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【人】 バイト 癒月[折り畳みベッドの上で寝転んだ姿勢のまま 音読していた漫画雑誌からガバッと顔を上げた。 一瞬やべっという表情をしたあと目を丸くする。 鍵をかけていない部屋の扉を開けたのは オーナーではない別の誰かだった。] えっなに誰、お客さんっ? 部屋間違えてまっせー あそれとも新しいバイト仲間かなっ? 何年振りだろなあ〜 よろしく、おれ癒月だよお [漫画雑誌を「人」の形で伏せて体を起こし その場で胡座をかくと笑顔で右手を差し出した。 立ち入り禁止の令など知らず握手をしようと。] (2) 2024/03/11(Mon) 10:10:44 |
【人】 バイト 癒月[因みに部屋の中は客室とは大きく異なる。 年季が入って薄汚れた木壁を覆うように 掛け軸や様々な地方、国のタペストリーが貼られ 色が抜けたカーペットの上には 雑誌の山やギターや信楽焼の狸など まとまりのない大量の物が 崩れないギリギリのバランスを保って置かれている。 入り口からベッドまで辛うじて足の踏み場はあった。*] (3) 2024/03/11(Mon) 10:11:36 |
【人】 バイト 癒月[見上げる形で握手を交わす。 頼りない手を大きな手でがっしりと握って 軽く揺すってから離した。] いやもーぜーんぜんお気になさらず〜 この部屋フリー素材ですからね〜 なーんだお客さんだったか、ちぇ〜 先輩風吹かせてやろーと思ったのに あっ嘘だよ、ようこそようこそ 月代くんてゆーの、つき仲間だね つっきーってよぶね! よろしくぅ! [訊ねられれば、起き上がったことで空いていた ベッド上のスペースをぽんぽん叩いて どーぞと座るよう促す。 立ったままでも構いやしないけど。] (7) 2024/03/11(Mon) 20:52:33 |
【人】 バイト 癒月さっきって、えっ聞こえた? はずっ あっもしかしてそれでドア開けてくれた感じ? つっきーアータいいこねえ〜〜! 今日はここのバイト午後からだけど 早く着いたからこれ読んでたんだよ こう、生命の危機に瀕した人間の 葛藤的なやつがすきなんだよねおれ [これ、で雑誌を鷲掴んで伏せていた頁を彼に向けた。 無人島に流れ着いた男女のうち一人が病に倒れ もう一人が来るとも思えない助けを呼ぶシーンだ。 彼が聞いた台詞がそのまま紙面に載っている。] つっきーは一週間も何しにきたの? 湯治? [首を傾げる。 スキーやスノボーをしにきたなら こんな所にいては勿体無い。**] (8) 2024/03/11(Mon) 20:53:36 |
【人】 バイト 癒月え〜〜つっきーもそう思う〜〜? 男前だしぃ? 歌って踊れるしぃ〜? いっちょめざしたろっかな〜〜 なーんて おれはこの町離れらんないんだよねえ [残念、と大袈裟に肩を落としつつ つっきーアナタお上手なんだからあ なんて品を作って笑った。] (11) 2024/03/11(Mon) 23:11:10 |
【人】 バイト 癒月[彼の目的は取材であると。 求めるものを聞いた途端、顔が得意げなものになる。] にゃぁるほどね おれはこの町結構長いほうなんだ 隅から隅まで知らないとこはねーんだぜ 良かったら案内してやろーか? [親指だけ立てた拳を自分に向けてドヤっている。 けどまあ、一人で行きたいようなら邪魔しないし 地図を持ってきて印をつけてあげるくらいはするつもり。**] (12) 2024/03/11(Mon) 23:11:39 |
【人】 バイト 癒月[めっちゃ食いつくじゃ〜ん。] もーつっきーったら ホントそれにしか目がないんだからあ 知らない所がないなんてゆづ君すごーい! イケメーン! とか言ってよお 褒めて、讃えて、持て囃してえっ! あジブン明日行けるっす イチオシの場所はちと遠いから朝でよろっす [おふざけは自分で切り上げてビシッと敬礼した。 あんまりしつこい男は嫌われるってね。] (15) 2024/03/12(Tue) 14:36:38 |
【人】 バイト 癒月おけまる水産〜 エッもう行っちゃうの〜? ゆづ君さ、み、し、い〜〜 いいえいいの、わかってるの アーシがアータの一番になれないのは もうずっと前からわかってたから じゃっ、また明日ねダーリン! [部屋を出ていく彼のことは投げキッスで見送った。 また明日と言った通り この日その後二人が会うことはなかっただろう。] (16) 2024/03/12(Tue) 14:38:18 |
