになるはずがない。 死者が齎すものは名残のみ。終止符をくれることなど決してない」 もう一度、深いため息をついた。 「終わったところで、楽になるという気持ちなど手に入らないな」 葬儀が面倒だなとか、遺産の処理も考えるだけで億劫だとか、そんな場違いな事が脳裏によぎった。 (-171) 2022/03/13(Sun) 3:56:31 |
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![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ ただただ虚しい。何もない。 救いもない。絶望もない。 楽にもならず、苦にもならない。 ただ心の中に虚が広がっていくばかり。 憤りは当然のこと、寂しいも悲しいも苦しいも何もなかった。 全て自分の意思だ。 自分の選択で殺した。 家族だけじゃない。己もだ。 考えることを放棄した時に自分は心を切り落としたんだ。 他の人ならきっとやりようはあったかもしれない。でも自分はこの選択を取り続けた。やめる事ができた筈なのに、望んでこの選択をし続けた。 人の心臓を貰い救われて、誰か見知らぬ人間が選ばれ死んでいく事実を踏み台にして生きて帰ってきたと思えば家族を皆殺し。 親不孝者、忘恩の徒。 命を踏み躙る怪物、人でなし。今の自分はまさにそれだ。 (-174) 2022/03/13(Sun) 4:03:01 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ どうしてこんな生き物になってしまったんだろうな。 父も母も堅物が過ぎるが、真っ当な人だったのに。何一つ不幸せな事などない、ごく普通の家庭だったのに。 どうしてだろうな、なんでだろうな。 同じ境遇にあっても、他の人はきっと違っただろう。 ……ああ、ツルギが話していたな。 W生まれた子供に罪はないWと。 罪は無い。罪が無かったとしても、だ。 (-176) 2022/03/13(Sun) 4:06:40 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ 結論を口にする。それでも何か思うところなどない。あったとしても、きっと生まれたそばから抜け落ちて周りに叩き落とされ潰れている。 だって、自ら器の底を切り取ってしまったのだから。 (-177) 2022/03/13(Sun) 4:08:25 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「…………」 WそれWを見た。 氷とかじゃなくて、これは、そう───包丁のような。 馴染みのあるものだった。自ら何もかもを切り捨てた自分に呆れた人間がよく見せていたものだ。 理解する。 声に出さずとも、その声その目その態度が全てを伝えてくれる。 可能性をまだ純粋に信じていたのなら、そんな反応見せる筈がないだろう? なんだ、もうお前も分かっているじゃないか。 きっと無理だ、同じ景色を見るなんて。 なんだかおかしくてもう一度乾いた笑いが出そうになった。目の前で笑ってやろうかと思った。 笑ったまま、目の前で死でやったらどうなるんだろう。 悲しむ? 泣いてくれる? ああでも、きっとただ可能性がありそうな人間を失ったと落胆するだけのような気もするな。 お前が泣いていたのは、本心を晒した時だったから。 夢が叶わず落胆するなんて、もう散々経験しているものな? 慣れているだろう? (-178) 2022/03/13(Sun) 4:09:49 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「ツルギ。ここは暗いな」 徐に口を開いた。 「俺のいる場所は、周りが色褪せて見えたままだ。けれど此処が明るく鮮やかな訳じゃない。暗くて、誰もいない。 誰もいないんだよ」 こんな人でなしの周りなんて。 けれどきっと、貴方と同じ場所にはいない。 こんなにも近くにいるのに、自分たちは。 ──ひとりぼっちのまま、それぞれのトンネルに閉じ込められながら並んでいる。 (-179) 2022/03/13(Sun) 4:10:36 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ 服を着替えろと勧めた貴方の言葉を無視して貴方の目の前まで歩み寄る。 普段綺麗に整えられている髪も、数歩動いただけでぐちゃりと揺れて崩れた。濡羽色した前髪が、ばらばらと血に塗れた青年の顔を覆っていく。 「…………」 一度濁れば、もう無色透明に戻ることは叶わない。 人でなしの汚濁を湛えた眼差しが、じぃと貴方を見下ろしている。 「……………………」 かすかに小首を傾げる。 こきん、と己の首の骨が高く鳴いた。 (-180) 2022/03/13(Sun) 4:11:34 |
