【赤】 「怪人」 ファントム好きに動いていい、と彼女は言う。 ――本心を言うと、このままぬるま湯のような快楽に浸っていたい思いもある。 けれど、もっと深く身体を溶け合わせたい欲求もあった。 だから彼女の言葉には、明確には答えず頬への口付けを返して、それからゆっくりと腰を引いていく。 存分に時間をかけて、先端が抜けてしまいそうな程腰を引いてから、同じ時間をかけてまた彼女の中へと埋めていく。 最奥にたどり着いたら、また腰を引いて、先端が抜けそうになり、ゆっくりと押し込んで、最奥を押し上げる。 また腰を引いて――繰り返し。 とても穏やかで、緩やかな交わり。 (*53) 2022/11/29(Tue) 22:46:30 |
【赤】 「怪人」 ファントムおもむろ、彼女を両手で強く抱き留める。 自分と、彼女の身体を密着させる。 彼女の体温を、もっと身近に感じていたかったから。 「リリー…。」 熱に浮かされた声。 彼女の暖かさに、すっかり心地よさを覚えてしまっている。 ほとんど無意識に、唇を重ねた。 舌を絡めて、深い口付け。 その間も、肉樹は彼女の中で緩やかに往復する。 徐々に、腰の奥深くから熱が滾ってくる。 彼女の中を往復するごとに、少しずつ、少しずつ。 肉樹が彼女の中で跳ねて、その時が近い事を彼女に伝える。 そうして、先端が彼女の最奥を突いた頃――白濁した熱の塊が、彼女の中に注がれた。 (*54) 2022/11/29(Tue) 22:46:45 |
【赤】 「怪人」 ファントム――身体が硬直して、抱き留めた腕により一層の力が籠る。 数十秒ほどかけて彼女の中に白濁は注がれて、それからようやく弛緩した。 そっと彼女の前髪を搔き上げて、額へ口づけをする。 自分を受け入れてくれた彼女を労う様に。 ――けれど、行為はそこで終わりではない。 腰が、律動を再開する。 決して荒くなることのない、穏やかな動き。 「――君を、私のものにする。 なら、一度で済むはずないだろう?」 またすぐに熱は込み上げて、迷うことなく彼女の中へ注がれていった。 何度も、何度も、彼女がすっかり疲れ果てて、受け止めきれなくなるまで。* (*55) 2022/11/29(Tue) 22:46:52 |
【人】 「怪人」 ファントムーーその魂は、いつも星のよく見える海岸に立ちつくしている。 その髪の色と同じ、青く星の瞬く夜空を見上げ続ける。 「しばらくだね。」 彼女と初めて会った時、彼女には記憶が無かった。 生前の自分に酷く嫌悪感を持つ魂は、そうなりやすい。 思い出したくもない、というものだ。 けれど、彼女はこうも言っていた。 『自分のことは覚えていないけれど、一つだけ心残りがある。 その為に、主の御許に昇らないのだ。』と。 「そんなまさか、と。 頭の片隅にも置いていなかったんだが、あとになって考えると、あまりにも君の話と重なる事が多くてね。 色々と調べたんだよ。」 (45) 2022/11/30(Wed) 14:15:40 |
【人】 「怪人」 ファントム「君が自分の命より大切にしていたリリーは無事だ。 今は母の呪縛から解き放たれて、自由に舞い踊っている。 だから、君はもう神の御許で待っていてあげてほしい。 ーーーさぁ、行こうか。 ステラ。」 (46) 2022/11/30(Wed) 14:16:07 |
【人】 「怪人」 ファントム―全てが終わって― すっかり脱力してしまった彼女の身体を、抱き留めていた腕から離して、ゆっくりとベッドへ横たえる。 ――もし、今の彼女を見てこのまま行為を続ける事を考える者もいるのかもしれないが、生憎自分はそこまで貪欲になれるタイプではない。 そっと腰を抜いて、一通り彼女の衣服を整える。 「――彼女を頼んでもいいかな? 貴方になら、任せられる。」 屋敷で仕えている魂の1人へと、彼女を託した。 リリーは彼女を知らないが、彼女はリリーを知っている。 何せリリーはイルムヒルトの友人だ、彼女が邪険にするはずはない。 ――リリーは、もしかしたら彼女にイルムヒルトの事を聞かれるかもしれないが。 「おやすみ、私の舞姫。」 再び、その額に口づけを落とす。 自由を得た彼女が、より美しい舞を魅せてくれる事を願いながら。* (53) 2022/11/30(Wed) 19:23:06 |
