人狼物語 三日月国


174 完全RP村【crush apple〜誰の林檎が砕けたの?】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


【人】 3年生 黒崎 柚樹


―― 武藤の病室 ――


[あの世界で、二度目の魔法が青空と緑の木々を彩って。
そして、あの世界には飛ぶはずのない鳥が9羽、飛んで行くシルエットが見えた。]

 ………………さようなら、小泉さん。


[言いたくないと散々駄々こねていた言葉を小さく口にすると、それに応えるようにあの世界の全てが溶けるように砕けるように消えて行った。]

 ────………………。

 ……武藤?

[揺れるカーテン、低い場所から射してくる明るい日射し。

ああ、そうだった。
ここは、病院で、武藤の病室で。
繋いだ手の先には、共に生還できた好きな人が居る。

全部が"終わった"わけではないけれど、一つの区切りは確実に終わったのだと。
日常の歯車がカチカチと動き出す感覚があった。

武藤、また泣いてたでしょ、なんて言っている自分の側も涙の跡がばっちりで、お互いそれを誤魔化すように、少しばかり苦笑しながら口付けた。]
(11) 2022/09/16(Fri) 14:25:24

【人】 3年生 黒崎 柚樹


―― 津崎の病室 ――


 ────…………うわ……。

[思わず剣呑な声が出てしまう。

回診の先生から聞いてはいたものの、その日のうちに見舞った津崎は、圧倒的軽症者(というかほぼ無傷)な私や武藤と違って、文字通りに"ぼろぼろ"だった。

なるほど、最後の最後まであの夢に残されていただけはある、と、納得したくもなる怪我人具合。

それでも青い瞳の輝きは、あの美術館の中でひととき見ていた昏い色のものではなかったから、"良く生きてたね"なんて軽口叩けるくらいには、私は安堵していた。

武藤も似た気持ちだったのかな、津崎の髪をわしゃわしゃとかき混ぜていて。 >>6

  ん………………?


私は、微かな違和感に首を傾げる。]
(12) 2022/09/16(Fri) 14:26:32

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 津崎って、……そんな顔してたっけ?

["そんな顔"とは甚だ不躾だけど、そうとしか言いようがない。

なんか、肌の色とか、瞼の線とか……あと睫毛や眉毛も?
というか、顔のパーツほぼ全部?
記憶のものとなんだか微妙に違っている。

羨ましい髪質だよね、なんて思っていた、サラツヤピカーな髪も、なんだかこう、くすんだ風になっていて。

聞けば、メイク、してたんだそうで。
髪はと言えば、毎朝30分かけて(!)の力作だったそうで。]

 ────え。…………まじ…?

[顔と髪の手入れになんて1日10分もかければ多い方だった私は絶句する。

とりあえずその髪、私も思う存分わしゃわしゃさせてもらってもいいかなぁ?
(わしゃわしゃしました)(それはもう)*]
(13) 2022/09/16(Fri) 14:28:06

【人】 3年生 黒崎 柚樹


―― 黒崎さんは変わりたい・その1 ――


[武藤は服選び、いくらでも付き合ってくれると言ってくれたけれど、さすがに下着選びまで付き合わせるわけにはいかなくて。

それにトップス買うなら、先に下着をなんとかしなきゃとか……思うわけで。

意を決して大学最寄りのターミナル駅隣接のショッピングモールに一人足を向けてみたものの、早々に心折れそうになった。

やっぱりどこから見ても、若い男が女性もの下着を物色している風にしか見えないようで、店員さんやお客さんからの、訝しげな視線が突き刺さる。]

 通販に、しようかなあ……。

[でも正確なサイズとか解らないと買いようが無いんだよなあ……とぼやきつつ、元々多くは備わっていない気力を更にすり減らしながら居心地の悪い女性服売り場を歩いていたら、視界の端、目に留まる色があった。]
(14) 2022/09/16(Fri) 14:44:58

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[あの美術館で、一番に良いなと思った絵 >>0:178 のジャングルの緑のような、深い色合いの半袖シャツ。うっすらと、葉の陰影模様がついていて。

なんとなく近付いて眺めていたら、
 「ご試着してみます?」
と声がかかった。]

 あ、いえ、私、は。

[口籠もってしまい、逃げるように立ち去ろうとしたら、
 「お客様は暖色系もお似合いだと思いますよ」
と重ねて声がかかり、逃げかけた足がぴたりと止まる。]

 あの……。

["女に見えますか?"すら言い淀んでいる私に、
「お客様のようなモデル体型の方は、とろみツヤ系の素材がお似合いかなと思いますよー」
と、おそらくは母の年に近いだろう彼女はにっこりと微笑んだのだった。]
(15) 2022/09/16(Fri) 14:46:27

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[  は?モデル体型?
  っていうか、"とろみツヤ"って、料理の表現?
  角煮的な??

硬直して顔中にハテナを浮かべたまま状況を咀嚼する私に、でもその店員さんは色々と相談に乗ってくれた。

なんでも、彼女の娘さんはバスケットボールをしていて、私と似た悩みを抱えているのだそう。
だから、女の子だって見てすぐ解ったわと、微笑まれた。

 「せっかく肩や背中の線が綺麗で姿勢も良いんだから、
  堂々と見せれば良いのよ」

なんて言われ、それには苦笑しか返せなかったのだけど。

なにしろ知識の浅いファッション用語、何がなんだかだったけど、親身になって服を選んでくれたから、そこで1枚、シャツを買ってきた。

見惚れたシャツと同じ柄だけど違う型。
 「深めVネックかドレーピングシャツがおすすめ」
などと言われても、ほぼほぼ呪文だ。]
(16) 2022/09/16(Fri) 14:51:04

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[嬉しいことに、サイズも測ってくれ、下着はこのサイズを買えば大丈夫と、そんな事も教えてくれた。娘はここのを愛用してるわね、と、通販サイトの情報も。

お店のタブレットで見せてくれたそのサイトにはおそろしく多様に、"寄せて上げて"を通り過ぎて"詰めて盛って"的なものが盛り沢山に並んでいた。]

 …………これは……詐欺では……?

[思わず呟いた私に、

 「これが詐欺なら、お化粧だって充分詐欺よ」

と店員さんは笑っていた。

ああ、確かに……って、別に津崎の顔を思い出したりはしてないけどね?*]
(19) 2022/09/16(Fri) 14:53:32
黒崎 柚樹は、津崎は多分、すっぴんだと多少男らしくなる(でも美形は美形)なんだと思っている……
(a9) 2022/09/16(Fri) 15:15:22

【人】 3年生 黒崎 柚樹

―― 黒崎さんは変わりたい・その2 ――


  『髪と顔の弄り方教えて欲しい』

[津崎はどこに出しても恥ずかしくない重傷人(医療的定義では軽傷の範疇らしいけど、とてもそうは見えない)筆頭だし、他にも骨折とか内障とか、あの事故の傷が皆なかなか癒えない中、私と武藤は拍子抜けするくらい簡単に"日常"に放流された。

まあ、意識が戻れば、切り傷掠り傷程度で入院している意味は全く無いものだしね。

そして数日後。

"マブダチ"とはいえ入院中の相手に頼むことでもないかなと多少は悩みつつ、まあいくらか暇にはしてるかなと、津崎にそんなLINEを送ってみたのだった。

そうしたら、"これ持ってこい"的なリストが返ってきて。]

 ……ストレートアイロンなんて、持ってないんだが……?

[などと困惑しつつ、更には生まれて初めて見る文字列("ビューラー"って、何!?)などもあって、あいつはどれだけ顔面改造しているのかと目眩がした。

────かくして。]
(26) 2022/09/16(Fri) 15:45:39

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ────ッッッッ!!!!!!
 いったいなあ!もう!!!


[え、なんなの、メイクってこんな地獄的行為なの。

津崎の病室で雄叫びを挙げてしまって、慌てて口を噤む私がいる。

眉を整えろ、と言われた。
どころか、こうするんだよと毛抜きで引っこ抜かれた。
瞼の上側の、とんでもなく痛いところを。

そんな荒療治ではあったものの、でも、ガチ女性的メイクじゃなく、とりあえず津崎みたいなところからはじめてみたいと教えを乞うた私に、津崎はちゃんと教えてくれたと思う。]

 ……このクリーム、さあ……。
 皮膚呼吸できなくなるみたいな感じで、きもちわるい……。

["BBクリーム"なるものに顰め面したら、お前は両生類かという視線が飛んできたけれど。

いっそ両生類になれたら、こんな努力しないで済むのになと深い深い溜息を吐いた。*]
(27) 2022/09/16(Fri) 15:46:26

【人】 3年生 黒崎 柚樹


>>37 >>38

[津崎を見舞った病室で、小泉さんのパン屋の話になって、私は静かに眼を伏せた。

猫ちゃんパン、美味しかった。
結局あれが、小泉さんのパンを口にした最初で最後になってしまったけれど。

あれと同じパンが売られているお店に行っても、それは、"小泉さんのあのパン"ではなくて、でも、お店には行かなきゃと思った。
虎型のパン、買わなきゃだしね。

だから津崎がその店を知っていたことは幸いだったし、それが最後の話題になって帰ろうとした……んだけど。]
(39) 2022/09/16(Fri) 19:46:52

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[別に、手を握ったりしていたわけじゃない。
普通に2人で部屋を出ようとしただけ。

ていうか、そも、津崎へは私がとうに報告していた >>4:251 はずなのに、わざわざ聞いてくる >>31 とか、本当、こういうところ、津崎は津崎だよね。]

 ………………。

[まあ、問われたのは私じゃないから口を噤んでいたんだけど。

隣の男ときたら、"無事に落とした"って。
私、射的の景品でもなければビリヤードの球でもないんだけど。

少し憮然としてしまう。]

 ……おかげさまで、無事に落とされたよ。

[だから口を尖らせながらそう被せてやった。*]
(40) 2022/09/16(Fri) 19:47:48

【人】 3年生 黒崎 柚樹

>>42 >>43

[まあ、割と、怒っていた。

私は武藤が落とそうとした結果の、"落ちた"なのか?って。

好きな人に好きと言われた。
それだけでもう充分と、それ以上は踏み出す勇気を持てなかった私に、踏み出させてくれたあの優しい言葉が、"落とす"手段だったってこと?

