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【秘】 機関士 ジャコモ → ブチ抜く ユウィ三日目、夜。 ストレルカから受け取った拳銃を懐に仕舞い、 夜の廊下を一人歩く。行先は勿論ユウィの部屋だ。 歩くたびに薄っすら緊張感が走るのは、 懐のこれを相手に向けないといけない事が大きい。 それが例え幸せになる為の過程でも、躊躇いは生れるものだ。 「ユウィさん」 貴方の扉をノックして入れて貰う。 「そろそろいいお時間かと思いましたので」 「……出航初日、お酒を手に招き入れて貰った時は、 こんな事になるとはまるで思ってもいませんでしたね」 面白い事だとばかりに笑った。 (-0) 2024/04/07(Sun) 0:01:26 |
【秘】 ブチ抜く ユウィ → 機関士 ジャコモ「そうかい?」 招き入れて、穏やかな笑みを向けている。 これから起きることを知っているのに至って平常通りだ。 「オマエの命を取り合うことは、 オレは最初から勘定の内に入れていたよ」 そりゃこちら側は裏切るつもりだったからそうなのだが。 「……ノッテの奴らはどうも甘ちゃんが多いからな。 マフィアのくせして。オマエも、きっとそうだ」 「正直今からでも頭を下げれば、 首輪付きで飼ってくれでもするんじゃないか? オレは結構そういうところを気に入ってたんだが…… ユウィの生き様としちゃ恥さらしもいいところだ」 あなたと対等な立場どころか、 こっちが地の底まで一足先に落ちてしまう。それは望まない。 「ジャコモ。忘れ物はないか」 ヴェスペッラが出発するときに問われたこと。そのリフレイン。 たとえ忘れ物があったとしてもう戻れないが、 それを抱いて。覚えて先に進むのは悪いことではない。 (-1) 2024/04/07(Sun) 0:13:20 |
【秘】 機関士 ジャコモ → ブチ抜く ユウィ「それを聞いた時はまあ驚いたもんですけど…… そもそもアンタに命を預けてますからね。 驚きはしても、責めることはなにもありませんし」 「俺が甘ちゃんなのは否定しませんけど、 ユウィさんも俺には大分そうだと思うんだけどなァ…」 「案外明日はそういう話してるかもしれませんね。 でもアンタは飼われるのなんて真っ平ごめんでしょうし、 ……俺も、危険を省みずとも堂々たる生き様をする。 そんなアンタを見守っていたいですよ」 問われた言葉。まだ皆がいた頃の、 航海に胸を躍らせていたあの頃のもの。全てがさよなら。 「もちろん」 「ユウィさん以外に忘れて困るものはありませんから」 記憶を忘れてあの頃に戻っても、結局は戻れない。 ならば女々しく後ろを見るより、前を向いて。 そうして新たな星星を見つけに行くのだ。 (-2) 2024/04/07(Sun) 0:31:52 |
【秘】 ブチ抜く ユウィ → 機関士 ジャコモ「はン」 「偉く熱い口説き文句を言えるようになったじゃん?」 前を向く。ずっと前へ進む。 並び立つならそんな相手がいい。 誰かがついてくるよりよっぽどいい航路になるじゃないか。 「正直、オマエの世界をオレの周りだけにしたくはない。 逆もまた、そんなモンで収まるような器じゃねェ。 色々なものを見に行こう。 失う分だけ、世界を広げていこう」 「───駄目だったとしても、必死に生き抜いて死のう」 「ジャコモも死ぬなら傍で死ね。 オレもそこにいる。今も、この先も」 行き止まりに辿り着いたとき、側に愛する奴がいるなら、 それほど心強いこともないのである。 「さ。どっからでもかかってこい」 ベッドに座って、不格好に足を組んで笑った。 ──持ちあがった右足の首の先がなく、加えて断面が空洞だ。 致命傷を受ければすぐにあなたを撃つ。一人にはさせない。 (-3) 2024/04/07(Sun) 0:56:37 |
【秘】 機関士 ジャコモ → ブチ抜く ユウィ「ユウィさんに釣り合う男になるには、 広く世界を知る男じゃないと駄目ですもんね。 大丈夫です。寂しいとかはあんまりなくて、 アンタの傍って言う最高の特等席で見られるなら どんな物を見たってきっと、大切にできる」 言葉に聞くだけで浮かんでくる景色がある。 航路の先の沢山の星々。新たな未来を掴むための星。 その景色を見る為なら、俺は、 「俺、どんな事があっても、絶対逃げません」 「この時間が少しでも長く続くように」 「──約束しますよ、俺」 「必死に、精一杯生きて、共に死のうって」 "その時"愛する人が傍に居てくれるならきっと、 死の恐怖さえも克服できると信じている。今も。▽ (-6) 2024/04/08(Mon) 6:06:49 |