![]() | 【秘】 怪物 ツルギ → 怪物 ユス投げかけた言葉が返って来ないのは、気にしなかった。返事が欲しい言葉じゃなかったから。 君の、家族を皆殺しにした感想を。 冷たい金属のような瞳で受け止める。 死者は終止符に成り得ない。 終わっても楽になんかなれない。 ゴールを壊しても、レースは続く。続いてしまう。 自分より少し上にある汚濁を、ただ眼球に映して。 君の瞳に映り込む俺も、人でなしの顔をしていた。 鏡みたいだ。 きっと君が死んでも、落胆するだけなんだろうな。せっかく捕まえた珍しい虫が死んだ程度の落胆しか抱かない。 ……正しく夢だったなあ。 将来の夢、という文脈で使われる夢≠ナはなく、 夢を見た、という文脈で使われる夢≠ナある。 文字通りの、夢想だった。 (-188) 2022/03/13(Sun) 10:45:02 |
![]() | 【独】 怪物 ツルギ───本当は、最初から気付いていた。 いや、それでももしかしたら≠ニ期待していたのだ。 相互理解など幻想で。 可能性は、硝子みたいに無色透明なんだって。 人の命を三つも使って得た結論がこれだ。 人の命が軽いのか、俺たちの心が軽いのか。 それとも、どこかで間違えた? …全然、近道じゃなかったな。近道をしたつもりが、知らない場所に来てしまった。 ちっとも上手くいかなかった。 始めから上手くいく確率の方が少なくて、だからこそ賭け≠セったけど。 俺は運がいいと思っていた。でもそれはやっぱり、命に関わることだけのようで。 身体ばかり無事でも、中身が伴っていないんだ。 (-189) 2022/03/13(Sun) 10:47:57 |
![]() | 【秘】 怪物 ツルギ → 怪物 ユス「…………………はぁ。」 ───さみしいんだ、 紛い物の空間で漏らした言葉。俺という怪物が、心の臓を動かすための原動力。 淋しい。 淋しくて寒い。 いつもそんな自分を見下ろしている。 諦めきれたらどんなに楽だろう。 「………ああ、そっか。」 見限れたらどんなに安らかだろう。 「これ、虚しいって気持ちなんだ。」 どうして君みたいに、期待を捨てられないんだろう。 勝手に期待して、勝手に裏切られて、勝手にそれを繰り返したくせに。 今だって、そう。 (-190) 2022/03/13(Sun) 10:49:02 |
![]() | 【秘】 怪物 ツルギ → 怪物 ユス「……暗いだろ?」 君と出会ってしまったからかな。 「ひとりぼっちだ。ずっと。」 初めて会った時に死んでおけば良かった。 いや。もっと、もっと前に、死んでおけば。 怪物だから孤独なのか、孤独だから怪物なのか。 きっとどちらも正しい。これはイコールで結ばれているから。 俺たちは、生まれてきたこと自体が間違っていたんだよ。 導き出した結論は同じはずなのに、君の姿が見えないのは、そういうことだ。 思うところはあったはずなのに、生まれたそばから零れ落ちていく。器の底は、元から無い。 孤独を理解できるのは、孤独な者だけ。 寄り添うことなんかできない。 ───だって、孤独なんだから! 生きる気力は元から喪っていた。 死ぬ気力は今無くなった。 殺す気力も失った。 全て無意味。 どっちでもいいんじゃなくて、どうでもいい。 果たして君に、俺に、何かしらの価値は残っただろうか。 ……、…………わからない。 考えるのが億劫だ。 なのにどうして、苦痛だけが大きくなる! (-191) 2022/03/13(Sun) 10:50:29 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「ツルギ。聞きたい事がある」 怪物は静かに貴方を見ている。 「お前の目には、俺が……俺たちがどう映っている?」 その濁りは、貴方を見下ろしている。 「これは全て俺の意見なんだがな」 「お前は出会う者たちを理解者たり得るか、そうでないかの基準でしか見ていないんじゃないかと思うんだ」 じっとこちらを、周りを見据える刃物のような視線を思い出していく。 貴方は己を試していた。ずっと、ずっと。 今だってそうだったのだろう。 自分に都合の良い存在かどうか、試していた。 