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【赤】 魔術師 ラヴァンドラ殆ど無意識に溢れてしまう涙を拭う温もりひとつさえ、 女をどこまでも甘やかすものだ。 ―――― ひとりでも大丈夫だと思って生きてきたのに …… 与えられる体温も甘さも、一度触れてしまえば 後戻りが出来なくなりそうだけれど。 例えそうなってしまっても良い、と思ってしまったのだ。 兎は独りで生きていけないのだから ―― … 彼をもう、海の世界には帰してやれないし 一生を縛り付けてしまって、 綺麗な人魚を同じところまで堕としてしまおう。 (*0) 2021/12/14(Tue) 10:28:44 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラなどと、この女は考えていたのだけれど。 「 ッや、 重い……から、降ろして… 」 そっと抱き上げられれば、そんな思考も霧散する。 魔術の研究に託けて食事を抜く方が多く 体格も合わせれば女の身は確かに軽いのだけれど 気にしてしまうのは、乙女心というものだ。 己を抱き上げる彼の腕が、存外筋肉質であることにも この状態では意識せざるを得なく。 ―― 兎は大人しく腕の中に収まって。 (*1) 2021/12/14(Tue) 10:28:50 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラ「 …… ぁ、う…… … 耳、触りたいの……? 」 こんな耳を触っても、何も楽しくないのではないか。 それともふわふわしたものが好きなのだろうか。 ぐるりと疑問符が脳内を巡り、ちいさく言葉を紡ぐ。 ローブを剥ぎ、白いワンピースにも伸ばされた手は どこまでも穏やかな手付きで。 …… 時折体を撫でられれば、びく、と肩を揺らし 咄嗟に足を動かすのだが。 縫いとめるように足の間に彼の膝があるものだから、 体を動かして微かな快感を逃すことは出来ない儘。 (*2) 2021/12/14(Tue) 10:28:54 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラふにゃりと気恥ずかしそうに微笑めば、 愛玩動物さながらの耳もぱたぱたと揺れる。 彼の頬が耳へ寄せられ、そのまま触れ合うのなら 女はシーツをきゅう、と握り締めた。 「 ん、……ッ 」 この程度の触れ合いならば発情には至らないとはいえ、 耳や尻尾は兎族の弱点だ。 零れ落ちてしまいそうな声を飲み込んでは 髪や額に口付けが降るのなら、それも受け入れて。 (*3) 2021/12/14(Tue) 10:29:07 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラ発情も何もしていない状態で、 こんなにゆっくりと触れられるのは初めてだ。 ―――― 壊れてしまうと錯覚する程うるさい心臓も 撫でられるだけで奔る痺れも。 手酷く抱かれる方が慣れているから。 こんな状態が続けば理性も何もかも失う気がして、 未知へ怯える子どものように瞳が揺らぐ。 (*4) 2021/12/14(Tue) 10:29:12 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラけれど、それでも ―――― 彼の甘さと優しさを手放すのは嫌で、 女は何もかも曝け出すように 身体から力を抜き、食べられるのを待つうさぎのように 自分を縫い止める男の顔を見詰めた。* (*5) 2021/12/14(Tue) 10:31:52 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ―――― 夕刻/自宅 ―――― 呪いを 使ったことは無い ≠ニいう言葉に 虚偽も嘘もなにも含まれてはいない。 ―――― 高位魔術師らしく知識を豊富に持ち、 一介の術師では手を出そうとも思わないような 呪いに関することさえ識っている。 少女の、女に対する認識は 凡そそんなもので良いだろうと思ったのだ。 …… それが正解とは呼べずとも。 だから本当は、この少女に言うべきは ―――― (3) 2021/12/14(Tue) 11:58:00 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 ―――――― 魔力を使わずに 貴方に掛けられた呪いを …… 」 >>2:358 女がいよいよ露骨に眉を寄せたのは、 彼女が腕輪を外した途端、 決して軽くはない呪術のにおいがしたからだ。 パイ屋で出会った時、強い魔術の気配がしたのは 恐らくあの腕輪が原因かとアタリを付けて。 緊張感と得体の知れなさに 女の瞳がいよいよ強張った ―― ところで。 (4) 2021/12/14(Tue) 11:58:22 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ人魚の彼が温かい飲み物を届けに来てくれたなら そっと、女は眦を緩めるのだ。 ありがとう、と微笑んで礼を紡ぎ わざわざ用意してくれたのだろう蜂蜜を紅茶へ入れて 適温まで冷まされた紅茶をこくん ―― と飲む。 「 …… 美味しい 」 呪術への防御反応のせいか、すっかり冷えていた指も ティーカップのおかげで幾らか温かい。 二人が知り合いらしき会話を交わし合うのならば 女は邪魔することなくそれを聴いていよう。 (5) 2021/12/14(Tue) 11:58:32 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラいや、冗談が分かり辛いのではないだろうか。>>2:364 物の見事に信じ込んだ少女の気遣いに>>2:366 女は長いローブの袖で口許を隠し、肩を震わせた。 