心の中に積もり積もってた怯えを全部押し退けて、それでもこの人の傍に居たいんだって、私が決めたのに、それを落とした落ちたの一言で片付けられたのは、悔しかったし、悲しかった。]
(44) 2022/09/16(Fri) 20:48:38

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[だから、津崎が気遣う風な視線と言葉をかけてくれたのに >>41 何も返せなかったし、病室を出て歩き出した武藤の言葉 >>43 にも背を向けて。]

 ……………………。

[まあ、頭ではわかってる。
男同士ならではの軽口みたいなものだって。

でも、やっぱり腹立たしくて、つい、拳に力が入る。
ビンタじゃ生温い。腹パンだ。鳩尾抉ってやる────なんて。

……でも、それじゃ何にも解決しないから。]

 ……うん。嫌だった。ああいう言い方されたの。

[何がどう嫌だったか話すから、聞いてくれるかな。

目縁を赤くして傍らの武藤を睨め付けたら、まあ、嫌とはいわないだろう、と思う。*]
(45) 2022/09/16(Fri) 20:49:55

【人】 3年生 黒崎 柚樹

>>51

[真剣な顔で謝ってくる武藤を見て、こんな顔させたいわけじゃないのにな……なんて、考える。

好きな人には笑っていて欲しい。
きっと武藤も私にそう望んでいてくれるのに違いなくて。

だからこのモヤモヤは蓋して笑って、はい元通りでも良かったのだけど、小泉さんの言葉が耳奥に蘇る。

────これからの人生の一瞬たりとも無駄にするな >>6:22


言葉にしなきゃ伝わらないことは、ちゃんと伝えなきゃ。

私はぽつぽつと、思ったところを口にした。

武藤が返してきた言葉 >>52 も、静かに聞いた。]
(59) 2022/09/16(Fri) 22:12:57

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 …………なんか、嫌、だった。

 武藤、だから。
 武藤の事が好きだから、
 嫌だったことに向き合おうと思ったし、
 変わろう、変わってみよう、って、努力してみることにした。

 そういう、思い……っていうか。

 私がどれだけ武藤のこと好きなのかとか、
 ちゃんとは伝わってないのかな、って。

[ぼろぼろ泣いていたわけじゃないけど。
薄く水膜が張っていたらしい眦を指で辿られながら私もぽつぽつ言葉を紡ぐ。

わかってるよ。
多分、お互い、色々必死で、まだあんまり余裕もなくて。

でも、おかしなすれ違いで終わらせることなんてしたくないから、伸ばした手の先がちゃんと相手の手に触れているのか、こうして確かめ続けるのが必要なんだって。]
(60) 2022/09/16(Fri) 22:13:59

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[許すとか、許さないじゃないって、わかっているけどね。]

 ────帰ったら、"スーパーモンブラン"。
 奢ってくれたら許す。

[濡れた犬みたいにしおしおになっている武藤に、あえてそんなことを告げながら、微かに笑ってみせた。

これで手打ちだよ、次に同じこと言ったら許さない、って言外に込めながら。

ちなみに1個4000円くらいするみたいだけど。
よろしくね。*]
(61) 2022/09/16(Fri) 22:15:20

【人】 3年生 黒崎 柚樹


―― 病室 ――


[夢の世界が壊れた後。

武藤の病室で目覚めた私は、自分の病室に戻って回診を受けたり、朝食のトレイを持って再び武藤の部屋を訪れたり、津崎の容体を知った後にじゃあ2人で見舞いに行こうとなったり、まあまあ慌ただしかった。

いつの間にか窓辺に置かれていた、空を切り取ったみたいな綺麗な色の封筒 >>6:106 に気付いたのは、だから、いくらか時間が経ってからのこと。

いかにも几帳面に並んだ文字は、小泉さんからのメッセージだった。]

 ……どこまでも丁寧語なところが、小泉さんらしいな……。

[思わず小さく笑ってしまう。

謝罪と感謝と祈り。
どこまでも真面目で誠実で、でも文中に"ずっと生きたいと思っていませんでした"の文字を認めて眼を伏せる。]

 全然、そんな事、言ってくれなかったじゃないですか。

[それはきっと方便ではなく、こちらの心を軽くしようという気遣いでもなく、本音なんだろうなとは思った。並ぶ文字はどこまでも淡々としていて、激情を思わせるものは何もなく。]
(87) 2022/09/17(Sat) 8:57:23

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 でも私、もう小泉さんからは"遺言"、貰ってましたよ?

[聞こうと思って聞いたわけではないけれど。

たまたま耳にしてしまった、小泉さんの独り言。 >>6:22

あれは自意識過剰などではなく、前日に吐露した私の思いへの返答に違いなくて、文字通りに"遺した言葉"で。

あの時の言葉をそのまま手紙にしてくれても良かったのになあ、なんて、思ってしまった。

私にとっては、この便箋に綺麗な並んだ言葉よりも、あの時の声の方が、ずっと小泉さんの真実に近かったと思うから。*]
(88) 2022/09/17(Sat) 8:57:47

【人】 3年生 黒崎 柚樹


―― 退院から少し後 ――


[あれだけ一緒に居たのだから、いざ"日常"に戻って離れてしまうと寂しいもので。

今度いつ会えるかと尋ねてきた武藤からのLINEには、"日曜午後なら"と直近の週末を伝えてあった。
当然ながら、じゃあ会おう、ってなって。]

 …………なに、着ていく、べき……?

[午前中にトレーニング終えて、シャワー浴びて、そして私はベッドの上で2つの選択肢を睨み付けていた。

1つはいつものスポーツブラで、もう1つは、届いたばかりの、寄せてあげてのワイヤー入りの、でも詐欺的要素は皆無なもの。

うっかり出来心で詐欺的要素入りのも一緒に通販してみたものの、試着で「無理ぃ!」ってなってしまった。だって、この顔にそのパーツって、絶対、なんか、違う気しかしない。

一応、もそもそと、後者を身につけてみて、次なる睨み付けのターゲットは、これまた新品のシャツブラウスだったわけだけど。
ごめん、まだちょっと難易度高い……と、結局いつもの七分袖黒Tに腕を通したのだった。

結局、服はと言えば、いつもと変わったのはごくごく小さい布きれ(ただしワイヤー入り)だけ。]
(93) 2022/09/17(Sat) 10:39:05

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[それでも一応、髪と顔は、少しだけ、それなりに、病床の怪我人に教えを乞うた >>26 内容をいくらかは実践してみた。

髪、いくらか整えて耳の後ろに流してみたくらいだけど。

あと、眉抜いて(抜かれた、とも言う)、なんか、描いて、あと、リップも少しだけ色つきのにして、あと、なんだっけ、睫毛もなんちゃら……名前忘れた、まあいいや……とか、そんな感じ。

なんとかクリームとやらはほんとに皮膚呼吸無理以下略だったから、"せめてじゃあこういう粉はたいとけ"とかなんとか、言われたものをぱふぱふした。程度がわからなくて、盛大に咽せたけど。]
(94) 2022/09/17(Sat) 10:40:53

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 …………ねえ。
 へん、じゃない…………?

[おずおずと家に居た弟に聞いてみたら、少し驚いた顔をされたけど、"全然変じゃない"とは言ってもらえたから、そのまま、出かけてみた。

だってさ。

会うとは言ってたけど、手打ちと言うには贅沢すぎると我ながら思っていた、あのケーキをきっちり早々買って来てるとか >>92 、さすがに思わないし。

なんか、こう、こっちもそれなりの成果……というか、努力を?見せないと、と、思って。

────ああもう。
武藤に会う前から顔が熱いよ。]
(95) 2022/09/17(Sat) 10:42:05

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 …………あ、の。
 やっぱり、へん……?

[教えてもらった、武藤の部屋の最寄り駅。
私の家からは私鉄1本、そんなに離れてはいなかった。

手の中、くしゃくしゃになっているのは、電車に乗る直前に手渡された、美容院のチラシ。
普段の格好で歩いている時には、そんなもの、渡されたこともなかった。

え、そんなに私、浮いてますかおかしい格好ですか、なんて狼狽えたまま、電車に乗ってる間中、その憐れなチラシは捨てられるタイミングも失して握られ続け、くしゃくしゃになっていっていた次第。

せっかく数日ぶりに会えたのに、武藤の顔をなんとなく見ていられなくて、俯きがちになってしまう。]

 津崎、に。

 顔面改造のやり方教えてもらって……。
 その、やってみた。

 少し、だけ。

["メイク"と言うのも気恥ずかしくて、ぽそもそと、そんな台詞を。*]
(96) 2022/09/17(Sat) 10:43:50

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[これでいいのか、とか、これで良かったのか、とか、これ、やっぱり仮装レベルなんじゃないの、とか。

頭の中ぐるぐるしていて、"見せて"と乞われて >>100 ようやく上げた顔も、でも視線は泳いで一瞬絡ませるくらいしかできなかった。

"かわいい"も"きれい"も嬉しいけど。
それは私を過分に評価してくれる武藤だからそう思うのかもしれないし、あるいはいくらかの世辞も入っているのかもしれないし……と、どうしてもどうしても疑心暗鬼気味にはなってしまう。

口に出して「そんなことない」って言わなくなっただけ大前進なのだと思って欲しい。

だから、手を差し出されて素直に繋ぐのだって、相当に躊躇した。

男同士に見えたところで、大騒ぎする世の中でも、もうないけれど。
でも、大学からそう遠くないこの地域、特に"知り合い"の多い武藤はこの界隈に住んでいる人も居るだろうに、と。

困惑を心の隅に置いたままロータリーを歩き抜ける直前、また美容院のチラシを渡されてしまい、小さく首を傾げた。

なんだろう、新規開店のラッシュ時期なのかな。]
(102) 2022/09/17(Sat) 12:28:53

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ……?
 ううん、大丈夫。

 あ、母さんの実家から梨届いたから持ってきた。
 包丁くらいはあるよね?

[寄りたいところはあるかと問われ、包丁とまな板があるなら、他に買うものはないなあとそのまま住宅街を歩いて──まさか包丁すら無いようだったら売っていそうな店に寄らせて貰ったけれど──、辿り着いたのは、いかにもな感じの学生御用達的造りのアパート。

玄関入ってすぐの廊下が小さなキッチンがくっついているみたいな、そんな感じの部屋。

あの美術館のレストランで、武藤は料理は全然しない風なことを言っていた >>2:27 けれど、なるほど、これは料理がしたくてもしづらい環境ではあるなあ、なんて思った。

鍋1個置いてお湯を沸かすのが精々って感じだもの。]
(103) 2022/09/17(Sat) 12:31:04

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 おじゃまします。

 …………ふふ、なんか、弟の部屋と似た匂いがする。

[正直なところ、私はさほど気負ってなくて。

なにしろ弟がいるし、漫画や雑誌の貸し借りだとか(なんなら服も一部貸し合っている)で互いの部屋に入るのは割と日常茶飯事のこと。

綺麗だよ?弟の部屋なんて堆積物が地層になってるよ、なんて示されるまま、クッション借りて座り込む。

ほら、今日の主目的はケーキ、ですので。

ぽつぽつと、大学に顔を出した時に周囲に言われたや事務手続きについてのことなどを報告し合いながら、待ちかねるのは4000円の、あれ。それしかないでしょ。]
(104) 2022/09/17(Sat) 12:32:45

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ぅわ…………おい、し…………っ!

[ありがとうございます想像以上ですべらぼうにおいしいですなんだこれってくらいにおいしいです……と、悶える私。

栗が栗なのに栗じゃないみたいだ。甘さも香りも最高なのに口の中でほろりと解けていくようで。]

 武藤もどうぞ。

 一緒に食べよう?