【人】 「怪人」 ファントム―― 後日譚/街の何処か ―― 「――いつ呼んでくれるかとわくわくしていたよ。」 彼の呼びかけに応じて、その背から声を掛ける。 礼を告げる声には、「なんの」とだけ片手を振り応じた。 (79) 2022/12/01(Thu) 0:25:19 |
【人】 「怪人」 ファントム―※―※―※―※―※―※―※―※―※―※― 「なるほど、事情は把握したよ。 ――だが、その頼みは聞けないね。」 彼の左腕を、彼の胸の中へと押し戻す。 自分は自由を愛し、迷える魂にのみ味方する。 自分のやりたいように振舞う。 誰かを救って回るなど、まっぴらごめんだ。 「それはそれとして、私も君に相談があってだね。 私の屋敷には働き手がいなくてね。 『彼女』はよくやってくれているが、ブラック領主だパワハラ仮面だなどと、心にもない事を言われてね。 私もなんとかせねばならんという訳だ。 ――それに、君とならリリーも打ち解けてくれるだろう。」 元々、自分と契約して働ている魂たちには必要最小限の労働を申し付けているだけだ。 彼らが心残りに決着をつけ、主の御許と昇るまで。 その間を取り持っているだけにすぎない。 そのせいでイルムヒルトの母には、随分無茶をさせてしまっている。 (81) 2022/12/01(Thu) 0:26:08 |
【人】 「怪人」 ファントム「――君には身体を捨て、魂となって私の元で働いて貰いたい。 労働条件は…そうだな、 『その石と魔道具をより多くの人の為に使う事』 嫌とは言うまいね?嫌と言っても連れて行く気まんまんだが。 安心しなさい、君は私と初めて出会った時から立派に 『人間』 であったよ。――早いところ、私の屋敷に帰ろう。 リリーにも、『彼女』にも君を紹介しなくては。」 くるりと踵を返して、自らの屋敷へと歩み出す。 彼がどのように選択するかはわからないが、もしついて来てくれるなら、屋敷の住人が1人増えた事だろう。* (83) 2022/12/01(Thu) 0:26:47 |
【人】 「怪人」 ファントム―それからの話― 彼女が「私だけの舞姫」となってから、随分と経つ。 彼女が舞うたび、私は舞の虜となる。 そして、私は彼女の舞に負けぬよう、声を響かせる。 立派な劇場でも豪華なステージでもない、ただの街中の路地や少し開けたスペース、そこで私達には十分だった。 ――今宵もまた、街のどこかで怪人の声が響く。 彼だけの舞姫の為に、強く、のびやかに歌い続ける。 (84) 2022/12/01(Thu) 2:35:51 |
【赤】 「怪人」 ファントム―そうして 「Bar passione」― 人気の無くなった小さなバーの中に、粘着質な音が響き、甘やかな匂いが満ちている。 見れば、ステージの上で一組の男女が立ったまま、互いに向き合って睦合っていた。 けれど、過美な衣装をまとった男と対照的に、女は衣服を身に着けておらず、ありのままを晒している。 その上に両手を後ろ手にリボンで結われて、同様に片足も高く掲げる様に戒められていた。 ――さながら、いつかの日の再現のように。 二人の密着した下腹からは水音と、より濃密な甘い匂いが漂っており、既に行為が長く行われている事を示唆していた。 (*104) 2022/12/01(Thu) 2:36:33 |
【赤】 「怪人」 ファントム――彼女の処女をもらい受けてから、毎日のように身体を重ねた。 互いに溶け合い、睦みあう穏やかな行為。 けれどその中で、彼女の中に被虐的な嗜好がある事に気付いた。 それからは時折、彼女を責めあげて屈服させるような趣向を凝らすこともあった。 今回の行為も、そうした一環だ。 「もっと思いのままに喘ぐといい。 貪欲に、私を貪るといい。」 彼女に命令する。 心の望むまま乱れていい、自分を貪っていい、と。 印による服従と、何より彼女が遠慮なく性感を感じることが出来る様に。 このような趣向をとる時は、必ず命じた。 (*105) 2022/12/01(Thu) 2:37:27 |
