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【赤】 灯守り 冬至[ 暫しの後、もう一度穏やかな笑みを見れば ] あなたは立派な灯守りです 私よりも、よほど。 [ 手近な場所へ腰を下ろせば 隣りを手で示して 「年寄りの話は長いですよ。大丈夫ですか?」 なんて そんな防衛線を引いたのを覚えている ] [ それからまた少しの間 夕空を見上げた ] (*109) 2022/01/30(Sun) 2:57:20 |
【赤】 灯守り 冬至[ それは 結論も 定義も 意図も無い ふっと始めた ただただとりとめのない昔語り ] 私 生まれつきへんてこな力を持っていて そのせいか灯りがすぐに濁ってたんです。 不思議な力を持っているなんて父も母も思いもしなくて 私自身明確に理解できていた訳でも無いから 当然、自分のことを上手く説明できる訳でも無くて だから当時は"病弱"と片付けられて 灯りは弱るばかりで だから早死にするだろうと 父と母にはとても苦労をかけていました。 [ どんな力なのか。 訊かれても 訊かれずとも 掻い摘んで話して ] (*110) 2022/01/30(Sun) 2:57:41 |
【赤】 灯守り 冬至あの日、 ――晴れた日でした 冬至域の冬の晴れは本当に珍しくて 私の調子も良かったから 両親が散歩に行こうって 外に連れていってくれました ……。 でも 途中、 隣りを歩いていた父が急に倒れました。 突然すぎて何がなんだかわからなかったけど 父の灯りは何時の間にか消えていて 母は父に縋って ただ泣くばかりで 私はただ、それを見ているしか出来なくて だから 思ったんです 死なないでほしい、 戻って来てほしいって。 多分そんなことを (*111) 2022/01/30(Sun) 2:57:58 |
【赤】 灯守り 冬至父の灯りは元に戻りました 一度は死んだ筈なのに 母も私も それを知っていたのに。 ……。 これは 後になって雪姫様から―― 先代の冬至から聴いた話ですけど その日 灯宮に送るはずの全ての灯りが消えて 新たにともる筈の灯りが全て消えたそうです すごいですよね それが私の"病弱"の正体でした [ 小さな笑いを 見上げる夕空にこぼして ] (*112) 2022/01/30(Sun) 2:58:18 |
【赤】 灯守り 冬至それから少しして、 先代と蛍が家にやって来て 私は領域で二人と暮らし始めました。 二人とも 冬至域の英雄って呼ばれてて 今も文献に残るくらい凄い人達なんですけど すごく良くしてくれて 本当の両親みたいに育ててくれました 二人が力の使い方を教えてくれて 灯りも いくらも澱みが薄らいで 本当に、感謝しかありません だから 役に立ちたい 力になれることがあるなら 二人の為ならなんだってするつもりでした (*113) 2022/01/30(Sun) 2:58:39 |
【赤】 灯守り 冬至先代が亡くなったのは 私が領域で暮らし始めて 三…四年くらい経った頃です 先代は強すぎるくらい 強い人でした だから 私たちが魂の限界を迎えていたことに気付けたのは 先代が倒れた それぐらいぎりぎりの時でした 冬至の能力を使い続けた事が原因だと 灯守りという立場も 英雄である事も 知らず知らず重荷になっていて 限界だったんです 枯草は自分が灯守りを継ぐと言いましたが でも 先代はそれを頑なに拒否していて ――…だから私が、立候補しました 私なら その能力を使って灯りが濁っても 其の澱みを払う能力があるから大丈夫だと伝えました 形だけの灯守りです 二人が居れば 大丈夫だと思いました だから先代も 枯草も 受け入れてくれました (*114) 2022/01/30(Sun) 2:59:05 |
【赤】 灯守り 冬至不幸せを 幸せに ――そうして 先代の灯りは消えました。 結果は 最悪の結末でした 私は先代を殺しただけじゃない 枯草の心も 深く ………深く傷つけた 何もしない方が余程幸せな終わりだったと 誰がどう見ても 明らかなほどに。 どうしてあんな事をしたのか あんな事さえしなければ少なくとも 少なくとも 枯草を追い詰めることはなかった (*116) 2022/01/30(Sun) 2:59:42 |
【赤】 灯守り 冬至[ 彼女は口にした。 本当は今が 辛かったのだと。 普通に過ごしたい 枯草と 私と 家族のように生きたい 枯草と同じように老いながら共に生きて 逝きたいと その願いを叶える為に 彼女の不幸を 幸せに変えた。 ――違ったのだ。 何もかも。 冬至の能力なんて使わずともわかった 彼女の灯りが消えた時 聡明な只人は私より早く気付いた 或いは彼女さえ 最期まで気付かなかった本当の願いに ] (*117) 2022/01/30(Sun) 3:00:05 |