「周りの顔色ばかり気にして」 「そのくせ、試すようなことばかりをして」 「怖くなったら予防線を張って」 「お前自身が、お前の周りに瓦礫を積み上げる」 ▼ (-194) 2022/03/13(Sun) 12:59:59 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「なあツルギ。 俺は、お前だけが俺を見てくれていると思っていた。 周りは常に俺の中にある他人を必ず見ていて、俺という個人だけを見ようとはしなかった。 でも違う。 お前は俺という個人すらも見ていなかった。 お前は散々他人から誰かの代わりとして見続けられたのに、 他の誰でもない自分自身を見て欲しいと思っているのに、 お前は他人越しに理想の存在ばかりを夢見ている。 お前にとっての俺は唯一か? お前にとっての俺は、ほんとうに俺の形をしているか? 個を見ようとしない限り、 お前がその人を品定めする目を止めない限り、 お前が人を人として見ようとしない限り、 お前は誰にも見てもらえない。 ……今のお前では、きっと何処にもいけないよ」 ▼ (-195) 2022/03/13(Sun) 13:00:44 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「……でも」 「それでもいいよ」 「俺は、それでもいい」 振り返る。あの紛い物の、仮初に満ちた世界での日々を。 「お前にとって俺は理解者になる資格など持っていなかったとしても。 お前の唯一になれなかったとしても」 たのしそうにわらう顔が。 全てを晒して泣く顔が。 貴方が見せてくれた本心が。 「お前が俺の心を確かに動かしたことだけは真実だ。 虚ろしかなかった俺の心が、 何もかも切り落として死んだはずの俺の心が、 心臓を取り上げられた時から他人に居場所を奪われた俺が、 もう一度生き返ったのはお前のおかげだ」 こうして、本物にまみれた暗い世界に戻って来させた。戻ってきてもいいと、思えた。 紛い物の世界の中で手にしたもののなかでも、 この感情だけは、本物だ。 (-196) 2022/03/13(Sun) 13:03:00 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「俺もまたもしかすれば心が動かしてくれるなら、個を見てくれるなら誰でもよかったのかもしれない。 でも、ありとあらゆる可能性の中から俺が出会ったのは剣城一成だ。 俺にとって、唯一として大切にしたいとW俺の意思でW選択したのは、剣城一成ただひとりだ。 もう、誰でもよくなんかなくなったんだよ」 考えることを放棄したのを放棄した。 もう一度生き返って、考えて考えて錆びついた頭が壊れそうになっても考えて、 そうして手にした選択がこれだ。 貴方にとって自分がどれほどの価値だったのか分からない。 けれど、自分にとって貴方の価値は、 命だけではなく全てを捧げても惜しくないものなんだ。 ▼ (-197) 2022/03/13(Sun) 13:03:41 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「ツルギ。 俺はお前の命も、時間も、感情も、何もかも。 俺が、俺の為に、全部欲しいって思ってる。 お前がそうじゃなかったとしても。 似た苦しみも、おぞましい痛みも、必要なら喜んで飲み干すと言った。 約束は違えない。俺は、お前以外は平等にどうでもよくて、平等に無責任を振りかざす。 でも、お前のことだけは何があっても全て責任を取る。 お前を理解できなくても、お前と同じ場所に並んで立てなくても、 俺は壁の向こう側にいてもなお傍らにいる。 壁を挟んでも、ずっと近くにいる」 泣いて突っ伏す貴方の足元にずっといたように。 「暗くても、ひとりぼっちでも、俺は平気だから。俺は、怖いなんて分からない人でなしだから。 俺はお前のものとして生きているだけで、お前が作る景色を見る事ができるだけで、お前がお前らしく振る舞うのを見るだけで、それでいいんだ。 俺は理解者なんていらない。理解されなくても、俺はお前のおかげで虚しさを埋める事ができるから」 ▼ (-198) 2022/03/13(Sun) 13:04:31 |
![]() | 【秘】 怪物 ユス → 怪物 ツルギ「ツルギ。 俺とお前、共犯者がやる事はこれで最後だ」 「着替えてくる。 あとはお前の手で、俺に暴力を振るって被害者に仕立て上げるだけ」 「それで俺とお前の罪は完成する」 共犯者は穏やかに語る。 「でも、どの選択をするかは全てお前に任せる。 このまま完遂して、俺と生きるでもいい。 全て諦めて自殺するでもいい。 嫌になったからと俺を殺しても構わない。 着替えている間に逃げたっていい。 何もしたくないなら、これ以上お前が苦しまないように俺がお前を殺すとしよう。 俺はお前にだけ、全ての責任を持つ。 俺はお前だけ、全て受け入れる。 お前の為に、俺の為に、俺は動く」 ▼ (-199) 2022/03/13(Sun) 13:05:33 |
