【人】 一匹狼 “楓”[椿の姿を見つけて声をかけた後、階段を昇り2階から屋根裏へ向かった。 寝室へは随分長いこと入っていなかったような錯覚に囚われた。 屋根裏で着替えを探してはみたが、あまり変わったものを身につける気にもならず、選んだのはダークグレーの半袖ポロシャツと色落ちしたジーンズ。 まっすぐバスルームへと戻り、手短にシャワーを浴びた。 鏡は見なかった]** (21) 2023/03/09(Thu) 10:22:46 |
【赤】 一匹狼 “楓”[いっそ、恐ろしいのを耐えて死を選ぶべきなのだろうか。 これまで何度か思い浮かべては放り捨てている考えがまた浮かび、その度についてくる理不尽さもまた覚えた。 生きてはならない種が存在するなら、なぜ、生み出されるのか。 この世に生み出される以上は、生きていいのではないか。 全ての人に生きる権利があるのと同じように、全ての動物に生きる権利があるはずで、そうなら魔物でも化物でも呪われた獣でも同じように生きていいはずではないのか。 どうすれば希望が得られるか、いくらかでも“正しい”と言える道に近づく可能性はあるのか。その答えなど出そうにないけれど、少しでもマシな道を選びたいという思いはあった。 それが純粋に楓の心の中から出でる思いなのか、彼女の祈りが届いた結果なのか>>*6、はっきりと知れる機会は無いかもしれないが] (*8) 2023/03/09(Thu) 15:09:37 |
【人】 一匹狼 “楓”[バスルームから出ると食事の用意ができていた>>22。着替えを片づけるのは後回しにし、まっすぐにテーブルに向かった] いつもありがとな、椿。 肉は今はいいかな……、それよりパンと…… [温かい飲み物をリクエストしようとして、茶が用意されているのに気付き、席に着いて手を伸ばす。 先刻感じた独特の香気はこれらしい。物珍しげに口に運び] ……飲み物の香りじゃない気がするな……これ。 [苦手な匂いでこそないのだが、言った通りの違和感に首を傾げることになった。 そのあとはゆっくり食事の時間を過ごすだろう。この時間では朝昼兼ねたものだろうか]* (23) 2023/03/09(Thu) 15:09:56 |
【赤】 一匹狼 “楓”[のんびりとした日常風景。 今を逃したら二度と得られないかもしれない稀少なもの。 楓にとっては現実逃避でしかなくとも、もう少し楽しんでいたい気持ちもあった。 今日の夜が明ける頃には、どちらからともなく元いた場所・時間へ戻ることになるだろう。楓がそのことに気付くことはないかもしれないが]** (*9) 2023/03/09(Thu) 15:10:36 |
【赤】 一匹狼 “楓”[共に食事をし、食事を終えてからもなんとなく場に留まり、取り止めもない話題をのんびりと交わしながら過ごした時間は、随分と長かったようだ。 合間に何度か茶を淹れ直してもらったこともあったかもしれないし、途中で食器を洗って片づけたりもしたかもしれないし、話す場所を移したこともあったかもしれないし、ずっとその場にい続けたのかもしれないが。 “二人暮らしの休日の一幕” この時間だけを切り取れば、そうも思えるものだった] (*13) 2023/03/09(Thu) 18:55:29 |
【赤】 一匹狼 “楓”[そうして昼過ぎ。これから太陽が傾いていくのだろう、けれどまだ夕暮れまで間がある頃合いになって、彼女の呟きがあった。>>*11 ずっとここにいること。 旅に出ること。 そのどちらも彼女の望みなのだろうか。 もし『一緒』を望んでくれるなら── 昨夜巡らせた思いが浮かぶ>>2:*33] 行くか? 一緒に。狼の国探しの旅。 [戯れのつもりで問い返し、彼女の様子を窺った。 今すぐここから旅立つのはあまりにも現実味が無かったが……。今二人で過ごしている時間が本当に夢なら、目覚めた後に彼女の元へ向かってみようか──時が過ぎる間に、そういう考えが楓の中に芽生えていた。 “狼の国”は言うなれば、椿と共に過ごしたあの遊戯の中で楓が作ろうとしたものだった。それが現実に作り得るものなのかどうか、探し求めてみるのも一興だろう。見つかっても見つからなくても、変わらないつもりの暮らしの中で罪を塗り重ねるより楽しい気がしていた]** (*14) 2023/03/09(Thu) 18:56:22 |
