在原 治人は、メモをはがした。 (a2) 2020/10/06(Tue) 5:05:10 |
【置】 二年生 早乙女 菜月こうして、じっとしているうちに、 あざらしはいつであったか、 月が、自分の体を照らして、 「さびしいか?」といってくれたことを 思い出しました。 そのとき、自分は、空を仰いで、 「さびしくて、しかたがない!」 といって、月に訴えたのでした。 ──「月とあざらし」 (L0) 2020/10/06(Tue) 6:29:00 公開: 2020/10/06(Tue) 6:30:00 |
【人】 二年生 小林 友天使でありますから、たとえ破られても、 焼かれても、また轢かれても、 血の出るわけではなし、 また痛たいということもなかったのです。 ただ、この地上にいる間は、 おもしろいことと、 悲しいこととがあるばかりで、 しまいには、魂は、みんな青い空へと 飛んでいってしまうのでありました。 ─────『飴チョコの天使』 小川 未明 (19) 2020/10/06(Tue) 9:44:54 |
【人】 二年生 小林 友[その日の逢瀬で、菜月と一体何が話せたろう。 けれど、夕方の束の間の時間なんて 俺達にはちっとも足りなくて、 俺は家に本を持ち帰って、 話し足りない続きを書こうとした。 何でも菜月は打ち明けてくれて、 柔らかくて繊細な心をひた隠しに 仲間や家族に笑ってみせた、その裏まで。] (20) 2020/10/06(Tue) 9:45:53 |
【人】 二年生 小林 友[出来るだけ近くで彼女の気持ちを聞きたくて 影に寄り添い、声に出す。 ─────ああ、悔しい。悔しいなあ。 もっと触れたい、近くにいたいのに。 便箋を書いては消して、書いては消して。 今までのやり取りは頭の中。] (21) 2020/10/06(Tue) 9:47:24 |
【人】 二年生 小林 友[そんな扱われ方をした便箋が…… もう、裏なんかセロテープが無いとこの方が 珍しいくらいになっているそれが、 こうなる事なんて、分かっていたはずなのに。] ─────……あっ! [何となく書き添えた、赤いハート。 恥ずかしくなって消そうとしたら、 びり、と音を立てて便箋が裂けてしまった。 慌てて学習机の上に手を伸ばして セロテープを取ろうとしたら、 手も触れていない便箋が、びり、びり、 もう耐え切れないのだ、と言わんばかりに ひとりでに千々に切れていく。] (22) 2020/10/06(Tue) 9:49:07 |
【人】 二年生 小林 友ちょっ、えっ、待ってよ! [慌てて便箋を手で押えても、手の下で 容赦なく紙は裂けていく。 たとえ破られても、 焼かれても、また轢かれても、 血の出るわけではなし、 また痛たいということもなかったのです。 この紙が無くなったら、菜月に逢えない。 いやだ、いやだ、嫌だ! 焦る俺を他所に、 シャーペンと消えるインクの跡を刻んだ便箋は もう飛ばす寸前の紙吹雪みたいになっていて。 ただ、この地上にいる間は、 ]おもしろいことと、 悲しいこととがあるばかりで、 しまいには、魂は、みんな───── (23) 2020/10/06(Tue) 9:55:46 |
【人】 二年生 小林 友[ともかく、セロテープで繋いでしまえば…… そう思って、紙から手を離した矢先。 細かく千切れた便箋たちは、 たちまち真っ青な 蝶 へと姿を変えて窓の外へと飛んでいくと、 まんまるなお月様の方へと 飛び立っていくのでした。] (24) 2020/10/06(Tue) 9:59:36 |
【人】 二年生 小林 友[行く手に美しい星の光る空を仰ぎ 窓から身を乗り出すようにして 俺は一人、大きな声を上げて泣いた。 「さびくて、しかたがない!」 真っ青な蝶の昇った空には ただ青ざめた顔をした月が 黙って地上を見下ろしていた。]* (25) 2020/10/06(Tue) 10:05:32 |
【赤】 アクスル[それから、 話すことが許される雰囲気なら ひとつ願い出るだろう。] 仕上げて貰う前に 逢わせたいひとがいるんだ ここを出られたら…… 僕の家に、来てくれる? [勿論、海外である。 明日にも……、という訳にはいかない。 都合を訊き、数日の後に招待することになるが 貴方はそれを許してくれるかな。**] (*16) 2020/10/06(Tue) 13:51:24 |
