[　ひとはそれを奇跡って言うんやろけど
　　そんなことすら いまはどうでもいい

　　雨音のいない世界なんて
　　そんなん　いらんねん　]



　　


　[　でもな
　　うでのなかに捕まえてしもたら
　　もうなんぼ濃厚接触やいうたかて
　　今更遅い　]

　　『　もう　大丈夫や
　　　　　もうさびしない　
　　　　　

　　　雨音はちゃんと帰ってこれた
　　　……っ、　　　』

　　

　　『　……っ、ぅ　、……く』

　
　

　[　　大人の階段登る最中の男子は
　　こっそり浮かべたはすの涙


　　……結局堪えきれんくて
　　二人で何回も名前を呼び合った　　]

　
　

　[　それから
　　無事目を覚ました雨音には
　　色んなことが待ってるけど

　　もう、大丈夫。






　パンジーとペンギンと
　マンボウはひとつにくっついた。

　歩幅にあわせて　過ぎてった季節を
　もう一度辿っていこう　]

　[　それは退院を間近に控えたある日
　　いつものように見舞いにやってきた時のひとこと。]



　　　『　へ　』



　[　へんなこえでた。

　　相手知ってるやろ？俺名前書いたで？
　　いやそういえば雨音は名乗ってなかった気がする

　　……なんて　]

　[　そういやそんなもの、あった気がする。
　　時が経過して、瞬くたび
　　記憶は薄れ、きえてゆく。


　　内容なにかいてたっけ

　　記憶はどんどん曖昧になってった　]

　

　　　『　　交換日記がどないしたん　』


　
　

　　『　雨音。


　　　退院したら　今度こそ
　　　海いこ


　　　およがんでもいいから　』

　[　……海で、言おうとおもったけど
　　やめた。　]


　
　

　[　とうとう告げることのできたこの想いに


　　　　　　あかんわ、また泣きそうなんて　　



　　　すっかりへにょくれた俺のこころは
　　　　　カッコ悪い告白を　うみだした　**　]
　　　

　[　なんやねんそのへんなこえ　]


　　　『　なんやねんその変な声　』


　[　こころの声だだ漏れキャンペーンしてしもたわ
　　　一世一代の告白やいうのに　]

　[　震える布団があることを良いことに
　　よいしょ、とベッドにのりあげた。

　　様子見てちら見しようもんなら
　　布団を押さえて

　　ちゃんと目と目みて　お話しようのお誘い　]

　[　中学生は小生意気にも
　　これが幸せの形なんだろうと理解する。








　　思い出話のひとつが語られるときに
　　一緒に話、しよかな　]

　[　雨音が布団を下ろしたら
　　目の前にばあ、で

　

　『　図書室いくん？
　　　せやったら俺先ノート買いにいってるわ　

　　　後でな　』



　[　そーしゃるでぃすたんすとやらは
　　確実に　縮まってたらしい　]

　[　遠くの寮のある男子校に進学予定やったのが
　　今はちがうとこになったけど
　　先生も親も応援してくれたから　頑張れる

　　雨音はどうやろ？

　　一緒に勉強するようなって、
　　縮まったそーしゃるでぃすたんすも
　　口と口が重なるせっぷんとかいう行為には




　　……その話は、またいつか。　]

　[　今日も擦りもしないなまえで、

　　　　俺の島のポストには手紙がとどいてる　]

　『　　　……　　』




　[　いつぞやの図書室。
　　そっと一冊のノートを棚へと隠す。

　　内容？何にも書いてなかった。



　　…………けど。　　]

　　『　……行かないと。　』




　[　そう、俺には
　　　だいじな時間が迫ってるんや

　　予行演習は散々済ませたから、な。
　　

　　書こうとした文字は、結局綴ることはなかったけれど


　　きっとそれは　また違う絆を
　　待ち望んでる**　]