[値段が値段だからサイズもそれなりだったわけで、野球ボールより大きいな?っていうくらいのケーキは、そもそもが2人で食べることを想定しているんじゃないかと思えるくらい。

最初から分けようとしたけど、それは強行に固辞されたから、まずは一人で抱え込んでいたわけだけど。]

 …………あーん、しようか……?

[津崎と3人でパフェ食べたり、おにぎり1個でぎこちなくなってしまったり、そんなこともあったなあとは密かに振り返りつつ、まあ、今は多分、こういうことしても許されるのじゃないかな?と、他意なく思った。

キスはしてしまったのだし、今更食べ物分け合うとか、武藤相手なら私の側に抵抗があるはずもなく。

御機嫌な私は、はいどうぞと一口分のスーパーなフォークを差し出したのだった。*]
(105) 2022/09/17(Sat) 12:34:31

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[そういえば、武藤の家に向かう途中、私は繋いだ手の方ばかりが気になってしまって、口数少なに、俯きがちに歩いていたのだけど。

なんとなく、武藤が片腕を上げてる気配とか……あと、なんか、声が。
「デートか」って。 >>106

いや、まさか、自分たち(というか武藤)にかけられた言葉とは思わなかったし──むしろそこに揶揄いの色があったなら、それを察してここからダッシュで逃げ出すくらいの事はしていたかもしれないけれど──、なんだかごく当たり前のような自然なやりとりをしている風な声音だったから、全然、自分とは無関係の事とばかり、思っていた。]
(110) 2022/09/17(Sat) 14:35:11

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[別に、例の"落とした落とされた"事件からずっとぎこちなかったわけじゃない。

けれど、"手打ちのケーキ"を目の当たりにすると居たたまれなさがあるものなのか、今日の武藤はなんとなく口数少なげで……というか、なんか、緊張している風な。

別にもう怒ってないよ、本当だよ?なんて、私は思っていた。]

 ……ね。

 すごく美味しい。

[それでも、差し出したフォークに顔を寄せてくれたから、安心してふにゃりと笑み崩れる。

手打ちの品じゃなかったら、4000円のケーキ1個食べるなら400円のケーキ10個食べた方が幸せと思ってしまうところだけれど、お高いケーキはお高いだけの理由があることを今日初めて思い知ったのだった。

武藤にもけっこうあげたよ?
恋人、なのだし。美味しいものは分かち合わなきゃ。]
(111) 2022/09/17(Sat) 14:36:18

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ………………ぇ?

[梨、剥こうか?さすがに早いか、なんて。

一度皿を下げに立ち上がった武藤に自問自答の声を掛けようとしたら、ベッドの縁を背もたれ代わりにさせてもらっていた私の隣に座ってきた。

うん、こっちの方が座りやすいもんね?なんて、思ってた……んだけど。]

 えー…………そんな、たいして、かわってな、

["もっかい"なんて、言われても。

世辞抜きで"かわいい"って思って貰えたなら、それは勿論嬉しいけれど、自信なんて全然ない。

津崎の顔面改造歴(なんて表現したら非常に嫌な顔されそうだけど)に比べれば、家で練習してみていたとはいえ、近くで見たらアラが目立つだけし……とか、困惑の文句を脳内で垂れ流しているうちに、当たり前の流れみたいにキスされた。

なんだかケーキの続きを食べてるみたいに、栗と、あと少しだけ、ケーキに入ってた洋酒の香りが吐息に混ざっているようで、くら、と世界が回る感じがする。]

 ぇ、と…………。

[嫌じゃない、少しも。けど。]

 私……"警戒"した方が良かった……?

[事ここに至って思い出したのは、あのレストランで、すごくすごく困った風に武藤が零していた一言 >>2:237 だった。*]
(112) 2022/09/17(Sat) 14:40:26

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[言い訳させてもらえば、"回路がまっすぐに繋がってなかった"としか言いようがない。

警戒がとか注意喚起がとか、武藤への"謎の信頼"がとかじゃなくて、"ここでする"という頭が、そもそも、すっぽり抜けてしまっていた……というか。

今は取り戻した現実で、日常で。
傍らには好きな人が居て、その人も私を好きと言ってくれていて。

────までは理解できていても、どこか、あの夢の世界の一件と一直線には繋がってはいない感じがしていた。病院で過ごしたいくらかの時間もまた非日常に過ぎていて、"夢の世界の続き"のような区分に押し込められてしまっていた。

馴染みの通学路、見知った街並み、家族の顔。
太陽が沈んで月が天空に上る、あたりまえの日常。

細かな悩みはあれど、その悩みはむしろ現実みを加速させるばかりで、そしてもう、あの半ば腐ったような甘ったるい林檎の香が鼻に届くこともなくて。]
(131) 2022/09/17(Sat) 20:40:41

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ………………。

[なので。
"注意喚起はした"と言われても >>116 、いつしてもらったっけ?と首を傾げる始末で、そうしているうちに、怒るでもない声音で、"約束"を持ち出されて。

少しだけ熱っぽい、常より低い声で囁かれ抱き締められたら、心臓がやおらやかましく鳴り始めた。

首筋に当たる熱に、肩ごと背がひくりと跳ねてしまい、病室でのあの一件が全部、脳裏に流れていって。

忘れていたわけじゃないんだよ。
ただただ、"今"とちゃんと繋がってなかっただけで。
本当に。]
(132) 2022/09/17(Sat) 20:41:25

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ────約束、忘れて、ないよ。

 ……でも、今思い出した。

[それはずるい言い方だったかも。
でも本当に、私の中で、"あの時"と"今"とが繋がっていなかった。

繋げてみれば、"この日に会おう"と決めた早々、武藤があのケーキを買ってきてくれたこととか、元々の話だったサシ飲みじゃないのに武藤のアパートにお邪魔することになったこととか、全部全部、武藤が色々考えた(画策した?)結果なんだなあと解ってしまったわけだけど。

…………でもそれすら正直、嬉しいなと、思ってしまった。

それだけ武藤が私のこと、欲しいと思ってくれていたという事なのだろうし。]
(133) 2022/09/17(Sat) 20:42:46

【人】 3年生 黒崎 柚樹


["オレばかりそういうことを考えていたみたい" >>136 は、正直なところ、否定できなかったかもしれない。

男の人と違って、こう……女の側は物理的な衝動に駆られるということはないし、自分としてはその行為がどれほどに幸福感だとか快感だとかを得られるものなのかというのも想像がつかないし。

抱き締められたり抱き締めたりキスしたりは心地良いと思うけれど、その先となると、多少なりとも怖さもあれば、消えない引け目も残っている。

だから、つい、無意識下で考えないようにしていたというのは、あったかもしれない。

…………でも、事ここに至れば、逃げようなんて気は、全然沸かなかった。]
(138) 2022/09/17(Sat) 22:30:11

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ────……?ん、

 …………ぁ、……っ。

[おいで、と仕草で乞われて腰をあげれば、先に輪を掛けて熱っぽい声と共に口付けられて。

まだ全然慣れてない深いキスに微かな目眩を覚えれば、そのまま世界ごとくるりと回って、私の背はどうやらベッドに着地したみたいだった。

驚きに息を飲み込もうとするのに、その呼気まで奪われてしまいそうな口付けが続くのに、緩く小さく首を振る。

それは別に拒否のつもりではなくて。
ごめん、息、できない、という風に、少し外れた唇のその合間に、小さくはふ、と息を吐いた。]

 ごめん、武藤、私。
 色々、どうしていいのかわからない……。
(139) 2022/09/17(Sat) 22:31:31

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[キスしてる間、どう息すれば良いのかすらわからないし、なんだか、ふとした隙に身体が跳ねてしまいそうな感覚が走るのも経験が無くて戸惑うばかり。

最後までしようと告げたのはそも自分の側だったくせして、これは、何というか、武藤に多大な手間をかけさせてしまう気しかしなくって。]

 あの、だ、から。
 全部まかせる、から。
 嫌とか、言わないから。

 好きにして、いいよ…………?

[耳まで赤くなりながら、そう呟いた。*]
(140) 2022/09/17(Sat) 22:32:34

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[直接そうと問うたことも聞かされたことも無かったけれど。

人に深く踏み込むのも踏み込まれるのも怖かった武藤に、恋人が居たとは思えなかったし、武藤の性格上、女の人をお金で買って云々ということも無かっただろうから、初めてなのは、きっとお互い様。

だから本当、主導権を全部渡したとしても"まかせた"と言ってしまうのはひどいお話だよねと思った。

でも今この時でさえ、腕の置き所さえ解らなくてキス一つ合わせるのがやっとの私にはそれが限界で。]

 …………うん。

 ごめん、ね?

[せめてもと、再び合わせた唇は、自分から寄せていった。

互いの吐息を1つにするみたいなこの行為、まだ片手の指に足りる回数くらいしかしていない気がするけれど、でも、気持ち良いなと思う。

なかなか、こう、上手く応えられないのが申し訳なくはあるけれど。]
(157) 2022/09/18(Sun) 6:47:56

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ぇ、と…………。

 …………うん。

[身体が離れて、去って行った熱を追うように見やれば、武藤がシャツを脱いで、また私に近付いてきて。

身体の線を少し辿られた後、脱げる?と問われたから、身体を起こした。

もう、正直、この段階から羞恥の極みではあったんだけど。

この先どうなってしまうのか検討もつかないまま、でも逃げないと決めたから、黒いシャツは潔く脱いで、武藤と同じく床下へ落としてしまう。

甘い色は似合わないよなあと、悩んだ末に買った下着もやっぱり黒で。

少しばかりレースがついてて、こう、"寄せて上げる"(寄せるものも上げるものも無いだろうと思うのだけど)効果で、ぎりぎりぎりぎり胸の間に谷間──とは言い難い、線くらいは──形成されていたかもしれないくらいの、そんなもの。

自分で付けるのすら不慣れで手間取ったこの装備品。
武藤にさせてしまうのも申し訳なく(見たかったとか触りたかったとか、そんな彼の欲は全く知らない)、それも外してしまえと緩慢に腕を動かした。

背中に手を回して金具を外すと、"カチン"と、もう後戻りできない扉が開いて閉まったみたいな音が聞こえた、気がする。]
(158) 2022/09/18(Sun) 6:55:34

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[────でも、やっぱりやっぱり、恥ずかしくて、ですね。

"抱きたい"と言ってくれて、実際、思ってくれていることは重々承知だけれど、実際見たらそんな気持ち、飛んでしまうのではという思いは消えなくて。]

 ………………っ。

[自然、引き寄せるように立てていた膝に、上体を押しつけて抱え込むようにしてしまう。

こうして上げてる腕だって、伏せるように視線を落とした先に視界に入る肩だって。

女の子らしい甘やかさは全然無いものなあ……なんて、どこか冷静に考えてしまいながら、でも、脱いだよ、と告げるように、武藤の腕にそっと右手を伸ばしてみた。*]
(159) 2022/09/18(Sun) 6:57:42