【赤】 一匹狼 “楓”[一瞬、時が止まったかのように思った。>>*17 次いで彼女の頬が上気するのを見て、思わず触れようと手を伸ばす。届くかどうか考える前に。 彼女が『一緒に』と言ってくれるのなら、縋り続けた日常を捨てたとしても、生きる意味まで消え去りはしない] 森の奥……だっけ、なんて森だ……? 迎えに行く。探してでも。 [少し前に聞いたばかりの彼女の暮らしの話を思い返した。>>*15 それを尋ねてみたくなったのも、過去に訪れた場所の近くだったりはしないかと興味が湧いたからだった。 彼は元々よく旅に出る身だ、多少行き先が不確かでも冒険するようなもの。覚えのない地名かもしれないし、探し当てるのに苦労するかもしれないが、それでも彼女の元へ行きたいと思った。 “在るべき場所”が彼女の隣かどうかなんて、もっと共に時を重ねられてから考えればいいことだ] (*18) 2023/03/09(Thu) 22:54:26 |
【赤】 一匹狼 “楓”[彼女に残された時間が少ないのかどうか、楓は思考が及んでいない。>>*17 “たましいを引き裂いた”>>1:*3 そう聞いてはいても、その細かな原理まで理解したわけではなかった。 元々、魔術に関する知識は疎いほうだ。 楓が唯一持ち合わせるのは魔導具の類に関する知識だが、それだって仕事に必要な範囲に特化されている。 だから彼女の“余命”のことなど、彼女自身が言い出さなければ知り得ないことだけれど。知ったところで思いは変わりはしないし、言動を翻しもしないだろう。 彼女は楓にとって、少し未来に存在していることになるようだが……その時間のずれは救いとなるだろうか] (*19) 2023/03/09(Thu) 22:54:45 |
【赤】 一匹狼 “楓”[彼女を抱き寄せてみれば、どうしても浮かぶ思いがある。 単なる食欲とは似ていても違い、 他の人に抱いたのとも似ていても違う、 彼女にだけ抱く思い。 彼女の死を望んでいない。 殺したいとは思わない。 それなのに“食べたい”と感じる。 この思いがなんなのか、彼は未だに掴めてはいない。 けれど突き詰めずにおくことにした。 彼女が特別な存在なのは確かなことだから] (*28) 2023/03/10(Fri) 16:12:33 |
【赤】 一匹狼 “楓”[微笑みを浮かべて静かな囁きを返し、彼女に唇を寄せた。 今度は傷つけるためでなく、唇を重ね合わせるために。 こうして穏やかに触れ合ううち、時も流れていくだろうか]** (*30) 2023/03/10(Fri) 16:14:21 |
【赤】 一匹狼 “楓”[目覚めたのは使い慣れたベッドの中。 腕の中にあったのはカナリアの抱き枕だった] 椿……! [思わず飛び起き、名を呼んで辺りを見回す。 簡単に目が行き届く自室の中には、当然ながら彼女の姿は無い。 目覚める前とは違い、飢えは感じなかった。 月齢は上弦の次の日ぐらいだろうか。 それだけで簡単に思い浮かぶ。目的を果たして旅から帰った翌日なのだと] (*34) 2023/03/10(Fri) 20:58:40 |
【赤】 一匹狼 “楓”[トースターに食パンを放り込んでベーコンと卵を焼き、合間に豆を挽き、卵を裏返し、コーヒーを淹れる。 サニーサイドアップは好物だけれど、食べられるのは休日だけなのだ。トーストに挟んで手早く食べてしまおうと思ったら、ターンオーバーのほうが食べやすいから。 だからこれは“いつも通りの朝食”。 なのに、味気なく感じられて仕方がなかった。 こうしていつも通りの日常に戻ったかのようだったけれど、これはもう“変わらない日々の繰り返し”ではない。この日々を終わらせて、旅に出るのだから] (*36) 2023/03/10(Fri) 20:59:11 |
【赤】 一匹狼 “楓”[この暮らしにしがみつくのをやめる。 そう思って職場に向かってみれば、妙な気楽さがあった。 もう、不安に駆られる必要は無いだろう。自分が重ねてきた罪が暴かれ、仲間や友達に誹られて殺される不安に。 ずっとそれが怖かったのだ。 それなのにこの暮らしに囚われていた。 彼らの記憶の中ではきっと、ずっと人間のままでいられる。そう思えば解放感すらあった。 辞意を伝え、途中になっていた仕事を片づけていく合間、目的地を定めるのに調べ物を繰り返した。全ての仕事を終えて最後の給金を受け取るのと、彼女が近くと言った村を地図上に見つけたのとは同じ頃だった] (*37) 2023/03/10(Fri) 20:59:26 |
【赤】 一匹狼 “楓”[その村へたどり着くまでには、夢から覚めた後それなりの月日が経ってしまったけれど。 果たして彼は彼女の時間に追いついただろうか、 それとも追い越してしまっただろうか] (*38) 2023/03/10(Fri) 20:59:48 |
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