【人】 宵闇 迅[品行方正な息子とはとても言えなかっただろう自覚がある。 忙しい父と、専業主婦の母との合間に、 言い難い溝があったことも気づいていた。 子は鎹と言い出した先人は誰なのだろう。 ――自分も、妹も、鎹にはなってやれなかったらしい。 いつからか妹を寝かしつけるのは自分の役目になった。 それを負担に思ったことはない。 紅葉のような小さな手が、自分の指を握り込んで眠る。 その姿が、いっとう大切で愛おしかった。 たどたどしい言葉で、身振り手振りも交えながら、 懸命にその日起こったことを、報告してくる妹を、 嫌えるはずもなかった。 ―― なのに、なぜ無理を通してでも頷かなかったのか。] (36) 2020/12/26(Sat) 0:27:35 |
【人】 宵闇 迅空港のロビーは人影もまばらだった。 保安検査場の手前で、抱えていた妹を下ろす。 不思議そうな目は、 ここでお別れだと思ってもみなかったのだろう。>>30 少し先を歩いていた母親が振り返る。 名を呼ばれて、まあるい瞳はふたりを交互に見ていた。] 真里花、ほら、行きな。母さんが待ってる。 [言葉の意味が飲み込めなかったのだろう。 数拍置いて、兄とは此処までだと理解が追いついたのか、 しがみついた姿勢で懇願して泣きじゃくる妹を、 やさしく、引き剥がす。] 兄ちゃんは、世界で一番真里花が好きだよ。 これまでも、これからも、ずっとだ。 嫌いなところなんて、ひとっつもない。 ほんとうだよ。 [だから、と言い募る頭を撫でて、微笑んだ。 笑え、なんとしてでも。そこだけは間違えるな。] (37) 2020/12/26(Sat) 0:27:53 |
【人】 宵闇 迅[まなうらに感傷を溜息で振り払い、立ち上がる。 泣きじゃくる妹に約束してやれたことは、 ――手紙を書くこと、電話をすること。それだけ。 今や遠距離に住んでいても顔を見て話せる時代だというのに、 頑なに音声のみの通話を貫く兄を、妹はどう思っているのか。 無音の空間は振り払ったはずの感傷を纏わりつかせる。 よくない思考は水と一緒に流すに限る、と、 自室の扉を開いたところで――……] ―― は? [叫ばなかったことを褒めてほしい。 自室の扉を開いたら得体の知れぬ宿だった。 わけがわからない。 自室の扉を開いたら得体の知れぬ宿だった。 (2回目)] (41) 2020/12/26(Sat) 1:13:26 |
【人】 宵闇 迅 ― 宿 ?― [着の身着のまま、なんなら部屋着のゆるい格好で、 えっ寒い。どこだここは。ふざけんな(1キレ) こちとら妹の電話待ってるとこなんだぞ 繋がらんかったらどげんする気やふざけんな(2キレ) えっおれ立ったまま寝落ちとか器用なことした?(困惑) いやないやろあほか(3キレ) ぽかんとした顔のまま、感情だけが怒涛の回転数で、 カウンターがカチカチ回る。 結果としてフリーズし、立ち尽くす姿をどう捉えたのか、 お連れ様がお待ちですとあれよあれよと案内されたのは どう見ても自分とは不釣り合いな扉の前。 帰りてえ。] (42) 2020/12/26(Sat) 1:13:43 |
【人】 宵闇 迅[会いたくなかったわけじゃない。 ただ合わせる顔がなかっただけだ。] ……真里花、マリ、おまえ……、 [なんて声をかければいいんだろう。 大渋滞を起こした言葉は衝突しあって、潰れていくばかり。 大きくなったね? いや写真で見てた。 かわいくなった? これも写真で見てた。 高校は楽しいか? いや手紙に友達できたって書いてあった。 新しいパパと――……旅行に行くぐらいには良好だ馬鹿。] ――なんでここに、いるんですか…… [絞り出したのは全く違う言葉だった。*] (72) 2020/12/26(Sat) 11:46:55 |