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[見られてるなあ >>160 、とは、気付いていた。
それに、見なければできるものもできないしと、頭でも解ってる。

けど、どうしても、"見られる"心理的ハードルは、高すぎて。

そこだけが日常の延長みたいな風な、ここに来た時そのままのデニムの膝。
そこに武藤の脚がゆるりと割り込んでくると、見える肌色の量が一気に増えて、また心臓が跳ねる気がした。

肩や背中、武藤の側に向いてない方はすうすうと頼りない心地なのに、身体の前半分は、どこをどうして良いものか、熱かったり、硬直してしまっていたり、で。]

 …………ん……っ、

[武藤の指先は耳だとか首筋だとか、鎖骨だとか、なんてことない場所に触れてきているだけなのに、そんなとこでさえも皮膚がちりちり焼け付くみたいな感じがした。]
(163) 2022/09/18(Sun) 9:59:53

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[どうせなら、無理矢理に開かれても私は抵抗しないのに、武藤はあくまで私から動いて欲しいみたいで、でも"ちゃんと見せる"のは、泣きたくなるくらい、恥ずかしい。]

 だ、め……。

[そう呟いたら武藤のことだから全部止めてしまうかなと思ったから、そうじゃなくてと伝えるように、絡んでいた手指を解いて両の手で武藤の背を引き寄せる。

そのまま勢いづいて共にシーツに倒れ込んでしまったのだけど、それでも構わず、正面から抱き寄せた。

身体がぴたりと触れあうと鼓動も重なる気がして、もう、どっちの心臓の音が喧しいのかなんてことも、わけわからなくなってきたけど。]
(164) 2022/09/18(Sun) 10:00:48

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 見るのは、まだ、だめ。

[今は全然、真っ昼間。
窓の向こうからは微かに響く通行人の声やバイクの音。

"暗くして欲しい"なんて到底無理な話だし、言ってはみるものの、見ずに進めろというのも、それも無茶だと解ってる。

でも、見られるにしても、"見ている武藤"を見るのが怖くて、私はぎゅうと眼を閉じた。*]
(165) 2022/09/18(Sun) 10:01:31

【人】 3年生 黒崎 柚樹


["見てないから" >>173 は、きっと優しい嘘なんだろうなとは思ったものの。

けれど、武藤の頭が自分のすぐ傍らにあるままだったのは疑いようもなかったし、まじまじ見られるくらいなら、いっそ触ってくれた方が居たたまれなさも薄いんじゃないかな、なんて、思っていた。]

 ……っ、……ふ…、

 ………………ッ。

[そして私は、触って楽しいような身体でもないのだから、触られたところで、こちらもどうということはないのでは……なんて、至極甘く、考えていたわけだけど。

腹や脇腹を辿っていった手の平も、その後胸に触れてきた指も、全部が一つ一つ、痺れるような熱いような感覚が走って膝や背がひくりと跳ねてしまう。

胸先の尖りを弄られてしまうと、本格的に声が殺せなくなってしまいそうで、慌てて右の手の甲を口に押し当てた。

────だって、集合住宅、だし。昼間だし。
部屋のすぐ外、誰が歩くとも知れないし。]
(175) 2022/09/18(Sun) 11:42:16

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[覆い被さっている武藤の脚を除けるように自分の脚が緩く開いてしまっていることにも気付いてしまい、そんな事にも赤面する。

いずれは、その、そっちの服も脱がなきゃいけないわけで。
今どころじゃない場所に触れられたりしなきゃいけない、わけで。

正直、怖いし、緊張もしている。
居たたまれなさも、いや増すばかりでは、あるけれど。

全然お返しにもなってないとは思いつつ、背に回っていた左手で、武藤の髪をくしゃりと撫でた。

身体が跳ねて吐息が熱くなるのが止まらないのは、武藤が首筋の、くすぐったいのか何なのかわからない、ぞくぞくするところに唇を何度も落としてくるからでもあったから。]

 む、と……。

 キス、したい。

[おかしな声を漏らさないためにはこうするのが一番なんじゃと思ったのだけど、今度は跳ねる吐息を逃がせなくなって、ひくりと震える舌先までまるで愛撫されてるみたいになってしまい、視界が薄く水膜を張ったみたいになっていく。

でも、見られてはいないにせよ、私に触れても武藤は変わらず私のこと、欲しいと思ってくれてるんだなと、それは全然疑いようもなかったから、嬉しかった。*]
(176) 2022/09/18(Sun) 11:44:16

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[自分でも、呼吸が上擦ってきているのが、わかった。

この先、どういう事がどのくらい続くのか、細かなところまでは解らないのに、心の中、"もっと"という欲はせり上がってきて、でも、どうして良いのかは、よくわからなくて。

だからせめて、目の前に与えられたものを素直に欲しがろうと、武藤がしてくれるみたいに、震えそうになる舌をつたなく動かしたりはした。]

 ………………?

[ずっとしていても良いくらいの気分だったのに唇は離れていってしまい、動きを止めた武藤に、数度瞬く。

ふ、と小さく深く漏らす呼吸が自分のものなのか武藤のものなのかもわからないくらいには、ふわふわした心持ちだったのだけど、低めの囁き声と共に、ごり、と下腹に当てられたそれは、記憶に遠くないもの、で。]
(181) 2022/09/18(Sun) 14:37:12

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[緊張も羞恥も全部が消え去ってるとは到底言えないのに、武藤の熱に呼応して自分の下半身にも熱が伝染してしまったみたいな、そんな気がした。

 …………あやまらなくて、だいじょうぶ。

 "ちゃんと"、する、んだもんね……?

[私だって、したいんだと告げるように、ジーンズの釦に指先がかかったのを察し、ごく緩く腰を浮かす。

短距離走のトラックの上では足を晒すのは常だけど、好きな人に触れられるためにというのは初めてだから、なんだか心許なくて。

それでも、膝や足首に引っかかった布地は自分から落とす勢いで、露わになった脚をシーツに下ろした。

ここ、武藤が普段使ってるベッドなんだよなあ……なんて、今更ながらに思い出し、滑るシーツの感触を足裏でゆるりとなぞるようにして。

今日はサンダル履きで来たから、靴下は、そも、履いてなかった。……のだけど。]
(182) 2022/09/18(Sun) 14:39:07

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 あの…………。

 ぜんぶ、脱いだほうが、いいの、かな……。

[こういう場合のお作法なんて知らない。

でも、"する"からには、履いたままではいけないのだろうし、脱がせたいとか触りたいとかそんな男の浪漫らしきものの存在なんて、なお知らない。

恥ずかしさに鼻下を手の甲で隠してしまいながら、ぽそもそと、告げた。*]
(183) 2022/09/18(Sun) 14:39:56

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[────すごく。
すごく優しくされてるし、大事にされていると思う。

今更口にしてくれなくても >>185 知っているのに、宣言するように言ってくれるのも、きっと武藤の優しさなんだと思う。]

 …………うん。

 知ってる。

[だから大丈夫、と笑ってみせた。]
(187) 2022/09/18(Sun) 16:27:33

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[けれど、まあ、恥ずかしいことには違いなく。

胸を晒すのと同等程度には下着全部取り去るのはかなりな勇気が必要で。

だからジーンズを脱いだ勢いで、もういっそ全部脱いでしまえと、覚悟を決めたところだったのに。]

 …………心臓?

[立て続けって、でもジーンズ脱いだだけだよ?

と思ってしまう私は、自分の脚を出すことには全く抵抗がないという感覚は自覚の外。

それでも、再び身体を寄せ合うのは心地良いと思ったし、中断してしまったキスが再開したのもまた嬉しくて、深く唇を合わせようとしたところで、ぶわ、と身体中が総毛立つ気がした。]
(188) 2022/09/18(Sun) 16:28:49

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ぁ…………っ、ゃ、な、に……?

[間に武藤の身体を挟んで緩く開いていた足の間。
布越しに、伺うような戸惑うような気配を感じた後、撫でるように指が滑り降りていき、そしてまた戻る方向に、つう、と撫で上げられた。

さすがに、"そこ"を使うことくらいは知っているし、何を挿れるのかだって当然知ってはいるけれど、正直なところ、私は自慰すらしたことがなく。

そも、女ではなく男でもないという宙ぶらりんな年月が長すぎて、自分の性的対象がどこに向いているのかも迷子になっていた期間が長すぎた。

"男の人に抱かれる自分"なんて想像の遥か遥か彼方だったから。
だから、そういう欲すら沸いた事がなかった。

さすがに、構造くらいは知ってるけど、知ってる、というだけで。

ますますおかしな声が出てしまいそうだし、今度は背中どころか腰から震えてしまいそうだし、そんな"工程"が控えてたとか、知る由もなかったし。]
(189) 2022/09/18(Sun) 16:31:04

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ぅ……。

 むとー、も、脱いで、よ……。

[私ばかり、こんなに切羽詰まって、ずるい。

睨んだつもりだった顔がどんな風だったのかは自覚なく、行儀悪く足先で武藤のスラックスを引っ張ったのだった。*]
(190) 2022/09/18(Sun) 16:31:47

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 つ、め…………? >>191

[爪は、まあ。

魔女の爪みたいなのに突かれるのはさすがに怖いけど、武藤の指がそんなんじゃないことは、知ってるし……と至極真面目に考えてしまう私もまた、相当に混乱していたし、色々と限界が近くはあった。

別に、武藤の足を見たいとか、足じゃない別の何かを確認しておきたいとか、そんな気持ちがあったわけでもなく。

私ばかり限界値ぎりぎりまで追い詰められている中、武藤だけ平静な顔をしているというのはずるいような気がしてしまったのだった。

実のところは、武藤の側も限界ぎりぎりだったわけだけど。]
(194) 2022/09/18(Sun) 17:42:17

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ………………ッ。

["見ない方が良い"と言われても、見えてはしまう、もので。

こちらに頭を向けるような屈み気味の姿勢だったから、目の前にぼろりと出されたわけではなかったけれど────まあ、見えてしまって、顔がぽふんと熱くなったし、瞬間、息が詰まってしまった。

"それ"を見たのは、小学生の頃、幼稚園児の弟を風呂に入れていた頃のが最後の記憶くらいなもの。
当然ながら、色々……全部が、違うわけで。

怖くはなかったけれど、正直なところ、"あれ"を受け入れなきゃいけないのか……と、少しばかり、目眩がした。

大きくないですか?平均値とか、私は全然、知りませんけども。
いや、平均以下でも平均以上でも何がどうなれば安心というものではないし、ああもう何考えてるのかな私。

仰向けに横たわる私は、もはや、あれだけ隠したがっていた自分の胸も曝け出している事にも全く頓着できないまま、武藤の問いかけ >>193 には、無言でこくこくと頷くしかできなくて。

ねえ、なんで、こんなに恥ずかしいことばかりなのかな。

好きな人と、気持ちいいこと、したいっていう、それだけなのに。*]
(195) 2022/09/18(Sun) 17:46:49

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[きっと、暗い中、この行為をしていても、不安だったり恥ずかしかったりは大差無くて。

だったら、武藤の恥ずかしそうな顔だったり、安心してよ優しくするよと告げてきてくれる照れくさそうな顔だったりを見ていられるほうが、きっと、幸せだったと思う。

そして、全然知らない場所でするよりは、なんとなく武藤の匂いがするこの部屋での方が安心感もあったのだから、ぜんぶ、結果オーライ、だったと思うよ?]

