【赤】 一匹狼 “楓”[彼女はこちらを見上げてきたかと思えば>>*12、不意にシャツの裾を掴んできた。>>*13 怯えるような表情も相まって抱き締めたい衝動に駆られつつ、それを抑え込んで彼女の言葉に耳を傾ける。 『いつも突然』……それは食人衝動のことなのだろうと、楓には自然と感じ取れた。 尋ねそびれた問いの答えが自然と得られた形である。 迷わず撃ってとリクエストはされたが>>*14、彼はそれを一笑に付した] 馬鹿言うな。オレが何だか忘れたか? 通らねェんだよ、おまえの可愛い牙や爪じゃ。 [楓は“堅狼”。牙や爪どころか、銀弾の銃撃を除くさまざまな物理攻撃を防ぐことができる。 かつて彼女と出会った場では、二人を含む大勢で遊戯に興じていたのだけれど──その中で狼を選んだ者たちの一部が本当に狼で、そのうえ彼の場合は種まで同じ……などという、冗談のような本当の話。] (*15) 2023/03/05(Sun) 17:17:14 |
【赤】 一匹狼 “楓”撃つまでもねェんだよ。 おまえにオレは殺せない。 [そう告げるとき、自然と視線は逸れた。 楓が意図的に伏せた事実があるのだ。 彼が鋼鉄の防御力を得られるのは人狼の姿に転じたときだけ。人間の姿でいる限り、負傷は防げない。 その上、姿を変えていられる時間は月齢に応じた。 満月の日なら半日程度だが、新月の日は1秒たりとも不可能。半月なら満月の更に半分ぐらいといったところ。 時間帯には不思議と制限は無いのだが。 彼の言動は、彼女を殺す気が無いという意思の現れではある。 一方で、もしそのような局面になったときには彼が一方的に殺す側になりえるということでもあった] (*16) 2023/03/05(Sun) 17:17:29 |
【赤】 一匹狼 “楓”[彼にはひとつ、長い間気になり続けていることがある。 “美味しそうに見えるものは、本当に美味しいのか” もしそれが見た目だけの話で、味に差異が無いのなら、美味しそうなヒトを襲う可能性を極端に恐れる必要は無くなる。 けれどもし、実際に美味しいのなら── 知ったが最後、二度と戻れない道に足を踏み入れることになるだろう。 確かめずにいることが幸福なのか、確かめてみたほうがいいのか。彼は前者と思い続けているが、果たして]** (*17) 2023/03/05(Sun) 17:18:10 |
【赤】 一匹狼 “楓”[楓もまた“狼”たちの群れからは離れて暮らす身。狼たちが囁き交わす声を聞いたことは何度もあるが、その全てに答えずにいる。 縄張り争いらしきものに巻き込まれかけたことはあるが、関わる意志が楓に無いことに気付けば、向こうも深追いはしないものだった。 当然、狼としての名もない──いや、今は“楓”がそれに相当するのだろうか? 遊戯の中で使った名なのだが。 ゆえに楓の狼としての戦闘経験はそのまま、食事を兼ねて人間を襲った経験に直結する。その過程で自分の能力も知るに至ったのだ。種の名前を知ったのは奇しくも遊戯でだったが。 そして、不意打ちで即死なんてことさえなければどんな相手も恐れるに足らない……と、楓は思っていた。銃使い以外なら、の話だが] (*20) 2023/03/05(Sun) 18:46:56 |
【人】 一匹狼 “楓”[しばらく窓からぼんやりと外を見ていたが、ふと、なんとなく寝室から出て螺旋階段を降りる。 そのまま玄関から出て、改めて日差しの眩しさに目を細めた。 正面に生える木に目を留め、歩み寄って木陰に入ってみると、広く伸びた枝葉が日差しをほどよく遮ってくれる。 しばらくはそのまま芝生に座り込み、幹に凭れかかっていた。けれどもう少しその場にいたい気がして、芝生に寝転がる。 組んだ両腕を枕代わりにして、枝葉の隙間から空を見上げた。 夜に窓の外を見たときにはすっぽり闇に包み込まれたかのように思えたロッジの周囲も>>0:372、昼間は特に違和感が無い] (79) 2023/03/05(Sun) 22:01:14 |
【赤】 一匹狼 “楓”[頬を撫でられた。>>*25 されたことは、おそらくそれだけ……だと、思う。>>*26 髪らしき感触を首のあたりで感じた気はしても、髪の長い彼女のこと、正確な姿勢まで推測するのは難しい。 重い瞼を持ち上げてみると、そこには呆然とする彼女がいて] どうした……椿。大丈夫か……? [努めて冷静に声をかけたつもりだったが、彼の声音には幾分か焦りや不安が滲んでいた。 彼女が何をしようとしていたかなんて、正確なところはわからない。 けれど眠っている間に頬に触れられるというのは、意味合いが何であるにしろ、自然と心臓が暴れ出すような出来事だった。 それでも彼女の表情を見れば、楓は自分のことよりもまず、彼女を気遣いたくなった。そういう性分なのだろう。かつて共に過ごした日々でも基本的には周りの人たちの心情のほうを優先していたから]** (*27) 2023/03/05(Sun) 23:02:17 |
