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【人】 転校生 矢川 誠壱 「叫べーーッッ!!!」 [ 祐樹が煽ると、息を吸い込む 瞬間のような休符の直後、 バンド全体が大きく鳴りはじめる。 会場が大きく沸く。一体になる。 体が揺れる。その重いリズムに合わせ。 がなる、響く、揺れる。 ひずむ、鳴る、激しく。 先ほど、教室で演奏したしっとりと 柔らかな音とは全く違うけれど。 これも、楽しくて仕方がない。 観客の方を見ると、みんな、笑っている。 楽しそうに手を上げ、声を上げて、 飛ぶ、リズムに乗る。] (171) 2020/06/19(Fri) 8:03:50 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「この町を、歩き回る君。 消え去ったりしないよ。 本当に、見ているだけか? ならどうして、そんなに急いでるのさ。 ───ここから、踏み出す時、 一歩、一歩忘れないよう、息を吸って。 生きるって、きっと傷つけるし 生きるって、きっと失うことだ。 それでも、君が自分のW街Wで 迷子になっているのなら。 生きることって、笑うこと。 生きることって、泣くこと。 自分を見つける意味を失ってしまったのかい? 生きるってきっと、愛することだよ。」 (173) 2020/06/19(Fri) 8:05:46 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ これは、メッセージソングだ。 全英詞だから、己には理解できないが、 ライブでやる曲を話した時、 祐樹がまず初めに挙げたのはこれだった。 絶対やりたい、と。 そのあと、自分で歌詞を見て訳したっけ。] (174) 2020/06/19(Fri) 8:09:50 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「失うものがなにもないなんて、 本当にそうならどこへ行く? もしそれがわかるのなら、 君はなにを信じてるんだ? 忘れないで、今までの道のりに、 自分の足跡があるんだから。 自分のこれからを見つけるとき どうかまた息を吸って、 君の人生は君が作るんだから。 一歩踏み出すことに意味がないなんて、 誰が言った?そんなわけないだろ。 生きることは、愛することなんだから。」 (175) 2020/06/19(Fri) 8:16:13 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 爽やかで、綺麗なメロディに 乗せられたのは、たしかな応援。 直接的な励ましの言葉じゃない。 ただ、遠くから見守っていて、 時折優しくエールを送るような曲。 届け。 だれかに。 その先を、望む人たちのもとに。 そう願いながら、歌ったのがわかる。 汗が、首筋を伝った。 音が止む。 ボーカルの微かな呼吸音のあと、 わあ、と大きな拍手と声が沸いた。 にい、と笑った祐樹がこちらを見る。 己も柔く微笑み返した。 手首で顎の下を拭って、息を吐いた。] (176) 2020/06/19(Fri) 8:16:32 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「どーも、Two wins でっす!!!」 [ そういってピースを二つ揃えて Wの形を作るポーズは、このバンドの シンボルマークらしく。 祐樹がそのポーズをしたときは、 全員がしなければ怒られてしまう。 だから己も大きな掌でピースを 2つつくり、重ねて。 気恥ずかしさに首をこてりと倒して、 そのまま俯くようにして笑った。 さあ、MCがはじまった。 あと三曲。 走りきる。 この瞬間は、今しかない。]* (177) 2020/06/19(Fri) 8:16:47 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 矢川誠壱という男に、W自分Wはいらない。 人に弱いところを見せるのは苦手だった。 個人として認識されてしまいそうで。 幼い頃から引っ越しの多い環境だった。 昔は自己主張もしっかりする子だった らしいのだけれど、それも今は形を変え。 複数人対複数人なら平気だった。 己がメインにならなければ、いいから。 接客は違う。個人対個人だ。 だから、絶対に無理だと思った。 雨宮と2人でした演奏は良かった。 己がすぐに下がって仕舞えば、メインは ピアノになる。きっと、客の印象に 強く残るのはキラキラしたピアノ。 己は枠外で広げた布でいい。 バンドも同じだ。 このバンドのメインは双子。 