情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介 ー 『伽藍堂』ー [あの日を境に、俺の店の入り口を眺める頻度は さらに高くなっていった。 (連絡先の交換をし損ねたせいだ) いつ来るか、それとももう来ないのか 首を長くして待とう。 この気が気じゃない時間が過ぎていくのは どうにも俺は「待つ」というのが苦手らしい。 紅茶屋の店主が持たせてくれた パウンドケーキを傍らに。 また飛鳥が店に来てくれたら、 待ち時間の恨み言抜きに歓迎しよう、と。]* (17) 2021/05/27(Thu) 9:22:48 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[首を長ーーーくして待って(1)1d5日、 飛鳥の声が入口から聞こえた時 俺はカウンターから半身を乗り出して その声の主が想い人か確かめようとしただろう。 「颯介さん」と呼ばれたら、咳払いひとつ。] ……いらっしゃい、 飛鳥 [他に客もいないのに 声を潜めて、呼ぶ。 日を改めてみると、ああ、本当に飛鳥の 気持ちを受け止める立場にいるんだ、って 実感出来て、耳がジン、と熱くなる。] (21) 2021/05/27(Thu) 22:26:10 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[飛鳥が近くによると、微かに紅茶が香る。 伏せられた睫毛を見下ろして その意図に気付いたものの、] おいおい、俺が紅付けて店にいたんじゃ もっと人が寄り付かねェや。 [そう、笑う。 それでもキスをしようとするなら 俺から宥めるように、鼻先へひとつ。 閑古鳥の鳴く店だ、どれだけ居てもいい。 けど店主が紅つけて客と戯れてちゃ 商売になりはしないのだ、と ちゃんと大人の理屈を述べて。 それに納得してくれたなら その手から香りのいい 紅茶のカップを受け取ろう。] (22) 2021/05/27(Thu) 22:27:13 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[パウンドケーキを、黒釉の皿に載せて出すと 飛鳥が奇妙なことを言う。 このケーキも、あのクッキーも 古い馴染みの作ったもので、 あのたぬき顔は良い奴ではあるけれど 恋仲になるのは、百ぺん死んでも御免だった。 だから、俺には「まさか」の先が分からない。 はは、と軽く笑いながら] 俺が甘ェモン焼くタマに見えるかい? 知り合いの店のだよ。 [そう流す。 気になるなら行ってみるかい?と聞こうとして ふと、あいつの店を思い浮かべる。 アンティーク屋のような店内に 花咲くイングリッシュガーデン。 話好きで、くるくる笑って 紅茶占いなんかしたりして……] (23) 2021/05/27(Thu) 22:27:39 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介…………そのうち、な。 [カップの中から、呻く。 飛鳥とあいつが一緒になって遊んで、 楽しげに笑っている光景を想像すると 俺の位置はどうやっても蚊帳の外。 そんなの、嫌だった。 飛鳥をあの店に連れていくのは もっともっと飛鳥との仲を深めてからがいい。 そんなわがままを。] (24) 2021/05/27(Thu) 22:28:02 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[ところで─────] 遅くなる、って言ったって、 俺のところにいる、とは言ってねェだろ。 [バレたらそれこそ無理にでも 引き裂かれてしまう気がして。 眉を下げたまま、弱音を吐いた。 でも、西園寺家にご挨拶にうかがうのは それこそ時期尚早、というやつか。 ご挨拶をゆくゆくのイベントにするのなら 目先の、一緒にいられる時間を大事にしたい。 店だとこの間みたいにくっついて、キスをして 思うがままの気持ちを伝えられない。 笑顔のままじ、と此方を見下ろす恵比寿天に 臀をもぞもぞ動かして、] 早く閉店時間になンねェかな。 [なんて軽口を叩く。]* (25) 2021/05/27(Thu) 22:34:54 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[焼き菓子の出処をぼかして笑っても 飛鳥はぴくりとも笑ってくれず 目だけが、細く細く、鋭利に尖る。 そうして、「女の人?」と聞かれて始めて 俺は彼女の意図を察して、 ぐふ、と紅茶を噎せさせた。] ……そうだな、焼き菓子焼くのが好きで 俺と一緒で骨董品…… アンティークのティーカップなんか集めてて 占いや、ガーデニングなんかが好きな…… ─────そういう男だよ。 [彼は彼で、気になる人がいるらしく 俺達のことも「いつか一緒に来てね」とか 言っていた、とまで言えば きっと誤解は解けたろう。] (49) 2021/05/28(Fri) 18:48:56 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介なァんだ、菓子より綺麗にやけてんな。 [飛鳥の柔い頬をつん、とつついて揶揄うと カウンターに片肘ついて、頬を預けた。 「からかってるの?」なんて聞かれたら 「バァカ、嬉しンだよ」と小声で返そう。] あいつが万が一にも俺の事好きとか言っても 俺は断るよ。 [飛鳥を捨てて、靡く場所もない。 唇を避け、額にキスを落とすと にっ、と笑ってみせようか。 ちゃんと彼女の気持ちに応えるつもりがある、と 誰よりまず飛鳥に信じてもらえるよう、 これから共に過ごす時間を尽くそう。 ─────そう、思う。] (50) 2021/05/28(Fri) 18:50:08 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[まず恋仲になって、 ハグをして、キスをして…… その先、と考える。 万が一にも結婚を許してもらえなかったら? 他に婚約者を立てられたら? ……また弱虫が頭をもたげたのを押し殺す。 閉店までの時間はまだまだあるから 万年閑古鳥の骨董品屋の主人よろしく 離れかけた飛鳥の肩を引き寄せて] そうかィ、じゃあ商売人やめて 今から俺が先生しようか。 [所狭しと物が置かれた店内の中、 ぴ、とそれを指差し、指し示す。] (51) 2021/05/28(Fri) 18:50:38 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介アレぁ、柘植の櫛だ。 椿の掘りがしてあンだろ。 江戸時代には櫛を女性に贈るのが 所謂プロポーズ、ってやつだった。 [苦死を共にしよう、という 江戸らしい洒落っ気だ。 次に示したのは、アンティークの指輪。] プロポーズを指輪でしていたのは 古代ギリシアの頃。 ……つっても、当時は売買婚。 夫の家が妻の家に金ェ払って 夫が妻の父親に贈る。 言わば領収書、ってやつ。 [今はそんな慣習もなく、 共に惹かれあって結ばれる恋愛婚は一般的。 突然のプロポーズの歴史講座に ちゃんとついてこられているか ちら、と斜め下を見下ろして。] (52) 2021/05/28(Fri) 18:51:00 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介江戸より昔の日本だと…… ほら、習ったかな。 平安時代は和歌を読むンだ。 …………じゃあ、問題。 そのもーっと昔……古墳時代は どうやってプロポーズしてたか。 [どうかな、飛鳥。って、 少し笑って、髪を梳きながら答えを待とう。 正解したら、どうしようかな。] (53) 2021/05/28(Fri) 18:51:35 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[けれど、今は和歌も読まなければ 櫛も贈らない。 言葉にして、気持ちを伝えて、 元の意味とは違う意味で指輪を贈ったり。 ……今の俺に必要なのは、物とかじゃなく もっとちゃんと素直に 自分の気持ちを伝えることか。 悪い大人は閉店時間の10分前には店を締め 裏手に停めた愛機へと また飛鳥を誘うだろう。] ちょっと付き合ってくれると、嬉しい。 [また夕暮れ空の下をツーリング。 さっきの問題が正解でも、不正解でも、 俺が君にキスがしたいのだ、と。]* (54) 2021/05/28(Fri) 18:52:32 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介さて……何だろうね、飛鳥。 [原始人じゃなく、文明を築き上げようとした人らの 恋の気持ちを伝える方法とは。 くるくると思考を廻らす飛鳥を見て 俺はそっと微笑み名を呼ばう。 ヒントを求められたなら スマホに頼らないその度量を買って 「今俺も飛鳥も普通にしてる事だよ」と。 当てられたなら、おでこにもう一つキスを落とそう。 どうしても分からないなら此方から正解を。] 名前を呼ぶこと。 ……もっとも、婚姻制度が今と違うから そんなに重々しいものじゃなかったらしいけど。 [でも「お嬢さん」から「飛鳥」へ 「江戸川さん」から「颯介さん」に 互いの呼び名を変えた今なら、少しわかる気がする。 