 …………うん。

 恥ずかしい、のは、お互いさま……ってこと、で。 >>196

[笑顔、作れてたかな。
多分作れてたと思う。

恥ずかしかったけど、それでも"怖い"は無かったから。

でも、ぎりぎりの余裕があったのは、ここまでのこと。]
(202) 2022/09/18(Sun) 19:36:51

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ふぁ……っ!?ぁ、……っ、ぅ

[ゆび、が。

自分でもそういう意図では触れた事のない箇所を、武藤の指が辿っていって、と同時に、濡れた音が響いてきたものだから耳を疑った。

話には聞いていたけれど。
"濡れる"なんて状態が、まさか自分の身体に訪れていたなんて、ちっとも、検討もついてなくて。

自覚してしまったら、あとはもう、いたたまれなさは加速する一方だった。]

 む、と…………ぅ、と、ら……っ。

[痛くはないけど。

でも、自分ばかり、異物感だとか微かな快感だとかばかりに苛まれて、武藤の側は別に心地良くもない行為というのが、どうにも、申し訳ない……というか、まさに、いたたまれなくて。

耳を辿っていく舌の疼きもあって、身体がばらばらになりそうな気がした。]
(203) 2022/09/18(Sun) 19:38:19

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 も、だい、じょぶ……だから。

 挿れて、いいから…………っ!

[もういっそ、2人で溶けてしまえるなら、その方がどれだけましかと、思ってしまった。

あんなに苦しいものだったなんて、思いもせずに。*]
(204) 2022/09/18(Sun) 19:38:39

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[正直なところ、指1本でも異物感はそこそこのものだったし、もう1本増やされたところで、大差は無かったのかなと思う。

でも耳元に落とされる、自分の名を呼ぶ掠れた声 >>215 一つ取っても、武藤の限界も透けて見えて。

だったら多少痛くても苦しくても、繋がってしまいたい……と、心から思った。

だって、この"準備"とやらが、多分、一番に恥ずかしいものだったから。

とりわけその後、武藤が避妊具をつけているらしい、そのほんの十数秒だか数十秒だかは、もうこの世からこの間の記憶だけ消えてくれて良いと思ってしまうくらいの、いたたまれなさだった。]

 …………だいじょう、ぶ。

[大丈夫だよ。相手は武藤なのだし。

気付けば、武藤の腰を挟み込むような姿勢になってしまっていたから、はしたないほどに両足は開いていて、それはつまり、誰にも見せたことのない部分を武藤に向けて差し出すような体勢になっていたわけだけど、それも見て見ぬ振りをして。

現実を直視してしまったら、頭が沸騰して倒れそうだもの、こんなの。

────でも、やっぱり、"初めて"の者同士、そう簡単には、お話は進まなかった。]
(223) 2022/09/18(Sun) 21:39:34

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 …………ぃ、……ッ!!

[漏らすまいと思ったのに、歯の隙間から苦鳴が漏れてしまい、慌てて片手で口を塞ごうとする。

ひた、と頬に触れてきてくれる手に、擦り寄せるように顔を揺らし、大丈夫だよって言いたいのに、異物に怯えた身体が勝手に内側へ内側へと閉じていってしまう感覚が走る。

それは絶対に恐怖ではなく、緊張と羞恥が絡み合ったものだったのだろうと思うけど。

無意識に締め付けてしまうと武藤の形も熱もありありと解ってしまい、その感覚にまだ身悶えるという悪循環で、気付けばぼろぼろと涙が零れだしていた。

これ、きっと、武藤の側だって、痛いに違いないのに。]

 ごめ……っ、
 力、抜けない……ど、うしよ。

[でも、止めてほしくない。

"続きはまた今度"じゃなくて、今、ちゃんと繋がりたい。

欲しいと思ったのは武藤だけじゃなく私もだし、痛くても苦しくても構わないと思ったのは、私の方。]

 む、とう……おねがい。

 やめちゃ、やだ。

[離さないでという風に、武藤の背に両腕を回し、必死でしがみついた。*]
(224) 2022/09/18(Sun) 21:40:33

【人】 3年生 黒崎 柚樹


―― 黒崎さんは変わりたい・その3 ――


[顔面改造の師匠(=津崎)に及第点を貰えるレベルに至っているのか否かは解らないけれど。

いくらか自己流加えつつ、髪や顔を弄るのにも慣れてきた。

練習がある日はどうしてもスポーツブラにせざるを得ないものの、それ以外の日はワイヤー入りだの詐欺要素入りだのも、それなり身につけるようになって。

そうしたら、大学への行き帰り、毎日のように美容院のチラシを手渡されるようになった。

どこかのお店(?)で働かないか(?)という、不思議なバイトの誘いも、男じみた格好の時は一度だって無かったのに、時折、そんな声もかかるようになった。

どうやら今の世の中は、美容院が供給過多で、女性が働く接客業業界は需要過多なのであるらしい。
────そしてまだ、スカートは買えていない。]
(230) 2022/09/18(Sun) 22:54:51

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[その日は昼過ぎに津崎と待ち合わせしていて、3人でパフェを食べに行こうって話になっていて。

なら午前中に付き合ってくれるかな、スカート買いたい、それ履いて待ち合わせ行きたい、と私は武藤にお願いをした。
"スカート探しの旅"に付き合ってもらう権利、今使わせてください、って。

あまり足を向けた事のない、繁華街のファッションビル。

武藤が日々あまりにも「かわいい」「かわいい」と私に言い続けるもので、その執念の擦り込み効果もあってか、スカートを履くこと自体には、もうあまり拒否感を抱かなくてはなっていた。

ただ、どうも膝丈は絶望に似合わなそうだし、ミニは恥ずかしいし、ファッション雑誌を開いてもあまりピンと来るものはなく。
そもそも着てみないことには実際似合うかどうかはわからないのが洋服というもので。

まあ、1時間くらいはうろうろしたと思う。
服って、あんまり見ると最後は何が良いんだか元々何が欲しかったのか解らなくなってくるもので、今日はもうダメかなあ、なんて思ってたんだけど。]
(231) 2022/09/18(Sun) 22:55:15

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 …………これ、いいな。

[とある店のマネキンに引き寄せられた。
店員さん曰く、落ち感のある綺麗めラインの大人プリーツ、マキシ丈……とか、なんとか。呪文かな。

お客様でしたらトールサイズのマキシ丈を絶対綺麗に着こなせると思います、と彼女に断言され、そういうものなのかなと私は武藤を顔を見合わせた。]
(232) 2022/09/18(Sun) 22:55:53

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 どう、かな。
 変じゃない……?

[試着室からおずおずと抜け出て、ゆらりと足を揺らしてみせる。
すとんと落ちるシンプルなシルエットだけど足さばきと風でふわりと揺れて、でもあまり甘ったるい感じもなくて。

チャコールグレーのそれは、今日着ているVネックのカットソーにも違和感なく合いそうで、このくらいなら抵抗なく着て歩けるかなあ、と。

お客様のようなスレンダーな方にこそ着ていただきたいアイテムですとか本当にお似合いですとか、世辞を山ほど貰ってしまい。

そして更にはそのセレクトショップで、このスカートなら絶対絶対このブーツがお似合いですとすごい勢いで推されたブーツも買うことになり。

元々着てきたジーンズとスニーカーをショッパーに入れてもらって、津崎との待ち合わせ場所に向かうことになったのだった。

私は武藤より1cm身長が低いのだけど、このブーツは3cmヒール。
武藤より2cmオーバーしてしまうけれど、武藤はきっと、全然気にしないんだろうなと思う。*]
(233) 2022/09/18(Sun) 22:56:54

【人】 3年生 黒崎 柚樹


―― 約束のパフェ ――


 ……久しぶり。
 …………女子力、上げてきました、が…………。

[どうかなあ、と問う声は自信なさげに萎んでいく。

あまりにも久しぶりなスカートは素足が空気に触れてすうすうと心許ない(下にスパッツ履いてくれば良かったと心から思った)し、なんだか、津崎とは微妙に気不味いままで。

あの美術館で、ろくに詳細も知らぬまま朝霞さんとの事に首つっこんで返り討ちにあったり、美術品を壊しまくって自棄になっていた彼を止めたい一心で、結局、津崎を傷つけるような言葉しかかけられなかったり。

しまいには、病院での一件 >>41 でも、心配させてしまったし。]
(265) 2022/09/19(Mon) 5:56:05

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[
  "マブダチ"って言ってもらえた、けど。
  いつ見限られても仕方ないんだよね…………。


臆病は加速するばかりで、せっかく交換したLINEもこちらからはメッセージを出せないまま。

松本さんがあれからどうしているのかすら直接問えず、武藤に頼んでしまった >>225 くらいには。

でも──というか、だから、というか──、津崎がイギリスに行ってしまう前にパフェの約束に応じてくれたのは、純粋に嬉しかった。

嬉しかったからこそ、努力の跡を見てもらおうと、思ったわけで。]
(266) 2022/09/19(Mon) 5:56:38

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[せっかくだから、果物専門店のお高いパフェ。
もちろん、武藤も好みそうな"チョコレート"の文字もメニューのそこそこに見える。]

 津崎は、シャインマスカット、なんでしょう?

["シャインマスカットは俺のモン"と言っていた >>4:292 くらいだから、初志貫徹するのだろうし。]

 ……なら、別のにする。
 マスカット、少しちょうだい。

[ピオーネかなあ、黒い葡萄も美味しいよね。でも私、いちじくも好きなんだ……と悩んだ末に私は、マロンといちじくのパフェにして。
武藤はきっと(絶対)チョコ系だよね。知ってた。

私の気不味さとはまた違う方向で、津崎が"前と同じ距離は、どう考えても難しい" >>-535 なんて及び腰になっていたなんて、私は知らない。

武藤は恋人だけどそれ以前に友人でもあって。

友人としての思い入れなら、私にとっては武藤も津崎も全く同じ感じなのだけど、それは口で伝えても伝わるものか、言葉を尽くしても理解して貰えるかどうかは、そこはちくちくとした不安がある。]
(267) 2022/09/19(Mon) 5:58:29

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[でも、言葉が伝わらないからって、諦めたくない。

津崎の事、大好きなんだよ。
結局、私に似合う歌っていうのを聞かせて貰えてないのは未だに残念だけれど、いつか聞かせてもらえる機会は訪れると思っていたい。

イギリスに行ってる間、動画配信の未編集データが日本に置きっぱなしと言うなら、それ整理しに行く(津崎の代わりにアップロードする)くらいのことは喜んでするつもりだし。

だから、ここで少しだけ憮然とした顔になってしまうくらいは、許して欲しい。]

 ……え?松本さんと暮らしてるの?津崎の家で?
 ────早く教えてよ……。

[松本さんの事、私がすごく心配していた事は知ってたでしょうに。
ほんと、津崎は、言葉が足りない。*]
(268) 2022/09/19(Mon) 6:01:57

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[優しい武藤には、酷なことを頼んじゃったな、と思う。
泣いている相手に、もっと酷くしろって言ってるようなものだったし。

でも、欲しかったんだもの。
武藤の全部、私にちょうだい、って伝えたかった。
私の全部も、武藤にあげるからさ。]

 …………とら。

[苦しそうに名を呼んでくる武藤 >>228 に、大丈夫だから、って笑おうとしたけど、やっぱり見上げた顔は、水膜の向こうに滲んで見えた。

抱き締めて抱き締められた勢い、またずくりと胎内に熱いものがねじ込まれた感覚が走ったけれど、それでいいよと、震える舌を武藤の元へと差し出した。]
(269) 2022/09/19(Mon) 6:44:28

【人】 3年生 黒崎 柚樹

 …………?