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![]() | 【秘】 ユス → 怪物 ツルギ それから暫く経ったのち、穏やかに笑いながら君の共犯者は同じ場所に戻って来る。 少年の選択を確かめる為に。 (-201) 2022/03/13(Sun) 13:15:54 |
![]() | 【秘】 怪物 ツルギ → ユス着替えに向かう君へ何も言えず、血で汚れたフローリングを見つめていた。 全部、全部、本当のことだったから、言い返せなかった。 ずっと助けてくれる人を探して、探して、探し続けて。 誰も助けてなんかくれないって知ってからも、その癖は直らないまま。 指摘されることもなかった。君以外には隠していたから。 「………」 知らないよ。個の見方とか。 どうやって人の形を捉えればいいのかなんて、わかんねえし。 「 ばかじゃねえの。 」人を人として見るって、どうすりゃいいんだよ。 自分の家族さえ、どうやって見ればいいのかわからないのに! 「 …俺がお前に何したって言うんだよ。唆して…家族殺させただけだろ……… 」青年は、君という人間がちっともわからない。 俺はお前が全てを欲するような人間じゃないのに。 都合が良いから黙っていただけで。 考えないようにしていただけで。 本当は、 君という人間が一番恐ろしいんだ。 剣城一成を求められたことなんて、見てもらえたことなんて、初めてなんだから。 (-207) 2022/03/13(Sun) 15:16:27 |
![]() | 【秘】 怪物 ツルギ → ユス視界が膜を張ったように、焦点が合わなくなって。 「……っ、俺は! お前と違って…、暗くてもひとりでも、平気じゃない! お前らなんか、みんな、みんな、恐いし…訳わかんねえ! 」穏やかに笑う君がわからなくて、ムカついて、胸倉を掴んで引き寄せた。 泣いていることに気付いたのは、君の瞳に反射する自分を見てからだ。 ……あの時もそうだったなあ。 底無しの器。 その内側にこびり付いた、辛うじて残っている本音を晒す度に、自分でもおかしいと思うくらい涙が溢れてしまう。 おかしいよ。これじゃ、本当はいつも泣いてるってことになるだろ。 「 だったらッ、だったら、お前が教えろよ! お前をお前として見る方法をさあ!! こんなの八つ当たりだって知ってる。 もう19歳で、もう社会人で、子供じゃないんだから。それぐらい、できて当たり前なんだから。 できない俺が悪いのに。 「……お前はいつもそうだよ………俺はどうしたいって、俺を全部受け入れるって。 俺だって、…もう考えるの、疲れたし。決めるの、しんどい。 ………お前はどう思ってるんだよ。 何でも良いっつったら殺すからな。 」涙目で君を睨み付けて、腹の底からありったけの汚泥を君に。 (-208) 2022/03/13(Sun) 15:20:31 |
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![]() | 【神】 怪物 ツルギ>>G33 >>-141 アクタ/ユス 真実は人の数だけ存在する。 勿論、虚偽も同じ数だけ。 手渡されたメモに目を通しながら。 青年もほとんど決まってねえな…、と苦笑する。 ていうか軽トラ爆走させるの、趣味じゃないし。軽トラだけ浮きまくってないか?こいつだけ出る作品違うだろ。 「俺も舞台って観たことないし、初めてになるかも。……、…………」 隣の青年のよく回る口を聞きながら、もしかして案外性格が悪いのかな、とか。 ……それは俺もだけど。 「お前の作る話を楽しめるかはわからないけど… まあ、席埋めるくらいはできるから。」 分かり合えなかったことは、きっと君にとって喜劇のひとつ。 眩しい笑顔を見ればわかる。最初からわかってた。 喜劇に汚いものは要らないから。 今まで通り、色んな言葉と所感を飲み込んで。 黙したまま、君の背中を見送った。 (G36) 2022/03/13(Sun) 16:21:07 |