「 ふふ、…………っ」 何なら笑い声も噛み殺せてはいないのだが。 深呼吸をし、なんとか肩を落ち着かせた女は は … っと息を呑んでは、ぷるぷると頭を振った。 依頼主の前では、どんな時も緊張感と 魔術師らしい威厳が必要である――という持論の元。 (6) 2021/12/14(Tue) 11:58:37 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 … テレベルムと知り合いみたいだし 出来る範囲で、貴方の依頼を受けてあげる。 そもそもどうして、貴方みたいな子に そんな呪いが掛かってるの? ―――― 恨みを買ったにしても…… 」 些かその呪術は古すぎるのではないか、と。 …… 世間一般が想像する魔術師のように つん、とした顔で、女は問いかけてみるのだけれど 緩んだ顔の後では、手遅れだったかもしれない。* (7) 2021/12/14(Tue) 11:58:45 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 垂れた耳なんて気持ちが悪い。 」 そう言った同族に後ろ指を指された。 「 こんな子供、扱い切れない。 」 そう言って両親は私の手を離した。 同じじゃない存在は恐ろしい。 ―――― 世界に私は必要無かった。 (8) 2021/12/14(Tue) 14:09:44 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ最初に魔術を修めた。 すごいね、と褒めてもらいたくて ―― だれかに存在を認めてほしくて。 けれどそれが叶わないと知った時、 私は次に呪いを学んだ。 自分を捨てた両親も同族も、人間も 殺してやりたいくらい憎かったから。 結局呪いも殺すことも出来ずに 私は、人間を造る魔術を編んだ。 (10) 2021/12/14(Tue) 14:09:59 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ人間になりたいのは、本当。 ―――― でも私だって理解ってた。 器を変えても、なにをしても …… 愛されなかった過去は変わらない。 人間になりたかった。 そんなことをしなくても肯定されたかった。 人間に為りたくなかった。 そうしてまで、もう 生きていたくなかった。 (11) 2021/12/14(Tue) 14:10:08 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラ抱っこして、と強請るほど幼い子どもではないけれど きっと彼はそんな我儘も叶えてくれる気でいるのだろう。 ―――― つい昨日まで対等であったはずの彼が、 何故だかすこし、……すこしだけいつもより大きく見えて 女は微かに息を吐いた。 「 ぅ、……はずかしいから、 あんまり言わないで…… 」 何せ耳は、女の意思関係なく動くもので。 焦ればぱたぱた暴れるし、驚けばぴんと突っ張るし、 ―――― 好きだと思えばふるりと揺れるのだ。 そう、例えば、今のように。 (*18) 2021/12/14(Tue) 21:28:17 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラあやすように毛並みへ触れる指先には、 不埒さも下心も無いと言うのに。 シーツではなく、握る先を彼の掌に誘導された女の指は その誘い通り、絡められた指をぎゅうと握った。 ―― ワンピースの釦を外されれば、 顔をいよいよ真っ赤にして、自分でやると言おうとし 結局睫毛を震わせ言葉を飲んだ。 食べられる準備を進んでしているように思えて、 ………… それがどうにも気恥ずかしくて … 「 …… ッ、 」 下腹部を撫でられる感触に、脚が跳ねる。 (*19) 2021/12/14(Tue) 21:28:21 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラ「 ………… ふぇ、 あっ、 て 手伝う……? 」 反射的に尋ねてから、あ、と思った。 彼が服を脱ぐ手伝いなどしてしまったら、 今からしようとしていることをより強く認識してしまう。 誰かと肌を重ねることなんて、初めてではないのに。 ―― 其れが例えどんな目的でも。 女にとっては今更恥ずかしがることでも無ければ 怖がるようなことでもないはず、なのに ―― たどたどしい手で、彼が服を脱ぐのを手伝えば 気まずげな声音の言葉に 小首を傾ぎ。 (*20) 2021/12/14(Tue) 21:28:26 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラ彼に抱き締められるだけで早鐘を打つ心臓も、 互いの隙間を埋めるように合わさる唇も。 どうすればいいのか分からなくなってしまって、 女は縋るように、自分を見下ろす彼を見詰めた。 「 ひぁ、ッ!? 」 覆うものも無くなり、彼の眼前へ晒された胸へ なによりも綺麗な生き物であるはずの彼が顔を埋め、 ぬるりと熱が這う感覚に、甘い声が零れ落ちる。 (*21) 2021/12/14(Tue) 21:28:38 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラ「 ゃ、ン……っぁ、 それ せなか、ぞわぞわするから、ぁ……っ 」 発情状態でもないのに、 どうして彼が触れるのがこんなに気持ち良いのだろう。 分からなくて、未知の快感がこわくて、 女は抑えられない声を零し、彼の手を握り締めた。 たすけてほしい。 でも、やめてほしいわけじゃ、ない。 兎はぽろぽろとまた涙を流し、 妙に熱を訴えては疼く下腹部を誤魔化すように、 はふりと息を吐いて 潤んだ瞳で、彼へ縋った。