 は、い…………った……?

[多分、そこそこの時間は経っていたのだと思う。

背や腹が強張るくらいの緊張状態はそう長く続くものでもなかったようで、中途半端に浮いていた足も、力無げにゆらりと揺れて。

頭に靄がかかったみたいになっていた中、鸚鵡返しにして緩慢にぱちぱちと瞬いたら、宥めるような唇が眦にも落とされた。

正直、まだ、痛くないと言えば嘘になる。

ずきずきと脈打ってるのが、自分の裡なのか、武藤のものなのか、それすら判然としないけれど。
でももう、自分の身体は、武藤を追い出そういう方向には働かなくなっていた。]
(270) 2022/09/19(Mon) 6:45:15

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 い、いよ…………?

[武藤、ずっと待っていてくれたんだろうなと思う。

"これ"で終わらないことくらいは、さすがの私も、知ってるし。
この、待つという行為も、少なからず苦しいものだったのだろうし。]

 動いて、いいよ。

 …………ちょうだい……?

[囁いたら、したいこと、してくれるかな。

多少乱暴に扱われたって、私はそのへんの女の子よりは余程に頑丈なんだから構いやしないのに、どこまでも武藤は優しいから。

身体の奥の奥、熱く脈打つものは、かけてくれる言葉以上に"柚樹が欲しい"って言ってくれている風で。
私は小さく微笑みながら、武藤をぎゅうと抱き締めたのだった。*]
(271) 2022/09/19(Mon) 6:46:17

【人】 3年生 黒崎 柚樹


―― 王子様デートしたっていいじゃない ――


[高校生の頃は、選択肢が限られていたし、その選択肢が、そも自分に合うものではなかったんだなと、つくづく思う。

お化粧覚えて年相応の服を自分で買えるようになれば、悩んでいたことが馬鹿らしくなるくらいにはあっけなく、私は"女の子"になることができた。

すれ違い様、「でけー」なんて言われることは時々あるも、でも同時に「あの人、モデルかな」なんて声も聞こえてくる。そして「女装」と言われることはもう無くなっていた。

……となると、一周回って、してみたいことが出てくるもので。]
(273) 2022/09/19(Mon) 7:57:57

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ……ねえ武藤、服貸して。

 "男装"するからデートしよう。
 いや、デートじゃないか。普通に、遊びに。

[どうせならユニセックスものとかじゃなくてごりごりに男の格好したらどうなるか試してみたい、なんて。

こういう時、背丈がほぼ同じというのはとても便利で、こうでもないああでもないと武藤と2人、2人分のコーディネートを考えた。1人の持ち服なのだから、当然、似た感じになったわけだけど。

そのつんつん髪ってどうやってるの?と、髪は武藤にやってもらって。

化粧も落とせば、うん、充分男に見えるんじゃないかな。]
(274) 2022/09/19(Mon) 7:58:30

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ふふ、はは、あの声かけって、水商売の、だったんだ。
 知らなかった。

[今日の目的地であるところの映画館を目指し歩く道すがら。
通りのすぐ向こうには猥雑な空気の歓楽街が広がっている。

私と武藤はホストクラブのキャッチにやたら絡まれた。2人セットで、ホストになりませんか、って。

なるほど、女の格好で歩いている時の"うちの店で働きませんか"はつまりホステス的な(更にはもっといかがわしいもの的な)仕事の斡旋だったんだなあと今更気付いてくすくす笑う。

どっちが多く声をかけられるか競争する?なんて言いかけたけど、10中10、2人セットでスカウトされるから、その競争は全く意味がないと気付く事になった。

常よりはいくらか"チャラ男"度が増して見える武藤は、でもいつも通りに精悍だし、こっちに向ける笑顔はどこまでも優しいし、かっこいいな畜生、って思ったな。それはもう、何度も。]
(275) 2022/09/19(Mon) 7:59:49

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[────まあ、かっこよかったのは、お互い、ここまでで。]

 ……………………。

[ねえ、泣いてる?と繋いだ指で会話するように軽く力を入れると、直後、握り返される。

それは肯定なのかな。否定なのかな。
ちらりと傍らに視線を送っても、その真偽まではわからない。

眼前のスクリーンには大ヒット中の新作映画が流れていた。
"めちゃめちゃ泣ける"と評判のもの。

泣かずに耐えられるか競争ね、なんて気安く観に来たのだけど、上映開始30分にして涙腺が崩壊しかけた。

恋人が死に別れる未来が確定している悲恋ものなんて、どうしたって、感情移入しないわけがないわけで。
誰だよ見に行こうって言ったの。私だな。

  ああ。生きてて、良かった。
  武藤とまた会えて、良かった。


そう思ってしまったらますます泣けてきて。
私の側が降参で良いですとばかり、湿った音で鼻を小さくすすり上げたのだった。*]
(276) 2022/09/19(Mon) 8:01:39

【人】 3年生 黒崎 柚樹


―― ペットシッター ――


[心底死にたいと思っていた人に、首に縄つけて見張っておきたい >>5:198 とか、首輪つけておきたい >>6:+59 とか、本気で思っていた私は、多分優しくもなんともなくて、自分の正義を押しつけたいだけの子供だったのだと思う。

もしも津崎がこの世を去っていたら本当にそれを実行するつもりだったのだけど、その未来は来なかった。

逆に、想像だにしていなかった、"渡英中の津崎のマンションで松本さんが一人留守番をする"なんて状況になっていて、初めて聞いた私は「……は?」と暫く固まっていた記憶がある。

同居、いや、同棲しているというところまでは聞いていたけど、そこまで、何というか……情熱的な?親密な?関係に至っていたのか。と。

なので、元々予定していた"ペットシッター"の見守り行動の行き先は、主不在の津崎の家になった。]
(282) 2022/09/19(Mon) 9:10:41

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[月に1度……いや、最初はもう少し頻度が高かったかな。

松本さんは料理をしない人だったから、ちゃんと食べているのか心配になって、実家のおかずを多めに作ってそれを届けに行ったりしていた。

愛の力とは偉大なもので、定食屋でのアルバイト >>255 を始めていた松本さんは、自らもぽつぽつと料理をするようになっていて。

そこにはもう全然、"死にたがり"の影なんて見えなくなっていたから、"見守る"意味も既に無くなってはいたのだけれど。

でもきっと、"自分のための料理"には腰が重いに違いないと踏んで、何かと理由をつけて、"ハッピーセット"でお邪魔していた。]
(283) 2022/09/19(Mon) 9:12:15

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 唐揚げ、作ってきました。
 津崎、この家で揚げ物するの嫌がるかなと思って。

 あ、あと、野菜も色々。

[松本さんと一緒にこの家で夕食作って食べてもいい?と津崎に問い合わせたら、返事の冒頭がまず"焼肉厳禁"だったから、これは私が思う以上に津崎は潔癖……というか綺麗好き?なんだなと察して。

松本さんが覚えた料理、私が普段作っている料理、あれこれ持ち寄って、武藤と3人で宴会するのがなんとなくの定例会になっていた。

ついでに皆の顔と料理とを自撮りして津崎に送りつけるまでがセットになっていて。]

 『今日は焼売!』
 『私のは海老入り、松本さんのは干し貝柱入り!』
 『あ、唐揚げはここで揚げてないよ、』

[そんなメッセージつきで、ビール缶掲げてウェーイな私たちの写真を見た津崎がどんな顔してたのかは、知らないけど。*]
(284) 2022/09/19(Mon) 9:14:30
3年生 黒崎 柚樹は、メモを貼った。
(a35) 2022/09/19(Mon) 9:23:09

【人】 3年生 黒崎 柚樹


["ばか"だなんて武藤から言われた >>286 のは、これが初めてだったと思う。

一体、何がばかなんだろ、と、常だったら声も出すしなんなら軽く睨むくらいはするところだけど、今はともかく、色々と、いっぱいいっぱいで。

ばか……なのかなあ。

これだけ痛くて、つらくて、で、涙まで零している私を前にしている武藤に「でもいいから先へ進めろ」と乞うのは、それは確かにばかなのかもしれなかった。

撤回なんてする気はないけど、ごめんね、と口を開きかけた瞬間、身体がふわりと浮く気がした。]
(294) 2022/09/19(Mon) 9:53:58

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ぇ、あ……っ!……んぁ……ッ!

[ずるりと裡から怒張が抜け出ていって、戸惑うより前に奥深くを貫かれた。

ひゅ、と喉が鳴ると共に、両足がびくりと跳ねる。
押し出されるように、一度は止まっていた涙がまた目縁を伝っていく感覚があった。

泣くほどの痛みではなかったはず。
なのに、押し出されていくかのように、突き上げに呼応するように水滴が散っていく。

これまでとは比較にならない、全身がばらばらになりそうな感覚だった。なんだろう、内臓、かき回されて、武藤と1つ混ざろうとしている、みたいな。

尖痛だった痛みはじわ、とずっと低層音になったみたいに続いていて、まだ、気持ち良いとまで思えるものではなかったけれど。]
(298) 2022/09/19(Mon) 9:55:14

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 む、とぅ…………ぅ、

 ……っ…………と、ら。

[ああ。これが欲しかったんだ。

武藤の初めて見る顔。
お前が欲しいって、笑顔じゃなく、どこか必死な顔で、でも、とても綺麗だと思った。

私は泣いてばっかりで全然かっこよくもかわいくもないなあ、これ……なんて思いながら、重なり軽く噛まれる唇には、こちらから舌を差し出して。

武藤、きもちいい、かな。
いいと良いな。

そう思いを馳せた時、胎内を抉ってきた一ヶ所が、びり、と。]

 ……ん、……ぁ、ん……ッッ!?

[苦痛とも快楽ともつかない不思議な感覚を残していって、背中を大きく震わせたのだった。]
(300) 2022/09/19(Mon) 9:55:58

【人】 3年生 黒崎 柚樹

―― 約束のパフェ ――


[…………ん?]