自分、というのをもっと相手に 深く受け入れてもらったような…… 1歩ずつお互い近付いた感じがする。] (68) 2021/05/29(Sat) 11:14:15 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[さて、閉店時間10分前にふけるわるい大人は 健全な若人からの指摘に、にひ、と笑って] いいじゃねェの。客来なかったろ? 今日だけだよ、今日だけ。 [良いから行こうぜ、と手を引いて バイクに跨り、街へ。 行先も告げないまま走り出しても、 背中から回る腕の確かさには変わりがなくて。 そこからもあすかの信頼が伝わって ヘルメットの中、ひとり口角を上げた。] (69) 2021/05/29(Sat) 11:48:59 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[バイクを走らせ10数分。 やってきたのは、街の外れにある 高台の公園だった。 季節になれば夜桜を楽しむ人や バラ園をスケッチする人で賑わうだろうが 空にちりばめられた星がうっすら透ける 夕暮れ時というのもあってか、 数組のカップルが過ぎると気を惜しむような速さで ライトアップされた紫陽花の小路を歩いている。] ……くらぶ、?とか、他にも 飛鳥の好きな場所があるかもしれねェけど それも今度教えてくれや。 [今日はもう一つ、俺の好きな場所。 喧騒のない静かな公園で 二人きりの時を紡げたら、なんて思うんだ。 バイクを停めたら、手を差し伸べて 花の小路へ誘おうかと。]* (70) 2021/05/29(Sat) 12:00:12 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[くらぶにいってなんぱをされる俺……? 正直、想像が出来ない。 若人の中、浮いてしまいやしないか。 また、隅っこでひとりぽつんとなって 若い男から声をかけられる飛鳥を見ては 頬を膨らませる時間を過ごしそうな。] でも、飛鳥の好きを、もっと知りてェ。 [紫陽花の花の間をゆっくりと縫って歩く。 下から照る光に浮かぶ 飛鳥の顔を覗いて、そう乞うた。 でも、飛鳥が行きたくないなら もっと別なところですごしたっていい。] (79) 2021/05/29(Sat) 20:45:47 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[さっきの話のせいか、 歩きながら飛鳥が名前を呼ぶ。 何度も何度も、弾むように。 キスのために立ち止まることも無く、 呼ばれる度に、繋いだ手に、 きゅ、と力を込めて返す。] ここにいるよ、飛鳥。 [多分あの時、飛鳥が向き合ってくれなくちゃ 俺はここにいなかった。 祝福してもらえない、君の未来を壊してしまう、と ひとりいない敵に怯えて過ごしてた。 だから、何気ないこの時間が 俺にはひどく嬉しくて。] (80) 2021/05/29(Sat) 20:46:04 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[やがて、紫陽花の道が開けて 街の夜景が一望出来る広場へと辿り着く。 空の星と、地上の人の営みと 目の前がちかちかと眩むよう。] 古墳時代には見えなかった光景だなァ。 [時代は変わって、名前を呼ぶだけじゃ 確固として結ばれるわけじゃない。 身分や歳の差、たくさんのしがらみに阻まれ 結ばれない恋も、世の中には沢山あって。 握った手の中、指先で飛鳥の掌を掃いて そっと腕の中へと招き入れよう。] 俺の気持ちは…………まだ、充分に 飛鳥に伝えきってねェと思う。 名前を呼ぶだけ、花を送るだけ 口を合わせるだけじゃ、まだ この気持ちには全然足りねンだ。 [鼓動をひとつに溶け合わせるように きつく抱き合ったって、多分。] (81) 2021/05/29(Sat) 21:06:00 |
【人】 『伽藍堂』 江戸川 颯介[ここにきて、他のカップル達と混じって 二人過ごしてみて、少しずつ俺の中の 不安は溶けていく。] なあ、聞いてくれ。 [言えるだろうか、飛鳥の恋人として。] まだ俺たちは恋仲になって浅いが、 少しずつ、もっとお互い知り合って …………そしたら、改めて言わせて欲しンだ。 俺の言葉で、飛鳥と共に行きたい、って。 [そう言ってから、これってもう 言ったも同然かも、って気が付いて 少し照れの滲む顔で笑った。]* (82) 2021/05/29(Sat) 21:17:57 |
情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新