それを支える柱になれればいい。] (205) 2020/06/19(Fri) 13:25:48 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 誰かにとって強く印象に残る存在に なることが、それを自身で認識することが とても、怖かった。 誰かにとっての特別になることが 誰かを、特別に思うことが、怖い。 だからいつだって飄々と。 温厚で、ノリよく、「普通」で。 いつか、この日々を誰かが思い出して そのとき己がもうそこにいなかったら そのとき名前が挙がることもなくていい。 挙がったとしても、ただ「元気かな」で 話が終わるくらいの存在でいたい。 思い出は自分の中には閉じ込めるから。 「ぜったいわすれないからね」 「ずっとともだちだよ」 そう言った子たちから 徐々に届かなくなる手紙。 途切れていく連絡。 少しずつ忘れられていく それがわかるのはもう、嫌だった。 (206) 2020/06/19(Fri) 13:26:37 |
【人】 転校生 矢川 誠壱 ──ライブ── [ 3曲目。 観客からのコールのあるこの曲。 簡単に呼びかけて練習する。 声を出して一緒に楽しんでほしい、と 言い出したのもボーカルの祐樹だった。 突拍子もないことを言い出すのはいつだって メインボーカルだった。それを理性的に とめつつも叶えるのがギター。 穏やかに見守るのがドラム。 バランスの良いチームだと思う。 祐樹が言い出した提案に、 ならこの曲はと挙げられたそれは、 満場一致で決まった。 ボーカルの右手が挙がる。 それを合図にコールが始まる。 はじめは小さなそれも、煽ると だんだんと大きくなっていく。 最高潮で二度、三度、繰り返したらば、 そこにドラムが、ギターが加わり、 重なる音に、ボーカルの声が足されて、 がなった。 そして、吠える。] (232) 2020/06/19(Fri) 19:27:03 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 白旗だと呼ばれても掲げたその旗を、 揺れる船の上からでも切り開く。 負け犬と呼ばれたって、 この曲の主人公はきっと、 挫けることなどないのだろう。 確かな強さを感じる。 ステージの上からでもわかる。 やはり、このバンドはかっこいい。 クールで、熱くて、強い。 今この場所に立てていることが、 本当に誇りだとおもった。] (233) 2020/06/19(Fri) 19:27:24 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ そして、4曲目。 はっきりとしたメッセージの響く、 この曲もまたきっと、誰かへの応援歌。 ありのままの己を認める、 それがどれだけ難しいことか そんなことわかり切っているけど。 指の間をすり抜けていくように、 人生がうまく掴めないときだって。 間違いごと誇りに思って、 自分自身を愛してあげることが。 ───俺も、出来てるとは思えないな。 わかってたって、怖いじゃないか。] (234) 2020/06/19(Fri) 19:27:54 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ それでもいつか、いつの日か。 全てを持って己を愛せる日が来たら、 ───誰かを特別に思えるのだろうか。 きゅ、と唇を結ぶ。 コーラスが響いた。 ドラムが鳴り、余韻のように 残ったエコーが体育館を駆けて、抜ける。 歓声と、拍手が聞こえた。 息を吐く。暑くてたまらない。 またペットボトルをひねって開け、 口に含んで、流し込んだ。 ぐい、と手のひらで前髪をあげる。 深く息を吐いた。] (235) 2020/06/19(Fri) 19:28:16 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「以上、Two winsでしたー!って、 ほんとはなるはずだったんだけど、 実は!もう一曲演らせてもらえる ことになりました!」 [ そういって祐樹がにかっと笑うと、 観客が沸いた。裕也の方を見ると、 困ったように眉尻を下げて笑っていた。] 「ほんとに急に決まったから、 あんまり練習できてなくてさ、 まだまだ、荒削りだし、 間違えたりとかもするかもだけど それ含めて、聞いてくれたら嬉しい。 これが今のWTwo winsWだからさ。」 [ 「な?」と振り向いてこちらを見る。 ぱちり、目を瞬かせてから、数度うなずいた。 メンバー紹介はしないでくれと頼んだのは己だ。 祐樹にどんな意図があったのかはわからない。 だが、否定もしなかった。] (236) 2020/06/19(Fri) 19:28:33 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「イチで、ほんとによかった」 [ 切ったマイクが拾わない声。 だがそれは確かに届く。 ああ、 やめてくれ。 だっておれは───] (238) 2020/06/19(Fri) 19:29:15 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ この曲を初めてきいたとき、 なんてかっこいいんだろうと思った。 その歌詞を訳してみたとき、 人生の岐路に立ったときに きっともう一度聞こうとおもった。 聞いてほしいとおもった。 伝えたいと、思ったから 演りたいと言ったのだ。 それが、どうしてだろう。 今響くこの曲が自分に問いかけてくるのだ。] (266) 2020/06/19(Fri) 23:10:01 |