【赤】 一匹狼 “楓”[立ち上がった直後、楓は彼女の頭に手を伸ばして、ぽんと軽く触れた。 何か声をかけようかとも思ったのだが、言葉は出て来なかった。 何をしようとしたにしろ、望まないことをやりかけたのだろう。 彼女の表情を見ていれば、簡単に推測できることだった。 けれど負傷もせず未遂に終わった以上、咎める気は起きなかったのだ。 それが今の仕草だけで通じるものかはわからなかったが。 伝わらないからといって楓が気に病むことこそないだろうけれど、伝わったなら安堵するだろう]** (*29) 2023/03/06(Mon) 8:20:05 |
一匹狼 “楓”は、メモを貼った。 (a11) 2023/03/06(Mon) 10:01:05 |
一匹狼 “楓”は、メモを貼った。 (a13) 2023/03/06(Mon) 15:28:25 |
【赤】 一匹狼 “楓”[それが正しいと思う自分もいた。 人間として生きていても、他の生命を犠牲にするのだから。人間でなくなった以上、犠牲にする生命が人間であっても構わないはず。 それに、人間でなくなったとしたって生きる権利はあるはずなのだ。 でなければおかしなことになる。 人間として生きる間に生命の危機が訪れ、必死に抵抗した結果、危機は去り、彼は人狼となった。 人狼となっては生きてならないのなら、危機に抵抗しなければよかったことになる。 だが、それでは、人間であっても命を奪われかけたとき無抵抗に死ぬのが正しいことになってしまう。 生きようとした選択が誤りになってしまう。 おかしいではないか。 人間でなくなったら生きてはいけないというなら、人間ならば生きていていいはず、生きようとすることが正しいはずなのに。 どうしても納得ができない。 それだって、大きな思いなのだけれど] (*35) 2023/03/06(Mon) 16:34:40 |
【赤】 一匹狼 “楓”[開くとは思っていなかった扉が開いて、楓は戸惑って顔を背けた。>>*37 似ている。>>*39 そう表現されて横目で彼女を見て、少し考え込んで、また目を逸らす] 在るべき場所、…… [人間だった頃なら、疑いの余地もなくそうだっただろう。 けれど人間でなくなった今は? そこに留まりたいがために多数の人間を犠牲にしてきた今は? それでもそこは在るべき場所なのだろうか。 そうではなくなったとわかっているからこそ、自分が変わってしまったことを隠し、重ね続ける罪を隠し、必死にしがみついている。 それこそが現実なのではないか] (*40) 2023/03/06(Mon) 21:44:46 |
【赤】 一匹狼 “楓”……椿……、オレはさ。 夢を見たんだ。 人狼殺して生き延びた、その夜に。 [楓はおもむろに口を開き、吐息のような声で語った。視線は逸らしたまま] 狼になって、身近な人たちを喰う夢だ。 友達も、惚れた女も、親方も、仕事仲間も。 誰喰っても美味くて、こんな美味いものは初めてだって、 一人も残さないぐらいの勢いで喰い続ける夢。 それで夢中になってるうちに銃声が聞こえて、 目の前が真っ暗になって……目が覚めた。 (*41) 2023/03/06(Mon) 21:45:00 |
【赤】 一匹狼 “楓”最悪な夢だった。……けど、 [一度言葉を切って、息を小さく吸い、ゆっくり吐き出す。それから静かに言葉を続けた] 本当に最悪だったのはその後…… 故郷に帰って、実際にみんなに会ってからだ。 誰を見ても食欲しか感じられなかった。 みんな本当に美味そうだったよ、 すぐにでも食べたいぐらいに。 それで確信した。いつかオレは“やる”んだ、って…… [悪夢はただの夢ではなくて、予知夢にも近いもの。>>0:431 身近な人たちに抱いていたどんな感情も全て“食べたい”に侵蝕されていた。 あの瞬間に何もかも失った気がしたのに、なぜ、まだそこにしがみついているのだろう] (*42) 2023/03/06(Mon) 21:45:22 |
【赤】 一匹狼 “楓”……誰も食べたくなかった。 そんなことしたらオレも死ぬ、って 思ったのもあるし…… みんな、殺したくない人たちだったから。 だからせめて、腹が減ってなけりゃ 喰いたい気持ちも落ち着くんじゃないかって…… ……それが最初なんだよ。 [人狼から受けた傷の治療を理由に休暇をもらって、そのまま旅に出た。そして旅先で飢えを満たして、もう一度故郷へ戻り──その方法で御せると知ったのだ。 それからずっと続けている生活は、本当に……“在るべき場所”に留まるためのものなのか? 自分の正体が、やってきたことが知られたら殺される。>>*11 そうまで思っていて、本当にそこが在るべき場所なのか。]** (*43) 2023/03/06(Mon) 21:45:41 |
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