人狼物語 三日月国


131 蕐の残香、追憶のブーケトス

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【人】 ピアニスト イングラハム



   演奏者として恥じない礼装姿のまま
   先客にそう声をかけた。
それが始まり。


   彼女の反応なんてお構い無しな私は
   まだ子供のように無作法なままで
   彼女が何を思うかなんて知らずに。

    「本、好きなの?」

   そう言って手元の本に視線をやったりもした。


(20) 2022/02/13(Sun) 16:57:03

【人】 患者 アンネロズ



[ 病院は慈善が集まる場所だと私は思うの。
  ピアノのコンサートもその一つ。

  私も、聴いたことはあるの。>>16

  純粋に聴き惚れていたのは事実。
  演奏の美しさに。滑らかに動く指先に。
  彼の演奏に魅了されたの。  

  でも、叶うなら、病院という舞台ではなくて
  ただ、音楽を楽しむだけのコンサートホールで
  その演奏を聴きたい、なんて我儘を思ったわ。 ]


  
(21) 2022/02/13(Sun) 17:48:49

【人】 患者 アンネロズ



   どうしてかって?
   だって、彼の表情はどこか翳っていて。
   息苦しそうな気さえ、してしまったのよ。

   自由に演奏しているというより
   どこか型にはめられて窮屈そう。

   そんな素人の意見がどこまで正しかったのか
   知る機会はあったかしら?

  
  
(22) 2022/02/13(Sun) 17:49:29

【人】 患者 アンネロズ



 ***


[ あたたかな陽の光が照らすその場所で
  私と彼は出会ったの。

  眩し気に目を細めて、ベンチに腰かけている私と
  礼装姿の貴方の出会い。それはただの偶然? ]

  
(23) 2022/02/13(Sun) 17:50:33

【人】 患者 アンネロズ



    こんにちは。いい天気ね?

  
(24) 2022/02/13(Sun) 17:51:50

【人】 患者 アンネロズ



[ ふわり、とゆるく口角を上げて。
  日焼けしていない白い頬は
  少し不健康そうに見えてしまったかしら。
  
実際、不健康だからここにいるのだけれど。


  礼装の彼とは対照的に私の服は病衣。
  運命の出会い、というにはあんまりいい恰好は
  してなかったかもしれないけれど
  服装を気にするのも今更よね。  ]

 
(25) 2022/02/13(Sun) 17:52:35

【人】 患者 アンネロズ



   本は……好きよ。
   ……ううん、
好きってことにしてる
の。

   あんまりすることなくて。
退屈だから読んでる。



[ 手元の本に視線が移れば
  題名が見えるように表紙を見せて。
  
  代わり映えしない日々に退屈してたものだから
  つい、言わなくてもいいことまで
  口走ってしまった私は、右手の指先を唇に当てた。 ]

  
(26) 2022/02/13(Sun) 17:54:05

【人】 患者 アンネロズ



   あ、これはひみつ、ね。
   皆には本好きのアンネだと思われてるから。

   名乗ってなかったわよね。
   私はアンネロズ。
   アンネって呼んでもらえたら嬉しいな。

  
(27) 2022/02/13(Sun) 17:54:36

【人】 ピアニスト イングラハム



   病院が慈善活動の溜まり場にされたとして
   命懸けで戦う患者からすればいい迷惑だろうに。

   そんな承認欲求のために患者を利用する気分は
   当然、いいものとは到底思えない。

   だがまさか鍵盤の音色に隠れた私の顔色を
   見抜いてしまうような者がいたとは思わない。
   全く、不思議なこともあるものだ。>>22



(28) 2022/02/13(Sun) 18:33:33

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   その出会いは、冷えた心には心地いい。
   いい天気だという彼女に同意を示し、
   隣へと腰かければ見えぬ物も見えてくる。