【秘】 機関士 ジャコモ → ブチ抜く ユウィ懐から拳銃を取り出して安全装置を外す。 もう手の震えはない。これが愛の力かと 先ほど自分で浮かんだ思考の実用の速さに自分で苦笑する。 大丈夫。俺達の目には未来が見えている。 銃口を貴方の胸元に押し当てて、少し顔を上げる。 貴方の口元に触れるだけの、甘い優しい口づけを落として。 「Buonanotte.Sogni d'oro.」 そうして、躊躇いもなく、その引き金を引いた。 どうか貴方のひと時でも見る夢が黄金色の夢でありますように。 最後に思った事は、銃の反動が想像よりも大きくて後ろにがくんと下がり、せっかく二人が折り重なるかと思った距離で撃ったのに、また離れてしまうのかと少し寂しく思った事。 もうひとつは、照れ臭くて言えなかった言葉を 結局最後には口に出してしまったこと。 聞こえてしまっただろうか。気付かない振りをしてくれるだろうか。 答え合わせは全て、夢が目覚めた後に。 「Ti amo. ユウィ」 (-7) 2024/04/08(Mon) 6:13:28 |
【秘】 ブチ抜く ユウィ → 機関士 ジャコモ狂おしいほどの痛みを感じるのは血の循環が止まった合図だ。体温ごと血液が溢れ出ては悪寒が駆け巡り、視界が暗くなる。 (───、) 脳に何も登らない。思考が鈍る。 ほんの一瞬だけ置かれた状況が吹き飛んで、身体の動くままに近くにいた相手の背へ手を回した。多分こうすればいい。 ジャコモを殺さなくてはならない。 ジャコモを離してはならない。 それだけは確かに身に染み付いている。 頭が働かないなら直感に従うべきで、 今は正しくその時に違いない。 迷わず胸に足の断面を押し付け、撃ち損じのないように勘でも経験でも何でも頼りながら機構を作動させて。 ──そうして心臓を撃ち抜く。その最後の一仕事をやり遂げて、あなた諸共後方に倒れ込み。尾がつっかかって今度は横に崩れた。 (-8) 2024/04/08(Mon) 8:15:10 |
【秘】 ブチ抜く ユウィ → 機関士 ジャコモ安堵によるものか、命の灯火を燃やし尽くしたのか、 身体が脱力してもう指一本も動かせなくなる。 これよりヒヤヒヤするような鉄火場にはそうそう行き当たらないだろう。心臓を敢えて撃ち抜かせるなんて芸当、二度はやりたくない。 額に唇を寄せる。 眠るには少しだけ口元が寂しくて。 「Per favore」「dormi con me」 ここに至ってもいまだに罪悪感というものは感じるもので。 ファミリーでの暮らし。ヴェスペッラでの旅。 その中でただ一人殺せたノッテの人間があなただけであるということ、 それがどんなに幸いで愛おしいことなのかを噛み締めて眠る。 太陽も夜もない逃避行の先に、 どれだけの時間を過ごしていけるだろうか。 愛の言葉を改めて乞うのが、今から楽しみだった。 (──Anche a me ジャコモ) 本当に。良い命の使い方が出来た。 星の海にて、また出逢うその時を夢見て、 今日のところは満足して瞼を閉じるのだ。 (-9) 2024/04/08(Mon) 8:21:07 |
【独】 機関士 ジャコモその滲んだ瞳は、星なんてひとつも捉えた事がなかった。 身体も、声も、名前も、人生も全て奪われ、 皮肉なことに記憶だけは残されたまま捨てられ、 ジャンクヤードのゴミ箱や排水溝何かに必死に食事を求め、 ようやく見つかった第二の住処でも"代用品"としか扱われないと知った時、 自分が強く人間としての生を求めている事に気づいた。 もうそうとしか扱われないのならば、 そうやって生きて行ってもいいんじゃないかと諦観する程、 俺の世界に"星"は一つ足りとも輝いていなかった。 それは唐突に、 ぽたりと一筋のインクを書物に垂らしたかのように、 魔法をかけられたかのように、幻想生物を見る。 それからの旅は、竜に導かれた見知らぬ広い空ばかりで。 自分には夢物語としか思えないものと山のように出会った。 ダチと旅行の約束をした。猫と船の夢を見せて貰った。シスターと酒盛りした。喧嘩する程、仲がいいは当てはまらないと知った。 ただの普通にしか見えない女とこの俺なんかが"仲間"になった。 彼らにたいしてもう少し何か綴ろうか、思案にふけようかと考えもしたが、今となっては全て言い訳染みてしまうなと結局長くは続かず、苦笑して手を止めた。 ユウィさんに望みをかけていれば。いつかは待っているだけで合法に会える日が来るとは思うけど、それじゃあ余りにも情けなさ過ぎる。 護送団 "シアーメ・メテオリコ" は流星群だ。 一人だけでは幾ら明るくても流星群にはならない。 それならば、誰よりも遠く、高く輝く。俺も、"星"になりたい。 (-112) 2024/04/13(Sat) 23:30:06 |
【独】 機関士 ジャコモ真の安寧が訪れることはない。 今度挑むのは、太陽も夜もない銀河だ。 不安はなかった。むしろ幸福だと思った。 信じて、信じ合えている最愛の人がそこにいる。 どんな運命でも、自分達なら開けると夢見られる。 どんなに暗く困難な道であろうとも、 どの道を進むか、舵は俺達に託されているのだから。 "人間"ならば、託された己の意思でそれを指し示せる。 全て、全ては大切な彼が教えてくれた事。 だから昔のように、人としての生を終わらせようなんてことはもう笑い話なくらいに昇華され、幼少期にずっと泣いてる"俺"も、 きっとこう言う事だろう。 "星"が綺麗だね、と。 Giacomo Leonardo Carafa (-113) 2024/04/13(Sat) 23:30:22 |
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