【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ―― 現在・医務室 ―― [ 普段なら慣れた調子で運ぶ世話役も今は混乱の最中か 或いは手が空いていても、今ばかりは 特に不吉と言われる『塔』には どうしても関わりたくなかったのかもしれない。 ふわりと覚醒した意識に最初に感じたのは 消毒液のかおりと話し声。 運ばれた先が普段と違っても気にする事も無い。 気付いたら違う場所にいるのなんて 意識が無い時には勿論、意識がある時までも、 日常的にありふれているから戸惑う事も無い。 寝たふりをしたいわけじゃないけれど まだ目の前が真っ白で眩しくて、目を開けられなくて。 目を閉じたままで声だけ聴いていた。 居るのは多分ヒナギクと、恐らく『教皇』か。 促されれば反応しない事はあれど拒む事はそんなにない。 彼のお茶の誘いを受ける返事をしたのはきっと ぼく自身ではなく付添いの職員だけれど。 彼の名前も聞いたことはある筈だ。 多分考えれば思い出せる程度に記憶はしている。 記憶している事を引き出すのが苦手なだけで。 普段と違うどこかぴりぴりとした騒がしさが遠く聞こえる 何時か聞いた遠雷の音みたいだと思ったが ほんものの遠雷の轟すら 耳を澄ませば聞こえたかもしれない。 ] (87) 2022/12/18(Sun) 16:41:53 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ 話し声がきこえても 会話に割り込む積極性の持ち合わせも無ければ なにもかもに関心も無くて、 ふたりの話題を詮索しようとも思わない。 まるで他人事に、目を閉じた侭ふたりの会話を 普段の『騒がしい』と同じに聞き流しながら 頭の中を整理しようとする。 ■■■■■■がかえってきた。 誰が? 頭の処理が追いつかない。 自分の感情が無さ過ぎて、魂に刻まれた衝動を 自分の感情と思い込むふしがあるから ■■■■が何者であるかはっきりとわかっている。 知っていると魂が叫ぶまま知っていると疑う余地はなく けれど引き出すのが苦手なだけじゃない何かが思考を阻む。 あれは■■■■■でありながら本物の■■■■だ。 ちがう■■■■■ではない。けれど■■■■■で。 誰それ、知らない。知っている。知らないのに。 知らない筈が無いと喚く認識への 齟齬に目が廻るから投げ出した。 確か、望むものを選べと言っていた。 どうせ叶えない癖に。両極端な二択だった。 ] (88) 2022/12/18(Sun) 16:45:20 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ >>1:9“ さあ今度こそ、皆で幸せな世界を作ろう ” “ こんな世界は、壊してしまおう ” ねぇ■■■■■■ 幸せだった瞬間は確かに存在したけれど でもね、■■■■■、 あなたの望む幸せが■■■■■にはずっと堪え難かった。 幸せな 世界の『繰り返し』もこの世界の崩壊も 興味が無いんだ、どうせ同じ事だから。 ] (89) 2022/12/18(Sun) 16:46:09 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ どうでもいい。だからこそ。 あのとき みたいに数で決まるのならせめて無関心のままでなく。 あげるよ、きみたちに。 だって、ぼくはいらないんだ。 きっと叶えてくれないけれど それでも尚、きみたちがあきらめないのなら けど、どっちに? 浮かんだ顔はヒナギク一人なのに 知らない二人分の名前が浮かんだ。 けれど上手く思い出せなくて ……いいや、そもそも知らない気もする。 呼べない誰かの姿を探してゆっくりと目を開いた。 まだぼやけた視界にゆっくり瞬きを繰り返しながら考える。 ああ、探さなきゃ。 いや、ずっと傍に居た? また きみを酷く裏切ってしまったような訳の分からない罪悪感に襲われたけど あの頃も、今も、ぼくは不器用で その感情の表し方すら知らなかった。* ] (90) 2022/12/18(Sun) 17:03:58 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ―― 医務室 ―― [ >>213手を借りて体を起こす。 噛み砕くように説明してくれるその言葉を 聞いていたなんて遮ることはせず、 ぼくのために紡ぐ言葉を噛み締める様に聞いていた。 会いに行きたい人はいるかときみは問う。 ぼくにきみより深くかかわった相手などいないのに。 ぼくの世話をしていた職員は確かに存在するけれど 仕事として順に受け持っていただけの存在だ。 現にいまは投げ出している、その程度の縁だった。 けど、きみはぼくとはちがうでしょう? ] ヒナギクは……? いかなくて、いいの? [ のろのろと首を振ってから、問い返す。 別れを告げる為でなく、望みをかなえる為に。 会いに行きたいひとはいるんじゃないだろうか。 ぼくの知るきみはそんなひとだった。 