   太陽を知らぬ純白は外界との距離を感じさせ、
   その程度は知らずとも、病院にいる理由が
   私にもなんとなく分かる程だった。


(29) 2022/02/13(Sun) 18:34:04

【人】 ピアニスト イングラハム



    「退屈、か。」


   正直、驚きはしなかった。
   少し考えれば想像がつく話なのだから。
   それでもってこの事は
   周知の事実というわけでもないらしい。

   脳裏に浮かぶ「同情」の二文字は
   ぐっと脳の奥深くへと押しやった。



    「その本は僕も見た事がある。
     確か本屋でも最近見かけたやつだよね。」


   面白いの?そう聞かない理由は、
   彼女の言葉がその答えだ。>>26


(30) 2022/02/13(Sun) 18:36:46

【人】 ピアニスト イングラハム



   幸か不幸か、彼女を知らない私は
   彼女が造り上げたフィルターが効かない。
   本好きのアンネと聞いて首を傾げたのは
   言うまでもないこと。>>27



    「あぁ、ごめん。最初に名乗るべきだった。
     僕はエドワード・イングラハム。

               よろしくね、アンネ。」


   間違えていた順序を正すと
   私は彼女に倣うように自身の名を名乗る。


(31) 2022/02/13(Sun) 18:38:58

【人】 患者 アンネロズ



[ 慈善が集まることが悪いとは思わないし
  音楽だったり人の優しさは患者にとって
  勇気にもなりうる。
毒にも、なりうるけど。


  私は、同情が入り混じった慈善は
  毒だと思っているから
  全部を受け入れることは出来ないの。


  だからかもね。
  全ては見えなくとも横顔だったり纏う雰囲気が
  窮屈そうにみえた貴方は多少なりとも
  頭の片隅に残り続けていたの。 ]
  
  
(32) 2022/02/13(Sun) 21:11:57

【人】 患者 アンネロズ


[ 退屈と言ったら同情されるかもしれない。
  なんて、普段なら思うのにね。
  つい言ってしまった一言への彼の反応は>>30
  私にとっては好ましいものだったの。 ]


   そうね、ベストセラーらしくて。
   両親からプレゼントされたのよ。

   まだ途中だけど、いい話だと思う。


[ きっと結末は、二人が結ばれて終わるんだろうな。
  そんなふうに思ってしまうくらいの、王道な物語。
  私は嫌いじゃなかった。
 
  この物語に出てくる子くらい
  明るく前向きになれたらいいのにとか
  色々思うことはあるにしても。 ]

  
(33) 2022/02/13(Sun) 21:14:07

【人】 患者 アンネロズ


[ 本好きだ、なんてフィルターを通していないから
  本好きのアンネ、なんて言われたら
  首を傾げるのも当たり前よね。
  そんな様子がおかしくて少し笑っちゃったわ。 ]


   こちらこそよろしく、エドワード。


[ 名前、全く知らないわけではなかったの。
  だって、奏者の名前は
  コンサートの張り紙で見たもの。

  知ってたとしても、本人から直接聞くのが
  礼儀かなって私は思うから。

  それに、彼が何もフィルターを通さずに
  私の事を見ているように
  私だって、彼を奏者というフィルターには
  通したくなかったのよ。 ]
  
(34) 2022/02/13(Sun) 21:14:47

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   分かるよ、と共感を示すべきか?
   生憎と消毒薬に満ちた病室の虚無感を
   私は知らなければ、知ることも無い。

   私が知っていることはただひとつ、
   共感こそ毒に他ならないことのみだ。>>32

   毒を毒に思わせない器用さがあれば
   少しはマシなことも言えたかもしれないが。



    「確か、恋愛小説だったっけ。
     僕も詳しくは知らないんだけどね。」


   表紙とタイトルからの予測だったから
   その辺はあまり自信がなく答えてしまった。

   それなら読んでみようかなって
   そう思う理由は、秘密だ。



(35) 2022/02/13(Sun) 22:27:23

【人】 ピアニスト イングラハム



   恐らく他者とアンネの間にとって
   本好きというのは演劇の役であって
   それでいて私とアンネの間に演目はない。
   笑うアンネの姿に尚更首が傾くばかり。

   それから思いついたように目を見開いて


    「せっかくだし、エドって呼んでもいいよ。
     僕と仲のいい人は皆そう呼ぶんだ。」


   彼女が私にアンネと呼ぶことを望むなら
   それと同等のことを望んでいたい。
   そんなわがままを伝えてみせただろう。


(36) 2022/02/13(Sun) 22:28:23

【人】 患者 アンネロズ


[ エドって呼んでもいいってことは>>36
  呼ばれたいってことと同じに取っていいのかしら。
  少なくとも呼ばれたくないのなら
  そんなこと言わないはずだから、
  その望みには喜んで応えるの。 ]


   なら遠慮なくそう呼ばせてもらうね、エド。
   これで私も、仲のいい人の仲間入り?


[ そう言って楽しげに笑った。 ]
  
(37) 2022/02/14(Mon) 0:33:32

【人】 患者 アンネロズ

***


[ それから後、両親には出会った彼のことを
  軽く話して、次また来てくれた時のために
  チョコレートを用意したい、なんて
  わがままを言ったりもしたわ。
  それくらいなら、って喜んで両親は
  私のわがままを叶えてくれた。
  お友達と仲良くね、って両親に言われて
  頬が緩んでしまったのは彼には内緒。 ]

 
(38) 2022/02/14(Mon) 0:38:59

【人】 患者 アンネロズ



[ さて、冷蔵庫の中のチョコレートが
  貴方の目に触れるのはいつだったかしら。

  私の病室に貴方が訪ねてきてくれたなら
  笑顔で出迎えて、座って?って
  椅子を指し示しながら、冷蔵庫からチョコを出した。
  
貴方が来るときのために用意してたの、
って
  少しだけ得意げにね。 ]

  
(39) 2022/02/14(Mon) 0:39:44

【人】 患者 アンネロズ



   来てくれてありがとう。
   お話の続きをしましょう?