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![]() | 【秘】 ユス → 怪物 ツルギ されるがままに引き寄せられる。ぼやけた視界の中で、人でなしがわらっている。 貴方が吠えている。貴方が晒している。 透明だった、呪いまみれの貴方がなりふり構わず叫んで泣いている。 ……ああ、珍しい景色だ。良い光景だ。 大切にしたい。胸に広がる温かさをそのまま外に出して、貴方を包んであげたい。 ……ああ、これはきっとW愛しいWなんだろうな。 貴方とは反対に、青年は瞳を更に細めた。 「そうか。恐いか。訳わからないか。 俺も分からない。よく話すお前のことだって完璧にわからないのに、人間の本質なんて理解できるはずがない」 涙はとうに枯れ果てた。最後に泣いたのはいつだったか。調理実習で玉ねぎを切った時くらいだったかもしれない。 でも、貴方は違う。きっと、いつもいつも泣いていたんだ。貴方が気付かないだけで、貴方すら気付かない暗闇の中で、ずっと、ずっと。 「教えていいのか」 「じゃあ、教えよう。俺なりの回答だがな」 出来て当たり前なんてものは無い。 全員が全員、世間一般に当てはまることなんてないのだから。 ▼ (-229) 2022/03/13(Sun) 16:55:46 |
![]() | 【秘】 ユス → 怪物 ツルギ「夢を捨てろ。夢から醒めろ。 ここは仮初の世界でも夢の世界でもない。 ゼロになりきれない可能性を追い続けるのはやめろ。 W賭けWばかり続ける天任せの生き方をやめろ。 理解者を作ることしか考えないのを止めてくれ。 理解者は作ろうとして作るものじゃない。 人を知って、知ったものを積み上げて その果てにはじめて作られるものだ」 ▼ (-230) 2022/03/13(Sun) 16:56:39 |
![]() | 【秘】 ユス → 怪物 ツルギ「……だから、俺と生きよう。 今すぐ死にたいと言うのなら、すぐに殺すつもりだったのだが。 教えろと言われたのなら、教える為に俺はお前と生きたい。 なんてことない会話をして、 なんてことない食事をして、 なんてことない外出をして、 なんてことない時間を過ごす。 そうして、生きた名残を積み上げたい」 もし嫌じゃなかったら…次は、誰かと来るといいですよ。二人で海を見たり、砂浜歩くだけでも、きっと何か… 何も思わない、って事は、ないんじゃないかなって… 「二人で色んな景色を見よう。 一人で見ても何も思わないものでも、二人で見れば何か変わるものだってあるだろう。 俺は海が見たい。カフェに行ってクリームソーダが飲みたい。どこかの誰かが脚本を務めた舞台が見たい。 お前と、一緒に」 「今度は、理解者を作るなんてことを考えないままで」 ▼ (-231) 2022/03/13(Sun) 16:57:32 |
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![]() | 【秘】 ユス → 怪物 ツルギ「考えるのが疲れたなら、考えなくていい。 決めるのがしんどいなら、決めなくていい。 俺は考えることを放棄するのを放棄したから。代わりにやろう」 「どうしても嫌になったら、俺がお前を殺そう。 俺が嫌なら、喜んで死のう」 「お前と作る景色が」 「お前が心から浮かべる表情が」 「見たいし、知りたいから」 (-233) 2022/03/13(Sun) 17:00:43 |
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![]() | 【秘】 怪物 ツルギ → ユス「………、………………っ、の、」 ───正論ばっかり言いやがって! 「てめえが、」 ───お前は俺の一体何を、 「 知って、ん、……… 」───……、ああ、そうだ。 君は、全部知ってたんだった。 全部知った上で、正論とかじゃなくて、取り返しのつかないことをした上で、自分の言葉としてこうもハッキリ言うものだから。 反論の余地が無い。 視界が覆われて、憎たらしい笑顔が隠されて、額に懐かしい感触がして。 記憶と違うのは、部屋に満ちる鉄錆の臭いと、掌の大きさと、君の唇が触れた額が。 ……温かい、気がしたこと。 ………W楽しかったWか? 本物の海には行ったことがないけれど。友達と行った偽物の海は、楽しかったから。 海に嫌な思い出は、ひとつも無いから。 「 だっ…たら。………海、が…いい。 」真っ暗な視界の中で、君を探して。 小さく、弱々しく、手が彷徨った。 (-235) 2022/03/13(Sun) 18:02:06 |