【赤】 「怪人」 ファントム「あの時、私の誘いを断って、ただで許してもらえると思ったかい? それとも、こうして仕置きされる事を望んだのかな?」 言葉で彼女を責め上げる。 当然そんな事を気に留めてはいないが、彼女の心を屈服させるために。 腰を大きく揺すって肉樹を強く突き込む。 隙間から、既に中に注がれていた精が漏れ出てくる。 ――彼女を、身も心も責め上げる。 度重なる行為で、彼女の身体は知り尽くしている。 性的な嗜好を始め、より強く反応する場所や、興奮する状況といった、彼女の弱点。 逆に彼女が自分を貪り、より彼女自身が達する事ができるようにも仕向けた。 奉仕の仕方や、より効率よく搾り取る方法といったものを。 (*106) 2022/12/01(Thu) 2:38:06 |
【赤】 「怪人」 ファントムおもむろ、胸の先端に歯を立てる。 僅かに痛みが伴う程度に噛んで、すぐに離す。 ひと呼吸おいて、また噛む。繰り返し。 よく見れば、先端はわずかに赤みを増していて、この行為が既に何度も行われている事がわかるだろう。 ――ここも、既に何度となく重ねた行為で、彼女を性感へ導く方法を知り尽くしている。 抱き留めていた手が片方、彼女の背を下る。 肩甲骨の間を通り、括れた腰を通り、臀部へ至って――その間に埋もれた後孔、そこには振動する梁型が埋め込まれていた。 彼女を責め上げる中で、丁寧に開き、なめし、彼女が感じる事が出来るよう育て上げた。 (*107) 2022/12/01(Thu) 2:38:58 |
【赤】 「怪人」 ファントムふいに、腰の動きが大きくなる。 肉樹が彼女の中で震えて、吐精が近い事を伝えている。 同時に胸の先端に甘噛みして、後孔の梁型を弄ぶ。 彼女を絶頂へと追いやるための動き。 そうして、先端が最奥を突きあげ――新たな白濁が、彼女の中へと注がれた。 ゆっくりと、腰を引く。 肉樹にせき止められていた白濁が溢れてくる。 呼吸は荒く、自身も随分と消耗している事を感じる。 一方的に彼女を責めるだけではない、自身も彼女へと捧げている。 「まだ、終わりじゃないよ。」 行為の続行を告げる。 彼女を責める言葉であり、息も絶え絶えな自分を奮い立たせる言葉でもある。 抱き留めていた彼女を振り向かせて、後孔に打ち込まれた梁型に手を掛けると――一息に抜き去った。 そうして、ぽっかりと空いた彼女の後孔に先端が触れる。 (*108) 2022/12/01(Thu) 2:39:40 |
【赤】 「怪人」 ファントム「今回は、見張りを置いていないんだ。」 耳元に囁く。 ステージ上からは、バーの入り口がよく見える。 いつ開くかも知れない扉を目のあたりにしながら、行為にふける、さぞ興奮するだろう。 「息を吐いて。」 一言だけ忠告する。 彼女が準備を済ませられるよう、最小限の言葉。 程なく腰が押し込まれて、すんなりと根元まで飲み込ませた。 「誰かが今の君を見たら、どう思うだろうね。」 身を隠す手は結わえられ、片足は高く掲げられて。 胸の先端は赤らんで、秘所からは散々に交わった痕が残り、尚も後孔で行為に耽る。 そんな姿をステージの上で曝け出しているという事実を、彼女はどう思うだろう。 (*109) 2022/12/01(Thu) 2:40:23 |
【赤】 「怪人」 ファントム腰が動き出す。 結合部から汁気の少ない音が響いて、バーの中で反響する。 段々と音の感覚は短くなり、肉と肉がぶつかる音が混じり始める。 「このバーを、君の匂いで満たしてあげよう。 きっと、後から来た誰かが気付く。 他にも、バーに来た客や、従業員や――誰より、イルムヒルトが。」 徹底的に羞恥を煽る。 腰の動きはすぐに早くなり、彼女の中で先端が跳ねまわって――そのまま、あっさりと彼女の中へと白濁が注がれた。 「もっと、もっとだ。 そうでしょう?」 一度の吐精で終わる事などなく、続いて二度、三度と注がれていく。 あっと言う間に溢れて、収まりきらなくなる。 当然、そんな行為に体力は削られて――それでも彼女が達する為に気力で持ちこたえた。 そうして互いを貪りあう行為は、言葉通りバーに彼女の匂いが満ちるまで続いた。 (*110) 2022/12/01(Thu) 2:40:55 |
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