【人】 二年生 早乙女 菜月[家に帰ってからも、私たちはやりとりを続けた。 スマートフォンと違って、通知も一切なかったけど、 時々、友君が書いている瞬間に立ち会えた。 そういう時は、椅子とコップをもう一つずつ。 一人用の勉強机に二人分並べて、 頬杖をついて便箋を眺めた。] (26) 2020/10/07(Wed) 6:16:23 |
【人】 二年生 早乙女 菜月[青インクと黒炭の染み込んだ便箋に、 赤いハートが浮かび上がる。>>22 可愛いの。見ちゃった。 すぐに消そうとするのも可笑しくて、 くすっと笑いが漏れる。 自分のもろさをさらけ出す私に、 友君はたくさん寄り添ってくれる。 友君との会話が楽しすぎて、永遠に続いてほしくて。 だから便箋はぼろぼろで、 いつか破れてしまうことは分かっていたのに、 目を逸らし続けてしまった。] (27) 2020/10/07(Wed) 6:17:42 |
【人】 二年生 早乙女 菜月[世界の破ける音がした。] ……あ!? [友君、破っちゃったのか。 便箋、薄くなってるもんね。 分かっていても、大きな裂け目がメッセージを破くのは、 ショックな光景だ。 ちぎれた断面を合わせると、 もう一度、びり、と破けた。] え、うそうそ、 やだ、 [びり、びり、紙がひとりでに破けていく。 便箋を押さえつけると、手と机の間から、 一羽の蝶が飛び立った。 青いはねを一心に動かして、 透き通った美しい翅脈が見えるほど近くを通り過ぎる。] (29) 2020/10/07(Wed) 6:20:42 |
【人】 二年生 早乙女 菜月[もう一羽。もう一羽。 するり、するりと手のひらの下から、 蝶の群れがあふれ出す。 友君と私の言葉を含んだ蝶は、 青い翅をきらめかせ、 銀の鱗粉を振りまきながら、 窓から空へを昇っていく。 月が二つに分かれた。違う、涙でぼやけているだけだ。 ねえ、待って。 もう一度だけ時間が欲しい。 だって私まだ、好きってことさえ言えてない。 そう蝶に訴えても、一羽だって振り向いてくれなくて、 私達は、ちゃんとお別れさえできなかった。]** (30) 2020/10/07(Wed) 6:21:25 |
【赤】 在原 治人[なんだか、ものすごく 気持ちが急いて仕方なくなって] なら、帰り支度をしないとな [輪郭に添わされた掌に 名残りを惜しむように頬を擦り付けてから 立ち上がる。 傷を消毒できるエタノールなどを 鞄の中から取り出すと、 貴方の許可を得て 針を抜き、手当てを済ませ 衣服を身につける手伝いを積極的にした。] (*22) 2020/10/07(Wed) 19:14:23 |
【赤】 在原 治人[まだ、扉が開かないと知れば 張り詰めていた気が ぷつんと切れて 今度は俺の方が眠り込んでしまっただろう。 なにしろ、7週間もの間 浅い眠りの中で 貴方を捕まえようとして出来なくて 飛び起きてばかりだったから やっと、手に入れた存在を 離すまいと指を絡め、ぎゅっと握ったまま────…。]** (*23) 2020/10/07(Wed) 19:16:07 |
【人】 二年生 小林 友「どうしたの?!もう夜も遅いのよ?!」 [驚いた様子の母さんを押し退けるように 俺は家の外へと飛び出した。 青い蝶は一匹残らず、 大きな月へと旅立ってしまった。 泣いても、叫んでも、 ただ慣れた顔のご近所さんが 窓からひょっこり顔を出すだけ。 頬を伝う涙が口へと流れ込んで まるで、海に溺れたみたいに塩辛い。] なつきィィィィーっ!!! [どれだけ叫べば届くのだろう。 世界を隔てて、君のところまで。] (31) 2020/10/07(Wed) 19:21:09 |
【人】 二年生 小林 友[この俺の有り様を見た人は聞くんだ。 「ともちゃん、大丈夫?」 「死のうとしてない?」 「ダメだったらいつでもいいなさい」 結局、誰も何も問題解決になってない。 みんな、話して解決すると思ってる。 話せば100%受け入れてくれる? 気持ちを分かちあって「ひとりじゃないよ」? それはただの慰めで、解決じゃない。 「陰キャだから、ひとりでいるから なんだか死にそうに見える」? 問題はもっと奥深いぞ。 俺は、ただ俺自身が嫌いなだけ。] (32) 2020/10/07(Wed) 19:21:31 |
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