![]() | 【秘】 ツルギ → ユスふと触れた体温に、指が食い込む程しがみつく。 繊維が千切れる音がした。 ………死んでも離すものか。 君はおかしいよ。 簡単に思い出を上塗りしてしまう。 俺なんかより、ずっとおかしいんだ。 「………本当に全部、代わりにやってもらうからな。」 ……死ぬのはいつでもできますから。 あっこれ一緒に行けそうにないな、って思ったらあいつを殺して俺も死ぬつもりですよ。 「俺を殺すのも。お前を殺すのも。」 元より俺の命は、君のものだから。 別に何もおかしなことは言っていない。 これは頼みで、お願いで、 命令 だ。 (-236) 2022/03/13(Sun) 18:04:14 |
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![]() | 【秘】 ユス → ツルギ「……っ、ぐ、ぅ……ッ」 何か千切れる感覚がした。 流石に笑い続けることは出来なくて、痛みに顔を歪ませるけれど。 こんな触れ方をしたのは、こんな反応を見せてくれたのは初めてだ。 その痛みすらも愛おしい。 こぼれ落ちた吐息にかすかに楽しそうにわらう音が混じる。 「……ふ、……はは。 ああ、ああ。行こう。海に行こう。 二人で同じ景色を見よう」 98uよりも広い、切り取られていない見渡す限りの海。 本物を一人で見たことなどないし、誰かとだって見たことがない。 ▼ (-238) 2022/03/13(Sun) 19:07:20 |
![]() | 【秘】 ユス → ツルギ そうだな、おかしいかもしれないな。 だって俺は怪物だから。 憎い人間の呪いなんて、己の呪いで塗り潰そう。 「ああ。全部、全部代わりにやる。 お前の全てを貰おう」 全て切り捨てた俺は、何も持っていないから。 底すら無くした穴の空いた器だから、満たされることなんてない。 死ぬまで、俺の心が止まるまで。 ──ずっと、お前を欲しがり続けるよ。 「大丈夫、お前が教えてくれたから。 お前が俺を作ってくれたから。 生かすも殺すも、ちゃんとやれる」 ▼ (-239) 2022/03/13(Sun) 19:08:13 |
![]() | 【秘】 ユス → ツルギ「お前の全ては俺のもので 俺の全てはお前のもの。」 「勝手に独りになるのも許さない。」 「地獄まで、一緒に見てもらうからな」 (-240) 2022/03/13(Sun) 19:09:07 |
![]() | 【秘】 きみの ツルギ → ユス「………っ、ぐ、」 首筋に鈍い痛みが走る。紛い物ではなく、現実の、本物の印。 ………ああ、楽だ。 もう何も考えなくていいんだ。 全部君が決めてくれる。 全部君が考えてくれる。 全部君のせいにできる。 夢を捨てて、夢から醒めて。 現実で生きろと言われても、当然できるはずもなく。 でも 生かされる くらいなら、できそうな気がするから。息をするだけなら、なんとかできそうな気がするから。 飼うより飼われる方が、ずっと簡単だ。 「………ははっ、いいよ。 地獄でもどこでも連れて行け。 淋しさを誤魔化すために、命の過程に何かを見出そうとして。 人の命をいとも簡単に消費して。 夢の微睡から、無理矢理引き上げられて。 わかったのは、君が俺のもので、俺が君のものであることだけ。 ……最初から、それだけで良かったのかもしれない。 たったこれだけの答えを知るために、随分と遠回りをしてしまった。 (-243) 2022/03/13(Sun) 19:27:58 |
![]() | 【秘】 きみの ツルギ → ユス……さて、完全犯罪の仕上げをしなければ。 君が脱いだ服も持って行かないと。 君が後ろから殴られて、どこかに隠れて、俺が逃げてから通報した…という筋書き通りに。 俺は君の服に着替えて、地元に帰って、予備機を含む証拠の隠滅。 どんなに辿っても、人間関係を漁っても。 俺たちの関係は、誰にも分からない。 俺たちにだって、わからないんだから。 「………じゃ、手筈通りに。」 帽子を目深に被り、マスクをすればどこにでもいる通行人の出来上がり。 靴を履こうとして、土足のままだったことを思い出す。 (-244) 2022/03/13(Sun) 19:29:18 |
![]() | 【秘】 きみの ツルギ → ユス「終わったら、連絡して。」 玄関を出る前。 振り返って、マスクの下で。 ほんの少しだけ、笑ってやった。 ちゃんと見せてあげるのは、全部終わってから。 「─── 地獄だろうと それまで、お預け。 (-245) 2022/03/13(Sun) 19:30:23 |
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