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【赤】 魔術師 ラヴァンドラそう呟くように言葉を落とすと、再び熱を咥え込み つるりとした舌を精一杯使いながら じゅぷ、とはしたなく響く水音のことなんて気にも留めず 緩やかなストロークを繰り返し、時折強く吸い上げて。 散々好き放題に快楽で苛め抜いてくれた人魚を、 どうにか善がらせてやりたい――と。 内心で抱いた欲のまま、女は兎が好物を頬張るように 彼が喉奥へ白濁を零すまで、口の奉仕を続けるのだけれど。* (*133) 2021/12/17(Fri) 19:00:55 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ―――― その後の噺 ―――― 祝祭が終わっても、女は結局人間には成れなかった。 垂れた兎の耳は変わらず毎日風に揺れて、 尻尾は驚いた時にぽふんと膨む。 溢れそうな魔力を消費し、道端の猫と睨み合って 変わらず誰かの世話を焼いての繰り返し。 呪いに苦しんでいた子猫の少女は、 あの後どんな様子で魔術師を訪っただろうか。 ―――― 無様でもいいから生きたいと叫んだあの願いが どうか何の柵も無く叶えばいいと、願って。 (282) 2021/12/17(Fri) 21:43:28 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ淫魔の友人がこの街を再び発つ前に、 女は彼の元を訪って、パイ屋の特大パイを御馳走した。 もしかすれば彼は驚いたかもしれないし、 ―― 等価交換ではないと言われたかもしれないが。 「 メレフ、あのね …… ありがと。 私は御伽噺の女の子にも、人間にもなれないけど あの時助けてくれたの――嬉しかったよ。 」 唯のラヴァンドラを、友人として慈しんでくれた ―― 彼の不器用にも思える優しさは けれど確かに、寂しがりの兎を助けてくれたから。 (283) 2021/12/17(Fri) 21:43:32 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ―――― 少し時間を置いてから、魔術師は暫くの間 人魚を伴って姿を消した。 目的地は極少数の友人にだけ伝え、 旅には向かない身の上で、それでも彼と歩くことを選び。 街から出たことのない女は、あちこちへ興味を示し けれど逸れることを恐れて人魚の手は離さなかった。 「誘拐されたら困る」と本気の顔で告げて、 そしてその誘拐対象は女ではなく人魚であることも 付き合いの長い彼には理解るだろう。 (284) 2021/12/17(Fri) 21:43:37 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ彼は妹を見つけられただろうか。 無事に――使命など関係のない、家族の再会を果たせたなら その時ばかりは女も彼から手を離し 家族のみの空間にしてあげようとしただろうけれど。 …… 本当は。 女の知らない、温かいだけの家族の形を見るのが怖くて 妹に再会した彼が どんな道を選ぶのかが分からなくて 見ないフリをしようとしただけ。 識らなかった頃には帰れないから。 (285) 2021/12/17(Fri) 21:43:40 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラけれども結局女の危惧とは裏腹で、人魚は女と共に 住み慣れたエオスの街へと帰って来てくれた。 ―― それがどれだけ嬉しいことなのか、なんてこと 彼はずっとずっと知らない儘で、良いのだけれど。 「 リル! 」 兎は月を見て跳ねる、――と東の国では歌われるが この街の兎は、訪った親友を見て跳ねる生き物だ。>>262 ぱっと顔を輝かせ、自宅の扉を開き そこに立つ彼女をぎゅうと抱きしめよう。 (286) 2021/12/17(Fri) 21:43:44 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ私の大切なお友達。 人間になりたいという願いも、私の存在も 初めて肯定してくれたかわいい貴女。 世界への復讐を希っていたと、もし私が識れたなら ―― 私もきっと彼女の全てを受け入れる。 それが誰かを傷付ける結果になることでも、 それで彼女の全てが掬われるのならば、と。 復讐に心を堕としても、誰かを殺めても …… 貴女は、私の。 (287) 2021/12/17(Fri) 21:43:46 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ…… なんて、沢山の手土産を持参してくれた彼女へ いたずらっぽく囁いてみせれば。 あの時のように可愛い反応を見せてくれるのか、 或いは受け流されてしまったか。 「 リル、こっちきて! 一緒にご飯食べよっ 」 どちらにせよ女は、彼女の腕を逃がさないように抱き締め 家の中へと招き入れた。 …… やや過剰に思えるスキンシップの理由は、 いつの間にか彼女が傍へ置き始めたホムンクルスなのだが。 そんな子供じみた嫉妬心は隠してしまって。 (288) 2021/12/17(Fri) 21:43:56 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 …… ねえ、その子の名前は? 甘いもの用意してるんだけど、好きかなぁ。 」 ―― 兎は出来る兎なので。 そんな風に、可愛いばかりの友人へ尋ねてみては 恐る恐る交流を計ることも、あっただろう。* (289) 2021/12/17(Fri) 21:44:00 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ――――― 途中からの記憶が無い。 いつの間にか気を失っていた女が目を覚ます頃には、 すっかり身体は清められて 気に入りの部屋着を着せられていた。 ( …… 丁寧に下着まで履かせられているのは 顔をやや赤く染め、思わず俯いたが。 ) そのままゆっくりとリビングへ足を運べば、 四角形の匣を――実験中の魔術師めいた真面目な顔で 見詰める人魚がいるものだから。 (316) 2021/12/17(Fri) 23:21:39 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 ………… 、 …… おは、よ? 」 頭でもぶつけたのかと真剣に心配したけれど どうやら魔道具のひとつらしい、と思い至って いややっぱり何を……と首を傾いだけれど。 >>291 視線を流した先、 テーブルに並べられた昼食へ気付けば きょと … と目を見開いた。 (317) 2021/12/17(Fri) 23:21:43 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラそれから、すこしだけ照れたように言葉を紡ぐ人魚へ 女にしては珍しく思考が追い付かないような様子を見せ、 …… 温められた甘いオムレットと 不格好に笑う彼を見比べては、へにゃりと眉を下げた。 「 ―――― … ほんと? 私と家族になってくれる……? 」 目覚めれば愛しいひとがいる朝も、 共にご飯を食べる毎日も、――独りで街を見下ろす夜も もう何もかもを諦めなくて、いいのだろうか。 どこにもいかないで、と縋った私の指先で 貴方をずっと抱き締めても、許される? (318) 2021/12/17(Fri) 23:21:48 |
【人】 魔術師 ラヴァンドラ「 ――――― ありがとう、テレベルム 貴方に会えて、良かった。 」 私は愛しいばかりの貴方の頬へ触れ、 それから重ねるだけのキスを落とした。 (320) 2021/12/17(Fri) 23:22:08 |
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