【赤】 灯守り 冬至[ ――ただ、死にたかったのだ。 私達との未来よりもこの生から解放されたかった 生きている事自体が不幸だった だからそうなった。 だから 誰よりも傍に居て 誰よりも彼女の幸せを願った彼は 愚かな私が愚かな力を使うのをやめさせた 自分との未来ではなく 死こそを希望と見出していた そんな現実を突きつけられて尚 彼は、私が犯そうとした罪を止めた そんな人だった ] (*118) 2022/01/30(Sun) 3:00:24 |
【赤】 灯守り 冬至……どうすれば良かったのか 使わなければ良かった。 そうすれば枯草を二重に苦しめなかった 大切な人を殺した存在を ずっと、文句も言わずに支え続けて どんな想いで、仇と過ごしていたのか 私はあの二人を 不幸にしただけだった (*119) 2022/01/30(Sun) 3:00:36 |
【赤】 灯守り 冬至[ 気付けば 手が震えていた 握りしめた拳を反対の手で抑えて ――目立たぬよう 細い 長い息を吐いた ] ……。 何をすれば 償えるのか そんなことを 今も、考えることがあります ――…なんて。 やっぱりこれ お礼にはなりませんね? [ 暫くぶりに見上げた彼に 「すみません」と微笑む事は 容易かった。 ] (*120) 2022/01/30(Sun) 3:01:32 |
【赤】 灯守り 冬至[ 苦言――ただの願い。 あの時 もっと話していたら 途中ではぐらかさずに、 蛍の最期までを きちんと話せば ひょっとして何かが変わったのだろうか 否。 変わることはない 彼は優しすぎた。 身を滅ぼすと解っていても 其処に心があれば 優しく在る人だ ] (*121) 2022/01/30(Sun) 3:01:53 |
【人】 灯守り 冬至――冬から春へ [ 嘗て 冬至域は雪と共に生きていた 雪の無い日は無く 冬には家を呑み込まんと堆く聳えた 雪に覆われ 雪に阻まれ 雪に囲われ 雪の内に数多の大切なものが失われた 民は、雪を疎んでいた ] (298) 2022/01/30(Sun) 23:20:51 |
【人】 灯守り 冬至[ 凍え行く民の心に 二人の若者が立ち上がる 雪に覆われ 阻まれ 囲われ 数多の大切なものが失われる雪の内 雪の姫は数多の灯に寄り添った 民の陽となり、民はその灯に希望を見る 希望に降りかかる闇を 傍らの剣士が悉く斬り払う 彼女達は 民達の陽となった ] (299) 2022/01/30(Sun) 23:20:56 |
【人】 灯守り 冬至[ 或る年の春のこと 常に雪と共に在る冬至域から 掛け値無く、一切の雪が消えた 夢でも見ていたかのように 夢から覚めたかのように 冬至域に 春の大地が広がった ] (300) 2022/01/30(Sun) 23:21:01 |
【人】 灯守り 冬至[ 其れは毎年訪れた 前触れはなく 理由などわからず けれど、必ず一度 雪が消えた。 民は其れを 神の恵みと称した ] (301) 2022/01/30(Sun) 23:21:06 |
【人】 灯守り 冬至[ 天は常夜 世の闇を満たす常夜の天 ] [ 地に満ちる白雪 遍く罪過を覆いたり ] [ 見渡す限りに遮るものの無い 薄暗がりの織りなす地平線 ] [ 昇る陽の無い世界に 少女は立つ ] (303) 2022/01/30(Sun) 23:21:27 |
【人】 灯守り 冬至* 空の盃 * 渦巻く暗澹 澱む罅 降り来たる暗夜 遠き彼方に明星 * 蜻蛉 蠍 狼 烏 蝿 驢馬 梟 澱み塗れた此の闇夜 * 災禍の夜 罪過の夜 呵責の夜を寄る辺無き夜を 満たせ此の夜へ盃一杯 こんこんと * (305) 2022/01/30(Sun) 23:21:44 |
【人】 灯守り 冬至* 古今今昔 去就の星夜 去来せし月夜 * 栄枯興亡 彼我の晴雨 貴賤 功罪 清濁の万象 * 遍く果てに利害無き吉凶を * 苦楽も悲喜も裏表 天地因果の死生は輪廻也 * * (306) 2022/01/30(Sun) 23:21:52 |
【人】 灯守り 冬至* 満たし零るは瑕疵の星 其の息吹に堕つるは誰が翳星 * 星やこんこん 雪やこん * * 満ちて 散りて * * ――――翳よ明け * (307) 2022/01/30(Sun) 23:21:58 |
【赤】 灯守り 冬至――…そうですね。 [ 小さく笑って また月を見る。 このひと時が 続いてほしい そんな叶わぬ願いを 天にとかしながら ] * (*151) 2022/01/30(Sun) 23:59:32 |
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