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【人】 星集め サダル―後日談― 「そうなんですか。冒険者とは…。」 確かに。冒険者ギルドで手伝いをした時にそんな話を聞いたこともある。 運が良ければ。仲間がいれば。遺髪や装備品を持ち帰ることはできたかもしれないし、墓も簡易ながらできたかもしれないけれど。 どうやら彼はそういう人はいなかったようだ。 私は彼のことを何も知らない。 あの一晩。その肌の熱さは忘れないけれど。 >>265名前を問われると一瞬戸惑った。 どうしたって、この名前を伝えるときは少し緊張する。 だって私だけの名前だから。 それを皆にも言えるような気持ちにしてくれたのはイクリールさんで。その名前を思い出させて刻んでくれた人こそ、ルイージさんだった。 胸元でキュッと拳を握りしめる。 (266) 2021/12/17(Fri) 18:51:37 |
【人】 星集め サダル「サーシャと言います。 ルイージさんとは、一度きりでしたが…。 ルイージさんは私の恩人なんです。 そして、…また、会いたかった。」 それに。言葉にしかけて、一度唇を引き結んだ。 自分の家の扉をちら、と振り返る。 一度大きく息を吸って。 (267) 2021/12/17(Fri) 18:51:54 |
【人】 星集め サダル「それに。あの子たちに。 お父さんはこんな人なんだよって。 話してあげられることが増えたら良いと思いました。」 いつか大きくなったら、尋ねられるのだろうか。 あの一晩のことしか私は知らない。 でも、それだけでも満たされた。十分だった。けど。 あの子たちに話してあげられることが増えたら良い。 今更だけど、もっと貴方のことを知れたなら。 そんな思いが、芽生えたのだ。 あの日溢れた涙の理由もあったのかもしれない。* (268) 2021/12/17(Fri) 18:52:12 |
【人】 星集め サダル―後日談― 「…そうでしょうね。」 私は少しの寂しさを覚える。けれど、それで仕方がないとも思えた。 過ちなんて言わない。それでも、あれは彼にとっては一夜の夢のようなものだろう。 私にとっては特別な名前も、きっと彼にとってはそうじゃない。 イクリールさんの方が、彼を知っていたんだろう。 だから、声をかけたとき、彼は私をイクリールさんかと聞いたのだ。 私とは、あれだけだから。 それでも、名前を思い出し、刻まれ。子供まで授けてくれた人だから。 私にとって彼は大事な存在の一人なのだ。 それでも。以前より複雑な精神性を宿していた私は。 ただ、寂しくて。困ったような顔になってしまう。 (272) 2021/12/17(Fri) 19:48:33 |
【人】 星集め サダル「そうだったんですね。本当にすごい人。 亡くなったのは残念ですが、私は決して、忘れません。 …忘れられません。」 あの時。もし引き止めていたら。 連れてったと我儘が言えていたら。 そんな、考えても仕方のないことを考えてしまう。 何か変わっただろうか。例えば、彼がもう少し生きていられたとか。 また、この街で「またね」を叶えることができていたとか。 じわりと目頭が熱くなる。 唇を軽く噛んで、それをどうにか堪えてると、笑った。 (273) 2021/12/17(Fri) 19:48:50 |
【人】 星集め サダル喜んでそれを受け取る。 そう言いかけて。 遺品だった、と我に返って言い直す。 一応、人が死んで喜ばないくらいの精神性への理解はあった。 「…お茶でもいかがですか。」 どこから来たのかは知らないが。 届けてくれた相手をこのまま追い出すよりはと。 前の店主に教えられていた茶を入れるために準備を始める。 湯を沸かし始めるその隣にはミートパイ。 あの日からサダル・ミロンの密かな好物となっていた。* (281) 2021/12/17(Fri) 21:09:09 |
【人】 星集め サダル「アールグレイです。苦手なら別のを用意しましょう。 アールグレイの花言葉は安らぎだそうですね。 私は存じませんが、私なりの餞として。」 そして、アールグレイをもう一人分。 それは、ここにいないルイージの分。 そうして自分の分をいれて。 「そう言えばお名前をお伺いしても良いでしょうか。 サーシャもお礼の手紙を書きたいと思うことでしょう。 私自身、貴方にお礼を言いたいのです。」 (297) 2021/12/17(Fri) 22:29:49 |
【人】 星集め サダル―マスターと: sideベリル ―愛して、愛されて、抱かれて、抱いて。 マスターの晩年には、頭を撫でてもらいながら彼に奉仕することが増えた。 マスターがもし勃たなくても、キスして触れ合って、穏やかに過ごしていく。 そしてとうとうその日を迎えた。 (313) 2021/12/17(Fri) 23:17:24 |
【人】 星集め サダル私は貴方に出会えて幸せでした、マスター。 きっとどのホムンクルスよりも幸せだったでしょう。 だって貴方に愛された。貴方を愛した。 それだけで素晴らしい奇跡ではありませんか。 貴方の旅にお供できてよかったです。 貴方の隣にいられてよかったです。 (314) 2021/12/17(Fri) 23:17:45 |
【人】 星集め サダルどうしても、ホムンクルスはマスターよりほんの少しだけ長生きになってしまう。 涙を流しながら、彼と共に眠りについた。 ただキスをしたくて、キスをして。 私は契約から解き放たれてしまうけれど。 このキスももう契約の意味を成さないけれど。 私は貴方と共に棺の中。 魔法を使い、地中に埋まろう。 瞳を閉じて。体を重ねて。貴方を感じて。 「今度マスターの隣に立つのなら。 同じ種族になりたいです、マスター。 愛しています、永遠に…。」 こうして、ベリルと名付けられたホムンクルスの生涯は幕を閉じる。 深い闇の中でも。マスターと共にあるのなら、それだけで幸せでいられたのだった。** (315) 2021/12/17(Fri) 23:17:59 |
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