誰かの為にがんばりすぎてしまうひと。 何時だって、誰かの為に輝いていた。 それが自分のしたい事だと云うみたいに ] (420) 2022/12/19(Mon) 22:20:05 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ ぼくの答えは決まっていた。 きみの望むままに。 きっときみは世界を護りたいと答えるだろう。 けれどふと思う。 きみの望んだとおりに護られた世界は果たして きみにとって昨日までと変わらない輝かしい世界だろうか。 既に崩壊が始まり掛けた世界を知って生き延び 悪戯に怯えたその他大勢たちのあいだに すべて証持ちが集まった所為で 今も滅びに向かっていると広まったとしたら…? いつかの誰かみたいに 数の暴力に殺されるのは こんどはきみなんじゃないか、って。 ■■■■■がぼくらが望んだ通りに叶えるとは思えない けれど、もし叶ったら? 叶ってしまったら? 心優しい彼女が守ろうとしたものが 彼女に牙をむく残酷な現実は容易く想像できてしまって >>1:9『今度こそ』と■■が言ったのを聞いた。 やり直せば良いと思ってる■■■■は きっと彼女個人を救ったりしない。 ] (421) 2022/12/19(Mon) 22:21:44 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ 選択には責任が伴う 喩え理不尽に突き付けられる二択でも。 それなのにその責任を彼女に委ねることは 決して彼女の為の優しさじゃない。 だから、きみの意思なんかしらない。 きみは他人にやさしすぎて すぐじぶんを蔑ろにしてしまうから。 きみに呼ばれた名前を頭の中で反芻して。 自分に誓ったことを思い出す。 きみが望んでも、望まなくとも ほかでもないぼく自身のために きみを攫うときめたんだ。 閉じ込めてでも、きみに向けられる悪意から覆い隠すと。 たとえそれできみの笑顔が陰ってしまっても しんでしまうより、ずっといい。 ] (422) 2022/12/19(Mon) 22:23:04 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラいってきなよ。ぼくはへいきだから。 [ たくさん頑張って、足掻いて、 そして叶わないと良い。 そしたら諦めもつくでしょう? 絶望して嘆くきみのとなりで きみはできるだけのことはしたよって慰めるんだ。 それはとてもすてきなことのようにおもえた。 ああ、どうしよう。 こんな醜い感情、きみにだけは決してみせられない。* ] (423) 2022/12/19(Mon) 22:23:27 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ きみの笑顔の眩さがぼくのこころのなかの悪意を 焼き尽くしてくれたらいいのに。 望みは大体叶わない。 いつの間にか君に馴染んだ笑顔も 元気付けるみたいな明るい声も 握り締めてくれる手の温もりも きみから与えられるなにもかもに きっと満たされ過ぎてしまった。 あとは、崩れるだけだ。 ほら、崩壊の音がする。 ] (458) 2022/12/19(Mon) 23:41:25 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ どっちだっていい。 世界が続いても、滅んでも、 きみさえ無事ならそれで良い。 けれど世界が続く事は祈れなくて けれど世界が続かないことを望んでいると 絶対に誰にも知られる訳にはいかなくて 結局ふりだしにもどった。 今度は、どうでもいいからじゃなくて それしか選べないからこそ。 ] かくさなきゃ…… [ きみが戻って来て、どうするかと問われたら? ぼくはきっと『疑われた』と身構えてしまうだろう。 だってうしろめたいことをかんがえている。 ぼくは上手く答えられるだろうか。 練習をしようと思った。 きみが教えてくれた歌を覚える時みたいに、繰り返し。 ] (459) 2022/12/19(Mon) 23:42:44 |
【人】 ]Y『 塔 』 プロセラ[ きみが戻ってくるこの場所から逃げ出した。 すこしでもきみとの再会までの時間を稼ぐために。 どこへ?なんてわからないまま、歩き出す。 ■■■■への返事なんか考えてなかった。 何も答えないつもりでいた。 何も答えられないから。 尋ねに来たならきっとそれからも逃げ出しただろう。 偽りしか答えられず 偽りすら吐きだせないのならば 何を問われようとも なにもかも不要な事で なにもかも意味が無かった。 言葉を殺して、ただ息をする。 強いられたのはそれだけだ。 選べと強要されても従う道理はなかった。 ひとめみてあれが■■■だと頭で理解できたけれど 心はずっと、その思考を否定していた。* ] (461) 2022/12/19(Mon) 23:43:51 |
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