 え、待って。

 "前よか今のほうが"って、 >>296
 津崎、私のこと、可愛いと思ってた……の?

[いやいやいや、それは無いでしょう、と、思わずこっちも負けじと津崎の顔を見つめ返してしまう。

武藤は──今から思い返せば──割と早い段階から私のことを可愛い可愛い言い始めていて、私は結果的にはそれをガン無視していたわけだけど、津崎は全然、そんなこと欠片も無かったし。

ああ、今日は知ってる津崎の顔だ。
サラツヤピカーの髪に、今ならわかる、あれこれ"盛っている"美容男子の顔。
病院での痛々しい姿も記憶に遠くなかったから、それには素直に安堵した。

眉毛抜くのはね。相変わらず難易度高いんですけれども。
でも、やってるよ。涙目になりながら。

────で。]
(303) 2022/09/19(Mon) 10:20:59

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 もて……もて。

[ソウデスネー、と苦笑い。
いや、実際、武藤も津崎もやたら目立つ。

若干圧はあるものの、基本的にはイケメンなのだし。
ましてはここは妙齢の女子含有率8割強な空間なのだし。

目立つ彼らとタメ語で話し、躊躇なくパフェグラスにスプーン突っ込むでかい女も、彼らほどではないにせよ、目立ってはいたのだろうと思う。

あえて今日は重い話をぐだぐだと持ち出すことはしなかった。

"桃園の誓い"の場だし? >>278

こんな場でやいやい話し合いしたら、余計な口は挟むまいなんて気遣ってくれている武藤 >>278 の心労が増してしまいそうだし。]
(304) 2022/09/19(Mon) 10:21:46

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ……うん。

 今日教えてくれたから、いい。

 別に怒ってはいないよ?ほんとに。

[この日にと、ちゃんと報告してくれた津崎には素直にありがとうと言って、]

 良かったね、津崎。

[そう言ったところで、"何が?"不思議そうな顔をされてしまうかもしれないけれど。*]s
(305) 2022/09/19(Mon) 10:22:03
3年生 黒崎 柚樹は、メモを貼った。
(a37) 2022/09/19(Mon) 10:24:13

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 な、ん…………っこ…れ、…ぁ

[脳がその感覚を拾うより早く、背と足がびくりと跳ねて、直後、無意識に武藤をぎゅうと締め付けてしまった。

滲む視界、間近に見える武藤の顔 >>322 も少し苦しそうに歪んで見えて。

ごめんね、痛かった……?なんて思ったのだけど、むしろ、逆だったみたい?

身体の奥に埋まる熱が、強く脈打つような感覚が走った。]

 ぁ、ゃ……これ、おか、し…………ぅあ!

[快感とは、違うと思う。

それは温かで、穏やかで、安らぎを覚えるものだと思っているのに、今、電流でも走るみたいに身体をひくつかせてくるのは、意識も理性も全部攫っていくみたいな、暴力の波のようなもの。

知らない感覚に困惑しながら、それから逃げるように頭を何度か緩慢に振ったのだけど、顔を少し歪めた武藤が"きもちいい"と言ってくれたから、その困惑もいくらかは薄らいでいった。]
(329) 2022/09/19(Mon) 15:49:38

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 …………ふ、ぅ……っ……っ

[いよいよ喉からはとんでもない声が出てきそうだし、意識が白く焼き切れていくよう。

手の甲でおかしく跳ねそうになる吐息を殺していたのだけど、最後は、私の名を呼ぶ声に応えるように、武藤にしがみついていた。

その頃には、身体が勝手に浮かんでしまいそうな不思議な浮遊感と焦燥感ばかりが身体を満たしていて、もう痛みは遠いものに感じられて。]

 ……ッ………………ぁ、

[首筋にごく微かに走る痛みと、熱と、それよりももっと熱いものが胎内で弾ける感覚と。

最後の最後は、忙しない呼吸が武藤のものか私のものかも、判然としなかった。]
(330) 2022/09/19(Mon) 15:50:35

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 む、と…………?

[私もなかなか酷い顔になっている気がするけど、武藤の髪も、くしゃりと水を刷いたみたいになっていて。

常には滅多に見せない眉間の皺も、今日は怒り顔ではない風のを沢山見た気がする。

今日はなんだか知らない武藤をたくさん見ているなあと、ちょっと笑えてきてしまった。]

 …………"ちゃんと"出来たね。

[よかった。うれしい。
私の初めてが武藤で良かったし、武藤の初めてが私なのも嬉しい。

武藤が離れていってしまう前に、そう囁いて、抱き締めた。*]
(331) 2022/09/19(Mon) 15:52:41

【人】 3年生 黒崎 柚樹


―― 送らなかった、死者への手紙 ――


[朝霞さんからのグループLINE。 >>287
"手紙参り"なるものの誘いで、朝霞さんが代表してお焚き上げに行ってくれる、と。]

 …………うーん…。

[多分、朝霞さんのことだから、皆の分を集めたいとか思ってるんじゃないかな……と思ってしまう。]

 …………でも、私の貰った小泉さんからの遺言は、
 手紙じゃなくてあの時の言葉 >>6:22 なんだよね。

[どう考えても、最後はその考えに辿り着いてしまう。

どこか他人行儀な、綺麗な言葉が並んでいたあの手紙。

それもきっと小泉さんの素顔の一面だったのだろうけど、美術館での最後の日に独り言のように落とされたあの言葉とあの表情の方が、私にとっては一番の真実だった。

ああいう風に返事をしてくれた、元の私の言葉も脈絡なくてぐちゃぐちゃで大概酷いものだったわけだけど、でもあの言葉もまた、あの時の私の一番の本音で。

あのやりとりとこの思いは、私が一人で抱えていけば良いことで、今更手紙という形で整えた文字にして小泉さんに送る意味も、無い気がした。]
(336) 2022/09/19(Mon) 16:58:31

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 『朝霞さん』

 『手紙送りの連絡ありがとう』

 『黒崎は手紙は送りません ごめんね』

 『何か手伝えることあったら言ってください』

[そう個別LINEに文字を打ち込んで送信アイコンをタップした。

きっとマメな武藤あたりはわざわざレターセット買ったりして手紙書いたりしてるんだろうなあと思いながら。*]
(337) 2022/09/19(Mon) 16:58:50

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[そういえば、武藤にはよく噛みつかれるなあ、と思う。

しかも大概首筋。
多分だけど、人間の急所に近い場所。

正直、ぞくりとした快感が走ってしまう気がして、その動物的に求められる様が、私は嫌いじゃなかった。
なんだろう、動物が、つがい相手にするような行為。

"結ばれて嬉しい"と言われれば >>338 勿論嬉しいし、]

 ……うん。
 好き。大好き。

 ………………う、ん…?

[簡潔な"好き"には、私もそうだよと微笑んで。
続く言葉に返そうとしたところで、武藤がもたもたと動き出した。]
(340) 2022/09/19(Mon) 17:21:29

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[…………ああ、そ、っか。

武藤の体温が遠ざかっていくのは残念だったけど、そういう"後始末"的なものが必要なのはうっすら察し、男の人は大変だなあと思ったものの、私の今の姿勢も大概で。

はしたなく開いていた足をゆるりと閉じようとしたら、シーツに薄紅色が散っているのが見えてしまった。

季節はずれの桜の花びらにしては、生々しい、淫靡な色。]

 ごめん武藤、シーツ、よごし……、

[視線を上げてしまったものだから、その、うっかり、見て、しまった。

その、外したそれ、を、結んだ……り?ティッシュにくるんだ、り??]
(341) 2022/09/19(Mon) 17:23:42

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ……………………っ。

[今までとは別の意味で顔を赤くしてしまいつつ、でも、まあ、見えてしまったものは仕方がないとばかりにそのままそこからの全工程、観察してしまった。ごめん、武藤。]

 …………男の人って、たいへんなんだね。

[戻ってきてくれた武藤を抱き締めながら、ついそう言ってしまったことに、特段の他意は無いし、ちゃんとお返事もしたよ。]

 めちゃくちゃというのと違うけど……、
 気持ちいいなって思ったし、またしたい。

 武藤となら、いっぱいしたい。

[って。*]
(342) 2022/09/19(Mon) 17:24:11

【人】 3年生 黒崎 柚樹


―― 小泉さんのバイト先 ――


[恋人がコミュ強で本当に良かったと心から思いながら、つらつらと滑らかに口上を述べてくれている武藤の傍ら、私もぺこりとお辞儀をする。

小泉さんが長く働いていた、パン屋さん。

店内に漂う香りは、美術館のキッチンで嗅いだものとほぼ同じ。。
小麦の生地が焼ける匂い、クリームが炊ける甘い空気。

死にたいと思っていたらしい小泉さんの、ここは大切だっただろう場所。

同僚さんらに慕われ、店長さんからも"ここで働け"と言って貰えていたくらいであるらしいのに、それでも全てを捨てて"死にたい"と思っていた小泉さんの絶望はいかばかりのものだったのかなと、心の端の方がつきんと痛くなった気がした。]
(348) 2022/09/19(Mon) 18:02:20

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ……え?私の分もあるの?

 ありがとう。

[うららかな秋晴れの公園、外でパン食べるなんて遠足みたいだねと、せめて缶コーヒー(松本さんご推薦のものじゃないけれど甘さのあるカフェオレ)は私が買って。

私もパンを買ったけれど、それは家に持って帰るつもりでの、今日の午後のおやつと明日の朝食分。

かわいいなあかわいいなあと、つい、買いすぎかな?というくらいに買ってしまった。

まあ、多少多くても、大食らいの弟が問題なく平らげてしまうだろうし、と。]

 こっちのパン、中はチョコクリームだって。

 半分食べる?

[くまさんパンだよなんて、袋から1個取り出しつつ、どうしても会話の途切れ目には小泉さんを思い出してしまう。]
(349) 2022/09/19(Mon) 18:03:00

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ……うん。美味しかった。
 小泉さんのパン。

 すごくかわいかったよ。

[そうぽつりと告げれば、一体本当、何をどこからどこまで見ていたのか、あの目玉ぐるぐる猫パンにも言及されてしまい、言葉を詰まらせる。]

 …………武藤は、
 私のこと、心配だったんだよね。

[ただ見ているだけなのはつらいことだと、私も最後の1日だけとはいえ、意図せず見てしまった小泉さんの姿に歯噛みしたことを思い出す。

あれがもしも武藤の姿だったらと思うと、平静ではいられない自信しかなくて、そんな中、武藤は私を見ていてくれたんだなあ、って。
あのレストランの場では、私は還れることが決まってはいたわけだけど、それでもね。]

 うん。
 食パンとかフランスパンも美味しそうだった。

[今度、ガチの遠足……というかピクニックでもしてみる?
あそこのパン使ってサンドイッチ弁当とか作るよ、と、交わす約束に、戻った"日常"を噛み締めた。*]
(352) 2022/09/19(Mon) 18:04:46

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[1回してみて、なるほど、と、思った。

漫画だとか小説だとかドラマだとかの世界とは大違いで、どうにも恥ずかしいし、どうしても居たたまれない時間もあるし。

……でも、身体を合わせないとわからない、この満たされた気持ちは、してみなければ味わえないことで。

きっと、その……もう少し慣れたら、武藤の言う"めちゃくちゃ気持ちよかった"に私も至れるのかもしれないし。

ぼんやりとそんな事を思いながら…………まあ、見てた、という次第。]
(353) 2022/09/19(Mon) 18:25:13

【人】 3年生 黒崎 柚樹


  うん。

[言葉にならない言葉を飲み込んだらしい"うん" >>350 に、私も鸚鵡返し。

見ようと思って見たわけじゃないよという言い訳は飲み込んで、でも別に気にしないのになあと言葉を紡ぐ。

自覚はしていなかったけれど、噛みついてくる武藤同様、私も大概動物的なのかもしれない。

一度身体を開いて受け入れてしまえば、武藤に対する羞恥心とか居たたまれなさとか行為への警戒心だとかが、一気に薄くなった感覚があった。

何ていうか……そのへん全部が自分のテリトリーになった……という感じ?]
(354) 2022/09/19(Mon) 18:27:03

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 …………?