[ 貴方と向かい合うようにベッドに腰掛けて
  話し始めることにするの。
  そうね、この前の本は読み終わったとか
  そんな話を最初にすることになるかしら?

  前は貴方の事を聞いて終わったから
  私の事を聞かれるのなら、
  
病気のこと以外なら
何でも答えるつもりよ。 ]*
  
(40) 2022/02/14(Mon) 0:40:20

【人】 ピアニスト イングラハム



   仲間入り。言い得て妙な話だ。>>37
   こちらの意図を丁寧に読み解く姿に
   私は驚きを隠すことが出来なくて。


    「そういうことになるね。
     正しくは、仲良くなりたいと思うくらい
     君に興味を惹かれてるってところかな。」


   そういう意味では仲良しの人よりも
   特別なのかもしれないね、と。
   楽しげに笑っているアンネに私は告げる。


(41) 2022/02/14(Mon) 3:02:01

【人】 ピアニスト イングラハム



 ***

   私が彼女に会いに行った回数など
   両手両足の指を足しても及ばない。

   彼女の両親に会うことがあったのなら
   プロの演奏家らしく礼儀正しく振舞っただろう。


   しかし彼女の前とあっては私も流石に気が緩む。
   見舞いに来る度に彼女に何を話そうか
   次第に考えることが楽しみになっていた。

   
(42) 2022/02/14(Mon) 4:36:12

【人】 ピアニスト イングラハム



   いつの日だったか。
   お見舞いにと持ってきていた果物を
   冷蔵庫へとしまおうとした時に
   私はそのチョコレートを見つけた。

   「これは?」と尋ねてみれば
   どこか得意げにチョコを準備するアンネがいて
   私は嬉しさのあまり思わず笑ってしまったのは
   今でも記憶に新しい。


(43) 2022/02/14(Mon) 4:38:50

【人】 ピアニスト イングラハム



   「ふふ、僕のためにか。
    それなら今度から紅茶を持ってこよう。
    アンネが紅茶が苦手なら他のお茶でもいい。」


   優しさと気遣いに何も添える物がないのは
   すこしばかり寂しい気もするからと
   その日を境に見舞いは小さなお茶会へと変わる。


(44) 2022/02/14(Mon) 4:40:34

【人】 ピアニスト イングラハム



   重ねられるお茶会の時間。
   アンネが楽しそうに聞いてくれるから
   最初はほとんど私の話ばかりだった。

   もちろん彼女の事を聞こうとしていても
   なんだかんだで自分の話をして時間切れだ。


   またいつものように迎えてくれるアンネに
   私は微笑みかけて、あの時の本の話を始めると
   読み終わったと彼女が言っていたものだから。


(45) 2022/02/14(Mon) 4:41:55

【人】 ピアニスト イングラハム



   「本の見所を聞いてもいいかい?
    本の内容は流石に聞けないけど...

    君がどんな場面が好きだったか、
    君が見たままで聞いてみたいんだ。」


   本を読む前に聞くのはタブーだったかな、と
   アンネのリアクション次第では今のは無しと
   取り下げることになるだろうが。

   頭にチラつくのは病気のこと
   だかその話題は繊細なもので
   こちらから聞くことは、本来許されない。



(46) 2022/02/14(Mon) 4:42:21

【人】 ピアニスト イングラハム



   好きな食べ物のことなど
   アンネに聞かれたことはお返しにと
   聞き返すことがほとんどだった。

   後は...そうだね。
   どんな演奏を聞いてみたい?とか
   どんな場所に行ってみたい?とか

   話はどんどん病院の外のことへと
   渡り歩いていくことになっただろう。


(47) 2022/02/14(Mon) 4:43:48

【人】 患者 アンネロズ



[ 少し揶揄う意図がないわけではなかったのに
  素直に肯定…ただの肯定以上のものが
  貴方から返ってきて、落ち着かなくなった私は
  頬を撫でていた髪を耳にかけた。
  
特別って響きになんだか照れてしまって。>>41 ]


  
(48) 2022/02/14(Mon) 11:02:12

【人】 患者 アンネロズ


 ***

[ 彼はたくさん会いに来てくれた。
  変わり映えしない日々が鮮やかに彩られていくようで
  次は何を話そう、何を聞こうって。
  そんなことばかり考えて過ごしていたし
  楽しみが増えると退屈だと思うことは減った。

  両親にも時折、彼が来るのが楽しみだと伝えてたから。
  彼と両親が会った時、>>42
  父も母も好意的な態度を見せたはずだし
  「時間があるときにまた会いに来てあげてね」
  なんて、言葉をかけていたと思う。 ]

  
(49) 2022/02/14(Mon) 11:06:09
 




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