【人】 転校生 矢川 誠壱W自分をごまかしては 曲がっていくんだ。 もう限界なのかな。W W強いフリをして自分を誤魔化して そうやって作り上げたものは 心を空っぽにしていくだろ。W [ ごまかして いたのか? 強いフリばかりして?] (268) 2020/06/19(Fri) 23:10:25 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ どうして、あのとき] 「比べた 数が 痛みだす 消えない弱さや傷さえも」 [ おれは ] 「全ては僕を作り出す」 [ おれは? ] Wおれの名前はW (269) 2020/06/19(Fri) 23:10:53 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ 客席を見た。さっき歓声をとめた 女の子たちと目があった。 この子たちにとって、おれはきっと個人で。 それは、怖いこと、なんだけど。 ふ、と柔く微笑んでみる。 ひとりの女の子の顔が綻んだ。 自分を守るために個人であることを 拒絶するのは、それを見てくれている 人たちのことも、否定することに なるのかもしれないな、と思った。 顔を上げる。 照明の向こう側は、光が強くて見えない。 ただ、きっとそこにいるんだろう。 否定して、ごめん。 ほんとは、おれが一番逃げてるのかも しれないのにさ、偉そうに言ってごめん。] (274) 2020/06/19(Fri) 23:14:03 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ ───記憶に、残りたいよ。 もう誤魔化さないでさ。] っ ─── [ ボーカルのがなりが響く。 勢いだけで切り開いていく。 コーラスを、重ねる。] (279) 2020/06/19(Fri) 23:20:48 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ ああ 気づくのが遅いんだよな。 だってもう、終わってしまうじゃないか。 まだ もうすこしここにいたい。 まだ、おわってほしくない。 おれは まだ、] WMy Name isW [ 息遣いが、無音に響く。] (280) 2020/06/19(Fri) 23:21:11 |
【人】 転校生 矢川 誠壱[ そして、静寂を挟んで、沸いた。 満面の笑みのボーカルがこちらを向く。] 「やっぱメンバーだけ紹介しとく! ギターの裕也!ドラムの智! ベースのイチ!んで、祐樹でした! Two winsはまだ終わらねーからな! ありがとうございました!!」 [ 半ば雑な紹介を最後に持ってきて、 そうして、WTwo winsWの 文化祭のステージは幕を閉じた。 袖に引っ込んで。瞬間、深いため息が そして、目頭が熱くなった。] (281) 2020/06/19(Fri) 23:21:34 |
【人】 転校生 矢川 誠壱「ごめん、やっぱさ、紹介してえよ だって新しいメンバー入ったのにさ なんも言わないままなんて寂しいよ」 [ と、祐樹が眉尻を下げた。] ──────大丈夫、 …ありがと、みんな [ そう小さくお礼を言って。 一度顔を洗おうと袖を出ようと。 そのとき、ステージを挟んで向こう側。 これから出番となる人が立つはずのそこに、 見知った顔があるものだから。]] (282) 2020/06/19(Fri) 23:21:53 |
【人】 転校生 矢川 誠壱え、 [ 小さく溢れる。 そのまま、ステージ近くまで足を進め。 暗い。暗いけれど、見える。 なにか、言ったのはわかったが、 その言葉までは分からなくて。 ただ、その左手が上がって、 こちらに示すのは、希望だから。 ───淡い期待。 深く頷いて、こちらもサムズアップした。 ───届いたのだろうか。彼に。 もしそうならいいのに、と淡い期待を抱いて。]* (283) 2020/06/19(Fri) 23:22:12 |
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