【人】 宵闇 迅……誘拐……? [待て、どこのどいつだその不届き者は。 話し合い(物理)も辞さない(2回め) しかし、奇妙な目に合っているのは自分も同じだ。 もしや巻き込んでしまったのだろうか、と嫌な想像をする。 ――何の意図があるのかこれっぽっちもわからないが。 少しだけ躊躇って、畳を踏みしめて近寄る。 自分の猫背を差し引いても頭一つぶん以上小さい妹は、 座っていれば尚の事ちいさくて。 側にしゃがみこんで、目線を合わせた。] (78) 2020/12/26(Sat) 14:16:41 |
【人】 宵闇 迅コンビニに居たんですか。 ……おれも、 おれも、部屋の扉を開けたら、此処でした。 妹よ、どこかわからない場所で、 迂闊に出されたものに口をつけるのは感心しませんね。 まあ……おまえが、あぶない目にあってないなら、良かった。 [まるい頭に手を置いて、不器用に撫でた。 少し説教じみた口ぶりになってしまったのは、許してほしい。 余裕ぶって大人びたところで、いつまでもガキのまま、 年頃になった妹の機嫌のとり方さえわからない。] ――ずいぶん、きれいになったね、真里花。 (79) 2020/12/26(Sat) 14:17:34 |
【人】 宵闇 迅どこでそんな言葉を…… [これがネット社会の弊害か。 妹の口から出てきた単語に僅かに溜息を吐く。] さあ。 これからシャワーを浴びるか、ってところで いきなり雪国だったので事情の把握は出来てませんね。 脱いでなくてよかったと心底思いますよ。 [しゃがみこんだ姿勢から足を崩して、 畳の上に胡座をかいて座る。 お互いの状況を整理してみても、さっぱりわからない。 妹はコンビニから出たとき。 自分は寝室に移動しようとしたとき。 どちらにせよ、"扉を潜ったタイミング"ではあるのだが。 なんでもない、>>80にゆるく首を傾けて、頷く。 詮索はすまい。友人関係に口をだすほど――野暮ではない。] (142) 2020/12/27(Sun) 11:53:35 |
【人】 宵闇 迅 夢、ね。 だとしたらどっちの夢だろうね。 [表情筋が死んでるとよく揶揄される自分でも、 妹の笑顔>>81を見れば微笑も浮かぶというもの。 お利口さんなお返事をしたいい子の頭を もう一度撫でて、手を離す。] そうだね。 あとはその迂闊さが少し落ち着けばもっと大人ですが。 [写真でずっと姿を見ていたとはいえ、 こうしていざ対面してみれば余計に成長を感じる。 十年という歳月は自分にとっては 大した変化を齎す時間ではなかったけれど。 ――しかし、まさかの対面を果たすなら寝ておくのだった。 隈があるのはいつものことだが、流石に徹夜明けだと隠せない。 眠気自体は、すっかり飛んでいってしまっているけれど*] (143) 2020/12/27(Sun) 11:54:28 |
【人】 宵闇 迅[首を傾いだ妹には曖昧な笑みを返さざるを得ない。>>144 意味を知って使っているわけではない……というか、 なぜハイエース=誘拐の図式が作られたかまでは知るまい。 自分も詳しいわけではない。詳細を語れと言われても困る。 というか何故それを知っているのかの問に答えられない。 詰んだ。 センシティブフィルターよ仕事をしてくれ。切実に。 あとネット民は自重しろ、語感で語句を広めるな。 妹の内心とは裏腹に、兄の心情は荒れ模様である。] ………………。 [寝ていないのか、との問に、たっぷり間をおいて。 すっと目線を逸らした。 手紙でも電話でも頻りに睡眠時間を心配されている身である。 改めるつもりだけはあるんだ、一応。多分。きっと。] (159) 2020/12/27(Sun) 21:06:42 |
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