 したかったら、していいよ…………?

[もう全然痛くないと言ったら嘘になるけれど、先よりはきっと負担なく受け入れられる気がしているし。

でも、男の人の側は、そう何度もできるものなのかな、と、そのあたりも全然検討つかないまま、したいならしよう?と首を傾げる。

足の付け根に当たる固い熱も、もうなんだか見知ったもののように思われて、唇が重なれば、こちらも負けじと身体を擦り寄せた。*]
(355) 2022/09/19(Mon) 18:28:10

【人】 3年生 黒崎 柚樹


["していいよ"は、多分、自分の本心を隠したずるい言い方だったと思う。
本音のところは、"していいよ"じゃなくて……もっと、で。

なので、武藤に"する" >>360 と言われて、正直嬉しかった。

なんだっけ……どっかで見た本だか何かだと、"賢者タイム"というのが男の人にはあるらしかったのに、武藤には無いのかな?……なんて思いつつ、うっとりと唇を合わせる。

キスも、したのは武藤が初めて。
ねえ、こんなに気持ち良いものだとは、知らなかったよ。

ぽやぽやとそんな気分に浸ってるうちに、武藤の手指が色々なところを辿っていって。

私の知らない部分にまで触れようとすることにも、もうあんまり抵抗はなかった。

だって、先刻まで武藤が"居た"ところだったのだし。

────けれど。]
(370) 2022/09/19(Mon) 20:01:12

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 …………ひゃ、ぁ……ッッッッ!?!?

[両足が引き攣るほど跳ね、どころか、背から肩からびくりと跳ねた。

全身の毛穴が閉じたのか開いたのかもわからない感じに、唐突に心臓の鼓動がやかましくなりはじめて。]

 む、と…………今、何、した……の?

[呆然と、緩く開いた足の間に居る武藤を見つめる。

こんなの、知らない。
全然、知らない。

快感のようなそうじゃないような、鮮烈な何かが身体中を痺れさせながら駆け抜けていくような。

不快ではなかったけれど、でも、"怖い"と思ってしまった。

だって、こんなの、自分がどうにかなってしまうとしか思えなくて。

なけなしの理性をかき集められる自信もないまま、呆然とした心持ちで武藤を見つめてしまった。*]
(371) 2022/09/19(Mon) 20:02:42

【人】 3年生 黒崎 柚樹


―― この秋の終わりに ――


[400m走は、トラック1周。
だから、顔を上げたところで、フィニッシュ地点が視認できるわけじゃない。

けれど、く、と顎を引いた私は、眼前、見えぬそれを睨みつけるように集中する。

欲しいのは、未来。

"死んでもいい"なんて二度と思わないための。
愛する人の傍ら、胸を張って立ち続けているための。
これからの人生、一瞬も無駄にしないための。

きっと武藤は客席に居てくれているのだろうけど、あえてそちらの方に視線を送ることはしなかった。次に会う時は、笑顔で戦果を報告する時だと、決めていたから。

On your marks、Set、の声に応じ、身体を無意識に前傾させ、呼吸を詰めて。

今日は青空。
まるで、あの美術館で見た時のような空の色だった。

────そして、結果は、
  『インカレ陸上女子400m (2)1d3位 黒崎柚樹』
]
(372) 2022/09/19(Mon) 20:17:59

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 …………ああ、もう。また2位だった。
 残念。

 ごめんね、せっかく観に来てくれたのに。

[武藤へそうぼやきつつ、でも案外と心中はさっぱりしていた。

入賞なんて望めないくらい、ここ2年弱はスランプだったから、この結果は充分すぎるほどに上々で。]

 良いとこ就職して。
 何かあっても武藤を食べさせていけるようにするからさ。

[ふ、と笑った私は、もう、"次の大会ではもっと良い結果を残すから"というしか考えていなかった。*]
(374) 2022/09/19(Mon) 20:22:02

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 …………ッ、いた、くは、ない…………けどっ

[武藤の問いかけ >>377 にはそれを返すのが精々で。

でもとりあえずは、あのおかしな感覚は去ったから、気のせいだったのかなと流してしまおうとも思った。]

 ……ぇ?

 ゃ、ん────ッッッ!ぁ、…………ぁ

["此処?" >>378 じゃなくて!

おそらくは何の気なしに触れて来た指ひとつに、どうしようもなく翻弄された。

じんじん、というか、ずきずき、というか。

でもそれ以上に形容し難い、身体中を麻痺させるような、言葉を操る理性すら奪うような刺激が駆け抜けていく。]
(384) 2022/09/19(Mon) 20:53:44

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ……ゃ、それ、ゃだ、ぁ…………!

[言葉では抵抗を告げるのに、全く思うままにならない下肢がどんな様になっていたかなんて、想像だにつかない。

本気で嫌だと告げればきっと武藤は止めてくれた筈はずなのに、そうはしなかった、その理由。

言わせて貰えれば、そんな意図は本当に、少しも無かった。

跳ね続ける両膝はとうに宙に浮き続けていて、だから、見られたくはなかったはずの秘所も、武藤を前に曝け出してしまっている状態で。

言葉と裏腹、"もっと触って"とばかりに、未練がましく内部が収縮を繰り返していて、それは完全に"雄"を誘う仕草だった────なんてこと。

本当に欠片も、全く、自覚は無かったことなのに。*]
(385) 2022/09/19(Mon) 20:55:03

【人】 3年生 黒崎 柚樹


["1回してみて"云々とか、甘かった。ごめんなさい。

ぜんぜん、あの"1回"は"1回"ではなくて。
まだ全然、私の知らない色々があって。

しようと言ったのはどの口か、もう私は、刺激を受け流すのだけでいっぱいいっぱいになっていた。

なん、で。この場所、ばかり。

指先で触られるだけでなんで身体ぜんぶがばらばらになってしまいそうになってしまうのか、理屈も理由もわからなくて。]

 か、わ…………?

[もはや、武藤が何を口走ってるのか >>390 もわからず、とりあえずは武藤の指が去って行ったことに安堵していた。のに。]
(402) 2022/09/19(Mon) 21:52:59

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 ゃ、あ!や、やだ、やめッ…………あ、ぁん……ッ…!

[これまでにない、とんでもない声が出てきてしまいそうで、慌てて口を噤んだ。

熱くぬめった何かが先から執拗に触れられていたところに触れ、ざらりと撫でられる。

得体のしれない何かが、足の間をとぷ、と伝っていき、その刺激だけでも身の置き所が無くなってしまった。]

 だめ……むと……それ、だめ、ぇ…………ッ。

[止めて欲しくて武藤の頭を探るように手を伸ばすのに、結局できることは、拒否ではなくて、縋るように、金の髪端をにぎることくらいでしかなくて。]
(403) 2022/09/19(Mon) 21:54:23

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[そして漸く、与えられる刺激が無くなったときには、呆然と、緩慢に瞬くことくらいしかできなくなっていた。

頬に当たる武藤の唇も、導かれた手指が触れた何かも、どこか他人事のよう。

────ああ、でも。

私が欲しかったのは。]

 ん…………挿れ、る……?

[それに触れるのは始めての行為だったのに。
まだどこか夢の世界のような心持ちで、抵抗することもなく。
柔く、きゅ、と握ってみてしまった。

私の手より余程に熱くて、これを"きつい"と言っている武藤も、なんだか愛おしくて。]

 挿れて、いいよ……?

 …………ううん、挿れてほしい。

[だって、先刻から身体の中が切ないような、何かが足りていないような、そんな気持ちしかしないんだもの。

だったら、"これ"で、埋めて欲しいなと、思ってしまった。*]
(404) 2022/09/19(Mon) 21:56:58

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[正直、"それ"も要らないよ、と思った。

そんな十数秒?数十秒?すら待つのがもどかしくて、早く……と思ったのだけど。]

 ………………?

[手伝ってと囁くように告げてきた武藤は、手伝う手伝わないを申し出る前に、既に動き出していて。

導かれて伸ばした指先は、すべすべした薄膜を通して熱く固いものに触れていった。

……今度、見せてよ。
なんて言いたかったけれど。

さすがに今は、諸々、許容量がいっぱいすぎたかな。]
(409) 2022/09/19(Mon) 23:05:31

【人】 3年生 黒崎 柚樹


 …………っ……ふ、

[────ああ、欲しかったのは、これだ。

と、思った。

ほんの数刻前には全然知らなかった感覚なのに。
最初はただひたすらに痛くて苦しかっただけなのに。

なのに今、ひたすらに欲しいのは、武藤の熱でしか、なくて。]

 もっと……もっと、強くして、だいじょ、ぶ…………。

[それでも気遣うように緩い抽挿を繰り返す武藤に、さっきみたいな、あの、神経が焼き切れるみたいな感じが欲しいのだと、ねだってみせた。]

 きもち、いい、から…………。

[それは半分嘘で、半分本当。

どうしても無視はできない痛みは残っているのだけれど、でも快楽らしきものも、遠くの方にほの見えて。

少しでもそれを手繰り寄せてみたいのだと、私も武藤に合わせるように緩く、腰を揺らしてみたのだった。*]
(410) 2022/09/19(Mon) 23:06:53

【人】 3年生 黒崎 柚樹


[────ああ、好き、だ、な。

過るのは、そんな思いばかり。

私の名を呼んでくれる声が好き。
苦しそうな吐息も好き。
どこまでも、乱暴にはしてこないところも好き。

ねえ、その"噛み癖" >>419 も好きなんだと伝えたら、武藤はどんな顔になるのかな。]

 …………ッ。

[前の時よりも、少しだけ深く、少しだけ鋭く。
食い込んだ歯がちりりと皮膚を焼いていくようで。

言葉にはならない、"俺のものだ"が伝わってくるようで、私はうっとりと眼を閉じた。]
(427) 2022/09/19(Mon) 23:46:28