>>7　シャフリヤールとの感情取得

[あたしが一番落ち着く場所。
それは、考えてみるに、まだどこにも見付かっていなかった]


シャフリヤールは、どこだと思う？
あたしの“一番落ち着く場所”。


[だからシャフリヤールに、あたしは唐突に切り出した。
彼からしたら、“なんだ急に”って思うような、問いかけだろうけど]


あたしが思うに、“一番落ち着く場所”っていうのは…勿論物理的にそういう場所があるケースもあるだろうけど…。
本当は精神的なものなんじゃないかしら？

それで思ったんだけど。
人間は、恋や愛をするでしょう？

だから…それこそ、誰かの傍、とか。
そこが、“一番落ち着く場所”になるんじゃないかしら？

[全部想像でしかない。

だって、あたしは天使だもの。
愛とか、恋とか、そんなものに触れる権利も機会もない。
サーリフは良く愛がどうこう言ってるけど、あたし自身はぴんときてない。

でも────想像するくらいは、したっていいじゃない、って思う]


…………ねぇ、シャフリヤール。

天使あたしも、愛を知ることが出来るかしら？


[淡い問いかけは、答えを期待してのものでは無かった]


もし────もし、ね。
あたしがちゃんとお役目を果たして、あんたが地上に戻ったとしてね。

その時あたしは、愛一番落ち着く場所を探してると思うから……。


地上から、応援してよね。

[天使は、子供のように、無邪気に笑った]

>>1:80>>1:81


[割れんばかりの歓声というBGM、だけど俺は眼前で燃え盛る命に釘付けになってた。

目を逸らせることに成功したのは、それからどれくらいだったのか。俺は、ちゃんと──保てていたのか。

ファルーサの言う事は、ひとつも、何も分かんなかった。死の瞬間、命の反転？　
生の、実感。

　『おまえみたいに"ただ生きてりゃOK"な人生』

なんだよ、メチャクチャ腹立つじゃん。
まるで、俺にはなんにも無かったみたいに、言うじゃねぇか。

ただ生きるだけの何が悪い。
ただ生きて死ねよ。オマエみたいに、オマエみたいになァ、

──ああ、純粋な暴力じゃ、俺は無ぇ。


空間を未だザワつかせる熱気が、居心地悪くて仕方がない理由が、ココにあった。逃げ出したい一心で、力無く振り払うように吐く。]



　…………オマエには聞かない。
　何があっても、口に出さない。


　

[そう、何があっても。だってこんなにも違う。わかり合えない、ならそれでいいだろって思うのに、人間としても生き物としても勝敗が既に決しているような気持ちになんの、そんなの、
口に出した瞬間から俺が──　　　になるだろ。]





[もう空気を引き裂くような歓声は止んでいるのに。
旱天にひび割れた心から、何かがうるさく、叫び出してる。]



　

>>5>>6　ナディル

（──…………戸惑うわァ……）

[思わず出生の土地のイントネーションで思考してもうたわ。これがまた、何に戸惑うかって、その理由にキリが無いのがまた。こんな得体がしれない精霊　もの、振り回される気しかしない。]


　──むかつく。

[間違ってなければ、目の前の──男は機嫌が良かった。それが予想外で、何故かとても気恥ずかしく思えて、視線をそらして嘯いた。]


　その酒……好きなんだな。……なんで？

[そんな他愛ない質問を皮切りに。どかり、と居直り──いやコレは居ずまいを正したに過ぎないな──俺はナディルになんだって聞いた。

精霊は生き物なのか。人間との違いは何か。斬られたら、死ぬのか？

オマエが嫌なことって何。
大事にしてたことって何。
自分の罪って何だと思う。
]

　……願いを叶え続けるのって、
　オマエにとって生きる事でしょ。

　それってさ……空っぽだなあって思う？

　

　ナディルは、何か欲しいもの、無いのかよ。
　叶えたい願いは……あるの


[存在価値が、ソレしかねぇんだ。だからそれは"生きる事"だろ。ただ生きるだけ、それは一緒なら、俺と何が違う。
罪って何なんだか本当に分からなくて、何にでも縋ってる。その自覚もあるから──『気安く呼ぶ』のは八つ当たりだった。]


[パス]

　「お前の召使にか？そいつはお断りだなぁ」

召使は他人に含まれないという。
彼にとってそれだけ"人"とは重みのあるものなのか、と思う。

にしたって、判断基準が召使なのも癪だなぁ？

　「この俺を飼い慣らせるもんならやってみな。
　　不自由のない生活してるおまえにも、
　　不自由なもんができたって爪痕くらいは残してやっからよ」

湯の効能か、会話の影響か、
息の漏れるような微笑をこぼした彼を見る。

生きとし生けるもので温泉が嫌いなやつはいない。
────誰かといる湯も悪くねえな。

湯煙が薄く立ち籠める石造りの浴場で
サーリフの汚れた翼を洗ってやりながら
俺は頗る不機嫌だった。

「なんで俺がこんなことを……」

人型ゴーレムに働かせようとしたら
温泉には連れて入れないと言われ、
適当に人を雇おうとしたら
知らない者に翼を預けたくないと我儘を言われ、
何故かこんな羽目になっている。

だいたい、ラナーもサーリフも
ちょっと一声で俺を使役しようだなんて
いくら天使様でも安く見積もりすぎだろう。
そこらで十把一絡げの下級精霊じゃないんだが。

>>47

「気持ちいいです…」

擽ったいのか、時折ふるりと羽を震わせ
サーリフはのぼせたようにうっとりと呟く。

所詮、天使と精霊が分かり合えるわけもない。
この愛おしいような腹立たしいような生き物に対する
苛立ちと諦めを綯い交ぜて溜息に吐き出し、
羽根を一枚一枚丁寧に洗い流す。

そうしていると手首の鎖がいやに目について
これもまたよく分からんのだよな……と
返事も期待せず、ただ気紛れのように尋ねた。

「何故お前達は片翼なのか」
「どうして俺達は繋がれたのか」と。

……そう、別に答えなぞ期待してなかったのだ。
　

>>48

『本当に知りたいですか？
もう、予想はついているのではないですか』

急に目が覚めたような『天使の顔』で
サーリフは俺の瞳を覗き込む。

──しまった、と思った。

予想がつくかどうかで言えば、大方は。
知りたいかどうかで言えば、正直どうでもいい。

、、、、、、、、、、
だからたぶんこの後は
、、、、、、、、、、、、、、
サーリフが望むほうへ事が進む。

掴まれた指先を振り解けないまま、
俺は早くこの無防備な場所から逃げ出したかった。