【人】 バイト 癒月[翌朝は約束通り102号室に迎えに行った。 朝食サービスどころか日の出より早くに訪れ コンコンコンコン、と他の客を起こさぬよう (気持ち)控えめにドアをノックしたのである。 起きてたかな?] おはよん、はりきってくぜー! [ペンション前の停留所で始発を待ち バスに揺られること数十分。 杉林の林間を滑らぬよう歩くこと約二時間。 なだらかだが、然し確実に昇っていく。 木の背が高いせいで日が出てもやや見づらいが 踏みしめる雪に自分たち以外の足跡はない。] (17) 2024/03/12(Tue) 14:40:38 |
【人】 バイト 癒月[天然の迷路を迷わず進んだ先に 洞窟──鍾乳洞の入り口が見えてきた。 鍾乳洞を丸ごとぐるりと覆うように太い注連縄が 頭より高い位置で張られている。] どうどう? こん中は町の人でも 入っちゃいけねーことになってる おれのとっておきだよ ……と、大丈夫? ちょっと休んでからにする? [自らは疲労を微塵も滲ませずに。 歩くペースは相手に合わせていた。**] (18) 2024/03/12(Tue) 14:45:28 |
【人】 バイト 癒月ははっ、んなもんねーよー まず電気がきてねえ そーゆーキカイ的なものを持ち込むと 神域が穢れるとかってさ [ついでに携帯の電波も入らなければ GPSも正しく動作しない、そんな山奥だ。 振り返っていた彼に前を見るよう顎をしゃくる。 彼が懐中電灯で照らしたままの先を。] あれを見ろよ あの石があの長さになるまで二万年ちょっと 何万年と昔からここは自然として存在してんだ あとからやってきて近くに町つくって たった数百年住んだだけの人間が 所有を主張して立ち入りを制限するだなんて おかしな話だとおもわねえ? [僕が入っても良いのかに対する答え。 侵入を阻むものはここには居らぬということ。] (21) 2024/03/12(Tue) 23:03:02 |
【人】 バイト 癒月……。 [伺いに対する返事は特になかったようだ。 懐中電灯を手に前を行く彼に着いていく。 上着のポケットに無造作に突っ込んだ両手は然し 万が一彼が転ぼうものなら未然に支えることができる。] ここで神として祀ってるものの正体は 不明ってことになってる もとは空を自由に飛び回ってたそいつを 鍾乳洞を祠とすることでこの地に縛り付けた [右、左、そこ右上頭気をつけて、 進む方向と注意点を的確に指示して進みながら。 話す内容は殆どがネット上にはない情報だ。] (26) 2024/03/13(Wed) 10:34:52 |
【人】 バイト 癒月来月湯の気祭りってのがあるのは知ってるか? [土地について調べたなら これは知っていておかしくない。] 表向きは観光客を呼ぶためのどんちゃん騒ぎな 褌一丁で温泉かけあって露店が出て超たのしい その裏ではごくごく限られた人間だけが この祠に籠って願い事を叶えてもらったり 少し先の未来を教えてもらったりする日になってる 町の権力者が国のエライ人をこっそり呼んだりもしてな 町を内外の人間で賑やかせて釣れば 神ってやつが喜んで祠に降りてくると考えられてんだ おれなら祭り会場の方に惹かれていっちゃうけどね〜 どうつっきー、こゆ話きょーみあった? [外の光届かぬ洞内。 明るく話す声が常に一歩後ろにいることを教える。*] (27) 2024/03/13(Wed) 10:37:15 |
【人】 バイト 癒月あえてズラす? へぇ、ははっ [可笑しそうに笑った。] おっ、つっきー良い質問だねーえ ゆづ君ポイントを10点進呈しよう 一万点集めると良いことあるよん そりゃ人はいつか必ず死ぬが どういうわけかこの町での人死は 祭りの当日や前後に集中している なんとそれは今でもだ 多くが身寄りの少ない高齢者だから 自然死で処理されて大事にはならねー 遺族の方も気が狂うか失踪するかで 騒ぎにする口を持たない [全く不思議だねえとの呟きは、呆れた声色で。] (29) 2024/03/13(Wed) 20:12:20 |
【人】 バイト 癒月おっゴールだね 落ちたらあぶねーから ちょっとそのまま待ってなぁ [開けたところに出た。 手慣れた様子で灯りを灯していく。 置かれたままの松明があるのだ。 照らされる空洞は果てがわからぬほどに広く 二歩先の地面から先が地下水に浸かっている。] (30) 2024/03/13(Wed) 20:13:10 |
【人】 バイト 癒月この地底湖が神さんとの 対話の間ってことになってる 願えば叶えてくれる代わりに 大事なものを失うってな 足下の水には真実が映るらしーぜ なぁつっきー、アンタには何が見える? [背中をぽんと押して見下ろすよう促した。 水面には、隣に立つ男の姿だけが映らない。] (31) 2024/03/13(Wed) 20:13:29 |
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