* (*22) 2021/12/14(Tue) 21:30:52 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラ清らかさとも、彼の言う聖女らしさとも無縁の女は けれどその時確かに、 何の穢れも知らなかった頃のような幼さを伴いながら 白いシーツの海を泳いでいた。 「 ……っこどもには、 こんなこと しない、でしょ…… 」 >>*26 男の言葉に反論を投げる余地は無く。 けれども子どもでは無いことを言い返してやりたくて 兎は耳を揺らしながらそう言った ―― けれど。 …… まさにそれが子どもじみているのだろうなと 思い至ったのもまた事実だ。 (*34) 2021/12/14(Tue) 23:08:19 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラ甘やかに喘ぐ声は、子どもらしさからは程遠く。 まるで生娘さながらに当惑していれば、 人魚は胸の頂をやわらかに食んでしまうものだから。 「 ッや、ぁ ああ……っ! ひぅっ、ン、んぅ〜〜〜……ッ 」 いやいやとむずがる子どものように頭を振りながら、 女はぎゅうと彼の空いている手を握り締める。 快楽の海へゆっくりと沈めるように柔らかな胸を揉まれ、 温かな舌で嬲られては、思考もどろどろに蕩けてしまう。 ―――― 気持ちいいことから助けてほしいのに、 縋れる相手は、まさに女を追い込んでいる張本人で。 (*35) 2021/12/14(Tue) 23:08:24 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラ「 ………… くるしく、なぃ … けど、 」 彼が胸から手を離す頃には、 女の舌は普段の半分もろくに呂律が回っておらず。 快感で潤んだ双眸と火照った白い肌を晒し、 投げられた問いへ、くちびるを開いた。 「 こんな、やさしくされたのも、 …… きもちいいのも はじめて、だから…… 」 自分がどうなってしまうのか分からなくて、 ―― それがすこしだけ、こわいけれど。 (*36) 2021/12/14(Tue) 23:08:29 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラ「 ひゃんっ!? 」 彼が女の両足を割り開くように身を差し込み、 あろうことか下着の真ん中へ顔を寄せるのを感じれば 兎は高い悲鳴を上げ、咄嗟に足をばたつかせた。 「 ぅ、……ぁぅ……。 なんで、ばか、きかないでよぉ…… 」 本当に嫌だったら、彼の顔を押し退けてでも 拒否しているに違いないのに。 ―――― 触られてもいなかった蜜口が こんなにも下着を濡らしている理由、なのに。 (*37) 2021/12/14(Tue) 23:08:35 |
【赤】 魔術師 ラヴァンドラ「 いい、よ。 ―――― テレベルムの、好きにして…? 」 ふわ、と。 彼を誘い入れるように、強張っていた体から力を抜き まるで初めての女のように羞恥に染まる頬のまま、 女は男へ、ちいさく囁いた。* (*38) 2021/12/14(Tue) 23:10:20 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ―――― 夕刻/自宅 ―――― 「 …… 魔力を使わずに、自体は。 出来ると言えば出来るんだけど … 」 魔術師は基本的に、魔力がなければ何も出来ない。 そして魔力の行使が身体に根付いているから、 どんなに意識しても必ず微量な魔力は流れてしまう。 けれども彼女の――己とは真逆の体質を思えば>>41 極力使わないようにする、というのも毒だろう。 微かにやわく笑う彼女を気遣おうとしたけれど、 結局どれもが慰めにしかならないような気がして 女は睫毛を伏せた。 ] (69) 2021/12/15(Wed) 10:30:59 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 ――――――― …… 、 」 気を紛らわせるために紅茶を飲もうとした手が、 ぴた … と止まる。>>44 いないことになっている貴族の長女、 簡単に解かせようとしていないだろう呪い。 ―――― 記憶と知識の海をどれだけ潜っても 彼女の呪いの解呪方法は見当たらなかった。 個人が作り、生み出した呪いなどというものは それほど難解で、だから誰も扱いたがらない。 (70) 2021/12/15(Wed) 10:31:03 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 …… 貴方の、その呪い自体は 私でも解呪方法は分からない。 呪いは、世界を恨んだ人が選ぶ最後の手段で だから死ぬまで掛かり続ける。 」 人を呪わば穴二つ、という言葉があるけれど あれは二人分の墓穴を用意する覚悟を持てということだ。 呪えば相手を殺せる代わりに、 自分にも同じだけのことが必ず返って来る。 ―――― 願いには対価を。 呪いの場合、命に命を捧げるのと全く同じこと。 (71) 2021/12/15(Wed) 10:31:07 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラそう、だから ―――― 私がここで彼女に「呪いは解けない」と言い捨てても それは当然の話なのだ。 魔術師は誰かを救うために魔術を修めていないし、 正しい筋道で解けないものを放り投げようが きっと誰も私を責められない。 …… …… 魔術師としては、正解、だ。 ローブの裾をぎゅうと握り締める。 殆ど見ず知らずに等しいこの少女を あの方法で助ける義理なんて、―― (72) 2021/12/15(Wed) 10:31:21 |